銀星石のブログ

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銀星石のエッセイブログ

ARMORED CORE Vandalism of birdcage 前編

 本作は、アーマード・コアVの世界観をレイヴン時代っぽくアレンジした、オリジナルの世界観による二次創作です。

 また、以前に「Defeat the ⑨」というタイトルのプロローグ部分を投稿したことがありますが、あれは「主人公の正体はACを動かすコンピュータ」という原作の主任と設定が丸かぶりしたので、ボツにしてしまいました。








 世界は荒廃し、文明は衰退の一途をたどっている。
 環境汚染により、大地は荒れ果て、空気は汚れ、人々は過酷な環境での生活を強いられる。
 そんな中、ミグラントと呼ばれる者たちは、前時代の施設から残された物資を回収し、人々に売りさばくようになった。
 だが、全ては無尽蔵ではない。
 限られた資源と土地。人々はそれを奪い合うために、終わり無い争いを繰り広げていた。
 力がなければ生きてはいけない時代だった。誰もが武器の扱いを覚え、戦う技術を養わなければならなかった。
 しかし、それでは足りない時がある。
 よりも強い者。
 より戦力が多い集団。
 自分の力だけでは生き残れるのは、この世界における最大の幸福ですらあった。
 それゆえに、戦闘力を商品とする傭兵業は格段に需要を増した。
 金さえあれば、それが力の代用となるのだ。
 多くの傭兵はアーマード・コア(AC)という人型兵器を使う。それは、荒廃以前に大量生産されたらしく、各地から数多く発掘されていた。
 ACは高性能であるだけでなく、徹底した規格統一による整備性の高さから、最も有用な兵器としての地位を獲得していた。
 また、ACを扱う傭兵たちと密接な関係を持つ組織がある。
 組織の名は『エージェント』という。
 エージェントは戦力を欲する者たちから依頼を集め、その内容に見合った実力を持つ傭兵たちにそれを斡旋する。
 それともう一つ。エージェントにはある特徴があった。
 それは傭兵を一切束縛しないというものだった。エージェントはあくまで斡旋するのみ。受けるかどうかは、すべて傭兵の判断に任せた。
 そのため、ある勢力のために戦った傭兵が、次は自分が攻撃した勢力に雇われて、前の依頼主を襲撃することもある。加えて、エージェントから派遣された傭兵同士が戦うことも珍しいことではない。
 エージェントは依頼を斡旋するときに生まれる仲介料があればいいし、傭兵側も金さえ手に入ればそれでいい。雇い主と戦う相手は誰でもいいのだ。雇う側も傭兵とはそういうものだと割り切って雇っていた。
 誰にとっても味方であり、誰にとっても敵である傭兵は、何者にも束縛されず、自由意志で戦い、戦場を渡り歩く。
 いつしか人々は、その姿から渡り鳥の一種になぞらえて、彼らをこう呼ぶようになった。
 レイヴン、と。



 交易路開放

 依頼者 スカーレット
 前払い報酬     0Au
 成功報酬 20,000Au

 ルート1号に展開するストロングワークスの略奪部隊を排除してください。
 このルートは、我々スカーレットにとって重要な交易路であり、彼らに占拠されたために物資の流通が滞っています。
 彼らはミグラントの連合組織を名乗っていますが、民主的な運営を行っている我々と違って、その実態は他者から力ずくで奪った物資を売買する盗賊集団です。
 このような横暴を放置するわけには行きません。悪には正義の鉄槌が下されるべきです。
 スカーレットはあなたに強い期待を寄せています。それでは、よろしくお願いします。



 二つの回転翼を持つ大型のヘリコプターがACを運んでいた。
 ACはダークグリーンをメインカラーとし、両肩だけを赤く塗っていた。。
 武装は両手に同じライフルを二丁持っている。また、肩のハンガーユニットには成形炸薬弾を発射するバトルライフルが、手持ちの同じく左右に同じのが一丁ずつさげられていた。
 機体名はステロイド。エージェントが定めた序列のうち、ランク18のレイヴンが乗っていた。
「レイヴン、そろそろ目的地よ」
 ヘリコプターに乗っているオペレーター、シャルロット・バレーヌの声に、ステロイドのレイヴンは機体を起動させる。
 レイヴンはいつでも戦えるように気持ちを引き締める。過度の緊張はない、この手のミッションは何度も経験してきた。
 今回、依頼してきたスカーレットと、戦う相手であるストロングワークスは、この地域でもっとも規模の大きい二大ミグラント連合だ。
 どちらの長年敵対関係を続けており、レイヴンは何度も二つの組織が繰り広げる紛争にかかわってきた。この日はスカーレットに雇われているが、ストロングワークスにも雇われたことがある。
 レイヴンは二つのミグラント連合の決着が付くことはないと考えていた。おそらく、他の者も同じ意見を持っているだろう。
 武力で他のミグラントを併合してきたストロングワークスは絶対的な上下関係があり、上位者が下からの意見や提案を認めることは決してない。
 対するスカーレットは、発足当初は「性別に関係なく平等に機会をあたえる」という理念を掲げていたが、上層部の腐敗化で、現在は有名無実化し、女性のみを不当に優遇するようになってしまった。
 どちらも組織として大きな欠点を抱えており、そのために敵対する組織を倒せるだけの力を発揮できないでいた。
 延々と続く終わりなき争い。今日の戦いも、無数にあるうちの一つに過ぎない。
 小さな町が見えた。
 人は住んでおらず、廃墟となっている。
 町の北は山脈で、南は海に面しており、迂回することが出来ないために、待ち伏せするにはうってつけの場所だ。
 スカーレットからの情報でも、ストロングワークスがいるのは間違い無いという。
「目的地に到着。ACを投下」
 シャルロットがヘリからステロイドを切り離す。
 装甲越しに音と振動が伝わってきた直後、レイヴンは浮遊感を感じる。すかさずブースターを起動させて、着地時の衝撃を軽減させた。
 続けてスキャンニングモードに切り替えて、リコンを射出する。プロペラ付きのセンサーであるリコンは、機体の真上に滞空して周囲の索敵をはじめる。
 ステロイドはブースターを吹かせながら、すべるように直進。町の中へと入っていく。
 レイヴンの見るモニターに変化が現れた。リコンの得た情報が画面に反映されたのだ。およそ100メートル先、メインストリート右の横道だ。建物越しに戦車三両分の影が映し出されている。
 スキャンニングモード中は武装が使用不可であるため、レイヴンは戦闘モードへと切り替える。戦車の陰は見えなくなるが、位置を把握しているのでもう十分だ。
 ステロイドは進行方向を変えないまま右旋回をし、横移動をする。それによって、横道の前に出た瞬間には、待ち構えていた戦車と正面を向き合う形になった。
 ACと戦車が同時に打ち合う。
 ステロイドが両手に持つライフルは、人間が扱う自動小銃をACサイズまで巨大化したもので、通常の戦車砲よりも格段に連射性能が上だ。敵が一発打つ間に、こちらは数倍の数の砲弾を叩き込む。
 ステロイドは瞬く間に三両の戦車を撃破した。
 一発だけ敵の攻撃が命中したが、当たったのは装甲の傾斜部。敵の砲弾は運動エネルギーをダメージとして与えることが出来ず、弾かれてどこかへ跳んでいった。損害はきわめて軽微。
「レイヴン。メインスストリートに小型の攻撃ヘリを五機発見。注意して」
 シャルロットが新たな敵が出現したことを伝えてくれる。ACのリコンは高性能だが探査できるのは非常に限られた範囲だ。より広く状況を知るには、上空から戦場を見下ろすオペレーターの目が必要となる。
 攻撃ヘリはレイヴンが目視できる距離にまで接近してきた。
 全ての攻撃ヘリがミサイルを発射する。
 ステロイドのショルダーユニットのハッチが開き、中から迎撃用機銃のCIWSが現れる。
 CIWSは弾丸を発射して弾幕を張り、ミサイルを迎撃していく。
 その間、ステロイドはヘリに反撃を行う。AC用ライフルから発射される砲弾が敵機を粉砕し、そのうちの何機かは、燃料に引火して派手な爆炎を上げて散っていった。
「敵、更に増援。今度は防衛型です」
 メインストリートに3機の戦闘メカが姿を現す。
 それは人型をしているが、下半身が正立方体に近い形をしているので、チェスの駒が動いているような印象を受ける。
 防衛型と呼ばれているように、それは強固な装甲で守られていた。その上、全身を半分近く覆うことができる盾を持っている。ACであっても、先ほどの戦車やヘリのように、瞬く間に撃破できるという訳にはいかない。
 防衛型が手に持っているガトリング砲を一斉に撃ってきた。
 ステロイドは横道に入って、姿を隠す。
 ガトリング砲程度ならば、強引に正面から戦っても十分に勝ち目はあるが、損傷は少ないほうが良い。
 攻撃を受ければ、その分修理費が出る。それが増えれば、収入が減る。
「レイヴン、迂回ルートを探るわ」
 数秒後、コクピットのモニターに青い線が表示される。
「このルートなら敵の後ろをとれるわ」
 レイヴンはシャルロットが指し示したルートにそって、ステロイドを移動させる。
 青線は道路上に表示されている。しかし、しばらく進むと、線はビルの壁面にそって表示されるようになる。
「そこのビルの上に移動して。そうすれば、背後だけではなく、頭も抑えることができるわ」
 ステロイドはビルの壁を蹴って、垂直に上昇する。このように器用な芸当ができるのが人型ゆえの、他の陸戦兵器にはない利点だった。
 ビルの屋上に到着した。
 下を見ると、確かにこちらを探している敵機の背中が見えた。
 ステロイドは手に持っているライフルから、両肩にあるバトルライフルに持ち帰る。
 ステロイドはビルの上から飛び降り、落下しながら敵機に向けて攻撃を行う。
 バトルライフルから発射された成形炸薬弾防衛型に命中。すると、信管が起動して炸薬が起爆し、強烈な圧力が生じた。それを受けた弾体内部の金属が液体のように振る舞い、超高速の噴流となり、敵機の装甲に対しても同様の圧力をかける。これによって装甲自体の強度は無視され、液体金属は内部へと浸透し、破壊力を発揮する。
 ステロイドが持つ二丁のバトルライフルは、それぞれ両端の防衛型を撃破した。
 残っている中央の一機が振り向く。ステロイドは攻撃される前に、ブースターの推力を瞬間的に上げて急接近。加速力と自重を上乗せした脚部による蹴り、ブーストチャージと呼ばれる攻撃を与える。
 防衛型は持っている盾で防御するのが、衝撃を受けて仰向けの状態で倒れる。
 両腕をふりまわし、無様にもがく防衛型。完全な人型でないため、自力で立ち上がることは出来ない。
 ステロイドはバトルライフルで止めを指す。
「敵の全滅を確認。レイヴン、お疲れ様。帰還しましょう」
 戦闘が終わり、レイヴンがステロイドのシステムを戦闘モードから通常モードへ切り替えようとした時、通信機から一瞬ノイズが聞こえてきた。
「申し訳ありませんが、まだこの場所にとどまって頂きます」
 聞き覚えのない女の声が聞こえてきた。何者かが通信に割り込んできている。
 一機のACがこちらに近づいてくるのが見えた。
 そのACは肩に赤い羽のエンブレムをつけている。
「ラ、ランカーACを確認! パワー9です。そんな、ランク1の赤木鳩美がどうしてここに」
 シャルロットが驚愕の声を上げる。
 赤木鳩美の名を知らないレイヴンはいない。全てレイヴンが彼女を目指しているといっても過言ではないだろう。
 赤木鳩美は全てのレイヴンの頂点に立つ者であり、エージェント発足から四代目に当たるランク1として、フォースレイヴンの称号を与えられている。
 パワー9は一旦足を止め、ステロイドと対峙する。
 パワー9はステロイドと同じ中量二脚型で、武器は両手にパルスマシンガンを持ち、肩のハンガーには、実体ブレードとハンドガンを吊っていた。
 相手が今すぐ攻撃しようとする気配は今のところ感じられないが、決して気を抜くことが出来ない、火で炙られるようなプレッシャーが伝わってくる。
「私は貴方とお会いするためにやって来ました。お手数ですが、一戦手合わせをお願いします」
 今まで全く接点を持たなかった相手が、突然現れて戦ってくれと言ってくる。わけがわからない。
「それでは、行きますよ」
 レイヴンは攻撃の気配を察知し、ステロイドに右へ回避行動を取らせた。
 パルスマシンガンの青白い光弾が左側をかすめる。
 直撃を受ける訳にはいかない。ステロイドの装甲は実体弾による運動エネルギーのダメージに強い分、耐熱性能が低い。パルス弾による超高温の前では、あっという間に溶かされてしまう。
「レイヴン! なんとかパワー9をまいて、町の外へ脱出して」
 シャルロットの指示に従う。敵はこちらの弱点を付く武器を持っており、操縦技術も上。勝つのではなく、生き残る戦いをするべきだ。
 遮蔽物の多い場所へ入り、ステロイドは建物の外壁を蹴り、その反動をブースターの推力へ上乗せして速度を得る。
 うまく距離を開けることが出来たのか、背後からパワー9の攻撃はやってこない。
 視界がひらける。町の外に出た。
「レイヴン、こっちよ。早く!」
 目の前にシャルロットの大型ヘリがいた。
「逃がしません」
 通信機から赤木鳩美の声が聞こえた瞬間、横合いから強烈な衝撃が襲いかかる。
 ステロイドのレイブンは衝撃に翻弄され、円滑な操縦が出来なかった。
 レイヴンは攻撃がきた方向を見る。パワー9がいた。手には威力は小さいが強烈な衝撃を標的に与えるハンドガンを持っている。
 パワー9が更にハンドガンを撃つ。
「レイヴン、よけて!」
 だが、シャルロットの指示通りにするのは不可能だ。まだ衝撃から立ち直れていない。ステロイドは回避できない。
 立て続けにやってくる衝撃に、レイヴンは意識を失わないよう歯を食いしばるのが精一杯だった。
 パワー9がブースターの推力を最大にして急接近してくる。手には実体ブレードを持っていた。
 パワー9が実体ブレードを振るう。
 ステロイドはできる限り回避しようとした。
 敵はコア部を攻撃しようとしていたが、狙いが外れて、左腕部の肘あたりに当たった。
 技術が失われて製造不可能となった、超硬度の金属刃が、装甲を引き裂いて、左前腕部を切り落とす。
 ステロイドは残っている右腕のバトルライフルでパワー9を攻撃する。しかし、敵が素早く離脱したので命中しなかった。
 かなり追い詰められてしまった。もしかしたら死ぬかもしれないという意識が、レイヴンの脳裏によぎる。
 ならばいっそ、守りに入るのではなく攻めに入れば良いとレイヴンは判断した。
 ステロイドは推力最大でパワー9に接近する。
 レイヴンはパワー9がハンドガンを持つ腕を動かした瞬間、どこを狙っているのか感じ取った。コア部だ。完全な勘だが、不思議と「敵はこう動くのである」という確信がある。
 ステロイドはわずかに横へずれ、右腕を少し上げる。
 ハンドガンの弾が脇の下をすり抜ける。紙一重だ。
 こんな曲芸まがいの回避運動など、成功したことは今が初めてだ。レイヴンは自分の行動に驚く。
 間合いに入った。ステロイドはパワー9のコア部を蹴りつける。
 しかし命中の瞬間、パワー9が一瞬だけ後退したのが見えた。コクピットのあるコア部のダメージとはいえ、これでは不十分だ。
 事実、パワー9は損傷を受けつつも、まだ十分に戦闘可能な状態だった。
「あの攻撃を回避するなんて。たった一度の攻撃で、私の挙動を覚えた?」
 これでステロイドを倒せると思っていたのか、反撃を受けた赤木鳩美は困惑している様子だった。
「ああ、なんという事でしょう! 私は遂に運命の赤い糸をたぐりよせました!」
 突然、赤木鳩美は歓喜の声を上げる。
「認めましょう。あなたの力を。今この瞬間からあなたは私の好敵手です」
「な、何を言っているの? この人……」
 シャルロットの困惑は当然だ。レイブンもまたそうだった。
 突然現れて攻撃してきたと思ったら、反撃を受けると喜びだして、勝手に好敵手呼ばわりだ。
 何か目的があるのだろうが、それがわからない今は、赤木鳩美の言動はただ奇異にしか感じ取れない。
「これで目的を一つ達成することが出来ました。私はこれで失礼します。またお会いする日を、楽しみにしていますね」
 その言葉を最後に、パワー9は背を向けてステロイドの前から立ち去った。
 この日は奇想天外と呼ぶに相応しい一日だった。
 そして、赤木鳩美と出会うのはこれで最後ではなく、次もまた有るのは間違いない。
 もう一度。あるいは何度もランク1と戦わなければならない。途方も無い面倒を抱えてしまった。
 それに加えて、パワー9にやられた分の修理費で、今回の依頼の報酬が殆ど消えてしまうだろうという問題もある。
 レイヴンは思わずため息を付いてしまった。



送信者:アンディ・クローマー
件名:赤木鳩美について

 リサーチャーのクローマーだ。 
 あんたに頼まれた通り、赤木鳩美についてリサーチしてきた。
 彼女は、名前から判断するに、荒廃以前からこの地方に住んでいた民族だ。
 レイヴンになったばかりの頃は、対して優秀でもなかったが、ある時を境に急成長するようになり、今ではランク1に上り詰めるほどだ。
 次に、赤木鳩美の目的だが、彼女は自分と同じ『能力』を持った者を探しているらしい。
 赤木鳩美はACとの戦闘が想定される依頼のみ受けていることから、その力とは、レイヴン達の中にそれがあると俺は予想している。
 赤木鳩美が探している『能力』の詳細は、俺ですらわからなかった。だが、ランク1になるまで急成長が関係していると俺は考えている。
 ACの操作は複雑で、持って生まれたセンスというものが必要だ。
 赤木鳩美にACの操縦を教えたヤツに話を聞いたが、そいつは彼女を見て、全く才能がないと思ったそうだ。
 だが、いまや赤木鳩美はランク1だ。
 もしこれが事実ならば、これは赤木鳩美のもつ『能力』が関わっている可能性がある。
 あんたにその『能力』とやらが有るのなら、何か心当たりはないか、考えてみるといいだろう。



 アリーナという催し物がある。
 それはACによる一対一の対戦を行う見世物で、荒廃した世界における貴重な娯楽となっていた。
 参加者はエージェントに登録されているレイヴン達だ。ファイトマネーが支給される上に、勝利してランクを上げることが出来れば、それだけ優秀であるとして、依頼も多く入ってくる。なので、アリーナへ積極的に参加している者は多い。
 この日、ステロイドのレイヴンはアリーナに参加していた。
 対戦相手はランク10のレイヴンで、ACはストンピィという重量二脚型だ。
 いかにも鈍重そうな見た目だが、その分防御力と火力は高い。そのうえ、移動力は確かに低いが、旋回能力は高いので、相手を照準しやすい。
 ストンピィが両手に持っている武器は大型のレーザーライフル。その中でも装弾数がたった四発と極めて少ない代わりに、最も威力の高いものだ。たとえレーザーに耐性を持つ装甲でも、十分なダメージを与えるほどの力を持っている。
 青白い光線がステロイドの横をかすめる。直撃はしなかったが、あまりの威力に装甲の表面が若干溶けた。コンピューターが攻撃を受けたと判断し、アラートをならす。
 アリーナではコクピットのあるコア部の攻撃が禁止されているとはいえ、あれほどの威力だ。どこに命中しても命の保証は無いだろう。
 ストンピィが両手のレーザーライフルのエネルギーチャージを開始する。
 ステロイドは発射前に倒そうと、両手のバトルライフルを発射するが、敵は直撃をものともせずにチャージを続けている。
 成形炸薬弾は強烈な圧力によって、装甲の強度を無視してダメージを与えるが、無敵の砲弾ではない。
 重量級ACのパーツは衝撃による運動エネルギーの衝撃に強い素材と、加圧に強い素材を重ね合わせた複合装甲を使っている場合が多い。そのために、先ほどの攻撃は有効打にならなかったのだ。、
 ステロイドのレイヴンは、火器管制システムのロックオン機能を一時停止する。
 そして、手動操作で狙いをつけてもう一度攻撃した。
 ステロイドのバトルライフルの弾は、ストンピィが右手に持っているレーザーライフルに命中した。
 装甲に守られ知恵るのはAC本体のみで、武器はその限りではない。
 発射直前で大量のエネルギーが込められていたレーザーライフルは派手に爆発し、持っている右腕も巻き込む。
 爆発の衝撃でストンピィの姿勢が崩れる。
 ステロイドは、手動照準で脚部の左膝部分を攻撃する。
 装甲が厚い重量級と言えども、関節部分までは防護することは出来ない。
 ステロイドの放った砲弾が、ストンピィの関節を破壊する。
 片足を機能停止に追い込まれたストンピィは、バランスを保つことが出来ず、前のめりに倒れた。
「そこまで! 勝者、ステロイド!」
 ストンピィは戦闘行動不能と判断した審判が、試合終了を宣言した。



 ステロイドのレイヴンは戦いに勝利したあと、控え室に戻る。
「おめでとう、レイヴン。今日からあなたはランク10ね」
 シャルロットが笑顔で出迎えてくれた。
 しかし、レイヴンは彼女のように笑顔は浮かべなかった。
「どうしたの?」
 以前は勝てば当然嬉しかった。しかし、今は違う。
 赤木鳩美との戦い以降、エージェントから斡旋される依頼が明らかに制限されるようになった。
 依頼が激減し、収入が少なくなってしまったため、普段以上にアリーナへ参加せざる得なくなった。
 また、たまにやってくる数少ない依頼は、その全てが対AC戦が想定されているものばかり。
 何者かの意図が介在しているのは確実だ。どうやら、その何者かは自分に多くのACと戦うことを望んでいるようだ。
 それともう一つ。自分自身の変化についてだ。
 今回のアリーナで、レイヴンは手動で照準を行った。そうした理由は、火器管制システムのロックオン機能が、敵の武器や膝といった、よりピンポイントな部分を攻撃するのに邪魔だったからなのだが、比較的遅い重量二脚型であっても、動き回っている目標に命中させるのは困難を極める。
 だが自分は成功させた。
 ここ最近、急激に実力を高めているが、その異様な成長スピードに、自分自身に対して違和感を覚えるほどだ。
 僅かな訓練で、それまで出来なかったことが出来るようになり、実戦では敵の行動パターンをまたたくまに覚えてしまう。
 一体これはなんだというのだ。自分はレイヴンとしての地位を驚異的な速さで獲得したが、どうしてもいびつさを感じてしまう。
「レイヴン、気分でも悪いの?」
 シャルロットが心配そうな顔をする。
 レイヴンは考えるのを一旦やめ、彼女になんでもないと微笑んだ。
「そう? ならいんだけど。それよりも早く帰ってランクが上がったお祝いをしましょう。実はね、あなたが大好きなお菓子が手に入ったの」
 この時代、甘い食べ物は貴重品だ。手に入れるのに相当な苦労があっただろう。そんなシャルロットに報いるためにも、今は素直に祝ってくれるのを楽しもう。
 この状況を作り出している者については、あらためて考えれば良い。



件名:例外的成長個体
送信者:赤木鳩美

 まずは、ランク10昇格おめでとうございます。
 ここ最近の貴方の成長は、凄まじいものです。私はますます貴方の中にある可能性を強く感じるようになりました。
 私は、ある力を探しています。それは『例外的成長個体』というものでして、ひとつの経験に対し、常人の数百倍の効率で成長する能力です。
 私もこの能力を持っており、これのお陰でランク1になれ、フォースレイヴンの称号を頂きました。
 私には自分と同じ、例外的成長個体を持つ方が必要なのです。
 自分と対等の力を持った存在。つまりは好敵手。貴方が私にそうであることを強く願っています。


 中編へ続く
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by ginseiseki | 2012-11-10 13:58 | 二次創作小説
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