銀星石のブログ

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銀星石のエッセイブログ

モンスターハンター二次創作 クエスト受付嬢ハトミ 前編

 このブログがPSUのみしか扱っていなかった頃に書いて、別のブログに掲載したモンスターハンターの二次創作小説です。このブログがゲーム全般のブログになったので、転載することにしました。また、若干修正が入っています。






クエスト受付嬢ハトミ
 私、ハトミが住むユケムリ村は、隣のユクモ村と同じく、温泉で有名な場所です。連日、多くの湯治客が訪れ、貴重な観光資源となっています。。
 私はそのユケムリ村にある、ハンターズギルドのクエスト受付嬢として働いています。ご存知でない方に説明いたしますと、ギルドに寄せられる様々な依頼をまとめ、それをハンターに斡旋する仕事です。
 ユケムリ村のように大自然と隣り合わせの辺境地域になりますと、強大な力を持ったモンスターの脅威にさらされております。
 多くの方々にとっては図鑑でしか知らない存在でしょう。しかし、私達にとっては現実的かつ重大な問題になりうるのです。
 ですから、恐ろしいモンスターと勇敢に戦うハンターは、まさに村にとっての生命線なのです。
 これから私は自分の体験したある出来事について記します。自分の心を縛り続けていたある因縁が決着したという証を残すために。


 さて、ある日のことです。勤めているハンターズギルドのギルドマネージャーから、新しいドリンク売りがやってくるという連絡を受け、私は彼の受け入れ準備を進めておりました。
 ユケムリ村のハンターズギルドには公衆浴場が併設されており、そこではドリンク類も販売していたのですが、以前のドリンク売りが一身上の都合で故郷に帰られてしまい、そこで後任を向かい入れる事になったのです。
 ギルドの営業時間が始まる少し前に、その新しいドリンク売りの方はやって来ました。
「あなたがハトミさんですかニャ?」
 語尾が特徴的なアイルー訛りで呼ばれた私は、振り向いて足元を見ます。
 一匹の三色の毛色のアイルーが居ました。余談ですが、以前に生き物の進化の歴史について書かれた本を読んだ時、アイルーの祖先である猫という動物の事を知りました。二足歩行ができないのと、人語を理解するほど知性が高くないのを除けば、猫はアイルーと全く同じでした。
 話題がそれましたね。こういうのは初めてなので勝手がまだ分かりません。
 話を戻します。
「はい、そうです。あなたが新しいドリンク売りの方ですか」
「そうですニャ。ニボシというニャ。これから宜しく頼むニャ」
 三毛アイルーはそう自己紹介されました。
「ようこそいらっしゃいました。早速ですが、ドリンク売り場の場所を案内しますね」
「お願いしますニャ」
 ニボシさんを案内するために、私は近くに置いてあった自分の杖をとって歩き出します。
「ハトミさんは若いのにどうして杖を使っているんですかニャ?」
 ニボシさんは私が杖を使っているのを不思議そうに聞いてきました。
 私は年配の方からしてみればまだまだ小娘と言われる歳です。そんな私が杖を使って歩くのは彼にとってはとても珍しい姿だったのでしょう
「以前、足に大怪我を負ってしまいまして、それからというもの後遺症でうまく足が動かせないのです」
「ごめんなさいニャ。失礼な事を聞いてしまったニャ」
 答えると、ニボシさんはとても申し訳なさそうな顔をしました。
「いえ、いいのですよ。悪意で聞いたわけではないのですから」
 なので私は気にしていないと言います。
 その後、売り場に着くまでの短い間、ニボシさんは歩くのが遅い私に合わせてくれました。それで私は彼は善いアイルーさんだと分かり、仲良く仕事が出来そうだと予感しました。
 売り場は公衆浴場の入り口近くにあり、奥にはドリンクを作るための小さな調理場もあります。
 売り場に着くと、私はドリンク販売に関する業務内容をニボシさんに説明しました。
「どんなドリンクを作って販売するかはニボシさんにお任せいたしますが、この商品だけは必ず作って販売してください」
 最後にあるドリンクのレシピをニボシさんに渡しました。
「どうしてですかニャ?」
「このドリンクはこの浴場での人気商品でして、利益の半分はこれの売上によるものなのです」
 公衆浴場で販売するドリンクは基本的にドリンク売りが作っていました。しかし、作り手が変わって、今までの人気商品が販売できなくなると経営に支障をきたすため、前任者が辞める際に、ギルドマネージャーが退職金代わりとしてレシピを買い取ったのです。
「他人のレシピを使うのは、ドリンク売りとしての誇りに反するかもしれませんが、湯上りにこれを飲みたいとする利用者がたくさんおりますので、なにとぞ、よろしくお願いいたします」
「そういう事なら問題ないですニャ。僕のドリンク作りの参考にさせてもらいますニャ」
「ありがとうございます」
 前任者のレシピを使っていただけるのは、新しいドリンク売りを向かい入れる際の大きな問題でしたが、それが杞憂に終わって私はほっとしました。
「じゃあ、早速ドリンクを作りはじめるニャ。お客さんがたくさんくる夜までには、ちゃんと営業できるようにしておくニャ」
「それでは、よろしくお願いします」
「はいニャ」
 スムーズに引継ぎが終わり、私は本来の仕事に戻るため、ギルド受付窓口に向かいました。
 クエスト内容を記した書類を整理し、私は窓口に出ます。
 ギルドの営業時間になったのと同時に、二人のハンターがやって来ました。一人は男性で、背中にスラッシュアックスを担いでおり、もう一人はライトボウガンを持っている女性です。
「おはようございます、ゲイリーさん、メアリーさん」
 私は二人のハンターに挨拶をします。
 もしもこの手記を私以外の方が読んでいるのならば、お二人の名前を聞いて、ピンと来た方がいらっしゃるかもしれません。
 そう、お二人のフルネームは、ゲイリー・スーとメアリー・スー。ハンターになってわずか一年でG級ハンターとなった、あのスー兄妹です。
 お二人はこのユケムリ村の村付きハンターで、毎日ギルドの営業時間が始まると同時に、新しいクエストがないかチェックしに来るのです。
「ハトミ、なにかクエストないか?」
「ええ、ちょうどお二人に依頼しようとしていたものがあります」
「私達を指名しているの?」
「はい。迅速な解決を求められている緊急の案件でして、ギルドマネージャーからお二人が来たらすぐにクエストを提示するよう言われていました」
「どんな内容なんだ」
「依頼主はユケムリ村村長です。ロックラック地方へ続く街道近くの森に、ナルガクルガが発見されたので、これを討伐してください」
 飛竜の一種であるナルガクルガの最大の特徴は、前足と一体化した翼の一部がまるで刃のように鋭くなっている点です。
 私はこの村の周辺地図を広げて、ナルガクルガがいる森の場所を指さします。
「この街道は、この村にとって交易の生命線じゃないか」
「はい。今はまだ影響は少ないですが、いずれ村の経済に打撃を与えることが予想されます」
「私と兄さんを指名ってことは、やっぱりG級なの?」
「はい。調査により、討伐対象が二十歳を超えているのを確認されています」
 人間に力持ちの人がいれば、そうでない人がいるように、モンスターでもその強さは個体によって様々です。
 絶対ではありませんが、その強さを測る目安が年齢です。大型モンスターは常に他の大型モンスターとの縄張り争いをしており、長生きしているモンスターほど、それだけ争いに勝利しているので強いという理屈です。
 ハンターズギルドが大まかに定めた基準では、親から独り立ちした直後から十歳くらいが下位となっています。多くのモンスターがこの時期で生存競争に敗北して命を落とします。
 次に、十一歳から二十歳までが上位です。下位との実力差は、人間で言えば戦う訓練を受けたものと素人くらいはあります。
 そしてそれ以上の年齢が、最も強いG級となっています。モンスター達にとっても、人間と同じように才能の差というのがあり、G級モンスターはまさに戦いの達人とも言えるでしょう。
「よし、じゃあさっそくクエストを受けよう」
「よろしくお願いします」
「兄さん、私は先に家に戻って、ナルガクルガに合わせた準備をしているね」
「頼む。手続きが終わったら俺もすぐ向かう」
 メアリーさんは急いで家に戻り、ゲイリーさんもクエスト受領手続きを済ませたら、すぐに後を追いました。
 相手はG級モンスターであり、決して楽な相手ではありません。ですが、ゲイリーさんとメアリーさんは、天候を操るほどの超自然的な力を持っている古龍すら討伐したことがあるハンターです。私はお二人の実力を知っているので、不安はありませんでした。
 ですから心配にとらわれること無く、私はいつもどおり業務を続けました。
 お二人がナルガクルガの討伐に出かけてからしばらく後、太刀を担いだ見慣れないハンターがギルドにやって来ました。
「おい、良いクエストないか?」
 彼はまだ幼さの残る少年で、おそらくハンターになったばかりの駆け出しなのだろうと思いました。私より二、三歳程年下に見えるので、おそらく十四歳くらいでしょう。
 武者修行のために各地を旅している流れのハンターというのはそう珍しい事ではありません。彼もまたその一人だったのでしょう。
「お手数ですが、ギルドカードの提示をお願いいたします」
 スー兄妹は村付きのハンターなので、無駄な確認事項はありませんが、彼はこのギルドと初めて関わるハンターなので、身分証明証であるギルドカードの提示を求めました。
「なんでだよ」
 しかし、彼は非常に不愉快そうに眉をひそめました。
「規則で、村付きでないハンターにクエストを依頼する際、ギルドカードにてハンターズランクの確認する事になっています」
「わかったよ。ほら」
 彼は私に聞こえるよう露骨に舌打ちした後、およそ身分証明証を扱うとは思えないほど乱暴な手つきで、ギルドカードを机に叩きつけました。
 この態度で、この時の私は彼がどのような人物であるかおおよそ察することができました。
「では、拝見させていただきます」
 カードにはアイン・フォン・ローゼンベルグという彼の名前と共に、ハンターランクが記されていました。
「ハンターランクは1ですね。現在、ローゼンベルグさんに依頼できるクエストはこちらになります」
 私が彼に提示したのは、村の診療所で使われる医薬品の素材採集や、村はずれの畑をあらすブルファンゴ等の害獣駆除でした。これらはユケムリ村が日常的に抱えている問題でして、G級ハンターであるスー兄妹も、暇な時はこれらのクエストを請け負っています。
「なんで、この俺がそんなケチな仕事しなきゃならないんだよ」
「提示したクエストは、全て貴方のハンターランクに合わせておりますが」
「他人が決めたくだらねえルールになんて縛られたくないね。俺はすでに今のランク以上の実力がある。最初っから一流なんだよ。だから、最低でも上位のクエストじゃないと役不足さ」
 この時の私は彼を気難しい子だと思って、ため息を就きたくなる気分でした。
「申し訳ありませんが、ローゼンベルグさんが持っている太刀を見せていただけないでしょうか」
 ローゼンベルグ君に、なぜハンターランクに合わせてクエストを依頼する必要があるのかを分かってもらうため、私は彼の武器を見せてもらうよう頼みました
「ああ? なんでだよ」
「武器を見れば貴方が一流かどうかわかるからです」
「ふん。武器を見ないと俺の実力がわからないなんて、あんたの目、節穴だな。そんなんで受付嬢やってられるのか? 一流の眼なら俺からでる強者の気配が見えるはずだぜ」
 ローゼンベルグ君から太刀を受け取った私は、鞘から抜き出し、刀身を観察します。
「どうだい。これで俺が一流だってわかっただろ」
「少し錆びていますね。ちゃんと毎日手入れをしていますか? それに、ところどころ刃こぼれしているではないですか」
「ハ、ハンターでもない素人のクセに、偉そうな事を言うんじゃねえよ!」
「確かに私はハンターではありませんが、少なくともクエストを斡旋する者として、自分の目の前にいる人が、きちんと仕事を遂行できるかどうか見定める眼は持っています」
 私は太刀を鞘に収めてローゼンベルグ君に返します。この時の私は彼に少々腹を立てていまして、使い手に恵まれない武器を哀れに思っていました。
「申し訳ありませんが、ご自身の装備をきちんと整備していないハンターには、例え薬草の採集クエストさえ、お任せする事はできません」
「だから! 俺の実力をてめえが勝手に定義するんじゃねえよ!!」
 ローゼンベルグ君は激昂して、机に両手を叩きつけます。反面、この時の私の心は氷のように冷たくなっていました。他人に優しくしたほうが世の中はうまく回ると考えている私ですが、かといって明らかに間違っているのを黙殺するつもりはありません。
「ハンターランクで請け負うクエストに制限を欠けているのは、未熟者が不相応なクエストを受けて失敗しないのを防ぐためにあります」
「俺は未熟者なんかじゃねえ! いいから上位以上のクエストを受けさせろ。俺の強さを証明してやる」
「ふざけないでください」
 私は刃で斬りつけるような口調で言いました。
 このまま居座られたのでは、ではギルドの業務に差し支えます。だから私は最後に、強く鋭い言葉を彼に投げかけました。
「クエストは時に依頼人の生活が掛かっている場合もあるのですよ。あなたは他人の人生を左右する立場にあるという責任感が全くかけています。一流以前に、ハンターの資格すらありません」
 モンスター相手とはいえ、殺傷行為を生業とするハンターは粗暴な方も大勢居ます。しかし正しくハンターであるならば、自分の仕事に対して十分な責任感を持っています。
 私に厳しい言葉を投げかけられたローゼンベルグ君は顔を赤くして、自分のプライドが酷く傷つけられた表情をしていますが、彼は守るべき自尊心を間違えています。本当のハンターならば、仕事に対する責任感をプライドとしているはずです。
「こんなチンケな村で、俺にふさわしいクエストなんてあるものかよ!」
 ローゼンベルグ君は吐き捨てるように言って、ギルドを飛び出していきました。
 ようやく静かになったので、私はため息を付きました。他にもまだ仕事が残っているのに、この短いやりとりで、一日の気力を殆ど使いきってしまったように感じました。


 その後、ローゼンベルグ君との出来事が頭の片隅にしまわれた頃に、スー兄妹は帰ってきました。
「お帰りなさい」
「ただいま」
「ゲイリーさんお一人ですか?」
「ああ。メアリーはギルドの裏でナルガクルガを解体する準備をしている。報告だけなら俺一人で十分だからな」
「分かりました。では報告をお聞きします」
「ナルガクルガの討伐は無事完了した。ただ、ちょっと付け加える事がある」
「狩りの最中に何かあったのですか?」
「ああ。ナルガクルガについてなんだが、俺とメアリーが見つけたときは、すでに負傷していて、右前足の刃翼が砕けていた。だから、年齢的にはG級だったが、それほど苦戦はしなかった」
「ナルガクルガが手負いだったという事ですか? 事前の調査報告にはありませんでしたね」
「調査といっても、危険の及ばない距離から双眼鏡を使って行うものだからな。ナルガクルガがいたのは視界の悪い場所だったから、目の前で見ない限りわからなかっただろうさ」
「それもそうですね」
「街道近くの森にいきなり現れた事も合わせて考えれば、縄張りを追い出されたか、あるいは他のモンスターの縄張りにちょっかいを出して返り討ちにされたかだな」
「分かりました。そのあたりは専門機関に調査を依頼しておきます。G級モンスターを追い出すほどです。相手も同じくG級でしょう」
 非常に強力なG級モンスターは、天災級の被害をもたらすこともあるので、現在どこに生息しているかは非常に重要な情報です。国が作った組織である王立書士隊はモンスターの生態調査が主な仕事ですが、G級モンスターの所在を調査するのもそれに含まれています。
「それじゃあ、討伐したナルガクルガを確認してくれ」
「ええ、分かりました」
 私はゲイリーさんと一緒に、ギルドの裏にあるモンスターの解体場へと向かいます。そこには、すでにメアリーさんが解体用の革製エプロンを身につけて待っていました。
「あ、兄さんもハトミも来たね」
「メアリーさん、その腕の包帯は?」
「ああ、これ? いやね、攻撃を避けようとしたら茂みにつっこんじゃってね。枝で引っ掻いただけだから大丈夫だよ」
「そうですか。大事に至らないならなによりです」
「ハトミは心配性だね。これくらいの怪我、ハンターなら日常茶飯事だって知っているでしょう」
「それでも、怪我は無いほうが良いですよ」
 それから、私はスー兄妹が確かに討伐したのを確認したと書類に記入し、続いて持ってきた巻尺でナルガクルガの全長を測りました。
「G級になるだけあって、かなり大きいですね」
「ああ、俺とメアリーは何度かナルガクルガと戦ってきたが、もしかしたら、こいつは一番デカイやつかもしれないな」
「実際そのとおりですよ。お二人が討伐した中で最も大きな個体です」
 確実に成功してくれるハンターにクエストを斡旋しなければならない都合上、ギルドはハンターの実績を事細かく記録しており、モンスター毎に討伐した個体の最大全長と最小全長もそれに含まれているのです。
「へえ、やっぱりそうだったんだ。ねえ、ハトミ、前の最大全長よりどれくらい大きいの?」
「そうですね。前より一〇〇も大きいですよ」
 書類を確認して私はメアリーさんに答えます。
 その時、私はナルガクルガの首筋付近の毛に、何かが絡まっているのを見つけました。
「あら? これは……電光虫の死骸ですね」
 電光虫は不思議な昆虫でして、体内に電気を蓄えており、ハンターが使う狩猟道具の材料だけでなく、夜の時の光源など日常生活でも役立っています。
「おかしいな、このナルガクルガがいた場所は、電光虫が生息するような場所じゃないはずだが」
「ねえ、兄さん。ナルガクルガはもしかしたら縄張り争いに負けたかもしれなかったよね」
「ああ」
「それで、あそこは、あの時のジンオウガの縄張り近くだったよね」
 メアリーさんがその名を口にしたとき、それを聞いた私は心臓がわしづかみにされたような気分になりました。
 ジンオウガは私が住む地域で、つい最近発見されたばかりのモンスターなので、ご存じの方は少ないでしょう。
 分かっているのは電光虫と共生関係にあり、虫の発する電気を自分の攻撃に利用するくらいで、詳細な生態は未だ謎のままです。
 後になってわかったことですが、実はユクモ村にいるハンターがジンオウガを討伐し、その死体が調査されたことで、ある程度の生態が判明したのですが、この時点では情報はまだ公開されていませんでした。
「もしかして、ナルガクルガはアイツに……あのジンオウガにちょっかい出して返り討ちになったんじゃ……」
「メアリー! ハトミの前であいつの話はするな!」
 ゲイリーさんがメアリーさんを叱りつけます。兄妹仲が良いお二人ではめったにない光景です。
「ご、ごめんなさい、ハトミ」
「いえ、もう二年前の事ですから、大丈夫ですよ」
「そう? でも、顔が少し青ざめているよ」
「ナルガクルガの死臭に少しだけ当てられただけですよ。外の空気を吸ってきますね」
 そう言って、私は半ば逃げるように解体場から立ち去りました。

 その後、仕事を終えた私は、ギルドに併設されている公衆浴場で一日の疲れを癒していました。
 普段は気にしないのですが、この時ばかりは右足のふくらはぎに刻まれた大きな傷跡をみて、昔の事を考えていました。
「ハトミ、隣にいてもいいかな?」
 後ろから声をかけられて振り向くと、そこにはメアリーさんがいました。
「ええ、良いですよ。どうぞ」
「ありがとう」
 とはいえ、私はあまり話し上手な人間ではないため、メアリーさんとの間に沈黙が出来てしまいました。
「やっぱり、解体場でのこと気にしている?」
「そう……ですね。忘れようと努めても、どうしても気になってしまいます」
「そうだよね。アイツのせいでハトミはハンターを引退する事になったんだからね」
 ここまで書いて、私は自分とジンオウガにある因縁について全く記していないことを思い出しました。ですので、一旦この時の出来事を書くのを中断し、一年前の出来事について語りたいと思います。


後編へ続く

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by ginseiseki | 2011-08-29 21:48 | 二次創作小説
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