銀星石のブログ

ginseiseki.exblog.jp

銀星石のエッセイブログ

異説・PSPo2インフィニティ 第5章裏編

 ダークファルス・ディオス戦はビデオゲーム的すぎる戦闘シーンなので小説にすると不自然に感じるため、その代わりにと書いたラスボス戦がこの第5章裏編です。ただ、書き終えて冷静に読み返すと、非常に事故満足的であるため(二次創作自体が自己満足ですが、それが強すぎるのです)、読まなくても問題なくストーリーが進むおまけとして修正し、本編から切り離しました。







第5章裏編 敵役

 これはダーク・ファルスにとりつかれた鳩美が、いかにしてそれを返り討ちにしたかの物語。この酷い物語はナギサから隠さなければならない。でなければ彼女の幸福は台無しになってしまう。

 気がつくと、鳩美は真っ白い空間に立っていた。全く現実感のない場所は、まるで夢の世界のようだった。
 先程まではクロウリィの艦橋にいたはずだ。鳩美はダーク・ファルスの欠片が自分の体内に入り込んから先を覚えていなかった。
「ここはいったい……」
 その時、いつの間にか自分の背後に何者かの気配を感じた鳩美は、素早くナノトランサーからセイバーを取り出して、後ろを振り向く。
「ごきげんよう」
 女が立っていた。真っ黒いワンピースを身に付け、それと同じ色のつば広帽をかぶっている。
 そして、その女は鳩美と全く同じ顔をしていた。
「貴女の顔を借りたのだけれど、どうかしら?」
「お前は、誰だ」
 他に知り合いが全くいないので、鳩美は普段から演じている清楚な女ではなく、偽りのない素の自分で振舞う。
「私はダーク・ファルス。SEEDに性別などないけれど、今は貴女と全く同じ姿だから、とりあえず女として振舞うわ」
 不愉快だった。鳩美は自分の姿を真似ている敵にセイバーを振るう。だが、ダーク・ファルスと名乗った女は、ひらひらした服装の割には軽やかなステップで攻撃を回避した。
「まあ怖い。せっかくだからもっとお話しましょうよ」
「ふざけるな」
 鳩美はダーク・ファルスにありったけの殺気をぶつけるが、彼女はそよ風を受けている程度にしか感じていないようだった。
「残念だわ。こういうふうに振舞うのって新鮮な気分だから、もっと楽しみたかったのに」
「いい加減にしろ。私は腹が立っているんだ。お前が欠片を撒き散らしたおかげで、私はナギサという厄介事を抱え、邪悪を一人も殺せないつまらん戦いをするはめになったのだ」
 亜空間事件の時は良かった。あの時はカムハーンという上質の獲物があった。だからこそ、不愉快なことに耐えられた。しかし、ナギサと出会ってから今に至るこの事件はそれが全くなかった。苦労だけでまったく報われない。
「私の思った通りね。とても邪悪な人。欠片の状態でナギサとの会話を全部聞いていたけれど、貴女、あの娘に言った言葉は全部嘘なのでしょう?」
「当たり前だ。誰があんな言葉を本心から言うものか。馬鹿馬鹿しい。本音を言えばナギサを見捨てたかったが、それでは私の本性が露見し、今まで邪悪を殺しやすくするために善人を偽ってきた苦労が無駄になる」
「まあ酷い。その言葉を聞いたら、ナギサは泣いちゃうかもしれないわよ」
「自分の稚拙な演技が通用すると思っている人間に、私の本性は見抜けないさ。それにしても、クラッド6でナギサに剣を向けられた時は本当に腹が立った。私を前にして悪を演技するなどふざけている。その場で殺したくなる衝動をこらえるのに苦労した」
 それを聞いて、ダーク・ファルスが笑う。うふふふふと、気色悪い笑い方だ。
「私の顔でそんな笑みを浮かべるな」
「良い感じね。使命で生きる希望を諦めていたナギサとは別意味で心に闇が潜んでいる。これなら貴女の身体を乗っ取れそう。単純にSEEDとして復活するより、とても面白そうね」
「乗っとるだと?」
「そうよ。貴女はとても邪悪な人間。だから、私は入り込めたの。ここは貴女の精神世界だから、この場所で貴女を倒せば、肉体を乗っ取れるわ」
「やらせると思うのか?」
「やってみなければわからないでしょう?」
 ダーク・ファルスも鳩美と同じようにセイバーを取り出す。SEEDの肉体で造っているような禍々しい外見だ。
「さあ、始めましょう」
 鳩美は答えず、無言のままダーク・ファルスにセイバーを振り下ろす。狙うは、その不愉快な笑みを浮かべる顔だ。
 だが、攻撃は防御された。刃同士がぶつかり合う硬い音が鳴る。
 鳩美は素早く次の攻撃を繰り出す。胴を狙って払うように斬ろうとするが、相手が後ろに下がったために当たらなかった。
 今度はダーク・ファルスが攻撃してきた。体重を載せた突きを繰り出してくる。喉を狙っているが分かった鳩美は、上体を横にそらして避けた。
 突きを繰り出した後で、ダーク・ファルスの腕が伸びきっている。鳩美はそこを狙ってセイバーを振るうが、相手もそれを承知していたのか、素早く腕を引っ込めた。
 動きが少し読まれている。一度間合いをとったほうがいい。そう判断した鳩美は、ダーク・ファルスと距離を取った。
「どうして動きが読まれているのか不思議って顔ね」
 全てを知っているというダーク・ファルスの顔が憎らしかった。それが自分と同じ顔ならばなおさらだ。
「そんなに睨まないで。怖いじゃない」
 鳩美はダーク・ファルスの言葉が白々しく聞こえた。SEEDが人と同じ恐怖心を持っているとは考えにくい。
「私はナギサの中でアナタの技術をずっと見ていた。だからある程度は動きを読むことができるのよ。私がこうして人間の武器を使って戦えるのもそのお陰」
 なるほど、と鳩美は思った。だが、しょせん化け物が人間のモノマネをしているだけだ。いずれぼろが出る。
 鳩美はセイバーの刃を水平にして突きを繰り出す。ダーク・ファルスはぎりぎりのところで回避したが、すかさず横薙ぎの攻撃に派生させる。
 そこで初めてダーク・ファルスは焦った表情をする。強引に体を動かして鳩美の攻撃を避けるが、バランスを崩して片膝をついた。
 チャンスだ。鳩美は攻め続ける機会であると判断する。ダーク・ファルスの脳天を目がけてセイバーを振り下ろす。
 刃のぶつかる音が再び精神世界に鳴り響く。ぎりぎりのところで防御されてしまった。思ったよりしぶとい。鳩美はダーク・ファルスがより憎らしくなった。
 ダーク・ファルスがニヤリと笑った。嫌な予感がした鳩美は素早く離れようとするが、敵が手から放った火炎弾が左肩に命中した。
 しくじった。相手は人の姿をしてもSEEDなのだ。道具も使わずに攻撃テクニックを使う可能性は十分に考えられるのに。鳩美は油断した自分を強く恥じた。
「あら残念。なかなか良い手だと思ったのに」
「……そういう考えは往々にして自惚れだ。だからしくじったのだ」
 攻撃を受けた箇所から激痛が絶え間なく伝わってくるが、鳩美はそれを強い精神力で抑えこんで表情に出さない。それで怪我がどうなるというわけではないが、どんな形であっても敵に弱みを見せるのは好ましくない。
 左腕の肘から先は問題なく動き、使えないこともないが、肩が使い物にならなければ意味が無い。実質、腕が一本失ったようなものだ。確実に不利な状況だ。良く考えて戦わなければならない。
 ダーク・ファルスがより一層の邪悪な笑みを浮かべて斬りかかってくる。つめが甘いので防御することはできるが、怪我を抱えている身では、相手が隙を見せてもなかなか反撃できない。
 回復テクニックで治療出来れば良いのだが、そのためには武器を交換する必要があった。ダーク・ファルスもそれを知っているのか、鳩美に余裕を与えないよう、絶え間なく攻撃を続ける。
「ほらほら、どうしたの? 守っているだけでは勝てないわよ」
 安っぽい挑発を黙らせることが出来ないのが悔しかった。せめて左腕が無事ならと鳩美は思う。
 いや待て。鳩美は自分がいつの間にか怪我を庇いながら動いているのに気がつく。ダーク・ファルスのそれを狙って攻撃していた。
 使えないのならば、大事にする必要はない。鳩美は考えを変える。
 ダーク・ファルスが左肩を狙った袈裟切りを繰り出してきた。直前までならば防御していたが、鳩美はあえてそれをせず、それどころか相手の攻撃に対して無防備になった。
 刃が肉を切るが、骨に到達した時点で止まる。相手の武器が禍々しいデザインなだけの普通の剣で助かった。もし通常のセイバーと同じように、フォトンエネルギーを刀身に伝導させていたら、抵抗なく体を切断させられていたところだろう。
 予想外の行動にダーク・ファルスが驚きの表情を浮かべる。そして、動きも止まる。唯一無二の機会が訪れた。それをはっきりと自覚した瞬間に、鳩美は傷の痛みを忘れた。だたそれを行うためだけに、無心の状態となる。
 相手の心臓めがけてセイバーを突き刺す。鳩美は肉を斬らせて骨でダーク・ファルスの動きを止めたが、その逆は成立しない。フォトンエネルギーの光を放つ刃は、するりと体を貫く。
 ダーク・ファルスは持っていた武器をその場に落とし、数歩後ろによろめき、立っている力を失ってその場に膝を付く。
 力尽きる前兆だろうか。ダーク・ファルスの体は、手や足の末端部分から砂鉄のような物質に変化して、ゆっくりではあるが崩れ始めた。
「どうやら、今回も勝てなかったようね。私は敵役なのだから、負けるのも……まあ役割だと思って受け入れましょう。また頑張ればいいだけ」
「まるで次の機会があるかのような口ぶりだな」
「ええ、そのとおりよ。もしかしたら、次は私ではないかもしれないけれどね」
「どういう意味だ」
「この世界は敵役が生まれやすい。考えてごらんなさい、エンヴォルト・マガシに始まって、ヘルガ・ノイマン、カール・フリードリヒ・ハウザー、太陽王カムハーン、そして私。グラールでは短期間にこれほどまでの敵役が現れた。世界そのものにそのような傾向が含まれていると言っても、あながち間違いには聞こえないでしょう? あるいは、ここよりも格上の世界があると仮定して、そこ住む人達が求めたのかもしれない。英雄譚というエンターテイメントをね」
「妄想だ」
「ええ、そうでしょうね。言った私だってそう思う。でも、そういう風に解釈できる出来事があったのは、紛れもない事実よ」
 すでにダーク・ファルスの肉体の崩壊は大きく進み、その半身が崩れ落ちている。
「そろそろ……時間のようね。私の出番はこれで終わりだけど、覚えておきなさい。私が二度と登場しないという保証はどこにもないし、また新しい敵役が現れる可能性だって十分にあるわ」
「別に構わないさ。正義はかならず勝つ」
「嘘つき。悪党専門の殺人鬼が、そんなことを本気で考えているわけ無いでしょう」
 鳩美はダーク・ファルスの言葉を肯定する意味として、とびきり邪悪に微笑んだ。
「じゃあ、敵役らしく、最後に負け惜しみの一つでも言いましょう。そうね、『正義は必ず勝つ』という言葉に対して、私はこう言いましょう」
 ダーク・ファルスが鳩美と同じ顔で不敵な笑みを作る。
「敵役は、永遠に不滅よ!」
 そして、ダーク・ファルスは完全に崩れ落ちる。そして、黒い砂は渦を巻いて、天へと登っていった。
「敵役か……次はもっと殺した時が気持ち良い相手であるのを願うよ」
 自分の精神世界から出て行くダーク・ファルスを見上げながら、鳩美はそうつぶやいた。



第5章裏編補足
 これまでの本作のオリジナル要素は、劇中の場面を小説という媒体に合わせたり、私が個人的に不自然と感じた部分の修正という形でしたが、この裏編は完全なオリジナルであり、読み手によっては「不愉快な改悪」と反発される危険すらある内容です。
 裏編は「ナギサ視点の二次創作ノベライズだが、鳩美が主人公しているシーンも欲しい」という動機で書き、私自身の気持ち悪い自己満足であることは重々承知しておりますので、こうして読まなくてもストーリーは問題なく進むようにしました。
 「ならば公開するな」と言われるでしょうが、せっかく書いたので例え自己満足であったとしても、誰の目にも触れないままにするのは勿体無いと感じたのです。二次創作は基本的に作り手の趣味ですから。

[PR]
by ginseiseki | 2011-04-07 22:48 | 二次創作小説
ブログトップ