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銀星石のブログ

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銀星石のエッセイブログ

異説・PSPo2インフィニティ 第5章

 ナギサ視点でエピソード2をノベライズして感じたのですが、やはりこの物語の真の主人公はナギサであるということです。中途半端にプレイヤーキャラを主人公にして、結局は存在感を空気にしてしまうくらいならば、始めから傍観者に徹したほうが良いかもしれません。







第5章 私の人生の物語

 気がつくとナギサは知らない場所にいた。
「……ここ、は」
 自分の置かれた状況を把握するため、まずは周囲を見渡す。
 何かの建造物の内部にいる。大型船の艦橋のような場所だ。内装は神聖さや荘厳さを重視して作られている。
 近くにはワイナールがいた。彼はなにかの機械端末を操作している最中だったが、ナギサが目覚めたのに気がつくと、こちらを振り向く。
「目がさめたかい、ナギサちゃん」
「ここはどこだ」
「聖櫃クロウリィの制御をする部屋さ。あの後、クラッド6から転送してきたんだ。どうやったかはナギサちゃんに話しても理解出来ないだろうし、割愛するよ」
 ナギサは立ち上がろうとする。しかし、強い苦痛を感じ、意識を保つのだ精一杯だった。
「いやー、それにしてもうまくいったもんだ。だいたいぼくの計画通りに進んでるよ。ありがとう、ナギサちゃん」
「ワイナール……お前っ……!」
「すごんでも無駄無駄。身体の中のそいつを鎮めるので精一杯なんだろ? わかるよー、欠片一個持っているだけでも、かなり辛かったからねー」
 彼の言うとおりだった。これまで回収してきた欠片が一つとなり、ダーク・ファルスが外に出ようと暴れている。ナギサは少しも気を緩めることが出来なかった。
「お前……ダーク・ファルスを復活させようとでもいうのか!」
「当たらずとも遠からず、かな。ダーク・ファルスが復活しそうにならないと、クロウリィも起動しないからね。すべては、このための布石さ」
 ワイナールが邪悪そうな笑みを浮かべる。旧文明の王、カムハーンは世界を支配するために動いたと聞く。まさか、彼も同じなのか。世界を守ろうとしたつもりが、逆に破滅の片棒を担いでしまったのかと、ナギサは心がくじけそうになる。
 ダーク・ファルスはまだ復活していない。ならば、いっそのこと……
「おっと、自害とかそういうこと考えちゃダメだよ? 心が負けた瞬間に、すべて乗っ取られちゃうからね。せいぜい、限界まで頑張ってこらえるといい。みんなを守りたいのならね」
 ナギサは一瞬考えそうになったことを、ワイナールに釘を刺された。
「ダーク・ファルスを復活させて、どうするつもりだ……! 何を……する気なんだ!」
 ナギサの言葉に、答えが分かりきっていることを質問されたかのように、ワイナールは呆れた表情をする。
「あのさあ、ナギサちゃん。何度もいってるじゃないか。ぼくの目的は、最初から何も変わっちゃいない」
「最初から変わっていない?」
「まあ、わからないならそれでいいさ。さて、そろそろ鳩美達が来る。ここに来る前に言っておいたんだ。クロウリィはクラッド6と衝突コースと進んでいるから、止めたければ此処に来るようにってね」
「なんだと!」
「彼女、結構優しい性格だろう? GRMの施設で初めて会ったときはともかく、ナギサちゃんが剣を向けても、全然戦おうとしなかった。こうでもしないと本気になってくれない」
 ナギサはワイナールに違和感を持った。例えば、ダーク・ファルスとクロウリィを使って、世界を支配したいと考えるならば、わざわざ野望が頓挫するような可能性を自ら作るのはおかしい。
「お前、やっぱり世界の支配とかそんなのは考えていないのか」
「そうだよ」
 ワイナールは先程までの邪悪な表情を消してそれを認めた。やはり、演技だったのだ。
「ナギサちゃんのやり方じゃ、彼女は絶対に戦ってくれない。絶対に戦わなければならない必要性を作らなきゃ駄目だよ」
「そうか……世話をかけたな……」
「これで舞台は整った。あとはダーク・ファルスを倒すだけだ」
「そうだな。ここで、私がダーク・ファルスごと鳩美に倒されれば、全てが終わる」
 その時、クロウリィ制御室の扉が開き、鳩美が姿を表した。
「おや、鳩美ひとりかい?」
 ワイナールがおどけた調子で鳩美に訪ね、悪役を演技する。
「他の皆さんはクロウリィの各所で現れたSEEDの卵を駆除しています」
 もうそこまで事態が悪化してしまったのかと、ナギサは驚いた。もはや一刻の猶予もない。
「鳩美……! 迷うな! 早く、私を……!」
「ナギサさん、貴女は何を求めていますか?」
「私ごとダーク・ファルスを倒して……世界を……すくってくれ」
「お断りします」
「鳩美!? なぜ!」
「理由はおわかりでしょう?」
 まさか、この期に及んで自分を助けようとしているのか。
「そんな……無理だ……無理なんだ……私を助けるなんて、そんなことは……!」
 そうだ。そんな都合のいい話なんてどこにもない。だからこそ自分が命を投げ出さなければならない。自分一人が死ねば、それで世界が救われるならば、ナギサは喜んで受け入れるつもりだ。
「なんで無理って決め付けるんだ、ナギサちゃん」
「ワイ……ナール?」
 自分が鳩美に殺されるお膳立てをしてくれたはずのワイナールが、突然正反対のことを言い出し、ナギサは困惑する。
「素直になりなよ。もういんだよ。きみは、いままでずっと、すっごく頑張ってきた。だから、もう我慢しなくていんだよ」
 ワイナールの言葉に、ナギサは自分の本心を縛っていた鎖がほどけていくのを感じた。
「もう一度聞くよ、ナギサちゃん。きみは、何をしたいんだ」
 義務や使命ではない、自分が望む行ない。それが許されるのであれば、受け取っても良い権利であるならば。ナギサが駄目だ駄目だと否定し続けた本音が、大きくふくれあがっていく。
「……のは……いやだ……私は……まだ……もっと……みんなと一緒に……」
「ナギサさん、もう一度お尋ねします。貴女は何を求めていますか?」
 今、鳩美にしてほしいこと。それは……
「私は……」
「そうだ、ナギサちゃん! ちゃんと言うんだ、その口で言え! きみの本当の望みは、なんだ!」
 楽しいことがあるとやっとわかっった。自分は使命をはたす機械などではない。もっと、人生というものを深く楽しみたい。心からの喜びを味わいたい。
「私は、生きたい……! まだ、生きていたい!」
 ナギサは完全に自分の本心を受け入れ、それを口にした。
「そう! その言葉を、待っていたッ!」
 ワイナールが叫んだ瞬間、ナギサは自分の中にいるダーク・ファルスが抜けだしていくのを感じた。
「そぉらっ、ダーク・ファルス! 希望を持ったヒトの中は居づらいだろう! 欠片に引っ張られて、こっちにこいっ!」
 ナギサの中から闇そのものとしか形容できない、真っ黒な何かが抜けだしていき、それがワイナールへと移っていく。
「わ、ワイナール! お前、何をしているんだ!」
「見ての……通りだよ。すべての欠片を、ぼくに集めてる……ダーク・ファルスは希望とか、生きる意志とか、そういう類のが大っ嫌いみたいでね……! こうすれば必ず、こっちに来ると踏んでいた……っ!」
 ナギサは、自分の中から次々と欠片が抜けていくのを感じた。これまでの苦痛が、溶けるように消えていく。
「しかし、こりゃきっついね……!」
 ワイナールが苦痛に顔をしかめる。肉体があれば脂汗をながしていたかもしれない。
「ワイナールさん!」
 鳩美が心配そうな声を上げる。
「大丈夫だ、鳩美。ナギサちゃんはこの苦しみにたった一人、ずっと一人で耐えてきたんだ……! このぐらいで音を上げるわけにはいかないよねえ! ずっと、この瞬間を待っていたんだから」
「ワイナール……! お前、まさか……最初からそれを!?」
「何度言わせるかな、ナギサちゃん。ぼくの目的は、最初から変わってないって。きみを幸せにする。それが、ぼくの目的だ! ナギサちゃんが、幸せになれるように……それだけのことを考えてきた!」
「だ、だったら何故……最初からそうだと……!」
「こんなこっぱずかしい目的を言えって? やーだよ、恥ずかしすぎて死んじゃうじゃん……鳩美には最初からバレバレだったみたいだけどね」
 ワイナールは欠片を集める苦痛に耐えながら、恥ずかしそうに笑う。
「ワイナールさん、最初から正直におっしゃってくれれば、私は協力しました」
 ナギサは、クラッド6で鳩美が失望した理由が分かった。そんな意地をはらずに素直に助けを求めて欲しかったからだったのだ。
「はは……ごめんよお……ぼくも男だからね、どうしても意地を張っちゃんだ」
 その時、ワイナールがより強く苦しむようになった。もはや照れ隠しの笑みを浮かべる余裕すらない。
「ま、まずい……抑えきれない! くそ……あと……少しなのに……! だ、駄目だ!」
 ワイナールが闇となった欠片を吸収するのに失敗した。それらは彼の外へと戻ってしまう。そして、次の瞬間、闇は全て鳩美ほうへと向かっていった。
「えっ!?」
 誰もが全く予想していなかった。あっけに取られる間に、全ての欠片が鳩美の中へと入っていった。
「鳩美!」
 ナギサが叫ぶ。しかし彼女は返事をしなかった。ただ無言で、その場に倒れる。
「鳩美! 目を覚ましてくれ、鳩美!」
 ナギサは鳩美の体を揺さぶる。普通の人間が欠片を取り込んだ場合、何が起こるか分からない。もしかしたら死ぬかもしれない。その可能性が頭をよぎったとき、たまらなく恐ろしくなった。
「だ、大丈夫です、ナギサさん」
「鳩美! 良かった目が覚めて……」
「それよりも、早く離れて……ダーク・ファルスが出てきます」
 その直後、彼女の体から闇が外へと出てきた。
「鳩美、これは一体」
「ダーク・ファルスは私の体を乗っ取ろうとしました。私は精神世界で戦い、なんとか弱らせる事ができましたが……今は体を動かせそうにありません。後は……お任せします」
 そう言った後、鳩美は再び気を失った。
「ようし! こんどこそ逃さないぞ!」
 鳩美から出てきた闇をワイナールがもう一度取り込もうとする。
「聖櫃クロウリィ……これ、誰の棺だと思う? お前だよ、ダーク・ファルス……お前のだ。ぼくが一生涯掛けて作り上げた、お前の棺だ! どこにも逃さねえよ……逃しはしない……お前は、ぼくが捕まえた! ダーク・ファルスだかなんだか知らねえけどな! あんまり、ヒトさまをなめるんじゃねえ!」
 ワイナールはダーク・ファルスを完全に自分の中に押し込もうとするが、敵も最後の力を振り絞って必死で抵抗しているようだった。
「弱っているけど……往生際が悪い奴だ。さあ、ナギサちゃん、最後の仕上げだ。君の剣でぼくを貫くんだ!」
「しかし、それではお前が……!」
「ぼくたち旧文明人は滅ぶべくして滅んだ。だから、未来は次代に託すべきなんだ」
「ワイナール……」
「なんてね。これ、ぼくの姉さんの受け売り。ダーク・ファルスも、この聖櫃クロウリィも、滅ぶべくして滅んだ世代の、残りカスさ。だったら、すべてなくなるほうがいんだ。それに、ぼくもそろそろ嘘をつくのに飽きてきちゃったんだよね。ほら、今なんか、本当の事しか言ってないでしょ?」
「減らず口を……」
 それが無理をしていっているのをナギサは分かっていた。彼は自分に決意させるために……それを行う罪悪感を少しでも薄めるために言ってくれているのだ。
「それに、愛しいヒトの手の中で、ってのがぼくの人生設計の最後なんだ。少し予定とは違っちゃったけどね。今こそ、その願い、叶えてくれないかな」
「ああ、分かった。任せておけ、ワイナール」
 本当にいいのか? もう一人の自分がささやいてきた。だが、ナギサは断固とした意思を持っていた。良いも悪いもない。一辺の迷いすら必要ない。これこそが「私」と「彼」の望みなのだ。
 ナギサはソードをナノトランサーから取り出す。
「行くぞ、ワイナール」
「ああ、一思いにやってくれ」
 ナギサは刃を彼の胸に突き立てた。
 その瞬間、目の前が真っ白になる。ナギサは心の世界に入り込んでいた。
 誰もいなかった。ナギサは心細くなる。
「よかった、よかったよ……やっと、守ることができたんだ、ぼくは」
 気がつけば、目の前にワイナールがいた。ナギサは彼の姿を見て安心する。
「ワイナール、質問だ。お前はどうして、私にここまでしてくれたんだ?」
「ナギサちゃん、かわいいからさ」
「真面目に聞いている」
「真面目な話さ。かわいい子を守りたくなるのは、男して当たり前のことなんだよ?」
 ああ、そうだった。ナギサは思い出す。彼は根や優しく誠実で、でもそれを他人に悟られるのを恥ずかしがっているから、こうやって少しふざけた態度をするのだ。。
「それに、笑うともっとかわいくなるなあって思ってさ。そしたらもう、助けることしか考えられなかった」
 笑うとかわいい。前は何を馬鹿なことをと思っていた言葉だが、今はとても嬉しかった。
「それにしても、ようやくだ。ようやく、たったひとりだけど、守り通せた。こんなにうれしいことはないとお思う」
 ワイナールが言う「ようやく」という言葉。彼は自分の過去を殆ど話さなかったが、もしかしたら、誰かを守りきれなかった苦い思い出があるのかもしれない。
「そうか……お前も、自分の使命を果たせたということか」
「そういうこと」
「だったら、笑え」
 例えば、鳩美は誰かから笑みを向けられると、必ずと言っていいほど微笑み返した。笑顔とは連鎖するものなのだ。だから、彼が笑ってくれれば、自分も自然と笑みを浮かべられるだろうとナギサは思った。
「そういうナギサちゃんこそ、笑ってよ」
 だがワイナールは笑わなかった。自力で笑って欲しいと言われているような気がした。だから、ナギサは笑みを浮かべようとしたが、慣れない事なので頬が固まってしまい、上手く表情を作れない。
「さーて、そろそろ行くかな」
「もう行くのか?」
「もう十分だよ。この身体になってからも、色々と美味しい目をみせてもらっちゃったしね。というか、これ以上ナギサちゃんの面倒は見たくないんだよね。文字通りめんどうだから」
「それはいい。私もうんざりしていたところだ」
 違う。そうではない。彼に言いたい言葉がちゃんとあるのに、ナギサは思っていもいない事を口にしてしまった。
「それじゃあね、ナギサちゃん」
「ああ」
「なんだよー、最後に涙くらいみせてくれないの?」
「私にそういう情緒を求めるな」
「ちぇっ、けーち」
 本当は彼と分かれるのが辛かった。涙が流れそうだった。しかし、ナギサは聞き分けのない子供のように泣いてはならないと思っていた。なぜならば、これが最良なのだから。
「元気でね。ぼくの愛しのナギサちゃん」
「ああ」
「悲しくない?」
「ああ」
 本当は悲しい。
「寂しくない」
「ああ」
 寂しいに決まっている。
「一人で大丈夫?」
「いいからさっさと行け」
 もう大丈夫だと彼が安心して行けるために、ナギサは気丈に言った。
「はーいはい。それじゃさよなら、ナギサちゃん」
 さよなら。その言葉を聞いた瞬間に、ナギサは自分の感情を支えきれなくなってしまった。自然と涙が流れた。
 その時、優しい手のひらで頭をなでられた。ワイナールの手だ。
「まったく、最後の最後まで手のかかる子だね、きみは」
 頭をなでられるだけで、ナギサは不思議と安らかな気持ちになった。今まで自分を見守ってくれた温かみがそうさせてくれるのだろう。血のつながりはないが、彼は家族と対等の価値を持つ人物だった。
「楽しく生きてね、ナギサちゃん。きみの人生の物語は、ここからだよ」
 いまだ涙は流れ続けているが、ナギサの中でその意味はすでに変わっている。自分をこんなにも大切に想ってくれる人がいる喜びで涙が流れていた。
「……ありがとう」
 ようやくナギサは笑顔を浮かべることが出来た。そして、それを見たワイナールは安心して消えた。

 その後、クロウリィが外宇宙へ旅立つのを見届けたナギサは、鳩美達のもとから去って旅に出た。これまでの旅路を、ずっと辿るように。
 目的はふたつ。ひとつは、今まで見逃してきてしまった、グラール中の美しいものを見るため。
 もうひとつは、嘘を暴くためだった。
 ワイナールは何度もナギサに嘘をついてからかってきた。だから、彼の言うことを信じない。さよならという言葉も、きっと嘘だろうと思った。
 ナギサは自分が頑固だと考えた。諦めの悪さも、今回で学んだ。諦めなければ、願いは叶うのだ。自分が、今を生きているように。
 ナギサは、ワイナールと初めてであったレリクスにいた。そこはあの時から全く同じだったが、人生観が変わった今では、少し違った印象を受けた。
 お前はいるはずだ。この日この時、お前はは必ずここに。ナギサは彼と交わしたあの約束を思い出す。

「ナギサちゃん、きみって誕生日いつ?」
「誕生日、なんだそれは?」
「そこからスタートなんだね……その様子だと、日にちなんて覚えてないよね。それじゃあ、ぼくたちが出会った日を、きみの誕生日にしようか」

 ワイナールと出会った日。それは今日だった。誕生日には毎年必ずここに来ようと、約束していたのだ。
 だが、薄ら寒いレリクスの隅々を探しても、彼の姿は見つからなかった。
「毎年誕生日を祝ってくれる。やはりあれも、嘘だったんだな……」
 そもそも、あの状況で彼が再び自分の前に現れると考えたのが間違えだったのだ。そう思ったナギサはがっくりと肩を落とす。
「嘘じゃありませんよ」
 柔らかい女性の声に、ナギサははっと後ろを振り向く。
「鳩美、それに皆も!? どうしてここに?」
 そこには鳩美と初めとして、これまで出会ってきた全ての人達がいた。
「私の個人コンピュータに残されていたのです。今日の日付と、ここの場所と、そしてお願いが」
 ナギサはクロウリィが動き出す前に、ワイナールが鳩美のコンピュータで何かしていたのを思い出した。
「こちらを。ナギサさん宛の手紙です」
 ナギサは鳩美からタブレット型コンピュータを受け取る。そこには、彼からのメッセージが記されていた。

 やあ、ナギサちゃん。これを読んでいるということは、おそらく全部が上手く行ったんだと思う。
 この日をきみの誕生日にしようと決めた時の事を覚えているかな。きみは誕生日プレゼントは何が欲しいと僕が聞いても、何もいらないといったね。きれいな服とか、きらびやかな宝石に興味を示さなかった。
 ぼくが物以外になにかないかと聞いたらきみはこう言ったね。友達が欲しいと。
 ぼくは科学者としてはそれなりの才能があると自負しているけれど、さすがに友達は作れない。それに、例え出来たとしても、友達は他人から与えられるようなものじゃない。
 護衛を雇おうとぼくが言い出したのは、人と人との交流を知るきっかけを作るためでもあったんだ。いろんな人と交われば、自然と友達ができるからね。
 あの時、ぼくはきっと何とかするよと言った。ナギサちゃんは嘘だと言ったけれど、きみを幸せにするためなら、ぼくはなんだってやり遂げてみせるよ。
 この手紙を読んでいるナギサちゃんなら、ぼくの言葉が嘘じゃないと分かってくれるはずだ。
 その場にぼくがいなくても、ぼくはきみを祝っている。
 誕生日。おめでとう。

 タブレット型コンピュータの画面に、涙が落ちた。
「ああ、そうだな、ワイナール。お前は、嘘つきなんかじゃなかった」
 多くの友人に囲まれたナギサは、幸福感で胸がいっぱいになり、これを与えてくれた彼に深く感謝した。
「ありがとう。ワイナール」



第5章補足

クロウリィのシーンでエミリア、シズル、ユートがいない
 本作では、クロウリィ最深部のシーンでこの三人が登場しなかったのは、第4章のバスクとクノーが出なかったのと同じ理由です。
 この場面はほとんどがナギサとワイナールの台詞で進行し、他のキャラはほとんどしゃべりません。シズルにいたっては完全に無言です。ですから話の流れを少しでもスムーズにするために、私が描写可能な人数までキャラを削減しました。

ダークファルス・ディオス戦がない
 PSPo2:EP2のラスボス戦は、非常にビデオゲーム的な戦闘シーンであるため、文章で表現すると不自然な感じなると思い、思い切ってカットしました。

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by ginseiseki | 2011-04-06 21:54 | 二次創作小説
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