「ほっ」と。キャンペーン

銀星石のブログ

ginseiseki.exblog.jp

銀星石のエッセイブログ

異説・PSPo2インフィニティ 第4章Act2

 第4章Act2はAct1よりも短いです。前後編の分量はなるべく均等にしたほうが良いかもしれませんが、話の区切りの良さを優先しました。







 ナギサは夢を見ていた。過去の体験の夢だ。
「ナギサちゃん。もうちょっと休んだほうがいいよ」
「大丈夫だ。それより、まだ六十一個だ。早く次のを集めないと……」
「そんなふらふらな足取りでどこ行くのさ? ほら、いいから落ち着いてそこに座る」
 ワイナールに言われ、ナギサはしぶしぶ近くにあった岩に座る。
「そんな不満そうな顔を向けてもダメだよ。休む時は休む、進む時は進む。そいういう判断はぼくに任せるって決めたでしょ」
 欠片を集め始めた頃のナギサは、何度も無茶をしてワイナールに心配をかけていた。
「あーあー、もったいないなあ。あちこち泥まみれだし、せっかくの綺麗な髪もぼさぼさで、オバケみたいになってる」
「動くには問題ない」
「活動するには大問題だよ。誰かに見つかったら通報されるレベルだからね」
 この時のナギサは、では誰にも見つからないようにすれば大丈夫だろうと考えていた。
「ナギサちゃんがどんなに一人で寂しがってても、ぼくは近くで喋ることしかできない。いやはや、情けなくて泣きたくなるよ」
「なぜ泣きたくなるんだ? べつに私は寂しくなんてないぞ。それに今はワイナールがいつでも一緒だ。私が一人で寂しがる暇もないじゃないか」
「あ、そーですか。そいつは光栄なことで」
「だからワイナール。お前はずっと喋っていろ。そのほうが、私も楽しい。ああ、できるなら、私が忘れてしまっても問題ない会話がいいな。そのほうが気楽に話せる」
「うーん、そりゃまた難しい注文だね。そうだな……ナギサちゃん、すっごく美人だねー」
「それは嘘だろう」
「嘘いったつもりはないんだけどなあ……」
 ワイナールは自分の言葉を即座に嘘を呼ばれて、少し傷ついた表情をする。しかし、彼がこの程度で傷つくようなメンタルを持っていないのをナギサは知っていた。
「じゃあ、これは知ってるかな? 世間一般で言われる美人のほんとうの意味」
「本当の意味? そんなものがあるのか?」
「そうだよ。美人の本当の意味はね……」

 そこでナギサは目を覚ました。いつもの、鳩美の部屋にあるベッドの上で寝ていた。
 周囲を見渡すが、鳩美の姿はない。海岸区画で起こった騒動の後始末で忙しいのかもしれない。
「また……何か忘れたのか……」
 欠片を回収した後に眠ると、夢をみるのだがその内容は全く覚えてない。それはナギサの記憶が失われたサインだ。
 記憶の欠落は欠片を回収した副作用だ。だから、ナギサは自分の両親の顔や、どこで生まれて、どう過ごしたのかも覚えていない。名乗っている名前すら本当のものかも怪しい。
 だが、次々と記憶が消えても、使命だけは覚えていた。それが自分の人格を自覚出来る唯一の証明書なのだ。
 ナギサは自分の記憶を確認する。鳩美と出会ってから今までの記憶はどれも失われていない。それだけは安心する。自分が最も幸福であった時間だけは忘れたくなかった。
「ワイナール? ワイナールはどこに行った?」
 いつもそばにいるはずなのに姿が見えない。ナギサは彼を呼んだ。
「はーい、呼んだかな、ナギサちゃん」
 ワイナールは鳩美の部屋にある個人用コンピュータから出てきた。
「なぜそこから出てくる」
「ちょっと調べものをさせてもらっててね」
 実体の無いワイナールは、コンピュータに取り付いて、入力機器無しで操作できるのを、ナギサは思い出す。
「それより、ナギサちゃんは大丈夫?」
「体調は問題ない。気力も充実している。忘れたくない記憶も無事だ……行くぞ、ワイナール」
 わずかだが、はっきりとした沈黙が二人の間に流れた。
「……せっかちだねえ。もう少しのんびりしていけばいいのに……ナギサちゃん、本当にいいのかい?」
「ああ、覚悟はできている」
「そんなに焦らなくてもいいんじゃないの?」
「ワイナール、お前も感じているんだろう。この、私の内から沸き起こる胎動を」
 後一つと思っていたが、実際はもうこれ以上回収する必要がないという、奇妙な確信があった。体内から感じる欠片の気配も、完全に一つであり、どこもかけていない。
「全部で一〇八個じゃなかったけ。揃えなくていいの? 大丈夫なの? まだもうちょっと探していてからでも……」
 彼も分かっているはずなのに、物事を先延ばしにしようとしていた。
「この感覚は本物だ。あるいは、私自身の体が、一〇八個目の欠片だったのかもしれない」
「で、でも……! ナギサちゃんはさ……それでいいの?」
「確かに、皆に優しくしてもらったからな。すこし残念な気持ちはある。だけど、これは私にしか出来ないことで、これこそが、私の本懐なのだから……迷いは、ない」
 未練を持ってしまう前に使命を果たしたいのが本音だ。だが、それはワイナールには言わなかった。
「……ほんと、最初から最後まで頑固な子だよ、きみはさ」
 いつも助言や忠告してくれ、なんだかんだ言いつつも、常に味方で在り続けてくれたワイナール。記憶は失っているが、兄や父といった人物はこのような感じなのだろうとナギサは思った。
「さあ……行こう。これが、私の戦いなのだから……」
 ナギサは部屋を出る。そして、鳩美を探して歩きまわる。使命を果たすにはどうしても彼女が必要だからだ。
 リトルウィングがある場所まで行くと、ちょうど鳩美が事務所の入口から出てくる所だった。
 ナギサは周囲を確認する。リトルウィングの前は円形の広場になっている。ここならば大丈夫だろうと判断した。
「あら、ナギサさん。もうお体はよろしいのですか?」
「ああ、もう大丈夫だ」
「私はこれから食事に行こうと思うのですが、ナギサさんもご一緒にいかがですか?」
「いや、私は行けない」
「なにか用事でも?」
「……そうだ、とても大事な用事がある」
 ナギサはナノトランサーからソードを取り出して、その切っ先を鳩美に向ける。近くにいたクラッド6の観光客がその様子を見て悲鳴を上げ、騒ぎが一気に広がる。
「……何をしているのですか」
「欠片は十分に集まった。お前はもう用済みだ。だから始末する」
「もしかして、実はナギサさんは悪党で、自分の悪事のために私を利用していた、とでもおっしゃるつもりですか」
「……そうだ。私は最初から、このつもりで動いていた。貴女と刃を交えた、その時からだ」
「それは本気ですか?」
「くどい! 武器を取れ、鳩美! 私は大罪人で、貴女は断罪者だ! ならばその刃で、私の命を刈り取ってみせろ!」
 その時、鳩美はつまらない脚本を大根役者が演じている映画を見ているかのような顔をした。ひどくがっかりしているのがはっきりと伝わってくる。
「どうした。早く戦え!」
 ナギサは鳩美を挑発するが、彼女は深い溜息をつくだけだった。まるで、面倒な仕事を処理しなければならないといった雰囲気だ。
 いつも微笑んでいた彼女がこんな顔を見せるのは初めてだ。おそらく、いや、確実にこちらの意図を理解されてしまっている。ナギサは焦った。
「ならば、お前以外の者を斬るぞ! 無関係な人間を傷つけたいのか!」
「……」
 鳩美は何も答えず、無言でナギサを見る。普段からは信じられないくらい無表情で、冷たい目をしていた。
「なぜだ、なぜ戦わない! 構えろ鳩美! 私と戦え!」
 だが、何度言っても鳩美は戦う素振りを見せなかった。ただ、失望した眼を向けるだけだ。
「あー、もう、まだるっこいなあ! やめやめ! こんな茶番はおしまーい!」
 突然、ワイナールがナギサから出てきた。
「ワイナール?」
「ナギサちゃん、君はツメが甘い。そんなやりかたじゃ上手くいくはずないじゃないか。だからさ……ぼくがもっとわかりやすくしてあげよう」
 ワイナールがナギサに向かって人差し指を向ける。その直後、欠片を吸収したときと同じ苦痛が現れた。
「うっ……! ワイナール、何を……?」
「ナギサちゃんの身体の中の欠片を刺激したのさ。ぼくの中にある最後の欠片でね」
「お前が、欠片を……? いつ、そんなものを……!」
 ワイナールとは常に行動を共にしている。ナギサは彼が自分の知らない欠片を手に入れる機会などないと思ったが、ひとつだけ可能性があるのを思い出す。
「そうか、あの雪山のときの……!」
 はっきりと察知しながら突然気配が消えたあの欠片。ワイナールが吸収していたのだ。
「そういうこと。欠片が自然となくなるわけないじゃん。ちょっと短絡すぎるよ、ナギサちゃん」
 ワイナールが小馬鹿にしたような顔をする。
「さて、これで放っておいてもダーク・ファルスさんが復活するんだけど、なんか、これじゃパッとしないね。それじゃあ、もうひとつ取っておきを出しちゃおうか! さあて、モニターにご注目!」
 ワイナールが広場の上にある、広告を放送するための大型モニターを指さす。すると、新しい香水について広告していた映像が突如別のものに変わる。
 写しているのはパルムの平原らしき場所だった。一見すると何の変哲もないように見えるが、激しい地鳴りを響かせながら、地下から巨大な何かが浮上しようとしていた。
 それは、巨大な宇宙船だった。全体のフォルムが矢じりや槍の穂先を連想させる。
「あれは?」
「あれこそ、旧文明時代のぼくの研究の結晶。その名を聖櫃クロウリィという。どうだい、かっこよくないかな?」
 鳩美は感想を言わなかった。ただ、クロウリィというので何をするつもりなのかという風にワイナールを睨んだ。
「ナギサちゃんの三文芝居は見飽きただろうから、この壮大な演出でしめとしよう! ダーク・ファルスとクロウリィ、この二つの力があれば、こんな惑星群なんて、すぐにでもチリにできるよ」
「ワイナール……お前、何を企んでいる……!」
 何を考えているのか分からない男だったが、今回は状況が違う。まさか、世の中に対して害になることを企んでいるだろうか。ナギサは彼がそんなことをするとは信じられない。
「ぼくは最初から一つのことしか企んじゃいないよ? それがわからないんなら、残りの時間全部使ってでも考えてみるといい」
「ワイナール……!」
「それじゃあちょっとナギサちゃん、身体貸してね」
 ワイナールがナギサの身体に入り込むと、つたんに手足の自由が利かなくなった。
「さて、鳩美。今起こっていることを単純明快に教えてあげよう。ナギサちゃんを殺せば、グラールは救われて、殺さなければ滅ぶ。どうかな、すごく簡単な話だと思わない?」
 身体を乗っ取ったワイナールが、ナギサの口を使って鳩美と話す。
「ふざけないでください」
「ふざけてなんかいないさ。それじゃあね、鳩美。君が来るのを、クロウリィの中で待っているよ」
(ナギサちゃんは少しの間眠っていてね)
 意識が遠のいていく。ナギサは気を失う直前に鳩美を見る。彼女はこんな状況でも失望の表情をしたままだった。まるで、白々しい嘘を聞かされているかのように。



第4章 補足
バスクとクノーが未登場
 改変の理由は私の筆力の未熟さにあります。
 バスクとクノーが登場する場面は、二人が交互に喋ることが多く、ゲームでは立ち絵やメッセージウィンドウの名前欄で誰の台詞なのか一目瞭然ですが、小説では誰が発言したのか地の文で明記しなければなりません。そうなると、私の筆力では非常にゴチャゴチャとしてしまうので、二人の場面はバッサリとカットしました。

ギール・ゾークの設定について
 本作では欠片と完全に同化したことで、欠片と同じように突然変異を促す力があるとしています。
 なぜそのような設定を付けたかというと、欠片がクラッド6にあったのに、事件当日までナギサとワイナールが気づけなかった理由を説明するためです。
 欠片はひとりでに移動するという描写は全くなかったので、はじめからクラッド6内にあったことになります。
 にもかかわらず、ナギサが全く気づかない上に、第4章の時点まで突然変異が発生しなかったのは、海岸区画の生物が欠片を飲み込むなどして、体内に取り込んでしまい、欠片の気配や変異を促す力が遮断されてしまったと私は解釈しました。
 そうして、長い時間を掛けて欠片とそれを飲み込んだ生物が同化して、欠片と全く同じ力を持った変異生物が誕生したことで、第4章の事件が発生したという展開にしたのです。
 どうも第4章は新ステージの海岸をストーリーモードで出すために、少し無茶をしているような気がします。

後半シーンの改変
 ゲームでのナギサはクラッド6内で暴れることで自分が悪党であることをアピールしていましたが、私は自分を倒させようと煽るにしてはずさんな演技に感じました。突然無意味に暴れだして、「自分は悪い奴だぞ、倒さないといけないぞ」と言っても、何かあるなというのはバレバレです。
 ナギサは演技が下手だというのは第二章でも描写されましたが、あの場面はコメディ調だったのに対して、この場面は非常に緊迫した場面です。なので、何かあるなと思わせるにしても、彼女にはもう少し説得力のある演技をしてもらいました。

[PR]
by ginseiseki | 2011-04-04 20:21 | 二次創作小説
ブログトップ