銀星石のブログ

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銀星石のエッセイブログ

異説・PSPo2インフィニティ 第3章Act2

 RPGをノベライズするというのはかなり難しい作業だなと実感します。ボス戦はともかく、道中の雑魚敵との戦いをどのように描写すればよいのか非常に悩みます。私の力ではダイジェスト的に書くのが精一杯です。







 タイラーを加えたナギサ達は、雪山の中を進む。欠片に近付いているためか、山の麓から中腹の時よりも強力な変異生物が現れていた。
 ナギサは欠片を探す旅の中で、ときおりローグスを戦ったことがある。しかし、タイラーは今までのローグスとは全く違っていた。
 多くのローグスは乱暴者が武器を持っただけで、まともな戦闘訓練を受けたものなどいなかった。しかし、セイバーを振るうタイラーの動きは明らかに洗練されたものだった。
「成程。報告以上の問題だな、突然変異というのは。無理を言って出てくるだけの意味はあった」
 倒した変異生物の死体を注意深く観察しながら、タイラーはつぶやいた。
「タイラー、貴方はローグスの中でも、かなりの責を担うものなのだろう?」
 ローグスとは極端な実力社会だ。あれほどの剣技を披露したタイラーは、それなりの地位をもっているとナギサは予想する。
「なぜ、そんな貴方が最前線に来る? そういう人物は、どっしりと構え、部下を使っていくものではないのか?」
 以前であったヒューガも、地位がありながら身内からの妨害を受けて、現場に出ざる得なかった。しかし、企業とは違って、ローグスは力こそが全てだ。誰かに嫌がらせを受けたのならば、すでにそいつを叩きのめしている。
「では逆に問おうか。なぜ上に立つ者が、現場にきてはならないと?」
 タイラーの切り返しはナギサには予想外だった。その言い方から察するに、彼は自ら望んで現場に出ている。
「それは……何かあったときに、代わりになるヒトがいないから、ではないのか?」
「ほう、では君はこう考えているということか?『下で使える者なら、代わりがきく』と」
「……それは、そうだ。犠牲になってはならないヒトがいれば……犠牲となるべきヒトもいる」
 百のうち一を消費すれば、残りの九十九を維持できるならば、進んでそれをするべきだとナギサは考えていた。
「そうだな。そういう考え方もある。だが、私はそうではない。私の部下一人だって、犠牲にはさせない。そういう信念のもとに、動いている。ここに来たのも、他のものに任せるより、私が直接来たほうが危険は少ないと判断したからだ」
「しかし、それでは貴方の身に危険が……」
 ナギサにしてみれば、代替不可能な人材を浪費する可能性は極力避けるべきだった。
「誰であろうと、命は一つだ」
 確かに、個人レベルでは命は一つだ。しかし、人類という全体を見れば、数えきれないほどの命がある。
「まだ納得できないか。では、もっと分かりやすく言おう。私の部下は、誰一人として代わりがいるような奴等ではない。誰一人として欠かすことの出来ない……仲間だ」
 仲間という言葉に、タイラーは強く感情を込めて言った。
「仲間……」
「わからないようなら、考えてみるといい。考え、聞き、そして知ることで己の糧となる」
 タイラーははっきりとした答えを出さない。個人技能は実践を繰り返さなければ身につかないのと同じで、思想的なものもまた、それが正しいのかどうか、正しいのならば根拠は何かを自分で考えなければ、明確な答えとして定着しないのかもしれない。
 仲間。一人で戦ってきたナギサは、共通の目的を達成するために協力する人員という知識でしか仲間を知らない。
「鳩美、貴女にとって、私はどういう人物だ?」
 仲間がどのようなものであるのかを、実感を含めて知るために、ナギサは初めて共に闘った人物に尋ねた。
「仲間ですよ」
 彼女は即答した。それが、当たり前であるかのように。ナギサは自分の胸に、なにか暖かいものが宿る感覚がした。
「どうしましたか? わざわざそのような質問をするなんて」
「いや、すまない。くだらないことを聞いた。先に進もう」
「そうですね」
 周囲に敵の姿は見えないが、仮にも戦場にいるのだ。今はするべき事がある。まずはそれを片付けてからゆっくりと考えるべきだ。
 しばらく進むと、採石場に出た。しかし、岩石を採掘する機械類は全て止まっている。
「ここは運営していた企業が倒産して、最近放棄された採石場だ」
 タイラーが説明する。確かに放置された採掘機械はまだまだ使えそうだった。
「あれ、なんだ!? でっかいきかいがあるぞ!」
 ユートが何かを見つけたようだ。彼が指差す方向を見ると、大型のマシナリーが鎮座していた。楕円の球体をした本体に四つの脚がある。
「警備用マシナリーでしょうか?」
「そのようだな。このあたりは人を襲う原生生物が生息している。作業員の安全を守るために配置されていたのだろう」
 あくまで原生生物を追い払うためにあるので、軍用機にあるような大型砲台など無い。しかし、あの巨体ならばただ動くだけでも十分脅威になりうる。
「ナギサちゃん、欠片の気配はどうかな」
 ワイナールが訪ねてくる。彼の姿が見えないタイラーがいるので、ナギサは小声で話す。
「近いな。あのマシナリーの影に隠れているかもしれない。見てみよう」
 ナギサはマシナリーに近づく。
 数メートルの距離に近づいた時だった。何かを察知したかのように、マシナリーが突然起動した。
 動力源であるフォトンリアクターの稼働する音が、採石場に鳴り響く。
 動き出したマシナリーはその巨体を近くにいるナギサにぶつけようとした。
 急いで離れる。だが、マシナリーは執拗にナギサを追いかける。これでは欠片を探すどころではない。何とかしてこのマシナリーを無力化しなければならない。
 だがどうやって倒せば良いのかナギサはわからなかった。武装されていないマシナリーなど兵器的には単なる動く鉄塊に過ぎないが、ソード一本で戦うにはあまりに分が悪すぎる。
「ナギサさん! そのまま敵を引きつけていてください!」
「鳩美!? わかった!」
 どうやら鳩美に考えがあるようだ。具体的な内容は伝えられなかったが、彼女なら大丈夫だろうという一種の安心感がナギサにあった。
 鳩美はナノトランサーから筒状の何かを取り出し、それを肩に担いだ。個人携行用のロケット砲だ。
 鳩美が引き金を引くと、砲口からロケット弾が発射される。それはまっすぐとマシナリーに飛んでいき、四脚のうちの一本を破壊した。
 脚を一つ失ってマシナリーがバランスを崩す。ナギサは本体の下部から発光する部品が出てきたのを見た。あれは大型のフォトンリアクターだ。
 好都合だった。相手の弱点がむき出しになっている。頑丈な装甲に覆われていなければ、ナギサのソードでも破壊可能なはずだ。
 ナノトランサーからソードを出す。そして、引き金を引いて刃の背からフォトンエネルギーを噴出させながら、マシナリーのリアクター目がけて斬りつけた。
 バターにナイフを入れたように、ナギサはリアクターを本体から斬り落とした。心臓部を失ったマシナリーはそのまま動かなくなる。
 マシナリーから逃げるために全力疾走したので息が上がっていた。ナギサは呼吸を整えるよう務める。
「ナギサさん、大丈夫ですか?」
 ロケット砲を持った鳩美が心配そうに聞いてくる。
「ああ、大丈夫だ」
 後からタイラーとユートもやってくる。
「マシナリーの暴走というには、やけに攻撃が指向性を持っていたな。まるで、異物を排除するかのように」
「おねーさん、だいじょうぶか? すっごい狙われてたぞ」
 ナギサはマシナリーが執拗に襲ってきたのに心あたりがある。確証は全くないが、もしかしたら今まで吸収した欠片に反応したからなのかもしれない。
「しかし、Nug―2000バズーカを持ち出してくるとは思わなかったな。博物館で展示されているような代物だぞ」
 タイラーは鳩美が使った武器に小さな驚きを見せた。
「知人が暇つぶしで改修しのを私に贈ってくれたのです。たしか、フォトンエネルギーを爆発させる新型弾頭を使っていると言っていましたね」
 その知人とはおそらくエミリアの事だろう。単なる亜空間専門の科学者かと思いきや、その才能はずいぶん幅が広いようだ。
「その人物は技術屋的趣味人なのだな」
「彼女は素晴らしい才能を持っていますが、時々変な方向にそれを発揮させてしまうのが玉に瑕ですね。前にお友達から『この変態技術者が!』と怒られていました」
 ワイナールを変態呼ばわりした彼女が、別の人間から変態と呼ばれたのに、ナギサは可笑しさを感じる。
 いや、それよりも欠片だ。ナギサは自分のするべき事を思い出し、気配を探る。
「ばかな! 欠片の気配が、消えた……!?」
 あのマシナリーが動き出す直前までは、確信を持てるほどに強い気配を感じた。しかし、今はそれが完全に消滅していた。
「鳩美! 見なかったか、欠片を!」
 自分が分からないのならば、彼女にも分からないのだが、ナギサは気が動転してそれを忘れていた。
「いえ……私は何も」
 鳩美は首を横に振る。
「そんな……欠片はいったいどこに……ワイナール!」
 ナギサは相棒の名を呼ぶ。彼ならばもしかしたら感知しているかもしれないと思った。
「ふー、やれやれっと。そんなに叫ばなくても、そばにいるよー」
「ワイナール! 聞いてくれ、欠片が……欠片が!」
「あー、あんまり大声出さないで……大丈夫、聞こえてるから。欠片がなかったんでしょ? まあ、そういうこともあるんじゃない? ぼくらの感じ方が絶対ってわけじゃないんだしさ」
「それは、そうだが……」
 自分たちは動作が保証された検知装置ではない。だから、誤りはあって当然の心づもりでいたほうがいい。それを頭で理解しているナギサだが、やはり心では大きな落胆を感じていた。
「一度や二度の空振りは今までもあったことじゃない。そんなに気にしちゃダメだよ、ナギサちゃん」
「それは、そうだが……」
 確かに空振りは何度か経験した。しかし、それはどれもが欠片がありそうな土地に行っても、そこで気配を感じなかったというものだ。今回のように気配を感じながらも、それが突然消えるなどというのは無かった。
「……それじゃぼく、ちょっと疲れたから寝てるよ。鳩美、あとよろしくねー」
「あっ、おい、ワイナール! ……薄情なヤツめ」
 異常事態だというのにワイナールはさっさとナギサの中に引っ込んでしまった。何が疲れただ。お前は姿を見せずに何もしなかったではないか。ナギサは内心で腹をたてる。
「……話はよくわからないが、捜し物がみつからなかったといったところか?」
 タイラーが聞いてくる。いきなり騒ぎ出したのだから当然だろう。
「……そうだ」
 ナギサはタイラーと悠長に会話をしている精神的余裕はあまり無いのだが、ここでトラブルを起こしてはならないという最低限の自制心は残っていた。
「では、その捜し物とやらの特徴を教えて欲しい」
「そんなことを聞いてどうする?」
 もしかして、欠片のことを単なるお宝かと思っているのかとナギサは思った。もしもローグスと争奪戦が発生するならば、それは非常にまずい事だ。
「愚問だな。私はローグスだ。ローグスは決して仲間を見捨てない。お前達は一時的とはいえ、私の仲間だった。故に捜し物があるなら、見つけ出そう。力が必要ならば、すぐに馳せ参じよう」
「なんだと……それは本当なのか?」
 ナギサは驚きを隠せなかった。たった一度協力しただけの関係にもかかわらず、タイラーはまるで数年来の仲間に対して言うような言葉を放った。
「ナギサさん、おそらく本当でしょう。彼は人を騙すような嘘をつく姑息な人間ではありません。そうですよね。ドン・タイラー」
「ああ。その名にかけて誓おう」
 ドン・タイラー。鳩美が口にしたそれこそが、彼の本当の名なのだろう。どうやら、強い意味を持っているようだった。
「ドン・タイラーって……聞いたことがあるぞ! ローグスのリーダーで、モトゥブでいちばんえらいやつって、リィナが言ってた!」
 ユートが大きな声で言う。なるほどとナギサは思った。モトゥブのトップならば、鳩美が名前を知っているてもおかしくはない。
「おや、少年、リィナと知り合いなのか。彼女は元気にしているか?」
「おう! すっごい元気だ! なんといっても、今度こどもが生まれるからな!」
「そうか……! それはいずれ祝福に行かないといけないな」
「鳩美、リィナというのは?」
 タイラーとユートの話についていけなかったナギサは、リィナという人物について鳩美に聞く。
「リトルウィングの社員で、かつては彼の部下だった女性です。出産を控えているので、今は休職中していますが」
 会ったことがないわけだとナギサは納得した。
「……そろそろ時間か。私は他にも仕事があるので、帰らねばならない。その前に、探している物の特徴を教えてくれ。部下たちにそれらしきものを見たことがないか聞いてみる」
「ああ、分かった」
 情報源はなるべく多いほうがいい。ナギサはタイラーに欠片の外見的特徴を教える。
「ふむ。不自然なほどに黒い石か。では、ナギサとやら、最後に一つ戯言だ」
「……なんだ?」
 戯言という割には、タイラーの顔は真剣だった。ナギサは彼が重要な事を言うのだと分かった。
「もう一度言おう、と言ったほうが正しいか。誰であろうと命は一つ。代わりはきかない。それを忘れるなよ、勇敢すぎるお嬢さん。では、また会おう」
 その言葉を残し、タイラーは立ち去っていった。
 代わりはきかない。たしかにそうだ。自分の命はこの使命でしか使えない。彼の言葉は正しいのだろうが、ナギサはそのとおりに生きる事が出来るかわからなかった。



第3章 補足

Act1部分の戦闘
 ゲームではマシナリー系の敵が出現しますが、劇中で具体的にこれらの敵が出現するか説明されていなかったので、本作では変異生物に変更しています。

ドゥガ・ドゥンガ戦
 本作ではNug―2000バズーカで脚を壊した後に、弱点を攻撃するという流れにしました。
 ゲームでは剣で攻撃しても倒せますが、小説として描写する場合、フォトンの力で金属を楽に切断できるとしても、あんな巨大なマシーンを剣で倒すとうのは非常に不効率な感じになってしまいますのでこうなりました。

エミリアがNug―2000バズーカを改修した
 グラールの世界観を考えると、ロケット砲というのはもはや骨董品レベルの武器です。なので鳩美がそれを持っている説得力を持たせるために、エミリアが趣味で改造したという設定を作りました。
 なお、エミリアが友人(シズルです)から変態技術者と罵られたのは、私がアーマードコアフォーアンサーというゲームに影響されたからです。このゲームでは、ある兵器が登場した時に、登場人物がそれを造った技術者を変態と罵るシーンがあるのです。かっこいいの一言でマガシに角をくっつけたエミリアがあのゲームの世界にいるとしたら、「なにこれ、ふざけているの」というような兵器を開発しているのではないでしょうか。

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by ginseiseki | 2011-03-25 21:29 | 二次創作小説
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