銀星石のブログ

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銀星石のエッセイブログ

異説・PSPo2iインフィニティ 第2章

 今回、原作の大筋を変えない範囲ではりますが、ストーリーの改変を行っています。そういったものに不快感を催すかたはご注意ください。







第2章 108の欠片

 ダーク・ファルスが復活のためにばらまいている欠片を探すと言っても、その手段はナギサの感覚という、曖昧なものでしかない。
 ただしヒントはある。欠片は周囲の原生生物を凶暴化し、突然変異させる力がある。つまり、その二つの現象が発生している場所を探せばいい。
 さあ次の欠片を探そう。そんな時に、民間軽微及び傭兵派遣の最大手であるガーディアンズから、鳩美にある依頼が入ってきた。
 依頼内容は、パルムで原生生物の凶暴化及び突然変異現象が確認されたので、調査を手伝って欲しいというものだった。
「鳩美! 私、戦闘能力には自信があるぞ! 本気ならば、貴女にも勝って魅せる自信がある!」
 もしかしたら欠片が原因かもしれない。ナギサは鳩美の仕事についていくため、必死に自分の有用性を彼女へアピールした。
「……ええ、良いですよ」
 鳩美は快く了承してくれた。
 早速、現場へ向かう。
 そこはGRM社の所有地であり、敷地内にレリクスと呼ばれる旧文明時代の遺跡があるという。
 ガーディアンズからの人員はすでに到着していた。ナギサと同じか、少し年下に見える少女だった。
「あ、こっちです、鳩美さん」
 どうやら、彼女は鳩美と顔見知りのようだ。
「一緒の任務は久しぶりですね」
「ええ。今回もよろしくお願いします」
「あれ、そちらの方は……リトルウィングの新しいメンバーですか?」
 ガーディアンズの少女がナギサを見る。デューマンを見慣れているのか、自然体だった。
「私か? そうだな、まあ、その認識で問題はない。ナギサという、よろしく頼む」
「ルミア・ウェーバーです。こちらこそよろしくお願いします」
 握手と共にナギサはルミアと自己紹介を終えた。
「では、ルミアさん。この地で起きている原生生物の突然変異についてですが……」
「鳩美さん、それでしたら、GRM社の方に聞いていただいたほうがいいですよ。そろそろ来るはずなんですが」
 その時、ナギサは背後に気配を感じたので振り返る。若い男が居た。人相がはっきり見える距離ではないが、どこかで見覚えがあった。
「ああ、皆さんもうお集まりでしたか。遅れてしまって申し訳ありません」
「え、あれ? ヒューガさん? なんでヒューガさんが?」
「おや、ルミアちゃんじゃないですか。ガーディアンズからの人員とは、貴女のことだったんですね。それに、リトルウィングからは鳩美さんですか。いやあ、共に働く方が麗しい女性ばかりとなると、がぜん労働意欲が湧いてきますね。おや? 貴女は……」
 まずい。ヒューガと目があったナギサは焦る。あの男は前に欠片を回収したときに戦った者ではないか。
「ボクの記憶違いでなければ、貴女には一度お会いしたことがあったような?」
「たぶん……その、私の記憶によると貴方とは初対面のはずだが……そう、他人の空似というやつではないだろうか!」
「服装まで一致しているのに、ですか?」
 ナギサは言葉を必死に探した。このピンチを脱するための、ヒューガをごまかせる自然な言葉を。
「その、私のそっくりさんもいい趣味をしているということではないだろうか。うん、そうだ、そうに違いない」
 その時、鳩美がヒューガに何かを耳打ちする。
「ええ!? ですが」
「私が責任を持ちますので、どうかここは」
「まあ……鳩美さんがそうおっしゃるのなら、一旦それは置いておきましょう」
 それ以上ヒューガは何も言わなかった。
「よし、乗り切っったぞ」
 ナギサは小さくつぶやく。
(すごい前向きな解釈だねナギサちゃん。ぼくにはバレているようにしか見えなかったよ)
 ワイナールがナギサにしか聞こえないよう言ってきた。
「何を言う、あれ以上の追求がなかったんだぞ。私の演技に騙されたに違いない」
(……あれ、演技だったんだ。でも、あれって鳩美が言ったからで、騙されたわけじゃ……いや、なんでもない)
 ワイナールも納得したので、ナギサは小さな勝利感に酔いしれる。
「ええっと、ここで発生している変異現象についてですね。調査チームからは、身体の構成組織すら変化するほどの突然変異と聞いています」
「突然変異についてはガーディアンズの方でも確認しています。ここ以外の場所でも、小さい規模ですが、かねてから起こっていたんです」
「ルミア、変異現象が確認されたのは、時期としては、ダーク・ファルス……いや、SEEDが封印された頃だろう?」
「えっと……はい、そうですね。ちょうどそのぐらいからです」
 やはりなとナギサは思った。ダーク・ファルスは封印された直後から行動を開始していたのだろう。
「その突然変異が、最近この地区でも頻発するようになりまして。ガーディアンズの調査メンバーとしてルミアさん、そしてボクがGRM社からの案内役としてやってきたわけですよ」
 それについて鳩美がヒューガに尋ねる。
「ですが、なぜヒューガさんなのですか? GRM社に取っては大きな問題かとは思いますが、経営者自らが出る必要はないと思うのですが」
「まあ、色々な理由が重なっただけですよ。椅子に座っているだけの若造を、認めてくれる人なんていないですからね」
 なぜかヒューガは疲れた表情を一瞬浮かべた。
「ああ、なるほど。若い年で上に立つのは大変でしょう」
 鳩美はなぜかヒューガの表情の意味を理解したようだった。
「ええ。まったく。天下のGRM社長といっても、部下なんてあってないようなものですよ」
 ヒューガは肩をすくめて苦笑いをする。
「それでは、行きましょうか」
 案内役のヒューガを先頭に、出発する。
「なあ、鳩美」
 ナギサは彼女にささやきかける。
「なんですか?」
「おまえとヒューガが話していた内容はどういう意味なのだろうか」
「ヒューガさんはGRM社の社長ですが、あそこは歴史のある企業です。当然、古株とも言える社員が何人もいるのですが、自分の息子くらいの若者を社長と認めない勢力が社内にあるのです。おそらく、ヒューガさんが来たのは、その勢力からの嫌がらせを受けたために人手が限定され、自分が動かざる得なくなったのでしょう」
「よくわからないが。なんだか無駄な行いに感じるな」
「立派な人間なんて希少ですよ。大多数の人間が『所詮その程度』です。とにかく、今は仕事に集中しましょう」
「そうだな」
 自分の力を発揮する機会を楽しみにしていたナギサだったが、仕事内容は『突然変異した原生生物を捕獲する』というなんとも神経を使う内容だった。このたぐいは非常に苦手だった。
 だから、ほとんどの生物は鳩美やルミアが捕獲して、あまり活躍できなかった。
「これで最後です。後はボクが手配したGRMの調査チームが捕獲した原生生物を回収します。次の目的地に行きましょう」
「ヒューガ、次の目的地とは?」
 ナギサは鳩美の依頼についてきた形なので、詳しい内容を知らなかった。
「この先にあるレリクスです。今回の異変はそこを中心として発生しているので、何らかの原因があると思われます」
「なるほど、ならばすぐに向かおう」
 レリクスの入り口は、森の中で隠れるようにあった。小屋と呼べる程度の大きさの建築物だ。
 一万年前の遺跡。言葉だけならとても古い印象をうける。しかし、旧文明は現代よりも高度な科学技術を持っていたため、気が遠くなるような年月を経てもなお、風化せずに当時の姿を維持していた。
 外から見るレリクスは、五人も入れば満員になってしまいそうな大きさだが、これはただの入り口だ。旧文明の遺跡は地下に建造されている。
 入り口にある昇降機を使って、ナギサ達は地下へと降りる。乗っている時間は数分間に及んだ。
 昇降機が止まり、レリクスの内部へと進入すると、広大な空間が待っていた。見上げれば、天井が信じられない高さだ。目測でも百メートル以上はありそうだ。
「しっかし、パルムのレリクスって、来るたびに懐かしい感じがするよ。故郷みたい。ダテに長い間ここで眠ってたわけじゃないね」
 レリクスに入ると、ワイナールはその言葉通りに、懐かしそうな目で当たりを見渡す。
「パルムに来るたびにしているな、その話。せめて私が忘れるぐらいまでは話さないでいられないのか?」
 ナギサはもう数えるのもウンザリするくらいその話を聞いていた。
「いーじゃんいーじゃん。鳩美は知らないんだし、もう一回ぐらい」
 ワイナールは「いいよね?」と鳩美に同意を求め、彼女は「え、ええ……まあ……」と人形のように固定された笑顔を浮かべて返事をした。
「鳩美さん、ナギサさん、調査を始めますよ」
 ヒューガに呼ばれる。ナギサは少しだけほっとした。これでワイナールの何度目か分からない懐古話が中断される。
 調査と言ってもそう難しいものではなかった。ルミアが持ち込んだ調査マシンが勝手にやってくれる。
 ただし、ナギサ達はただ待っているだけではない。別の仕事がある。
 レリクスのほとんどは、大昔に襲来したSEEDと戦うための前線基地として建造されているため、旧文明が造った自動兵器、スタティリアが残されている。これらは問答無用で侵入者を攻撃してくるので、ナギサたちはマシンを守るために、これらを排除する必要があった。
 一度戦って実力を把握している鳩美とヒューガは信頼できたが、ナギサは初めて合うルミアは不安があった。
 足手まといにならなければ良いが。そう思ったが、それは不必要な懸念だった。ルミアはテクニックを中心に戦う者であるフォースとしては、十分に実用レベルの力を持っていた。
 おかげで、戦闘は問題なく進行した。調査マシンも破壊されること無く、いよいよレリクスの最深部に到達する。
「ナギサちゃん、あっちだね」
「ああ、あっちにあるな」
 ワイナールの言葉をナギサは肯定する。当たりを引いたのだ。
 気配を感知した瞬間、ナギサはそれ以外の全てを忘れてしまい、一人で駆け出す。
「ナギサさん、待ってください!」
 鳩美の声も聞こえなかった。
 ナギサは走る。気配がどんどん強くなっていく。
「ナギサさん、単独行動は謹んでください」
「鳩美、欠片がこのレリクスにあるんだ」
 鳩美が追いついて、勝手に走りだしたのを注意するが、ナギサの意識は別の方に向いていた。
「本当ですか」
「ああ、間違いない」
 少し遅れて、ヒューガも追いついてきた。
 ルミアの姿はない。途中ではぐれたのだろう。
「だが、気をつけろ。強い敵がいる」
 ナギサは確信を持って言う。だが、それにヒューガが疑問を挟んだ。
「どうしてそんなことがわかるんですか?」
「勘だ」
 ナギサは答える。
「そうですか。ボクもちょうど、何かがいるような気がしたんですが、これは偶然ですか?」
「偶然だ」
「ボクと貴方がデューマンであることに関係があったり……」
「ない」
 ナギサはヒューガの言葉をきっぱりと否定する。
 しかし、実は彼の言葉は事実だった。デューマンは突然変異で少しSEEDに近づいた人間だ。だから、同じく欠片に変異させられた生物の気配を感じ取る事が出来る。
 ただ、その気配はあまりに小さいので、ナギサほど感覚に優れなければ察知できない。今のヒューガが変異生物の気配を感じているのは、それだけ強大な相手ということだ。
 その時、雄叫びがレリクス内に響く。
「来るぞ! 気をつけろ!!」
 ナギサはソードを構える。鳩美とヒューガも、ただならぬ気配を感じてそれぞれの武器を構えた。
 ナギサ達の前に翼の部分が刃のようになったドラゴンが現れる。先程まで戦ってきたスタティリアと外見の雰囲気がよくにている。
「なんだ、ありゃ?」
 ワイナールが驚く。
「ワイナール、お前旧文明人だろう? 見たところスタティリアのようだが、知らないのか?」
「いんや。さっぱり知らない。スタティリアは今でいうマシナリーだけど、生体部品を結構使っているからね。多分、欠片でそこが変異させられたんだ。ナギサちゃん、注意して戦うんだ」
「言われなくともそうする」
 ナギサはスタティリアの懐に飛び込む。大きな図体だ。そうすれば一方的に攻撃できる。
 ソードの引き金を引き、刃の背からエネルギーを噴出させる。ナギサ自身の腕力も上乗せして、スタティリアの首を狙って攻撃した。
 首を切り落とせば確実に倒せる。そう考えたナギサだったが、全力の攻撃はあっさりと弾かれてしまった。
「まずい、生体装甲が変異してかなり硬くなっている!」
 ワイナールが叫ぶ。
 スタティリアが身体を回転させてきた。ナギサはとっさに体を伏せて回避する。注意していて正解だった。油断してはとても避けられない攻撃だ。
 まるで小さな竜巻だった。強風でナギサの身体が床を転がる。
「ナギサちゃん!」
 ワイナールが不安そうな声を上げる。
「大丈夫だ。心配するな!」
 立ち上がりソードを構える。敵を倒すには弱い部分を攻撃するしか無い。
 目を狙おう。シンプルで一番わかり易い弱点を攻撃しようと思ったが、ナギサよりも先それを実行する者がいた。
 鳩美だった。彼女は恐れを全く見せずに、スタティリアの頭に飛びつき、セイバーを目に突き刺した。
 スタティリアは振り払おうと暴れるが、鳩美はしっかりと捕まっている。そして、ナノトランサーからハンドガンを取り出すと、残るもう片方の目を、至近距離で撃つ。
 最初に一発でスタティリアの目は破壊されたが、鳩美は手を緩めない。銃撃を続けて、そのまま頭部の内部をも攻撃する。
 動物に取って頭部には脳があり、そこが破壊されれば活動は停止する。どうやら、その理屈はこのスタティリアにも当てはまるようだ。鳩美の攻撃を受けて、刃の翼を持つドラゴンは動きを止めてその場に倒れる。
 鳩美の戦いを見て、ナギサは少しの間だが言葉を失っていた。普段あんな優しそうな表情を見せる彼女だが、意外と思い切った戦い方をする人だ。
「ナギサちゃん、早く欠片を回収しよう」
 ワイナールに言われて、ナギサは我に返る。
「あ、ああ。そうだな。そうしよう」
 欠片はすぐ近くにあった。
「……見つけた。一〇六個目の欠片……」
 すぐに回収しようとする。しかし、ナギサは背後に気配を感じた。
「……それを今度はどこに持って行かれる気ですか?」
 ヒューガだ。どさくさにまぎれて回収しようとしたが、ほんの少し遅かった。
「鳩美さんも一緒ですし、悪いことでは無いと思いたいのですが……その不気味な気配は、放ってはおけません。アナタの中からも感じる、この気配。アナタは何をしようとしているのですか」
 ヒューガはナギサの体内に吸収した欠片の気配を感知していた。同じデューマンなのだから、この至近距離なら感じてもおかしくない。
「先日の我社の施設に進入した罪も、この場で問わせていただきますよ」
 ヒューガがセイバーを構える。
「馬鹿な!? 私の演技は完璧だったはず……!」
 疑われるような要素は完全になかったはずなのにと、ナギサは驚く。
「あれで騙せたと思っていたんですか!? あの時は鳩美さんに免じて流しただけです。ですが、もう話を聞かせてもらうまで見逃すつもりはありません」
 ヒューガはナギサだけでなく、鳩美にも厳しい視線を向ける。
「鳩美さん、あの時言った責任を今取ってもらいます。教えてください、何故彼女に協力しているのですか? それとも、最初から協力関係だったとでも?」
「あの時は違います。私もナギサさんについては知りませんでした。ですが、今は彼女の味方です」
 鳩美はナギサをヒューガからかばうような位置に立つ。
「鳩美!? 何を言っている。ヒューガ、違う。私はずっと一人だ! 鳩美は関係無い

「しかし今、こうして鳩美さんはボクに向かって構えをとっている……結託してクライアントを嵌めるなんてことをしたとなると、リトルウィングの信用は地に落ちますよ?」
「鳩美は関係無い。何度言えば理解する!」
「状況がわからない以上、理解出来ないんです。だから説明してくださいと言っているんです」
 どうする。どうすればこの状況を何とかできるんだ。これまで一人で戦ってきたナギサはその方法を全く思いつけなかった。ヒューガは敵ではない。だから倒してはいけない。鳩美を抜き差しならない状況に落としてしまう。しかし、今にも彼と戦いになってしまいそうだ。
「ナギサさん」
 その時、鳩美がそっとナギサにささやく。
「事情を説明するのです」
「鳩美、だがワイナールが見えない彼に何を言っても理解させられるか……」
「理解させようとしては駄目です。そんな考えでは、例えワイナールさんが見えても、ヒューガさんは納得しませんよ」
「で、ではどうすれば……」
「理解”させようとする”のは、単なる自分の都合を押し付けているだけです。そうではなく、理解”してもらえる”よう誠意を見せるのですよ」
 ヒューガを納得させられるだけの誠意を見せられるかどうか、ナギサは大きく不安だったが。自分がそうしなければならないのならば、やるしかない。
「さあ、ナギサさん。説明してください。これが最後のチャンスです。何も言わなかったら、もうボクと貴女は敵同士になってしまいますよ」
「わかった。説明する。いや、説明させて欲しい」
「……いいでしょう。お聞きします」
「この前の欠片と、ここにある欠片……グラール中に散らばった、この欠片を放っておけば、やがてグラール中が闇に包まれてしまう。私はずっと欠片を集めてきた。もう少しで、全てが集められるんだ。私がすべて集め終えれば、平和になる」
 平和。それを願っているのが嘘に聞こえないよう、ナギサは精一杯心を込めて言った。
「あ、あと、放っておくと危ないんだ。突然変異も欠片が原因なんだ。だから少し強引な手で回収しにいったこともある。その事は、本当に申し訳ないと思っている。今は、とても反省している。……ごめんなさい」
 ナギサは深く頭を下げて、謝罪の意思があることをヒューガに示す。
「なるほど……なんとも、説得力に欠けるお話ですね」
 ああ、やっぱり駄目か。ナギサは諦めそうになった。
「でも、信じましょう」
「え?」
「先程のアナタの話。説得力はありませんでした。でも、ボクは思うんです。言葉に必要なのは、説得力や具体性よりも、まずは誠意からだと。貴女にはそれが感じられました。鳩美さんもいますし、まあ大丈夫でしょう」
 通じた。自分の話をヒューガが信じてくれた事に、ナギサはなにか言葉に出来ない様な温かみを感じる。
「それと、施設侵入に関しては、無かった事にします」
 その時、遠くからルミアの声が聞こえてきた。
「やっと追いついた! いきなり走りださないでください! 探しましたよ」
「これはこれはルミアさん、申し訳ない。来てもらってそうそうで悪いですが、ボク達の任務は終わりです、帰りましょう」
「え、でも、鳩美さんやナギサさんが……」
 突然帰ろうと言い出したヒューガに、ルミアは困惑する。
「お二人はエミリアさんからの調査依頼で、この物体の調査を行ってから帰るそうです。調査の邪魔をしてはいけませんよ」
 ヒューガは欠片をさして言う
「え、なにそれ、エミリアからもそんな話は聞いてないんですけど。ちょ、ちょっとヒューガさん」
「それでは、お二人ともよろしくお願いします」
 ヒューガはルミアの手をとって、半ば強引にこの場から立ち去っていった。
「ヒューガ! あ、あの……ええと……」
「どうかしましたか、ナギサさん」
 なにか言うべきだとこの時のナギサは思い、ヒューガに声をかけるが、言うべき何かが思い浮かばなかった。
「ナギサちゃん、そういうときはね。頭を下げて『ありがとうございます』って言えば良いんだよ?」
 ワイナールが助言を出してくれた。
「ありがとう……ございます」
「どういたしまして。それは、ごきげんよう」
 ナギサの感謝の言葉を受け取ったヒューガは、ウィンクを返した。
「かーっ、キザなヤツだね。感謝するけど好きじゃないな、ぼくは。あれ、どうしたの、ナギサちゃん?」
「どうしよう、私、にやにやが止まらない。病気だったりしないだろうか!」
「大丈夫ですよ、ナギサさん。自分の言葉が信用されて嬉しいと思うのは、人として普通です」
 ナギサの精神的変化を鳩美は笑顔で答えてた。
「うれしい……か」
 確かに鳩美に言われたとおり、信用されたのがとても嬉しかった。
「ならば、その信用に答えるためにも、私はもっともっとがんばらないと」
「そうですね、ナギサさん。では、欠片の回収をお願いします」
「ああ!」
 欠片は沢山回収してきた。しかし、こんなにも晴れ晴れとした気持ちで行うのは初めてだった。

 欠片を回収したナギサはまたしても意識を失ってしまったが、目覚めたときに鳩美の姿があったのはとても安心できた。
 鳩美から何度か感じた恐怖は単なる勘違いだろうとナギサは思った。自分を助けてくれた彼女が、恐ろしい人物とは思えない。
 では次の欠片の回収を、と行きたかったが、またしても手がかりがない。また都合よく鳩美の仕事について行ったら欠片があるという保証はない。しっかりとした情報収集手段が必要だった。
「ねえ鳩美、何かアテとかないかな。突然変異の情報でもつかめらばいんだけど」
「そうですねえ」
 ワイナールに聞かれ、心当たりを思い出そうとする。
「クラウチ社長ならあるいは」
「クラウチ? 誰のことだ、それは?」
 鳩美は心当たりが有るようだが、ナギサはそのクラウチという人物はさっぱり知らなかった。
「いや、ナギサちゃん。最初に来た時、会ってるからね」
 ワイナールに言われ、ナギサは思い出した。そうだ、最初にリトルウィングを訪れたときにあった、あのヒゲのビーストだ。
「そうか、分かった。早速行こう」
 思いついたらすぐに行動した方がいい。ナギサは一人で鳩美の部屋を飛び出し、リトルウィングの社長室へ突撃するように向かっていった。
「クラウチ、一つお願いがある。原生生物の突然変異に関する情報を開示して欲しい」
「おいおい、なんだよ藪から棒に。そんなもん調べて一体何に使う気だ?」
「とても、重要なことなんだ。このグラール全体に関わることだ」
「おい、ちょっと待て、グラール全体だと? なにか、証拠はあるのか?」
「あるにはあるが、見せたくても見せられない。だから、証拠はないも同然だ。でも、信じて欲しい。あなたの協力が必要なんだ。このとおりだ」
 ナギサは頭を下げて頼む。鳩美から学び、ヒューガに信用してもらった誠意という心を、クラウチにも示す。
「……あの時も、こんなことがあったな……なあ、もしかしてこいつも、エミリアと同じなのか?」
 クラウチがナギサの後ろに向かって言った。振り向いてみると、そこには鳩美がいた。
「はい。彼女にも旧文明人が宿っています」
「そういうことか……まったく、本当にお前さんは難儀な相方にぶつかるもんだな」
「そうですね」
 言葉とは裏腹に、鳩美の表情には嫌悪感はなかった。
「わかった。突然変異関係の情報、だったか? あるかどうかはわからねえが、調べてやる」
「本当か!?」
「俺は大人だからな、嘘はつかねーよ。情報が見つかったら連絡してやるから、それまでテキトーに暇つぶしてろ」
「あ、ありがとう、ございます!」
 ナギサは頭を下げて礼を言う。
 今日という日を経て、ナギサは一つのことを学んだ。今まで、何事も一人のほうが都合よいと思い、ずっと単独行動をしてきた。しかし、それは間違いなのだ。
 誰かに協力を求めるのは正解なのだ。事実、鳩美と出会う前と比べて、格段に物事がスムーズに進んでいる。
 何かを成し遂げようとするとき。強い信念だけではダメなのだ。自分は正しいことしていると、他人に信じてもらえるようにする誠意は必要不可欠なのだ。

改変部分についての注釈


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by ginseiseki | 2011-03-14 20:51 | 二次創作小説
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