銀星石のブログ

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銀星石のエッセイブログ

東方&PSUクロスオーバー小説 最終話 Act2

 東方幻想惑星はこれで完結です。今までお付き合いいただきありがとうございました。」




出典元
SEGA『ファンタシースターユニバース』
上海アリス幻樂団『東方Project』

東方幻想惑星~キャストが幻想入り~
第8話 幻想は暗黒を打ち消す Act2



 幸いにも、椛とにとりはHIVE化した間欠泉地下センターに取り残された河童の技術者たちを発見することが出来た。
 河童たちは施設に一室に立てこもっていた。SEEDは基本的に目に写る生物のみを攻撃するので、隠れるという選択肢は正しい。
「助けに来たよ! 怪我はない?」
 にとりが部屋にいる河童の安否を確認している間、椛は扉の前で周囲を見張っていた。
「椛! みんな無事だったよ」
「わかりました。ならば早く行きましょう」
 来た道をもどり、入り口を目指そうとしたその時、椛は敵の気配を察知する。
 振り返って盾を掲げる、同時に振り下ろされた剣とぶつかった火花とちらした。
 椛は現れた敵の姿を見る。剣士のような姿をしたSEEDだ。
 右腕には手のひらがなく、代わりに紫色の光を放つ刃があった。
 左手は肥大化しており、手の甲には穴が開いて、そこには刃と同じ色を放つ炎が灯っていた。
 剣士のSEEDは、まるで戦い以外の行いを全て不要としているような姿だった。
 グラールではデルセイバーと呼ばれるSEEDは、再び右手の刃を振り下ろす。
 椛は太刀を鞘から抜いて受け止める。
「椛!」
「大丈夫です! それよりも早く脱出してください。私が時間を稼ぎます!」
「わ、分かったよ! でも、気をつけてね」
 敵から目を離さないまま、椛はにとりの声を背中で受け止める。
 デルセイバーが剣を振るい、椛はそれをかわし、あるいは受け止める。
 知性もなく、ただ暴力を振るうだけの生物が剣の修行などするはずがないにもかかわらず、その動きはまさに剣士のものであった。
 もしかしたら、両手そのものが剣と盾になっているのだからかもしれない。戦っている椛は思った。
 獣は知性がなくとも、己の牙や爪をどうすれば上手く扱えるか本能的に知っている。その理屈と同じで、この剣士の姿をしたSEEDは本能として剣術が刷り込まれているのだろう。
 椛は攻撃を紙一重で避け、反撃する。
 相手は左手で防御しようとしていた。胴体を斬られるのを防ぐために腕を犠牲にしようというのだろう。
 椛に取っては相手に手痛い一撃を与えることには変わりないので、迷わずに刃を振り下ろした。
 しかし、奇妙な反発力を椛は感じた。まるで、太刀が敵に触れるのを拒否しているようだ。
 予想外のこう着に、椛はデルセイバーの振るう剣に対して反応が遅れた。
 かろうじて盾で防御する。だが、直撃を防いだだけで、衝撃までを受け流すことが出来なかった。結果、小柄な椛の体は吹っ飛ばされてしまい床を転がる。
 すかさず体を起こそうとする椛だが、その時はすでにデルセイバーの刃が迫っていた。
 急いで後ろに跳ぶ。あまり華麗な動きではなかったが、なんとか敵の追撃から逃れることが出来、袴の裾をすこし斬られただけで済んだ。
 間合いを取り戻すことが出来た。
 椛は敵に対して考えを改めた。あの左手は盾としての力を持っている。
 デルセイバーが盾状の左手で殴りかかってくる。剣の方よりも早い。椛は身をかわすことを諦めて自分の盾で防御する。
 自分の体格を十分に自覚していた椛は、先ほどと同じように攻撃を真正面から受け止めるような事はせず、盾の丸みを使って相手の力を横に受け流した。
 デルセイバーに隙が生まれる。椛はそれを見逃さなかった。
 力強く床面を蹴って、懐に飛び込むように太刀の切っ先を突き出した。
 太刀は根元まで突き刺さり、肉体を貫通する。それは十分に致命傷であり、活動が停止したデルセイバーは背中から倒れた。
「早くにとり達を追いかけなければ……」
 太刀を敵の死体から抜き取って、刃についた紫色の血を振り払う。
 椛はにとりと合流するために走りだした。

「ああ、もう! きりがないわね!」
 苛立を顕にする霊夢がスペルカードでSEEDの十数体を蒸発させる。
 SEEDが人里へと侵攻するのはなんとか防いでいるが、次々と新しい敵が現れてしまう。
 次々と増える敵を倒し続ける作業的な状況が続くかと思われたが、ある変化が訪れる。
 今まではコウモリのような姿をしたSEEDばかりではあったが、長杖をもった魔法使いのようなSEEDが新たに現れた。
「魔法使いみたいな奴は私に任せろ!」
 グラールではガオゾランと呼ばれるSEEDが出現した場所は、魔理沙が一番近かったので、彼女はその迎撃に当たった。
 その姿の通りに、SEEDの魔法使いはグラールの魔法を使ってきた。無数の火球が魔理沙に襲いかかる。
 しかし、日頃弾幕戦になれた魔理沙に取っては容易に避けられるものだった。正確にこちらを狙って打ち込まれる弾はなく、やたらめったら撃つだけの弾幕だ。
「一網打尽にしてやるぜ!」
 魔理沙は八卦炉とスペルカードを取り出す。
「行くぜ! 恋符マスター……」
 だが、魔理沙がスペルカードを宣誓しようとした瞬間、真横で小さな爆発が発生した。幸いにも直撃ではなかったが、爆風であおられてしまい、魔法の箒から落ちてしまった。
 引力に従って魔理沙は大地へと落ちていく。
 だが、まだ高度は十分にある。魔理沙は自分と共に落ちていく箒を空中でつかみ、ちょうど自分の身長くらいの高さで、地面に叩きつけられるのを防いだ。
「あ、危なかったぜ……」
 背中に冷や汗をかく。
 今まで自分以外の魔法使いと戦った経験はあるが、彼女たちの使う魔法のほとんどが、光線やエネルギーの弾丸といった形で攻撃してくるものだった。おそらくはグラールの魔法だろうが、何も無い空間を爆破してくるという形は全く予想外だった。
「早く戻らないと……」
 上昇して霊夢達と合流しようとしたが、四方から何発もの火球が襲いかかってきた。さほど密度の高くない弾幕だったので、なんなく回避することが出来たが、出鼻をくじかれる形となる。
 気がつけば、ガオゾランに囲まれていた。どうやら、邪魔者排除した後に人里へ向かう算段らしい。
「星符『ドラゴンメテオ』!!」
 まずは包囲網からの脱出だ。八卦炉を真下に向けて撃ち、本来は攻撃に使っているエネルギーを推力として離脱する。
 十分に距離を取ることが出来た。下を見て敵の姿を捉えようとしたが、先程までいたはずなのにどこにも姿が見当たらなかった。
「あれ?! どこなんだ?」
 背後に気配を感じた。おもわず振り向いてみると、いつの間に回りこんだのか、振り上げた杖をこちらに叩きつけようとしていた。
 魔理沙は魔法使いなのに殴りかかってくる敵の攻撃をかろうじてかわす。だがそれは運が良かっただけだ。あとわずかでも気配に気づくのが遅ければ為す術も無く倒されているところだった。
 なぜ、敵が突然背後に現れたのか。魔理沙がそれを考える前に答えがわかった。
 先程の一体に加えて、更に三体のガオゾランが突然空中に現れた。どうやら瞬間移動能力を持っているようだ。
 厄介な能力ではあるが、種がわかれば対処は不可能ではない。
「儀符『オーレリーズサン』!!」
 魔理沙はスペルカードを宣誓する。すると、彼女の周囲に赤、青、黄、緑とそれぞれ色が異なる球体が現れた。
 四体のガオゾランの姿が消える。魔理沙は不用意に動こうとせず、意識を集中させて敵が再び現れるのを待った。
 周囲に気配が現れる。ガオゾランが周りを取り囲んでグラールの魔法を撃とうとしていた。
「今だ!」
 敵の姿が現れた瞬間、魔理沙は自分の周囲に浮かぶ球体から魔力の光線を発射させる。 青白い閃光は魔理沙を取り囲んでいた全てのガオゾランを貫いた。力尽きたSEEDはそのまま落下し、空中で肉体が朽ち果てて消え去った。
「取り囲むってのは悪いアイデアじゃなかったが、かえって逆効果だったな!」
 今度こそ魔理沙は霊夢たちの元へ合流する。

「どうして……二度も私が負けるのよっ……!」
 ゲイリーに敗北したヘルガは力尽きて床に倒れる。人でありながらSEEDの力を持っているヘルガは、人のように死ぬことは許されなかった。
 手足の体の末端部分から黒いちりとなってヘルガの肉体が崩壊を始める。
 ゲイリーは勝利の喜びを見せずに、一切油断なくスーパーセイバーを構えたまま、自分が倒した敵の最後を看取る。。
「私は……私達SEEDは破壊者なのよ……なのに……どうして負けるのよ……負けるのはおまえ達のはずでしょう」
「何を勘違いしている。お前に運命を決定することが出来るほどの力があるというのか? たった一個人に敗北してしまう程度の能力しかないお前が」
 ゲイリーがヘルガの言葉に反論する。
 微笑めば美しいヘルガの表情が、怒り狂う鬼のようになる。しかし、彼女にはすでに言葉を発するほどの力は残されてはおらず、ただゲイリーを憎悪の表情で睨み続けながら、最後には黒いちりとなって消滅した。
 ヘルガが消えた後、ゲイリーの持っているスーパーセイバーに異変が起こった。ピシリと不吉な音を立てたかと思うと、次の瞬間には刀身が粉々に砕け散った。
 ヘルガとの戦いでAフォトンリアクターを最大出力で酷使させてしまえば、いかにヒヒイロカネといえども限界を迎える。
 壊れたスーパーセイバーをナノトランサーに収納し、代わりに以前から使っている愛刀を取り出す。
 先に向かったアリスと咲夜と合流しなければならない。だが、ゲイリーは最後にヘルガが先程まで倒れていた場所を少しだけ見つめる。
 敗北する直前まで自身の勝利と一度も疑わなかったヘルガではあったが、いざ負けてしまえばあっさりとしたもので、彼女が存在していたという痕跡すら無い。
 結局の所、ヘルガという人物は物語で言うところの敵役に過ぎなかったのだ。敗北するために現れた邪悪というのは、その役目を終えたのならば、速やかに舞台から消え去らなければならない。

 アリスは咲夜と共に両開きの扉の前にいた。
 SEEDの肉に侵食されてよく読めないが、扉には「核融合炉調整ルーム」と書かれている。
 両開きの機械式の扉が空気の流れる音を立てながらゆっくりと開かれる。
 屋敷一つが丸々と収まってしまうほどに広大な空間にソレはいた。
 ダルク・ファキスは敵が現れたにもかかわらず、まるで玉座に座る王であるかのようにじっと動かずにいた。
 ダルク・ファキスの体はアリスたちよりも遥かに巨大だった。両腕は巨大な刃となっており、人の一生よりも生きた大木をやすやすと両断してしまいそうだ。下半身は蛇のような形をしており、尖端には上半身にある頭とは別の化物の頭部があった。
 その姿はいかなる宗教を信仰していたとしても、誰もが悪魔のようだと思えてしまうほどの禍々しさだ。
 ダルク・ファキスの胸元にはSEEDの細胞で作られた縄で縛り付けられている黒髪の少女がいた。真っ黒な翼が背中から生えている彼女こそが八咫烏の力をもった地獄鴉、霊烏路空だ。
 空に意識はない。彼女の生死を確認するすべはないが、ダルク・ファキスが彼女の力を利用しているのならば、まだ生きているはずだ。
 空をダルク・ファキスの肉体に縛り付けている有機物の縄は発光しており、まるで彼女から力を吸い取っているように見える。
「まずはあの子を切り離さないといけないわね。咲夜、あなたの力でどうにか出来る?」
「時間を止めても、私が接触してしまえば相手も止まった世界で動けてしまうけれど、他に方法がないわけではないわ」
 アリスが咲夜と話している最中に、ダルク・ファキスが攻撃を仕掛けてきた。敵は巨大な剣と化している腕をふるう。
 この程度の攻撃を受けてしまうほどアリスはうかつではない。それは咲夜も同様で、二人は敵の先制攻撃を難なく回避する。
「咲夜! 私が牽制するからその間に空を!」
 アリスは人形から魔力の光線を発射して威嚇射撃を行う。
「幻象『ルナクロック』!!」
 咲夜がスペルカードを宣誓すると同時に時間が止まる。
 ダルク・ファキスに縛り付けられている空の前まで移動する。直接ナイフで彼女を捉えている縄を切断しようとすれば、相手もこの世界で動き出してしまう。
 なので、投げナイフで縄を切断することにした。無数のナイフを空中に配置し終えた咲夜は能力を解除する。
 相手にしてみれば突然現れたナイフが空を開放するはずであった。しかし、縄は咲夜の予想を大きく超えるほどに頑丈で、ナイフは傷ひとつつけること無くはじかれてしまった。
 突如、咲夜のいる場所が爆発する。ダルク・ファキスがグラールの魔法を使ってきたのだ。
「咲夜!」
「大丈夫、かろうじて直撃を逃れたわ」
 いつの間にか咲夜がアリスの隣に立っていた。しかし、片腕に火傷を負っている。
「大丈夫なの?」
「ええ、なんとか利き腕は無事よ。まだ戦えるわ」
 だが目の前の問題が解決したわけではない。
 咲夜の攻撃はナイフが主だ。その武器が通用しないとなれば、空の救出はアリスで行わなければならない。
 強いスペルカードを選べば、いかに刃を通さない頑丈な縄といえども切ることは出来る。
 しかし、強い攻撃は総じて細かい動きが出来ないものだ。一歩間違えれば縛っている縄ごと空の肉体を切断してしまうかもしれない。
 力の源である空を殺すという発想はアリスにはなかった。彼女はこのような状況は一度も経験したことがなく、自分に敵意を向けない者を殺すほど冷酷な決断力はなかったのだ。
「咒符『上海人形』!!」
 なので、アリスはまずダルク・ファキスを動けなくするまで傷めつけることにした。敵が戦えないのであれば、空を救出するのはたやすいはずだ。
 まずは刃となっている両腕を切り落とそうと狙う。アリスは上海人形を操って、上から下へと光線を振り下ろす。
 しかし、ダルク・ファキスはその巨体からは想像もできない身軽さで、アリスの攻撃を回避する。それだけではなく、瞬くほどの時間で背後を取られてしまった。
 敵は大蛇の下半身を振ってアリスと咲夜をなぎ払おうとする。二人はとっさに上空へと回避したが、あれの直撃を受けたと思うと背筋がゾッとする思いだ。
「傷魂『ソウルスカルプチュア』!!」
 咲夜がナイフを奮って、切断力を持っているエネルギーを発射する。
 咲夜もアリス同様に空を傷つけないようにダルク・ファキスへと攻撃するが、今使ったスペルカードは本来ならば両腕を使って行うものだ。利き腕は無事とはいえ片腕では本来の威力を発揮していない。
 咲夜の攻撃が大蛇の下半身に命中する。しかし、命中の瞬間にダルク・ファキスの肉体の表面が一瞬光って、切断のエネルギーを相殺する。結果、わずかに傷をつけただけに終わってしまった。
「どうやら、相手は体の表面に防御効果のある膜のようなものを張っているわね」
 目にした現象をアリスは冷静に分析する。
 ダルク・ファキスはアリスの攻撃は避け、咲夜の攻撃はそのまま受け止めた。より魔法的な力による攻撃のほうが効果的である証拠だ。
「咲夜、一つ提案があるわ。手を貸して」
「いいわよ。でも今見たとおり、悔しいけれど私の攻撃はたいして通用しないわ」
「大丈夫、あなたに頼むのは攻撃ではないわ。時間を止めて、私の人形はあいつの目の前に移動させて」
「分かったわ」
 さすが瀟洒で完璧なメイドとアリスは心のなかで感嘆の声を上げる。無駄な説明をすること無く彼女は自分の意図を理解してくれた。
「三つ数えたら能力を使うわ。準備はいい?」
「ええ、いつでも」
 アリスはスペルカードを取り出す。
「三……二……一!」
 咲夜が「一」といった瞬間、上海人形がダルク・ファキスの頭部に現れる。
「咒符『上海人形』!!」
 一瞬の出来事でダルク・ファキスはこちらの攻撃に対応出来ていない。上海人形から放たれた光線は敵の頭部を飲み込んだ。
「やったわ!」
 ダルク・ファキスの頭部は跡形もなく吹き飛ばされている。以下に強靭な生命力を持っていたとしても、頭を失っては生きていることは出来ないはずだ。
「待ってアリス。様子がおかしいわ!」
 その時、空を縛っている縄の光が強くなった。同時に気を失っている彼女が苦しみだす。
 するとどうだろうか。信じられない事に、ダルク・ファキスの頭部が回復してしまったのだ。
「まさか、八咫烏のエネルギーで再生したというの?!」
 これでは空を切り離さない限り敵が倒せない。
 手札が尽き、新しい手段を考えようとするアリスだが、敵はそれを悠長に待っていてはくれなかった。
 咲夜と共に牽制攻撃をするが、たいした意味はない。このままズルズルと時間が経過しては、こちらの方が力尽きてしまう。
「混沌『カオスコントロール』!!」
 男の声が響いた。ゲイリーの声だ。
 ダルク・ファキスの胸元の前を何かが通り過ぎたかと思うと、次の瞬間には気絶した空を抱えたゲイリーが隣にいた。
「ゲイリー!」
「すまない、マーガトロイドさん、ヘルガを倒すのに少し手間取った」
「いえ、助かったわ。でもどうやったの? あの縄はあまりに頑丈で、咲夜のナイフでは切れなかったのに」
「ダルク・ファキスは体の表面にフォトンエネルギーの膜を張って防御している。だが、そのフォトンと相克する性質を持つフォトンならば無力化出来る」
 ゲイリーがナノトランサーからグラールの技術で作られた小剣を取り出す。
「普通の刃物では効果がない。十六夜さん、これを使ってくれ」
「ええ、ありがたく借りるわ」
 咲夜がゲイリーから小剣を受け取る。
「あとは敵を倒すだけね」
 アリスは魔法を使って新たな人形を数体呼び出す。あとはただ倒すだけの状況だ。手数を増やしたほうが良い。
「みんな、あれに向かって攻撃しなさい!」
 アリスの命令に従い人形たちは自動的に攻撃を開始する。
 完全な自律人形には程遠いが、簡単な命令を自動で実行する半自律人形程度は完成指しているのだ。
 アリスに続き、他の二人と共にダルク・ファキスへ攻撃を始める。
 敵は空を失って驚異的な再生力を発揮することはなかったが、今まで吸収したエネルギーがまだ残っているのか、攻撃の勢いは変わることはなかった。
 むしろ追い詰められたことでより苛烈になっているほどだ。
 持てる力を出し惜しみせず全員でダルク・ファキスに立ち向かう。
 咲夜の小剣が、ゲイリーのセイバーが、そしてアリスの操る人形が着実にダメージを与えていく。
 ダルク・ファキスが苦しんでいるような声を上げ始める。もう少しだ。もう少しで倒せるという感触がアリスをはじめ、ゲイリーと咲夜にもあった。
 そして、ついにダルク・ファキスは断末魔の悲鳴を上げて力尽きた。
 巨体が床を打ち、地震が起きたようにあたりが振動する。
「ふう……ようやく倒せたわね。これでこの異変も……」
 その時、死んだはずのダルク・ファキスの体が動き、アリスと目があった。
「!」
 完全に倒していなかったのだ。
 この場所はまずい。早く移動しなければ。そう思ったアリスだが、虚を疲れた彼女の行動は一瞬だが送れてしまう。
 その一瞬が致命的だった。ダルク・ファキスからグラールの魔法が放たれる気配が伝わってきた。
 小さな爆発が発生する。
 しかし、アリスの体には傷ひとつつかなかった。なぜならば、上海人形がダルク・ファキスの攻撃から彼女をかばったからだ。
「え!?」
 アリスは人形を操作してもいないし、自分をかばうように命令もしていない。そんな時間は全く無いのだ。
 だが、事実として上海人形はアリスをかばった。まるで自らの意志で造り主である自分を守ったかのように。
 ダルク・ファキスはそれが最後の攻撃であったのか、こんどこそ本当に力尽き、肉体が黒いちりとなって崩れ落ちた。
 同時に間欠泉地下センターを侵食していたSEEDの細胞も死滅していく。脈動する肉の壁が消え去り、下から本来の内装が現れていく。
 しかし、アリスに取ってはそういった現象は眼中になかった。彼女は自分をかばってくれた人形の残骸を両手で優しく拾い上げる。
「ありがとう、上海。帰ったら元通りに直してあげるからね」
 冷静かつ理性的に考えれば、人間の頭脳と全く同じ動作をする制御装置を搭載していない上海人形が、自律的に動作し、さらには自己犠牲精神を発揮することはどありえない。
 しかし、上海人形が守ってくれたという揺るぎな事実が、アリスに感謝の気持ちをいだかせた。
 おそらくこういう感情が重要なのだろうとアリスは考えていた。自ら考え行動する人形は、ある意味では理論よりも心が大切なのだ。
 ひとつの希望が見えてきた。自分の目標は実現する可能性があることをアリスは確信することが出来たのだ。
 壊れた上海人形を赤子のように抱きしめ、アリスは咲夜とゲイリー共に、間欠泉地下センターの出口へと向かう。
 その帰路でアリスは一つのことを決める。必ず自律人形を完成させ、人と同じようになった上海人形に、自分を守ってくれた事を改めて感謝しようと、改めて「ありがとう」という言葉を『彼女』に贈るために、研究を完成させようと改めて決心した。

エピローグ

 幻想郷での戦いを終えた後、ゲイリーはグラールでまたガーディアンズとして働いていた。
 ガーディアンズにしてみれば、封印されていたキャストが突然消えて、しばらくしたら唐突にもどってきたわけだが、その件に関してはごまかすのに少々苦労した。
 真実は異世界に連れてこられたというものだが、それは実際に体験したものでなければ信じることが出来ない。
 赤木鳩美とはまたコンビを組んでいる。彼女の本性を知ってしまったからには、昔と全く同じとは言わないが、少なくとも良好な関係を維持出来ている。
 鳩美は時たま姿を消すことがある。おそらく、どこかで邪悪を殺しているのだろう。
 ゲイリーは彼女の本性について咎めるつもりはない。別に悪党であっても殺してはならないと思考するほど博愛主義ではないからだ。
「ゲイリー・スーだ。本部からの呼出を受けて来た」
ゲイリーはガーディアンズの呼出を受けて、本部に出向いていた。
 依頼管理課の事務員にライセンス証を提出する。
「ライセンスを確認したします。……スーさんには依頼人の指名が入っています」
「指名?」
 ガーディアンズには自力解決できないほどの大きな問題を抱えた者達がやってくる。その中には、このガーディアンにお願いしたいと、依頼を遂行する者を指名してくる者もいるのだ。
「一体誰からだ?」
 指名はよほど有名なガーディアンにしかやってこない。ゲイリーは自分が無能とは思ってはいないが、指名されるほどの人気が自分にあるとも思っていない。
 ならば自分を見知っている者からの依頼なのだろうが、ゲイリーにはその心当たりがなかった。
「依頼人は八雲紫という方です」
 どうやら再び幻想郷に訪れることになるようだ。

 終


あとがき
 東方Projectとファンタシースターユニバースのクロスオーバー小説、東方幻想惑星はこれにて完結です。
 いざ読み返してみると、クロスオーバーのアイデアばかりが優先されて、肝心の全体的なストーリーのまとまりが良くなかったという反省点があります。場面における人物の視点がコロコロ変わってしまい、東方キャラクターの誰かを主人公とし、PSUとの世界観の関わり合いを描写するべきでいた。
 ゲイリーが咲夜とレミリアが戦う第2話、や椛と共闘する第3話等、半分以上が完全な蛇足な話があり、それらを省いてアリス・マーガトロイドがキャストを通じて自律人形の方向性を考える物語にするべきでした。
 とは言うものの、途中で投げ捨てるのは物語を書くものとしては不誠実な態度なので、強引な形ではありますが完結させました。
 また、自ら失敗と認める作品など公開するべきではないとお叱りの言葉を受けるかもしれませんが、これは私自身に対する戒めでもあります。
 この失敗を教訓に、次作はより良い物語を書くよう努力いたします。
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by ginseiseki | 2010-10-07 11:16
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