銀星石のブログ

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銀星石のエッセイブログ

東方&PSUクロスオーバー小説 第7話 Act2

 今回、作中で語られるキャストの心についての描写は、公式設定ではなく私独自の解釈で作ったオリジナル設定です。






出典元
SEGA『ファンタシースターユニバース』
上海アリス幻樂団『東方Project』

東方幻想惑星~キャストが幻想入り~
第7話 赤い邪悪は救いを運ぶ Act2



 翌朝、アリスが命蓮寺を訪れると、すでに出発の準備が整っていた。
「紫、私もゲイリーと一緒にグラールに連れていってもらうわ」
「ええ、すでに話はゲイリーから聞いているから良いわよ」
「ずいぶんとあっさり承諾するのね? 幻想郷の外に出ることに、少しは反対するかと思ったわ」
「『幹の世界』である外界に行こうとするのならば止めたわ。でもグラールは幻想郷と同じ『枝の世界』だから、さほど問題ないわ」
「なんなの? 『幹の世界』とか『枝の世界』とか」
「いえ、別にたいしたことじゃないわ」
 紫は扇子で口元を隠してクスリと笑う。どうにも腑に落ちないが、グラールに行ってもさほど問題ないのならばそれでよしとした。
「さて、昨日と同じようにこっちの世界の鳩美を中継して、向こうの鳩美の場所への通り道を作るわ。準備はいいかしら?」
「はい、お願いします八雲様」
 鳩美の前に立った紫は、片手を彼女の肩に置く。そして瞳を閉じて意識を集中させた。
「捉えたわ」
 しばらくすると、紫は開いているもう片方の手でスキマを開いた。
 さあ、行きましょう。
「皆さん、お気をつけて」
 白蓮に見送られて、アリス、紫、ゲイリー、鳩美の四人はスキマの中へと入っていった。
 世界を移動すると言うにしては驚くほどあっさりしていた。まるで扉をくぐって隣部屋へ行くかのようだった。
 スキマを通った先はどこかの部屋に出た。上品な内装だが、ベッドと机が一つずつのシンプルな場所だ。おそらく宿の客室なのだろう
 その時、アリスは後ろから腕をつかまれて、そのまま床に組み伏せられてしまう。同時に、頭になにか筒状のものを突きつけられた。
「動くな……」
 女の声だ。短い言葉の中に強い殺気がこもっている。
「ま、待ってください! 私たちは怪しいものではありません!」
 床に押し付けられているので、周囲の状況がよくわからないが、鳩美が自分を捕らえている人物をなだめようとしているのは分かる。
「いきなり人の部屋に現れて怪しいも何も……」
 真上から伝わってくる殺気が急速に消えていった。その後、アリスは拘束から開放された。
 立ち上がって自分を組み伏せたものの姿を見た。
 そこには鳩美がもう一人いた。
「私がもう一人いるということは、お前達は異世界の人間か」
 こちらは何も入っていないにも関わらず、グラールの鳩美は自分たちがどこから来たのかを理解した。
「驚かれないのですか?」
 幻想郷の鳩美がグラールの自分に尋ねる。
「別世界の自分自身と出会ったのはこれが初めてではないからな」
 赤木鳩美は全ての平行世界に必ず一人は存在すると、紫が言っていたことをアリスは思い出した。
「そしてゲイリー。まさか異世界にいたとはな。道理で探しても見つからないはずだ」
「……」
「私に復讐したいと思うだろうが、その前に……」
「そのことなら私がすでに教えてあるわ。あとはエミリア・パーシバルにあわせるだけよ」
 グラールの鳩美の言葉を紫が横から遮る。
「そこまで事情を知っているか。なるほど、ここ最近誰かに見られているような感じがしたが、お前だったのか」
「悪いわね」
 全く悪びれずに紫言った。
 その後、グラールの鳩美はゲイリーにリアクターの移植手術を受けさせるために、それが出来るエミリアという者の所へと連れていった。
 アリスはそれに同行することにした。
「私はスキマの維持があるからここに残っているわ」
 大妖怪といえども、異なる世界をつなぐ道をつくるのは相当な労力を必要とするようで、この場を動くことが出来なかった。
「私は、出来れば彼についていきたいのですが……」
 幻想郷の鳩美がついていくことについては、グラールの彼女が反対した。
「全く同じ顔の人間がいては話がややこしくなる。生き別れた双子の姉妹とでも言ってもいいが、適当に作ったカバーストーリーでは無用な疑いが出てしまう」
 別世界の自分自身にそう言われてしまえば、幻想郷の鳩美はおとなしく引き下がるしかなかった。
「……わかりました。ですが、グラールの私にひとつだけお願いがあります」
「なんだ?」
「もう二度と、彼を裏切らないでください」
「自分に睨まれるというのは不思議な体験だな。まあいい……約束しよう」
「本当ですね?」
「安心しろ。私が邪悪であるときは、自分以外の邪悪を殺すときだけだ」
 それでも幻想郷の鳩美はグラールの自分から目を離さない。
「安心して。私も付いているから」
 アリスがそう言うと、幻想郷の鳩美はそれで納得した。
 ゲイリーのリアクターを移植できる技術持っている者は、リトルウィングという傭兵屋にいた。
「いらっしゃい。もう準備は出来ているから、始めましょう」
 エミリア・パーシバルと名乗る彼女は、並の技術者やキャスト専門医がさじを投げた事を出来るようには思えないほどに幼かった。
「ここまで来て今さらだけど、彼女だけで大丈夫なの」
「む! 子供だからって甘く見ないでよね!」
 そういう言動そのものが子供であることの証明なのだが、エミリアという少女はそれに気がつくこと無く、自分が成人と同格であるとアリスに主張した。
 本当にゲイリーを救えるのかどうか不安に思ってしまう。
「ええ、大丈夫ですよ。エミリアさんの腕は確かです」
 グラールの鳩美は他人の前では幻想郷の鳩美と同じような振る舞いをした。仮面を付け替えるかのように性格を使い分ける彼女に、若干だが恐ろしさを感じる。
 ともかく、ゲイリーの手術が始まる。アリスは手術室の入り口で終わるのを待つ。
「私は少し片付けなければならない仕事がある。終わる頃には戻ってくる」
 そう言ってグラールの鳩美はどこかへと言ってしまった。
 その後は静寂の中でアリスは待ち続ける。
「オウ! もう始まったようネ」
 ずいぶんと派手な服装の女が現れた。肩がむき出しで胸元を強調しているデザインで、男の視線を集めそうだった。
 よく見ると耳が機械でできている。彼女もキャストなのだろう
「あなたは?」
「ワタシ、チェルシーいいマス。リトルウィングの受付嬢やってマス。お嬢サンは?」
「アリス・マーガトロイド。ゲイリーの付き添いよ」
「そうナノ? じゃあ、一緒に手術が終わるまで待っていてもいいカシラ?」
「ええ、構わないわ」
 アリスは手術室の扉を見る。まだ終わるような気配はない。
「成功するかしら……」
「大丈夫ヨ! エミリアなら成功するネ」
「ずいぶん彼女の腕を信頼しているのね」
「当たり前ヨ。ワタシ、ズーっと一緒だったからネ。彼女のことは娘みたいなものヨ」
 その言葉にアリスは意外に思った。ゲイリーと数度話して、キャストにも人間性が宿っていることは理解しているが、まさか生身の人間に対して愛情のようなものを抱くとは思っても見なかった。
「ねえ、手術が終わるまで少し話を聞きたいのだけれど」
「ドンナ話ですカ?」
「キャストの心について。私はどうすればキャストに心が宿るのか知りたいの」
「失礼だけど、アリスさん、キャストと会ったことアマリこと無いネ?」
「ええ、そうよ。私の暮らしている場所にはキャストがいなかったから。ゲイリーが初めて出会ったキャストよ」
 説明がめんどくさいので、異世界からやってきた事は話さなかった。
「アリスさんは、どうしてキャストに心が芽生えると思ってますカ?」
「人の頭脳と全く同じ動きをする制御装置があるからとは聞いているわ」
「ウン、半分だけ正解ネ」
「半分だけ?」
「そうヨ~。たしかにそれでキャストは心が持つことができるようになったけど、生まれた時から心があったわけじゃないのヨ。アリスさんは生身の人間が生まれたときから心があると思っているカ?」
「そうじゃないの?」
「生身の人間だって、赤ちゃんのころから心無いネ。お父さんやお母さんに話しかけられてチョットずつ心が育まれるのヨ」
「たったそれだけのことで?」
「モット難しく言うと、一人の人間として誰かから接してもらわなければ、心は生まれないネ」
「人として接する……」
「それはキャストも同じネ。心宿ったキャスト、ミンナ生身の人とコミュニケーションしたことある人達ネ」
「そうなの?」
「ホントの事ヨ。ワタシ、昔同盟軍にいたヨ。こう、鉄砲もってバン、バーンって毎日引き金引いてたネ」
 チェルシーはその場でライフル銃を撃つジェスチャーをする。
「同盟軍、キャストばっかりネ。キャストは生まれたらすぐに働くから、同盟軍で働くことになった人は、ずっと同じキャストとばっかり過ごすヨ。だから、全然心のない人達ばかり」
「あなたは違うの? 見たところ軍隊はやめたようだけど、心がないのならば職業を変えようとも思わないのでは?」
「モチロン、ワタシも最初の頃はゼンゼン心なかったヨ。デモある日、生身の体を持った仲間と一緒に訓練するようになったのヨ。その仲間がワタシに心教えてくれタ。姿がよく似ているだけで、全然別の存在にもかかわらず、その仲間はワタシを人間として認めてくたヨ」
 チェルシーは懐かしそうに話す。彼女に取ってかけがえのない思い出なのだろう。
「もしもその仲間と出会わなかったり、出会ってもワタシをただの人の形をした機械として接していたら、ワタシに心宿らなかったと思うネ」
 これまで、アリスは心は作ってしまえばそれで終わりだと思っていた。
 だが違った。自分が今までつくってきた人形のように、作れば出来るようなものではなかったのだ。
「人は誰かから人として接してもらうことで、初めてその身に心を宿すということ?」
「そうネ。生まれた瞬間から心ないヨ。人として扱ってもらえなければ、生身の人はただの動物、キャストは人形でしかないヨ」
「うん……そうね……そうかも知れないわ。ありがとうチェルシー。とても有意義な話だったわ」
 話が終わると同時に手術室の扉が開かれて、エミリアが現れた。
「なんとかゲイリーのリアクターを通常のものに移植出来たわ」
「オツカレ様ネ!」
 チェルシーは母が子にそうするように、エミリアの頭をなでる。
「もう、やめてよ」
 口ではそう言っているものの、エミリアはまんざらでもない様子だった。
「それで、ゲイリーの様子は?」
「じきにスリープモードが解除されて、目がさめるはずだよ」
 手術室に入ると、アリスは寝台に横たわっているゲイリーの姿を見つけた。
 破損していた右腕も完全に修復されている。
 眠っているゲイリーを静かに見ていると、彼がゆっくりと目を覚ました。
「マーガトロイドさん……」
「おはよう。よかったわね。手術は成功したそうよ」
「そうか……」
 寝台から起き上がると、ゲイリーは新しい右手を開いたり握ったりして具合を確かめた。
「ありがとう、パーシバルさん。あなたのおかげで俺は助かった」
「い、いいよ。そんくらい私には朝飯前だからね!」
 感謝を受けることになれないのか、エミリアは顔を赤くしながら胸をはって、照れを隠す。
「あ、そうだ。これ渡しておくね」
 エミリアは握りこぶし大の球形の機械を彼に渡した。
「これは……俺の中にあったAフォトンリアクターか」
「うん。自分の体の一部だったのだから、どうするかはアンタが決めるべきかなと思うの」
 ゲイリーはしばらくそれを見つめたあと、腰のナノトランサーに収納した。
「ありがとう。今は感謝の言葉を述べることしか出来ないが、いずれこの礼は必ずする」
「そんなに気にすることないと思うよ? うちのオッサンからただ働きさせるかもしれないし」
「こっちは命を助けてもらったんだ、一度や二度くらいただ働きしてもいいさ」
 ゲイリーが微笑む。幻想郷で出会ったばかりの社交辞令的なものではなかった。
「無事に手術が終わったようですね」
 グラールの鳩美が戻ってきた。相変わらず邪悪を自称するような本性があるとは思えない、柔和な微笑だった。
「それでは、私は彼を連れて帰ります。報酬については後ほど社長に」
「お金の話はなるべく早くしたほうがいいよ。あのオッサンがめついから」
「ええ」
 そうして、アリスたちはグラールの鳩美が止まっている宿に戻ってきた。
「悪いけど、そのAフォトンリアクターを貸してくれないかしら」
 帰ってきてすぐに紫がそう言った。
 ゲイリーが常にSEEDから狙われる危険がなくなったとはいえ、幻想郷から敵がいなくなったわけではない。寄せエサの必要性はまだ消えていない。
「ああ。構わない。代わりに頼みがある」
「何かしら、ゲイリー」
「幻想郷で戦わせて欲しい」
「なぜ? あなたの役目はもう終わったのよ。わざわざ幻想郷に来る必要もない。ようやく手に入った平穏を手放すというの?」
 幻想郷の鳩美も彼を止めようとする。
「そうです。もうスー様が戦う必要もありません。お願いですから、命を粗末にするようなことをしないでください」
「相棒と同じ顔と声でそんなふうに言われると、どうにも調子が狂うな……。まあ、それは別として、そもそもSEEDはこの世界の敵だ。ならば、グラールの者が手伝う程度の義務はある。それに、幻想郷の者には何度か世話になったからな。せめてその義理を返す必要もある」
 ゲイリーはグラールの鳩美に向き合って言った。
「そういうことだ。すこし行ってくる」
「ああ、行って来い。ガーディアンズには私から上手くごまかしてやる」
 そして、アリスたちは紫の作ったスキマを通って、幻想郷へと戻っていった。

 その後、Aフォトンの呪縛から解放されたゲイリーは、人里の借家へ帰った。
 SEEDとの戦いはまた後日話しあうということになった。
「ねえ、上海。あなたに心があったら、あなたにとって私はどんな存在なのかしら」
 家に戻ったアリスは、上海人形に話しかけてみる。
 上海人形は無表情にこちらを見つめるだけだ。
 当然だ。まだ上海人形は普通の操り人形。自分が魔法を使わなければ体を動かすことも、表情を作ることも出来ない。
 人形遣いとして人形を大事に扱っていたが、思い返してみれば、心のどこかで所詮はモノであると思っていたのかもしれない。
 それを反省し、アリスは人形を人として扱う。
 人の形をしている存在を人として扱えば、そこに心が宿る。それが正か誤かは分からないが、自立人形への可能性はあるはずであった。

 第8話へ続く

第7話補足
 PSUに登場するキャストのうち、感情豊かなキャラが複数います。その共通点として、多種族と交流しているというものがあるので、「キャストに心が宿るには、多種族と交流して人間として接してもらう」という設定を二次創作しました。

 エミリアとクラウチが、鳩美はPSPo2の主人公と似ていると感じたのは、以前ブログで掲載した、鳩美を主人公にしたPSPo2のノベライズとの関連を匂わせた遊びです。基本的に私の各作品はすべて平行世界の関係にあります。八雲紫の言った「幹の世界」、「枝の世界」も以前書いたPSUとPSOのクロスオーバー小説から来ています。
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by ginseiseki | 2010-08-19 21:00 | 二次創作小説
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