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銀星石のブログ

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銀星石のエッセイブログ

東方&PSUクロスオーバー小説 第7話 Act1

 東方と他の作品をクロスオーバーした二次創作の多くは、他作品のキャラが幻想郷にやってくるという展開が多く、その逆は非常に珍しいですね。





出典元
SEGA『ファンタシースターユニバース』
上海アリス幻樂団『東方Project』

東方幻想惑星~キャストが幻想入り~
第7話 赤い邪悪は救いを運ぶ Act1


 グラール太陽系に存在する赤木鳩美。声も姿も幻想郷の鳩美と全く同じであったが、その心に強く大きな邪悪を宿しているという、明確に異なる部分があった。
 彼女は邪悪を殺すことを何よりも悦んでいた。
 邪悪なる者達の多くは、自分は成功者であると盲信しており、決して不幸になることはないと確信している。
 しかし、それらは何の保証もない事を、鳩美は彼らに思い知らせた。彼女に取って、邪悪なる者達が殺される直前に浮かべる、恐怖と絶望に満ちた表情は、いつ見ても飽きることのない至上の快楽であった。
 ガーディアンズに入ったのも、単純に邪悪と戦えるからに過ぎなかった。民間警備会社でも、限定的な警察権を有している組織に属しているれば、邪悪なる者達の情報に困ることはなかった。
 帝王を自称する犯罪組織のリーダーの命を、虫けらのように奪い去った時。
 己の使命を忘れ、私服を肥やす悪徳政治家四肢を切り刻んだすえに首をはねた時。
 破綻した偽りの正義を掲げるテロリストを拷問の末に抹殺した時。
 鳩美は言葉に出来ないほどの充実感を得ることが出来た。
 それらの行いに対して、罪悪感は一切なかった。それどころか、邪悪であることが自分は自分であると肯定してしまうほどであった。
 しかし、SEEDを封印してグラールに平和が戻ってから一ヶ月後、鳩美に取って大きな変化をもたらす出来事が現れる。
「失礼します」
 鳩美はガーディアンズの総裁室に呼び出されていた。そこには総裁であるライア・マルチネスがいた。
「来たか。早速だがお前に任務を与える」
 総裁であるライア自身の口から言い渡されることから、鳩美はこれから自分に課せられる任務は、極秘裏に行われるものであることを悟った。
 鳩美に課せられた任務は、現代を超えるテクノロジーを持つ旧文明の技術の研究のために、Aフォトンリアクターを内蔵されたゲイリー・スーの説得であった。
 SEEDを完全に封印したと行っても、それはグラールに来襲してきた分だけだ。広い宇宙のどこかにはまだSEEDが存在しているかもしれない。
 外宇宙から新しいSEEDが来襲してくる可能性を消し去るためには、グラールにあるAフォトンリアクターは全て封印しなければならない。
 ゲイリーは仕事上の相棒なのでそれ以上の感情はなかった。彼より優秀なガーディアンはそう珍しいものでもない。
 とはいえ、彼に隠された秘密はわずかながらでも驚いた。
「それならば、リアクターを通常のものに移植しなければならないと、ゲイリーに直接伝えればよいだけのはずでは? 失礼ですが、ライア総裁が私に彼の説得を命じる意図がわかりません」
 己の本性を隠すために、鳩美はごく一部のものを覗いて、しとやかで落ち着いた女性を演じていた。
 か弱くおとなしい女と思っていたのに、惨めに殺されてしまう悪党の表情は格別だ。
「それが出来れば、私もこんな周りくどいことはしない。だが、ゲイリーのボディーはあまりに特殊で、リアクターの移植が現在の技術では不可能なのだ。だから、移植技術が完成するまでの間、リアクターの出力をSEEDを引き寄せない最小レベルに抑えて、ゲイリーには眠ってもらう」
「それを受け入れてもらうために、私が彼を説得するということですね?」
「そういうことだ」
「もしも彼が眠りにつくことを拒否したら?」
「その時は……仕方がない。捕縛して連れてきてくれ」
「了解しました」
 鳩美は短く答えた。
 任務を受け、鳩美は総裁室を退室しようとするが、その直前で足を止め、ライアの方を振り返る。
「ライア総裁。一つ、質問してもよろしいでしょうか?」
「なんだ?」
「移植技術は完成する見込みはあるのでしょうか?」
「…………」
 長い沈黙だった。ライアは苦渋の表情を浮かべている。
「了解しました。それでは、この『敵役』、謹んで拝命いたします」
 そう言い残して、鳩美は総裁室を後にした。
 結局のところ、ゲイリーを生かしたままリアクターを移植する技術などはじめから存在しないのだ。にもかかわらず、技術が完成するまで眠ってもらうというのは、誰かを犠牲にする後ろめたさをごまかすための建前に過ぎない。
 ゲイリーをパルムの公園に呼び出し、鳩美は彼と対峙する。
「あなたを殺すわけではないですが、再び目覚めさせる保証が無い以上、これは事実上の死刑宣告です」
「お前の可能性など、この世界に生きる人間にとってはどうでも良いのだよ。念のためにお前を始末して、枕を高くして眠る。それがこの世界の意志だ」
「どうした、その表情は? まるで信じていた相棒に裏切られたような顔じゃないか。残念だが、これが私の本性だ。私はお前の相棒なのではない。赤木鳩美はゲイリー・スーの敵だ」
 己の本性を相棒に見せつけることで、それを決別の証とした。
 自分自身が邪悪であるからこそ、何が邪悪であるかよく理解していた。
 例え公共の利益であろうとも、誰かを犠牲にすることは邪悪である。例えそれが正解であったとしても正義ではない。
 ライアは自分の邪悪を知らない。選ばれた理由はゲイリーの相棒だからだが、邪悪に敵役が回ってくるのは、どこか運命めいたものを感じた。
 上っ面の建前を並び立てて、自分を善なる者に脚色するつもりは毛頭なかった。偽善者となってしまったら、赤木鳩美で無くなってしまう。
「お前はこの世界に憎しみをいだいてはならない。社会はおまえに憎む権利を与えていない」
 そして、鳩美はゲイリーを倒した。
 敵を倒した瞬間は心地良かった。しかし、ゲイリーを倒した時は、その感情がまったく出てこなかった。だからなのだろうか。思わずあんなことを言ってしまったのは。
「だから……せめて私だけは憎め。この世界すべての人間が、お前に憎むことを禁じたとしても、この私だけは憎んでも良い」
 この時こそが、初めて罪悪感を経験した瞬間であった。
 その後、建前でガーディアンズの研究部でリアクター移植技術の研究が行われたものの、良い成果は上がらなかった。
 鳩美も自分なりに移植技術を探した。それはゲイリーのためではない。罪悪感という異物を排除したいがための行動だった。
 しかし、なんの進展もないまま、三年の月日が流れる。
 SEEDとの戦いで疲弊したグラールを復興させるために、現代よりも遥かに優れたテクノロジーを持つ旧文明の遺跡を調査することで、技術レベルは多少進歩したが、それでもゲイリーを救うには至っていない。
 それどころか、遺跡に封印されていた旧文明人の魂を呼び覚ましてしまい、危うく自分たちの文明を乗っ取られてしまう所だった。
 悪いことはそれだけではない。ようやく旧文明人の侵略を防いだと思ったら、今度はゲイリーが行方不明になってしまった。
 彼は生身で言うなら仮死状態だった。そのうえ、万が一に備えて複数のプロテクトを掛けて、適切な処置なしには決して目覚めないようにしていた。
 何者かがゲイリーを連れ去ったのは明らかだった。
 鳩美とガーディアンズは、すぐさまゲイリーの行方を探した。しかし、まるで”この世界から消え去った”かのように彼が何処にいるのか全く分からなかった。
「それで、リトルウィングに協力を求めに来たってわけか。なるほど、こいつは確かに大ぴらには出来ないな」
 ビーストの髭面男が鳩美の渡した資料を見て言った。
 彼の名はクラウチ・ミュラー。傭兵派遣会社リトルウィングの社長だ。
 捜索に行き詰まりを感じたガーディアンズは、ここ協力を求めた。
 リトルウィングは旧文明人との戦いに置いての功労者だ。グラールを乗っ取ろうとした旧文明の長、太陽王カムハーンを倒したのはここに所属する傭兵だった。
 仕事を選り好みせず、犯罪まがいの依頼すらも請け負うが、その分口は堅い。何よりも旧文明人との戦いでガーディアンズと協力関係にあったので、外部に協力を求めるならば、最も信頼できる相手だった。
「ギャラも十分な額だし、こっちもガーディアンズになんだかんだで世話になっている。いいぜ、この仕事請け負ってやるよ」
「ありがとうございます」
 丁寧な物腰で感謝の言葉を口にする。クラウチは鳩美の柔和は表情の下に、どす黒い邪悪が隠れているとは少しも思わないだろう。
「おっさーん、今度インヘルト社とする合同実験のことなんだけど……」
 金髪の十四、五歳ほどの少女が現れた。
「あ、やば……もしかして大事なお話中だった?」
 鳩美の姿を見て少女はしまったという表情をする。
「もしかしなくても、正しくそのとおりだよ! おいエミリア、ちったぁ社会マナーくらい勉強しろ」
 少女は首をすぼめるが、すぐに反抗的な目付きを見せる。この年頃にはよくあることだ。
「もー、次から気をつけるからそんなにガミガミ言うことないでしょう」
 鳩美はこの少女を知っていた。最近、新聞を賑わせている天才少女、エミリア・パーシバルだ。
「うん? あれ? ちょっといい?」
 なぜかエミリアは鳩美の顔をまじまじと見た。
「あの……どうされました?」
「私とアンタ、どこかで会ったことがない?」
「いえ? エミリアさんとは初対面のはずですが」
「そうようねぇ……うーん、どこかで会ったかのような……」
 何かを思い出そうとするしぐさを見せた後、エミリアはぽんと掌を叩く。
「そうだ、アイツだ! アイツに雰囲気が似ているんだ!」
「おい、エミリア。いったい何がどうしたってんだ」
「おっさん、この人の雰囲気がアイツに似ていると思わない」
「アイツ? ああ、確かに言われてみればそうだな」
 エミリアとクラウチの言っていることが鳩美にはさっぱり分からなかった。どうも二人の知り合いと自分が似ているようなのだが。
「いったい、どうされたのですか?」
「ああ、別にたいしたことじゃないさ。アンタの雰囲気が、うちの英雄サマとどことなく似ているんだ」
「そんな……『三人目の英雄』と呼ばれるほどの方と私は全然違います」
 グラールには三人の英雄がいた。一人はSEEDの巣であるHIVEから生還したイーサン・ウェーバー。二人目はそのイーサンと共に、SEED封印を成功させた、通称『ガーディアンズのエース』。そして、三人目は旧文明人との戦いで太陽王カムハーンを倒した『三人目の英雄』こと、リトルウィングの傭兵だ。
 実は鳩美自身もエミリアとクラウチに対して既視感をいだいていた。今日はじめてであったにも関わらず、まるで味方であるかのような親近感が湧いてくる。
 だからなのだろうか。このような気まぐれを思いついてしまったのは。
「エミリアさん、少しよろしいでしょうか?」
「え? なに?」
「これを見てください」
 ナノとランサーから携帯端末を取り出し、あるデータを表示する。見せたのはゲイリーのボディーの設計図だった。
「このキャスト……Aフォトンリアクターを搭載しているの?」
「はい。この世界に新しいSEEDを呼び込まないためにも、彼のリアクターを通常のものに移植しなければなりません。ですが、彼のボディでそれを行うのは、今の技術では不可能です」
「うん。確かにこの設計じゃリアクターを外した瞬間に、全機能が停止してこの人は死んじゃうね」
「ですが、あえて聞きます。あなたに彼を救うことは出来ますか?」
 自分でも馬鹿な事だと思っている。天才と言われてもしょせんは小娘。ここで期待するのは無駄でしか無いはずだ。
 だが、なぜか鳩美はエミリアにはその力があるという根拠のない確信があった。
 もしかしたら、別の世界の自分はエミリアの仲間であったのかもしれない。
 エミリアは設計図をじっと見つめている。そして、顔を上げると慎重に言葉を選んで言った。
「絶対じゃないけれど、必ず助かるとは言い切れないけど……でも、不可能じゃない」
「本当ですか?」
「うん。移植する前に補助リアクターをつけて、そこからエネルギーを供給している間に、メインリアクターを移植すればなんとか……でも、補助リアクターを接続するときに、下手なやり方をすれば死んじゃう」
「ええ、それで十分です」
 希望が手に入った。だが、これが成功と確信するにはまだ早過ぎる。
 希望とは幸福へのチケットではない。例えるなら境界線上に立つ一本の棒。些細な力が加わっただけで、ハッピーエンドの領域にも、バッドエンドの領域にも倒れるからだ。

 ゲイリーの居場所を知った八雲紫は、真実を伝えるために、赤木鳩美を連れて命蓮寺にやって来た。
 そこで幻想郷の鳩美を中継して、グラールの鳩美の記憶をゲイリーに見せたのだ。
「これが、グラールの赤木鳩美の真実よ」
 グラールの鳩美の記憶を観終えたゲイリーは黙ったままだ。
 聖白蓮を始めとした命蓮寺の面々は心配そうな顔つきで彼を見ている。
「望むのであれば、私はあなたをグラールへ連れて行くわ」
「……少し、考えさせて欲しい」
「ゲイリー、救われたいと望むのであれば、一晩で答えを出しなさい」
「ああ」
「宿命からの脱却は立ち向かうことが唯一の方法で、何を持って立ち向かうのかをよく考えなさい」
 紫はスキマを開く。
「鳩美、付き合ってくれて感謝するわ。家まで送ってあげる」
「で、ですが八雲様……」
 心残りがある目で鳩美はゲイリーを見ている。
「今の彼に必要なのは一人で考えることが出来る時間よ」
「……はい」
「それでは白蓮、お邪魔したわね。彼のことをよろしくお願いね」
「ええ、わかりましたよ、紫さん」
 紫と鳩美が立ち去り、命蓮寺の者達もゲイリーを気遣って、そっと静かに離れていった。
 寺の本堂に一人残されたゲイリーは、答えを求めるかのように本尊として祀られている毘沙門天の像を見つめた。

 アリス・マーガトロイドは命蓮寺へ急いでいた。昼間にそこでSEEDが現れたという話を聞いたからだ。もしかしたらそこにゲイリーがいるかも知れない。
 寺についたときはすでに日が暮れていた。
 湖でチルノと大妖精がSEEDに操られてしまった時も、その話を聞いたアリスは現場に駆けつけていたのだが、すでに事が終わった後で、彼の姿は見当たらなかった。
 今回もそうかも知れない。だが、命蓮寺の者に聞けば手がかりが見つかるかもしれない。
 命蓮寺が見えてきた。正門へ続く石段の前に降り立つと、そこに誰かが座っているのが見えた。
 今夜は新月で闇が濃い。ここからでは誰だか分からなかったが、近づいてみると、何とその人物はゲイリーだった。
「ゲイリー……やっと見つけたわ」
 意外にもあっさりと見つかったのは幸運だった。
「マーガトロイドさんか……」
 何日も姿をくらましていたにも関わらず、ゲイリーは逃げる素振りを見せようとしない。
「八雲さんから聞いた。こことグラールにはそれぞれ別の赤木鳩美がいることをな」
「そう」
 ならばゲイリーが逃げまわる必要はなくなる。ようやく停滞していた自律人形の研究を進められる事にアリスはほっとした。
「それだけじゃない。グラールの鳩美は望んで裏切ったわけじゃなかった。それどころか助けようとしてくれていた」
「何ですって?」
 その件に関しては初耳だった。アリスはゲイリーから彼が知った真実を聞かされた。
「俺はグラールの鳩美に倒されてから、他者を信じることが出来なかった。トラブルを避けて、表面では友好的に振舞っていても、いつ自分の敵になるか恐れていた」
「話が見えてこないわ」
「グラールでリアクターの移植手術をうけるかどうか迷っている。真実を見たのにも関わらず、これが何かの罠かもしれないと未だに疑っている」
 グラールに行くか否か。それを次の朝までにゲイリーは答えを出さなければならないようだった。
 行方不明中に何があったのか知らないが、彼は右腕を失っている。Aフォトンリアクターが体内にある限り、SEEDとの戦闘は避けられない。
 このままではゲイリーがSEEDに破壊されてしまう。アリスに取ってそれは大きな損失であった。
「猜疑心と用心深い事は全くの別物よ。猜疑心はただの停滞。何も起こらず、なにも変わらない。どんな物事もリスクと見返りがある。私は人間の信頼関係を深く語る事は出来ないけれど、信頼とは騙されるリスクを背負うからこそ尊いのではないの?」
「リスクを背負う……か」
「どれほど万全でも失敗や不幸を滅することは出来ないわ。それに、そんなにも不安ならば、一緒にグラールに行ってあげるわ。何か会ったら手を貸してあげる。私はあなたを封印する必要なんて無いのだから、多少は信用できるでしょう?」
 ゲイリーを説得するのは別に彼を想ってのことではない。自分の研究のためには彼に生きてもらう必要があった。
 共にグラールに行って味方であろうとするのも、単純にゲイリー以外のキャストと出会えるかもしれないからだ。
「ああ……そうだな……分かった、俺はグラールに行く。感謝する。ありがとう、マーガトロイドさん」
「善行は純粋にそれが善い事だからという理由で行われるけど、私は違う。あなたを観察して研究に役立てるという打算がある。だから感謝はいらないわ」
「それでも十分ありがたいさ」
「そう、それじゃあ私は失礼するわ。社交辞令だけど、幸運を祈っているわ。また明日、会いましょう」
 アリスは宙に浮き、寺を後にした。

 Act2へ続く
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by ginseiseki | 2010-08-18 20:43 | 二次創作小説
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