銀星石のブログ

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銀星石のエッセイブログ

PSU&東方クロスオーバー小説 第6話Act2

 今回、若干ではありますがカップリング要素が含まれていますので、苦手の方はご注意を。なお、このカップリング要素に私のオリジナルキャラクターは関わっていません。



出典元
SEGA『ファンタシースターユニバース』
上海アリス幻樂団『東方Project』

東方幻想惑星~キャストが幻想入り~
第6話 白い蓮花は鋼を守る



 ゲイリーが命蓮寺に保護されて数日がたった。ナズーリンが聞いたところによると、その間もSEEDや凶暴化したグラールの生物が現れたが、そのたびに博麗霊夢や霧雨魔理沙が退治したという。
 そんなある日、寺に居る妖怪たちは蔵の整理を行っていた。
「ねえ、あのゲイリーって人の事だけど」
 尼の頭巾をかぶった少女、雲居一輪《くもい・いちりん》が何気なく周囲の者たちに尋ねる。
「彼のことがどうかしましたか?」
 答えたのは髪の毛が金と黒のトラ模様になっている寅丸星《とらまる・しょう》だった。
「この間、彼が姐さんがどんな人か聞いてきたのよ」
「一輪もですか? 私も聞かれましたよ。村沙はどうですか?」
「ああ、それなら私も聞かれたよ」
 海兵服を身につけた村沙水蜜《むらさ・みなみつ》も答える。
「ナズーリンはどう?」
 一輪が聞いてきた。
「いや、私はまだ聞かれていないね。でも、この流れから察するにいずれ聞いてくるのは確かだろうさ」
 ナズーリンの予想は当たった。その日の午後にゲイリーと二人で境内の草むしりをしていると、白蓮の人柄について聞いてきた。
「寺の皆に聖のことを聞いているそうだね。理由を聞かせてくれるかい?」
「俺の身柄は彼女に握られている。自分の処遇を左右する人間の人格を知りたがるのは、そう不自然なことじゃないだろう」
「うん、そうだね。その通りだよ。それで、皆から話を聞いてどうだったかい?」
 ナズーリンはゲイリーと目を合わせずに、草をむしりながら話す。彼も同じように話した。
「全員が聖白蓮は善人であると言う。だが、そうと言うだけでそれが真実である確証はどこにもない」
「ハハッ! 君は馬鹿だなぁ」
 ナズーリンはゲイリーの言葉を笑って否定した。
「…………」
 ゲイリーは無言になる、隣から伝わってくる気配で、彼がむっとしていることが分かった。
「ああ、気を悪くしたのなら済まない。でも、君が言った事は、お世辞にも賢いとは言えないね」
「他人の言葉をうのみにするのが正解なのか?」
「違う違う。私が言いたいのは、君が感じていることは際限がなくて、どうにもならないということさ」
 ゲイリーが手を止めてこちらを見る、ナズーリンも同じように彼の目を見て話す。
「考えてみたまえ。例えばある物事を信じるかどうか判断するとしよう。多くの人間が、その物事は君にとって有益な結果をもたらすと証言している。もちろん、言葉だけじゃない。明確な証拠も揃っている。でも、証言が嘘かもしれないし、証拠も捏造されているかもしれない。それに、君を騙すという意思がなかったとしても、勘違いがあるかもしれない」
「ならば自分の目で確かめればよいだろう」
 ゲイリーはナズーリンの例え話に反論する。
「それも無意味さ。他人の言葉を鵜呑みにせず、君自身の目で確認したとしよう。でも、君が見た事実を、君自身が誤解したり曲解したりする可能性は否定出来ない。自分自身を騙してしまうことはそう珍しいことじゃないさ。結局のところ、究極的な意味で何かを「信じる」というのは不可能なのさ」
「寺に居る者がそんなことを言っても良いのか?」
「いやいや、私が言っているのは割と宗教的なことさ。いいかい、「信じる」という行為はある種の覚悟なのさ」
「覚悟?」
「そう、覚悟さ。信用という概念にはいろいろな解釈があるだろうけど、私はこう考えている。自分はこの人のためならば不幸になっても良いという覚悟こそが信じる事だと。結局のところ、どこかに落しどころをつけなければ、人は疑心暗鬼で何もできなくなってしまうよ」
「落しどころ……か……」
 まだ十分な答えを見出せていないのか、ゲイリーはそのまま草むしりを再開し、ナズーリンも続く。
「白蓮に全幅の信頼を寄せて欲しいとは言わないよ。でも、彼女に殺意を向けない程度には信頼してほしいね」
「ああ、それは分かっている。俺にだって理性はある。少なくとも、聖さんが明確な敵対行動を取らない限り、俺も彼女に刃を向けない」
「ハハッ! それを聞いて安心したよ」
 ナズーリンは純粋に善意を込めて笑った。
「それにしても、ナズーリンさんは何故笑う時だけ裏声なのだ?」
「ハハッ! よく言われるよ。まあ、生まれた時からのクセなのだから仕方ない」
 気がつくと、雑草はほとんどむしり終えた。
「さて、あとはゴミ捨て場に捨てるだけだな。君は片腕で辛いだろうから、私に任せてくれたまえ」
「ああ、助かる」
「なに、いいってことさ。こちらも手伝ってくれて感謝するよ」
 ナズーリンはむしった雑草をかごに入れて、寺のゴミを捨てる場所へと向かおうとする。しかし、あることを思い出して足を止める。
「ああ、そうだ。せっかくだから聞いてみよう」
「どうした?」
「何、たいしたことじゃないさ。実は、数カ月前、私はある者に世話になってね、お礼をしたいのだが、彼は君と同じように異世界の者だったらしく、何処にいるのか皆目検討がつかない。もしも彼をグラールで見たことがあるならば教えて欲しい。あとは八雲紫に頼んで彼のものとに行くさ」
「その彼の姿は?」
「私と同じネズミの妖怪でね。鍵の形をした剣を持っていた。名前はわからないが、アヒルと犬の妖怪から王様と呼ばれていたから、高貴な身分なのだろう。そうそう、笑い方が私と同じだったな」
「いや、そのような人物はいないな。そもそもグラールに王制国家は存在しない」
「そうか……ああ、貴方は何処におられるのやら……」
「その人物に好意をもっているのか?」
「ハ……ハハッ。ままま、まさか。純粋に感謝の気持ちを伝いたいだけだよ。ハハッ!」
 顔を真っ赤にしたナズーリンは早々にその場を立ち去った。
 不思議そうな表情でナズーリンの背中を見るゲイリー。そんな彼を、寺の境内の外にある木の上から見ているものがいた。
「見つけたわぁ」
 その者はSEED封印の綻びからダルク・ファキスとともに現れた女だった。
 彼女の名前はヘルガ・ノイマン。人でありながらその魂をSEEDに明け渡した妖女である。
 ヘルガはグラールを破滅させる為に暗躍していたが、ある二人のガーディアンによって封印されていた。
 しかし、封印にはほころびが生まれ、他のSEEDと共に幻想郷にやってきた。
「まったく、Aフォトンの波動を感じられなかったから見つけるのに苦労したわぁ」
 人がSEEDの力を持った存在であるため、破壊本能だけではなく、明確な知性を元に行動することが出来た。
 メイレンジとよばれる施設はAフォトンの波動を遮断するフィールドを構築していた。だが、ヘルガならば波動を感知できなくともゲイリーを探し当てる事が出来た。
「でも、彼からリアクターを奪うにはちょっと戦力不足かしら」
 ゲイリーを探している間、ヘルガは幻想郷がどのような世界なのかある程度情報を手に入れていた。
 ダウザーの小さな大将、ナズーリン
 守り守られし大輪、雲居一輪
 水難事故の念縛霊、村沙水蜜
 毘沙門天の弟子、寅丸星
 そして、封印された大魔法使い、聖白蓮
 個々の実力に差はあれど、誰もが強力な戦闘力を有していた。
 グラールでは物量に任せて強引に攻めることも出来たが、今は限りがある。SEED製造能力を持つダルク・ファキスがあるとは言え、作るにはエネルギーが必要だった。そのエネルギーを手に入れるために戦力を浪費しては本末転倒だ。
「さて、どうやって攻めようかしらねぇ」
 企みを練っている時、ふと上空から声が聞こえた。
「号外ー! 号外ー! 紅魔館のパチュリー・ノーレッジが新しいスペルカードを開発!」
 黒い翼の少女が空から新聞記事をばらまいていた。
 ひらひらと目の前に落ちてきたので、ヘルガはそれを手にする。
「あらぁ、これはこれは……なかなかよさそうじゃないの。早速、手に入れないとね」
 邪悪な微笑を浮かべるヘルガ。周囲に闇が現れたかと思うと、次の瞬間には彼女の姿はどこにもなかった。

 小悪魔と魔理沙の戦いの後、パチュリーは新たな擬似スペルカードを作るために研究を続けていた。
「う~ん、この『カオスコントロール』という力、理論はまちがっていないはずなのに力が発動しない……」
 しかし、最初に完成したのは偶然によるものが大きかったのか、それ以降に作ったカードは思うように力を発揮しなかった。
「もしかして発動させるのに必要なエネルギーが足りない? 文献ではカオスエメラルドの力で使える能力みたいだけど……私の魔力で代用できないほどの力だというの?」
 本の山に囲まれながらパチュリーは頭をひねっていた。
「まあ、いいわ。同じように高速移動できる能力のコピーには成功しているのだから。やはり、異世界とはいえ、同じ魔女の力は模倣しやすいわね」
 その時、後ろに気配を感じたので、椅子から立ち上がって振り向く。
「あら、意外と感が鋭いのねぇ」
 そこには黒衣の女がいた。お世辞にも友好的には思えない雰囲気だ。なんとなくではあるが、幻想郷の人間ではないような気がした。
「あなたは誰? 何をしに来たの」
「あなたの作った、スペルカードとかいう技術をもらいに来たわぁ」
「あの天狗の新聞を見たのね」
「お嬢ちゃん、痛い目を見たくなかったら早く渡すことねぇ」
「お嬢ちゃん? 百年を生きた魔女である私を甘く見ないことね」
 二人の間で空気が張り詰める。闘争の空気だ。
「ラ・ゾンデ」
 パチュリーが掌をかざすと、黒衣の女に雷が落ちる。しかし、女は直前で横に飛んで回避してしまう。
「あら、テクニックが使えるのね」
「グラールから迷いこんできた文献で学んだのよ。驚くほど習得しやすい魔法だったわ」
「そうでしょうねぇ。テクニックはどんな愚図でも使えるようになっているのだもの」
「丁度いいわ。あなたにはテクニックの試し撃ちに付き合ってもらうわ」
 パチュリーは炎や氷のテクニックで黒衣の女を攻撃する。しかし、相手は驚くほど身軽な体捌きでそれらすべてを避ける。
「いい腕だけど、そんな貧弱な体でいつまで戦えるかしらねぇ」
 黒衣の女が一瞬で懐に入ってきた。彼女の放った拳が目の前に迫ってくる。
「ディーザス!」
 とっさに防御効果のあるテクニックを唱える。現れた小さな光の盾は、敵の打撃を受けて、パチュリーの身代わりとなり、粉々に砕かれる。
「発動スピードが早いわね。私が戦ってきたテクニックの使い手の中で一番よぉ」
「……それはどうも」
 今のは危なかった。あとわずかでも遅れていたら一撃を受けていた。
 もう試し撃ちなどと余裕を持つことができなくなっていた。パチュリーは懐から自分のスペルカードを取り出し、一気に勝負を決めようとする。
 しかし、パチュリーの体に変調が起きた。急激な息苦しさを覚え、呼吸が困難になる。
「ゲホッ……ゲホゲホッ! こ、こんな時に喘息の……ゲホッ……発作が……」
 胸を抑えてその場に倒れこむパチュリー。必死で呼吸をしようとしても思うようにならない。あまりの苦しさに、このまま死んでしまうのかと恐怖するほどだ。
 魔女であるパチュリーに寿命はない。しかし、自然の摂理に抗うことはできても、持病の喘息だけはどうにも出来なかった。
「これは運がいいわねぇ。スペルカードをもらっていくわぁ」
「ま、待ちなさい……!」
 喘息で苦しみながらも、黒衣の女を止めようとするが、横っ腹を蹴られて床を転がる。
「パチュリー様! 如何なされました?! パチュリー様!!」
「パチュリー様! 返事をしてください!」
 騒ぎを聞きつけた小悪魔と十六夜咲夜がやって来た。
「さて、目当ての物は手に入ったし、そろそろ失礼させてもらうわぁ。それじゃあねぇ」
 黒衣の女は闇をまとってその場から消え失せた。

 そろそろだろうかと、本堂で香を焚きながら白蓮は考えていた。命蓮寺に来たばかりのゲイリーは、表では信用しているように見えて、実際は他人を疑っているようだったが、だいぶ他人に対して心を許すように見えてきた。
 今なら幻想郷の鳩美と引きあわせても大丈夫かもしれない。SEED異変に対しては何の意味も無い行いかもしれないが、人と人とがすれ違いを起こしたまま放置しておくわけのもいかなかった。
 ちょうどその時、ゲイリーが白蓮のもとにやってきた。しかし、ただならぬ気配だった。
「聖さん!」
「ゲイリーさん、何かあったのですか?」
「寺の外でSEEDが現れた。今は他の皆が退治に向かっている」
「わかりました。私もすぐに行きます。ゲイリーさんは寺の中で待っていてください」
 Aフォトンの波動を遮断する結界を張っているので、SEEDが命蓮寺に居ることは分からないはずだ。しかし、偶然にせよ、寺の近くで現れたのならば退治しなければならない。
「いや、俺も戦う。なにもしないで守られるは俺の行動理念に反する」
「そんな! なりません! 右腕を失った今のあなたでは危険です」
 ゲイリーは人を守る仕事をするために生み出されたと聞く。しかし、だからといって許可できるわけがなかった。
「だが!」
 ゲイリーと問答をしているとき、本堂の扉が破壊され、外から何者かが侵入してきた。
 その者は黒衣に身を包んだ若い女であり、邪悪な微笑を浮かべていた。
「お前は、ヘルガ・ノイマン!? 馬鹿な! なぜ生きている?!」
 ゲイリーが名前を知っているということは、どうやらグラールの人間らしい。しかし、彼の驚くさまを見る限り、すでに死んでいるようだった。
「ゲイリーさん、彼女を知っているのですか?」
「ああ、人でありながらSEEDと同化したやつだ。だが、SEEDとの最終決戦で、イーサン・ウェーバーという者に倒されたはずだ」
「それは別のヘルガよ。いわゆるクローンってやつね」
 クローンという言葉を白蓮は知らなかったが、どうやらヘルガという人物は複数存在するようだ。
「だが、何故幻想郷にいる?!」
「私はね、ちょっとした事情で他のSEEDと一緒に封印されていたの。でもその封印にほころびが生まれて、そこから外に出たらこの世界だったわけよ」
「それで、今度は幻想郷を狙うというのか?」
「ご明察ぅ。グラールは無理だったけれど、代わりにこの世界を滅ぼしてあげるわぁ。だからそのためにも、お前に内蔵されているAフォトンリアクターを頂くわ」
 ヘルガはゲイリーを指さしてそう宣言した。
「そうは行きません。己が邪な目的と達したければ、この私を倒してからにしなさい」
「ふふふふ。あなた一人ならばこの世界で手に入れた力で倒せるかもしれないわね」
 ヘルガは懐からカードを取り出す。見間違えるはずもない。それはスペルカードだった。
「さあ、覚悟しなさい。魔女『ウィケッドケープ』!」
 突然横からの衝撃が白蓮を襲った。髪の毛で出来た巨大な拳が突然現れたのだ。
 床を転がる白蓮はすぐさま立ち上がる。
 並の人間ならばその一撃であの世へ送られていたことだろう。とっさに得意の肉体強化魔法を使い、なおかつ防御も間に合ったので、致命的な痛手にはなっていない。
「そのカードは、パチュリーさんの……!」
 先日、射命丸の新聞にとある記事が掲載されていた。それは、紅魔館の魔女パチュリーが、幻想郷でもグラールでもない異世界に存在する、魔女ベヨネッタの力をコピーしたスペルカードだ。
 そのうえ、そのスペルカードは通常のものとは異なり、ふさわしい力を持ってさえいれば、誰もが使える力だった。
「あら、意外と頑丈ね。でもこのカードには耐えられるかしら?」
 ヘルガが別のカードを取り出した。このまま反撃するわけにはいかなかった。
「魔法『マジックバタフライ』!!」
「華麗『ウィッチタイム』!!」
 一瞬早く白蓮がスペルカードを宣誓した。彼女の周囲に魔力で作られた四つの花が現われる。
 四輪の花からは光線が発射される。しかし、それは相手を捉えることは無かった。ヘルガの姿が消え、何も無い中を貫くだけに終わってしまった。
 再び白蓮にヘルガの攻撃が襲う。
 全く見えなかった。まるで相手だけ異なる時間にいるかのような高速攻撃だ。
 今度は防御が出来なかった。何が起こったのか詳しくわからないが、おそらく脇腹を蹴られたのだろう。肉体強化魔法の効果はつづいているが、それを差し引いても痛恨の一撃であった。
 痛みで膝を折る白蓮。
「聖さん!」
「だ、大丈夫です。まだ負けたわけではありません」
 先程の攻撃で骨が折れてしまったのか、痛みが全く引かない。白蓮は自らに治療の魔法をかけつつ、なんとか立ち上がることが出来た。
「いいわねぇ、こうやって弱い人間を見下すのはいつでも気持ちイイわぁ」
「……人から奪った力で自らを高みにいると考える。誠に傲慢で、浅はかである!」
「そう言うのは勝ってから言ってなさぁい」
 白蓮とヘルガが同時にカードを宣誓する。
「華麗『ウィッチタイム』!!」
「超人『聖白蓮』!!」
 再びヘルガが高速攻撃のスペルカードを使ってくる。
「喝っ!」
 しかし、白蓮は冷静に彼女の傲慢な微笑を”見据えて”、掌底を顎に叩き込んだ。
 相手が目にも留まらぬ速さで戦うならば、こちらもそうであれば良い。肉体を極限まで強化するスペルカードでヘルガと同じ地平に立った。
 今、白蓮とヘルガ以外の全てがゆっくりと動いている。
 優位から引き摺り下ろされたヘルガは怒りの表情を浮かべる。
 ヘルガが拳を付き出してくるが、白蓮は左手でそれを受け流し、右の拳を腹に叩き込む。続けて右の回し蹴りを相手のこめかみに向かって放った。
 スピードはそのまま威力に繋がる。ヘルガは数メートル吹き飛ばされ、本堂の壁にたたきつけられた。
「チッ……私としたことが相手の力を見誤るなんて……」
 こめかみから血を流しながらヘルガは立ち上がる。
 相手が油断していたお陰で、白蓮の攻撃は見事なまでに決まったが、もう彼女に慢心は感じられなかった。
「まあ良いわ。今日は此処で引いてあげる。でもこのスペルカードの使い方は大体わかった。次はこうは行かないわよぉ?」
 ヘルガの周囲に闇が生まれ、彼女の姿は何処かへと消え去った。
「聖! 大丈夫ですか?!」
 星を先頭に寺の者達が戻ってきた。
「ええ、大丈夫ですよ星。外のSEEDは?」
「はい、急に引き上げていきました」
 恐らくはヘルガと共に何処かへと消えたのだろう。
「……聖さん。SEEDに見つかった以上、俺はもう寺に居ることは出来ないようだ。世話になった。ありがとう」
「ま、待ってください。何処に行こうと言うのですか?」
「とにかく逃げるさ。それが出来ている間は生きていられる。どこまで生きのこれるか分からないが、それが一日でも長ければ十分さ」
「あなたは天寿を全うするまで生きたいとは思わないのですか?」
「俺の世界の鳩美と戦ったときはそう思っていたさ。どんな手を使っても生き抜いてやるとな。だが、助けてくれた者達に迷惑をかけてまでそうしようとは思わない」
「それでもなりません。命を粗末にして良い道理などありません」
「だが……」
「そうよゲイリー。あなたは消える必要はない」
 唐突に声が響いた。全員が振り向くと紫と鳩美がそこにいた。
「八雲さん? それに……この世界の鳩美か」
「紫さん、どうしてここに?」
 白蓮は彼女に尋ねる。紫という妖怪は他人には理解出来ない行動を取ることもあるが、全く無意味なことは決してしない。命蓮寺へ鳩美と共にやってきたのは何か意味があるはずであった。
「ゲイリー、あなたに朗報を持ってきたわ」
「朗報?」
「そう、グラールにあなたを助けようとする者がいる。そして、その者はあなたが救われる可能性を見つけたのよ」
 ゲイリーが言葉を失う。無理もない。拒絶されたはずの世界から自らを救おうとする者のがいたのだから。
「八雲さん、俺を助けようとしているのは誰なんだ?」
 紫はなぜか横にいる鳩美をちらりと見た。なぜなのか白蓮は分からなかったが、彼女の口からでた衝撃的な人物の名前を知れば納得できた。
「その者はグラールの赤木鳩美よ」

第7話へ続く

補足
 今回、パチュリーが作ったオリジナルのスペルカードですが、これはPSUと同じSEGAから発売されている、ベヨネッタというゲームから拝借しました。必殺技を使うたびに主人公がスッパテンコーするバカバカしいほどに素敵なゲームです。

 次に、ナズーリンの想い人の正体ですが、(著作権的な意味で)名前を言ってはいけない世界で最も有名なネズミです。スクウェアエニックスから出ているあのゲームの設定ならば、彼が幻想郷にやってきてもおかしくはないと思うのです。ちなみに、なぜ彼とナズーリンをカップリングしようと思ったのは、私の住んでいる土地が浦安市に近いからです。

 そして、ヘルガについてですが、彼女はファンタシースターユニバース1でヴィヴィアンに封印されたヘルガが封印の綻びから抜けだして幻想郷にやって来ました。
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by ginseiseki | 2010-07-26 21:55 | 二次創作小説
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