銀星石のブログ

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銀星石のエッセイブログ

PSU&VOCALOID2・クロスオーバー小説

 PSPo2に初音ミクのコラボレーション要素があるので、もしもミクがグラールに居るとしたら、おそらくキャストの歌手として活躍するのだろうな、と考えていたら。ガイアがそれを小説にするべき囁いてきたために、書いてみました。








出典元
SEGA『ファンタシスターユニバースシリーズ』
クリプトン『VOCALOID2シリーズ』

PSU&VOCALOID2 鋼の歌姫


 緊急事態を除いて、ガーディアンズに所属するガーディアンは定刻に出勤して、受ける任務を通達される。
 ガーディアンズ・コロニー本部に勤務するキャストである初音《はつね》ミクも、いつものように機動警護部・任務管理課で今回の任務を受諾した。
「護衛任務ですか?」
「はい、今回初音さんに受けてもらう任務は、パルムの被災者キャンプにて、慰安コンサートを行う巡音《めぐりね》ルカさんの護衛です。日程は二日間を予定しています」
 現在、グラールでは未知の生命体であるSEEDの攻撃を受けているため、護衛をつけない限り、民間人の渡航が許可されていない。
 護衛任務はキャストに任される場合が多い。機械生命体であるがゆえ、生身の人種よりも肉体が頑丈で、いざという時にその身を盾にして依頼人を守ることが出来るからだ。
 ミクは特に感想を持たずに、任務管理課から渡された護衛対象の資料に目を通す。
 巡音ルカはシンガーソングライターであり、作詞作曲から歌までも全て自分でこなす人間だった。
 ただし、ミクとっては護衛対象の能力などさほど大きな問題ではなかった。人であろうと物質であろうともするべき内容に大きな変わりはない。
「巡音さんは二十四番待合室にいます」
「了解しました。では、現時刻を持って任務を開始します」
 ミクは依頼人用の待合室へと向かう。
 待合室の扉を開けるとヒューマンの女性が待っていた。先程見た資料の顔写真と同じ人物だ。
「あなたが私の護衛ですか?」
「初音ミクです。これから二日間の護衛を担当します」
「そうですか。ガーディアンとはいえ初対面の男性と常に行動しているのは少々不安でしたので、女性が護衛についてくれて安心しました」
 ルカは落ち着いた物腰の女性だった。護衛任務の依頼人の中にはガーディアンを使用人と誤認する者がいるが、彼女はそういった事がないだろう、とミクは安心した。
 どんな任務にせよ、自分の能力ならば解決できると判断されたのならば、ミクはそれを忠実に遂行するつもりではあるが、トラブルの要素が少ないことに越したことはない。
「では巡音さん……」
「ああ、そんなかしこまった呼び方をしなくてもよいですよ。私は自分のファーストネームが好きなので、ルカと呼んでください。私もあなたの事をミクさんと呼びますから」
「……了解しました。ではルカさん、出発しましょう」
「はい」
 ミクはルカを連れてコロニーのスペースポートへと向かい、パルムへ向かうのPPTシャトルに乗り込む。
「ところで、ミクさんはいつからガーディアンのお仕事をしているのですか」
「生まれてからずっとです。私はガーディアンズに所属することを前提として生み出されました」
「まあ! 若いけど大ベテランなのですね」
 どうしてこのような会話を行うのか、ミクにとってははなはだ疑問ではあったが、ヒューマンのような生身の人種は、他者との会話で精神を安定させることができるらしい。ならば、任務をつつがなく遂行するためならば、こういったキャスト的視点からすれば無駄の会話もむしろ必要になってくる。
 そんな風に、ルカとたわいない会話を続けていく内に、パルムの大気圏に突入する時間となった。
「ルカさん、どうかしましたか?」
 ルカが急に緊張した表情になった。
「いえ、私はずっとコロニーで暮らしていましたしたから、PPTシャトルに乗るのは初めてなのですよ。だから、ちょっと不安になってしまいまして」
「大気圏突入時の事故を心配しているのならば、問題はありません。PPTシャトルにおける事故の発生率は非常に低確率ですし、七年前に乗客全員が死亡した事故以来、そういった事は起こっていません」
「そ、そうですか……」
「?」
 安全を保証する事例を提示したつもりであるミクだったが、なぜかルカの表情がさらに引きつった。
 その後、シャトルは何事も無くパルムに到着し、大気圏移動用のGフライヤーに乗り換えて被災者キャンプへと向かう。
 キャンプは小さなシティの郊外にあった。途中、ミクはシティの様子をフライヤーから見たが、SEEDによる襲撃によってあちこちが破壊されており、生活に必要とされる機能が失われているのが分かった。
 キャンプには移動式の医療設備や大型浄水器などが設置されているものの、それはあくまで最低限の生命維持に必要なレベルでしか無い。
 そのためか、キャンプで暮らす市民たちは、誰もが生気の無い表情をしていた。多くの者がうつむいており、積極性を感じられない。彼らが強い不安を抱えているのは、感情に希薄なキャストであるミクも理解できた。
 ミクとルカは、この場所を管理しているパルム政府の人間と面会する。
「お待ちしておりました。控え室を用意しましたので、開始時刻までそこでお待ちください」
 控え室に案内された後、ルカは本番に備えて発声練習を始めた。
 入念に喉の調子を整える彼女の姿は、自分の職業に対して強い責任感を持っているようにミクは思えた。
 しかし、歌などしょせん音の組み合わせでしかない。慰安コンサートを開催する余裕があれば、その分救援物資の補給に務めたほうが遥かに有益だとミクは考えていた。
 そして、コンサートの開始時間となり、ルカは舞台へと上がる。ミクも、万が一トラブルが発生しても対処できるよう、舞台袖に待機する。
 ミクは舞台袖から観客たちを見る。
 観客たちは大人も子供も、まるで葬式に参加しているようだった。
「私は皆さんが陥っている状況を速やかに解決できる力はありません。しかし、歌うことだけは出来ます。だから、ほんのわずかでも、私の歌で元気を取り戻してくれたらと思います」
 そう言って、ルカはコンサートを始めた。
 大型スピーカーからルカの作曲した曲が流れ、それに合わせて彼女も歌う。
 良い曲であるとは思うが、ミクにはこれで人間の精神力が回復するとは思えなかった。
 しかし、ミクにとって驚くべき変化が訪れる。
 観客の表情が徐々に明るくなってゆく。まるで、分厚い雲が晴れて、青い空が見えたようだ。
 ミクにはその光景が信じられなかった。センサー類の不具合すら疑うが、全てが正常に機能している。
 これは現実に発生している現象であるとミクは認めざる得なかった。歌という音が、空気でなく人の精神すらも振動させるという事実を。
「ありがとうございます。皆さんもSEEDに負けず、頑張ってください!」
 ルカの慰安コンサートは、気力を取り戻した被災者の拍手によってその幕を閉じた。
 その後、ミクとルカはキャンプを後にし、他に慰安コンサートを開く予定のある別の被災者キャンプを目指す。
 二つのキャンプは距離が離れていたので、ミクとルカは道中にある宿に泊まった。コンサートは翌日の予定だ。
「ルカさん、被災者の精神力が回復した現象はどのような原理なのですか?」
 宿でミクは先ほど目の当たりにした現象をルカに問いただそうとする。
「現象とか原理とか、とても難しいことは分かりません。私が知っているのは『歌は心を動かす』だけです」
「私のようなキャストには理解出来ない領分です」
「そんなことはありません。人であるならば、キャストにも心があると私は信じています。そうでね……ミクさんも歌ってみたらどうです?」
「私が歌をですか?」
「ええ、そうです。ちょうど、発表前の曲があります。良い曲に仕上がったのですが、メロディが私の声と合わなくて困っていた所です。もしかしたら、ミクさんなら上手く歌えるかもしれません」
「いいでしょう。私も自分の中に発生した問題点を未解決のまま放置しておきたくはありません」
 その後、泊まった宿で、ミクはルカの作った歌の練習をすることになる。
「少し違いますね。音程はもっと高めで」
「歌がこんなにも高度な技術を要求されるとは……」
「良い感じです。その調子を忘れないで下さい」
 しょせん音の組み合わせと見下していたミクであったが、練習を通じて、歌に対する理解が芽生え始めている事を彼女は自覚した。
 そして、二人とも夜遅くまで練習した。
 翌日、ルカは若干寝不足気味であるはずだが、次のキャンプ地での慰安コンサートはそれを全く感じさせずに見事歌いきった。
 そこでも、昨日のキャンプ地と同じく、ルカの歌によって被災者達は精神の活力を取り戻した。
 たった二日間の間に、ミクの中で歌に対する評価が激変した。今までも、任務を通じて新しい教訓を得る事はあったが、それはあくまで戦いの中でしか無く、こういった経験は全くの初めてであった。
「お疲れ様です。ルカさん」
 舞台から退場してきたルカに、ミクはねぎらいの言葉を掛ける。
「ええ、ありがとうございます。……あら? その笑顔、素敵ですね」
「え?」
 ミクは思わず顔に手を当てる。特に意識して表情を作った自覚はない。
 ルカの言葉からミクは自分が微笑を浮かべていたことを知る。
 ミクは微笑どころか、表情そのものを生まれてから作ったことがなかった。今までそうする必要性がなかったからだ。むしろ無駄な感情があれば任務に支障をきたすくらいだ。
 しかし、今はどうだろう。微笑む程度ならば別にさほど問題はなかろうとすら思っている。
「どうやら、あなたの理論を肯定するほかないようですね。私のようなキャストが表情を作るなんて」
「昨日も言いましたが、キャストが人であるならば必ず心があると私は信じています。もしかしたら、歌を歌ったからそうなったのかもしれませんね。もしそうならば、歌に関わる者として、これ以上嬉しいことはありません」
 純粋に喜びの感情をあらわにするルカを見て、ミクは再び微笑む。自分の急激な変化に対して、彼女は脅威を感じることはなかった。
 しかし、温かい空気を引き裂くかのように、被災者キャンプに警報が鳴り響く。
「おい! アンタ!」
 ミクは通りすがりの男に声をかけられた。たしか、彼はキャンプ周辺を警護するガーディアンの一人のはずだった。
 男から余裕を感じられない。この警報と関係があるのは明白だ
「何事ですか?」
「SEEDに凶暴化させられた原生生物が大量にこのキャンプに向かってきている。今ある戦力だけじゃ対処し切れない、同盟軍に救援を要請したが、それまで時間を稼ぐ必要がある、悪いが手伝ってくれ!」
「了解しました」
「助かる! 八番ゲートが一番手薄だ、そこに向かってくれ! 俺は別の場所を防衛する」
 男はそう言うと、走り去っていった。
 ミクはナノトランサーからセイバーを取り出す。動作不良がないかチェックするが、メンテナンスを欠かしていないので問題はなかった。
「気をつけてください、ミクさん」
 ルカがミクを案ずる声をかける。
「問題ありません。ルカさんを護衛するという任務を途中で放棄するつもりはありません。何よりも、まだ私はあなたの作った曲を完璧に歌いきっていない」
 ミクは指示された八番ゲートに向かって走りだす。
 すでに被災者の避難は始まっている。しかし、間近に死の危険が現れたことで、軽いパニックを起こしていた。悲鳴をあげながら逃げ惑う人々をかき分けて、ミクは戦場へと向かう。
 ミクの前にはパルム文字で『8』と書かれた扉が見える。この先に、襲い来る原生生物とガーディアンが戦っているはずだった。
 その時、八番ゲートの扉が爆発した。
 ミクはとっさに伏せて、飛来してくる扉の破片をやり過ごす。
 立ち上がったミクは煙の先を見る。徐々に煙が晴れてくると、先程の爆発を起こした張本人が姿を現した。
 赤い鱗と巨大な体。大型飛行原生生物のディ・ラガンがそこにいた。
 ディ・ラガンの周囲には八番ゲートを防衛したと思われるガーディアンたちが倒れていた。そのうちの何人かは、明らかに死亡していると分かる怪我だった。
 ディ・ラガンが口から火球を発射してくる。予備動作でそれを事前に察知していたミクは、横に飛んで回避した。
 大型の原生生物とたった一人で戦う。普通ならば撤退するような状況だ。しかし、ミクが逃げてディ・ラガンの侵攻を許してしまえば、被災者キャンプは致命的な被害をうけることになる。
 それだけは絶対に阻止しなければならなかった。
 ミクはディ・ラガンに向かって走りだす。
 ドラゴンは火球で迎撃しようとするが、ミクは紙一重でかわし、巨体の懐に潜り込んだ。
 ミクはディ・ラガンの足を狙ってセイバーを振るう。しかし、その手応えは生物を攻撃しているとは思えないほど硬い。
 ディ・ラガンの異様発達した鱗はそのまま装甲板の役割を果たしている。ミクは何度も同じ場所を攻撃してダメージを与えていくが、絶大な効果を上げるほどではない。
 両前足を上げたディ・ラガンが、踏み潰そうとしてくるのを、ミクは絶妙に回避する。
 賞賛に価するほどの回避行動を数回も成功させたものの、ミクは事態が好転したとは欠片も考えない。
 些細な不運一つでも致命的になる事には変りない。このまま同盟軍が救援に来るまで、ディ・ラガンを牽制できる保証はどこにもないのだ。
 ミクがそう考えた瞬間、ついに恐れていた事態が起こってしまった。
 今まで同じ場所でミクと戦っていたディ・ラガンではあったが、巨大な翼を羽ばたかせて、空へと舞い上がった。
 上空から火球を発射して、地上を爆撃するディ・ラガン。ミクはこのままでは、亡き骸として倒れているガーディアンたちと同じ運命をたどってしまう。
 そんな時、ミクはある物が転がっているのを見つけた。
「あれなら!」
 火球の爆撃をかいくぐり、ミクはGRM社の超大型レーザー砲、タルタロスカノンを手にする。その全長は有に二メートルを超えていた。
 恐らく、キャンプ防衛に配備されていたものであろうが、不幸にも使われる前に持ち主が倒されてしまったのだろう。しかし、ミクが手にしたことによって、この武器は再び活躍の場を与えられた。
 タルタロスカノンの出力ならばディ・ラガンを撃墜できる。ミクは空の王者であるかのように振舞っている敵に向かって銃口を向け、そして引き金を引く。
 発射された光線は針のようにか細いものであったが、そこに込められているエネルギーは膨大だ。フォトンエネルギーによって発生する熱が、ディ・ラガンを鱗を融解させ、光線は抵抗なく巨体を貫く。
「やった!」
 勝利を確信したミクではあったが、最後の最後でディ・ラガンが彼女に牙を向いた。光線が命中すると同時に火球を発射したのだ。
「駄目! 避けられない!」
 大型武器タルタロスカノンを持っていたミクは、回避行動が遅れてしまった。火球の直撃をまぬがれたものの、爆風によって大きなダメージを受けてしまう。
 ディ・ラガンが墜落する。その振動が、地面を通じてミクにも伝わる。
 タルタロスカノンの光線はディ・ラガンの心臓部部分に命中した。敵を倒したことは確実であった。
 その代償として、ミクは身動きがとれないほどのダメージを受けてしまった。だが、たった一人で大型原生生物を倒したのならば、安いものであった。
 空を見上げれば、同盟軍が使うフライヤーの姿が見えた。救援が間に合ったことにミクは安堵する。
 自力で立ち上がれない以上、誰かが来るのを待つしか無かった。幸いにも第八ゲート周辺に新しく敵が出現する様子もない。あとは、このまま救援に来た同盟軍に任せれば大丈夫だろう。
「ミクさん! ミクさん!」
 その時、ミクの名を呼ぶ女の声が聞こえてきた。よく聞いてみれば、それはルカの声だった。
「しっかりしてください、ミクさん!」
 信じられないことに、護衛対象であるはずのルカは、自ら危険地帯に飛び込んできたのだ。
「あ、あなたという人は……なぜ……避難しなかったのですか……愚かなことを……」
「そんなことを言っている場合じゃないでしょう!」
 ルカに肩を貸してもらい、ミクはなんとか立ち上がることが出来た。
「お医者様の所まで連れていきますから、それまで頑張ってください!」
「ええ……大丈夫ですよ……大丈夫、死んだりするものですか……歌を……心を揺らす存在を完全に理解するまでは……」
 今回ように、ミクは行動不能になるまでのダメージを受けた戦いは何度か経験していた。したがって、本来ならば今まで経験した戦いの一つという程度の認識であるはずだった。
 しかし、この二日間の出来事は、自分にとって極めて重要であるという認識が、ミクの中で生まれていた。




「ついにこの日が来ましたね、ミク」
「ええ、そうね。まさか私が歌手になるなんて、数年前は思っても見なかったわ」
 ルカと出会ってからのミクは歌を通じて、心についてさまざまな事を発見してきた。そして、いつしか自分自身の声で人の心を震わせたいという思いをもつようになった。
 歌の素晴らしさを知ったあの日から数年後。ミクはガーディアンズを退職した。そして、新しい人生として選んだ道は、歌手になることだった。
 困難ではあったが、ルカという心強い味方がいた。
 今日は、ミクが歌手としてデビューしてから初めての単独ライブの日だった。
「でも、私のキャッチコピーが『鋼の歌姫』というのはどうかと思うわ」
「そうかしら? 私はとてもカッコ良いと思いますよ」
「まあ、良いわ。行ってくるわね」
「ええ、言ってらっしゃい」
 ステージではミクの歌を待っている観客達がいる。彼らの心を震わせるため、ミクはマイクを握り、一歩踏み出した。
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by ginseiseki | 2010-07-03 18:50 | 二次創作小説
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