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銀星石のブログ

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銀星石のエッセイブログ

PSU&東方クロスオーバー小説 第5話

 今回も第3話と同じく、前後編に分かれていません。

 余談ですが、少し前に東方儚月抄のマンガを書いている人の東方同人誌を買いました。一般向けですから、まあ内容も普通だろうと思ったら、思いっきり霊夢と魔理沙の百合本で軽く衝撃を受けました。



出典元
SEGA『ファンタシースターユニバース』
上海アリス幻樂団『東方Project』

東方幻想惑星~キャストが幻想入り~
第5話 楽園の巫女は氷を砕く



 紅魔館には湖を一望できるテラスがある。そこに、レミリア・スカーレットはパラソルの下で目の前の風景を楽しんでいた
「お嬢様、あまり「朝更かし」されては、お体に差し障ります。日光も毒です」
 十六夜咲夜が紅茶を盆に乗せて現れる。
 今は午前。夜を生きる吸血鬼にとって、この時間帯に起きているのは、人間で言うところの夜更かしに当たる。
「ふふふふ。これから面白い事が始まるわ。まあ見ていなさい」
 レミリアは不敵に笑いながら、紅茶にスプーン山盛りの砂糖を入れる。五百年は生きているものの、彼女の味覚は外見相応だった。
「それはSEEDに関わる事でしょうか?」
「ええ、そうよ」
 その口ぶりから察するに、レミリアが何かを予見した事を咲夜は理解する。
 メードとして主が望むことを十分に理解しようと勤めている咲夜ではあるが、それは日常生活の範囲が限度であり、レミリアの闘争や危険を愛する嗜好は未だ十分に理解できないでいた。
「見なさい、咲夜。あれがこれから起こる「面白い事」よ」
 レミリアが湖を指差す。何かが湖に向かって落ちているのを咲夜は目にした。
 落下物が湖に落水する。その衝撃はそうとうなものだったようで、発生した水柱が周囲の木よりも高かった。
 SEEDの侵攻。それもこんなに紅魔館と近い場所でだ。咲夜は危険を排除するために動き出そうとする。
「やめなさい、咲夜」
「お嬢様?」
「今回はアナタの出番は無いの。おとなしく、ここで事の成り行きを見ていなさい」
 主に命じられては咲夜もそれに従うしか無い。
「さあ、楽しい見世物の始まりよ」





 その頃、博麗神社では、博麗霊夢が日課である境内の掃除を行っていた。
 あの宴会の日から一週間。ゲイリー・スーの行方は今だ分からずのままであった。犬走椛の『千里先まで見通す程度の能力』を持ってしても、彼女のみで幻想郷全体からたった一人を見つけ出すのは無理があった。
 霧雨魔理沙とアリス・マーガトロイドもゲイリーを探しているが、こちらも見つけられていない。
 しかし、霊夢にとってはどうでも良い事柄であった。そんな面倒な事をしなくても、どうせSEED異変にはゲイリーが関わっているのだから、いずれどこかで現れるに決まっている。
 掃除を終えた霊夢は、母屋から茶と煎餅を持ち出し、賽銭箱の近くに座る。
(今日は誰が来るのかしら)
 茶を飲む霊夢は、そう思いながら空を見上げた。いつもは魔理沙だが、たまにレミリア・だったり、八雲紫だったりする。決まりがあるわけでないが、誰かが毎日やってくるのが博麗神社という場所だった。
 霊夢がそう思ったからなのか、空から誰かがやって来た。髪の毛を頭の左側にくくり、青いワンピースを身につけている。背中には妖精の証である半透明の羽があった。
「れ、霊夢さん! 助けてください!」
「あら、チルノといつも一緒にいる妖精じゃないの」
 博麗神社にやって来た彼女には名前が無かった。彼女は妖精の中でも力の大きな存在で、便宜上、大妖精と呼ばれていた。
 チルノというのは大妖精の友人である氷の妖精だった。
 普段は二人でいることが多いのに、珍しく大妖精一人だった。
「チ、チルノちゃんがおかしくなって……それで、霊夢さんに助けてもらおうと……とにかく助けてください!」
「チルノが? いったい何がどう大変なの?」
「変な種に取り憑かれたチルノちゃんが、湖と周りの森を凍らしちゃったの!」
 大妖精はかなり慌てている様子なので、いまいち話がつかめない。だが、異変である事は間違い無いようだった。
「落ち着きなさい。とにかく、話が良く分からないから、チルノのいる場所に連れていきなさい」
「は、はい! お願いします!」
 チルノと大妖精はいつも湖で遊んでおり、異変の現場もそこだった。
 湖へ近づくごとに、霊夢は異変による環境変化を体感し始めた。
 眠気を誘うほどに暖かな陽気であったにも関わらず、大気がひんやりとしている。その冷気は徐々に強くなり、湖に到着した頃には冬のような寒さになっていた。
 湖と周囲の森が氷に侵食されている。春の幻想郷の中で、その場所だけ冬になっている。
「季節を無視した、ずいぶんとはた迷惑な異変ね」
 自然環境が明らかな異常をきたしているのに、霊夢は「はた迷惑」の一言ですました。以前にも春の時期であるはずなのに冬が続いた異変があったし、それ以外にも赤い霧が幻想郷を包んだり、いつまでも夜が続いたり、今よりも異常な異変を霊夢は体験してきたからだ。
 ちょうど凍った湖の中心部分に異変の元凶らしきものがあった。
 それは種子だった。大きさは大人の男程度で、種にしては異様に巨大だ。それだけではない。本来、種は植物の命を内包した物体であるにも関わらず、それからは生命とは真逆のおぞましさを感じる。
「アレです! アレがチルノちゃんに取り憑いて、湖を凍らしたのです」
 霊夢の隣に浮いている大妖精が、おぞましい種を指さして言った。種からは花びらの形をした青いオーラが発せられている
 よく見れば、種からは芽のような触手が生えていおり、氷の結晶に似た形の羽をもつ妖精を捕まえていた。彼女が大妖精の友人であるチルノで、冷気を操る妖精だ。
 霊夢は種に捕らえられたチルノの前に降り立つ。氷の上なので、滑って転ばないよう、拳一つ分は宙に浮く。
 大妖精はチルノがおかしくなったといった。おそらくはこの奇妙な種に取り憑かれたことで、冷気を操る力が暴走し、湖を凍らしたのだろうと霊夢は判断した。
「この子からアンタがおかしくなったって聞いたわよ。SEED異変で面倒な事になっているのに、面倒をかけないでちょうだい」
「れ、霊夢……違う……おかしくなっているのは……」
「あー、はいはい。さっさとその種を始末するわよ」
 見たところ周囲を凍らした程度で、ほかに実害らしい実害はない。霊夢はさっさと片付けて、神社でゆっくり茶を飲みたかった。
 霊夢は懐から攻撃用の札を数枚取り出して、それを醜悪な種に向かって放つ。彼女の力が宿った札は、空気抵抗を無視して弾丸のように突き進む。
 しかし、命中の直前、札が花びら状のオーラに触れると消滅する。どうやら、このオーラが種を守っているようだった。
「大きいだけの種がこしゃくね」
 札だけでは力が弱かった。霊夢はもっと大きな力、すなわちスペルカードを取り出す。
「チルノ、アンタを巻き添えにするかもしれないけど、妖精だからまあいいわよね」
 意識を集中させて、霊夢は力を使おうとする。しかし、背後から突然現れた殺気に、思わず攻撃を中断して回避行動をとる。
 霊夢の立っていた場所に、光弾が通り過ぎる。
「大妖精?! 何をするのよ!」
 霊夢を攻撃したのは大妖精だった。
「霊夢さん……私、言いましたよね? チルノちゃんを助けてって……なのに……どうして彼女を種ごと退治しようとするのですか?」
「退治って……妖精は人間と死なずに復活出来るのだから別に問題じゃない。それに、私だってちゃんと手加減するつもりだったわよ」
「嘘だ!」
 突如大声を張り上げる大妖精に、霊夢は初めて彼女の様子がおかしいことに気がついた。瞳は怒りと憎悪で満ちており、陽気でいたずら好きな妖精のものではない。
「そんなことを言って、霊夢さんはチルノちゃんを退治するつもなんだ。霊夢さんの嘘つき……嘘つきは殺してやる……死ね……死んでしまえ……死ね死ね死ねしねしねしねシネシネシネ……」
 霊夢は大妖精の頭で何かがうごめいているのを見た。それは大きさこそ違えど、チルノを捕まえているのと同じ種だった。
 種が発芽し、チルノを捕らえているのと同じ、花びらの形をした青いオーラが現れる。
 直感の優れた霊夢は、そのおぞましい花飾りが、大妖精を狂気に駆り立てている原因だと見た。





 時は少し巻き戻り、霊夢が博麗神社の境内を掃除している頃、大妖精とチルノはいつものように湖の近くで遊んでいた。
「ほらほら、大ちゃん見て! カエルの氷漬け」
 チルノは『冷気を操る程度の能力』を使って、近くを通りかかった不運なカエルを生きたまま氷に閉じ込めて、大妖精に見せる。
「チ、チルノちゃん、かわいそうだからやめようよ……ね?」
 妖精は皆いたずら好きだが、大妖精は生真面目でやや臆病な性格だった。
「むー、大ちゃんがそういうなら……」
 大妖精に言われ、チルノはしぶしぶカエルを氷から開放する。九死に一生を得たカエルは一目散に逃げていった。
「他の事で遊ぼうよ。カエルを凍らせるより楽しいの」
「そうだね! じゃあ、なにして遊ぼうか?」
「えっと……それは……」
 別の遊びを大妖精が必死に考えているその時、何かが湖に落ちてきた。同時に、森からでもはっきりと見えるほどの巨大な水柱が現れた。
「なんだろう? 大ちゃん、行ってみようよ」
「え? ま、待ってよ」
 妖精はあまり物事を深く考えない。それゆえに、チルノは自分の好奇心に従って、湖に落ちた”何か”を見に行ってしまった。
 置いていかれそうになった大妖精は、慌ててチルノを追いかける。
 二人が湖に到着すると、何かが落ちた衝撃で湖面が未だに波打っていた。
 二人の妖精が空中から湖を見下ろすと、落ちてきた何かの影が見えた。
「なんだろう? 結構大きいね。大ちゃん、もっと近くで見ようよ」
「危なくないかな?」
「大丈夫大丈夫。アタイってば最強だからね。だから心配ないよ」
「チルノちゃんがそう言うのなら……」
 もっとよく見るために、二人は湖に近づく。そして、手を伸ばせば水面に届く距離まで近づいたとき、水中から何かが飛び出して、大妖精の頭に命中した。
「だ、大ちゃん?!」
 頭を押さえて痛みを訴える大妖精に、チルノはオロオロとうろたえる。そんな彼女の背後に、木の根のような触手が現れた。
 後ろの気配に気がついたチルノは振り向く。湖に落下してきた何かがそこにいた。
 大きな種のようなそれは触手を伸ばしてチルノを捉える。
「な、なんだこれ? 離せ! 離せ!」
 チルノは触手から逃れようともがく。しかし、捕らえられたと同時に体の力が抜けていった。睡魔に襲われたかのように、頭がぼんやりとして、意識が曖昧になる。
 一方、湖には異変が起こっていた。チルノを捉えた種を中心に湖が凍り始める。それは冬場で見られるような生易しいものではなく、湖の底まで完全に凍結していく。その速度は尋常ではなく、わずか数分の間に春の湖に氷の世界が現れた。
「だ、大ちゃん……」
 かすむ視界の中で、チルノは親友がどうっているのかを見る。
 先ほどまで頭を抑えていた大妖精だが、突然に痛みが引いたようにおとなしくなる。
「チルノちゃん……大丈夫だよ……今、助けを呼んでくるからね……クスクスクスクスクス」
 チルノが見た大妖精は明らかに普段の彼女では無かった。





 そして今に至り、霊夢は狂気の大妖精と戦う事になった。
 大妖精が掌から光弾を発射する。
 早い攻撃だが直線的でフェイントも無い。霊夢は真上に跳んでやり過ごす。
 空中で大妖精の頭にある妖花に向かって、霊夢は一枚の札を投げる。しかし、チルノをとらえている種と同様に、妖花から発生しているオーラで無力化されてしまった。
 続いて霊夢は攻撃用札の束とスペルカードを取り出す。
「夢符『封魔陣』!」
 大量の札が大妖精に襲いかかる。宿っている力は先ほどよりもずっと強い。いくら奇怪な力を得ていようとも、妖精程度ならばこれで仕留められるはずであった。
 スペルカードを使った衝撃で、霜が土煙のように舞い上がる。
「氷符『アイシクルマシンガン』!」
 その時、舞い上がる霜の中から巨大なツララが機関銃のように霊夢へと襲いかかる。
 この程度の攻撃は、霊夢相手には不意打ちにすらならなかった。しかし、そのスペルカードを大妖精が使ったと言う事実が彼女を大きく驚かせる。
「なぜアンタがそのスペルカードを?!」
 氷符『アイシクルマシンガン』は大妖精のスペルカードではない。本来はチルノが使うものであった。
「クスクスクスクス。このお花を通してチルノちゃんが私に力を貸してくれるの。霊夢さんを倒せって、嘘つきを殺せって。クスクスククス……」
 妖精が浮かべるとは思えない邪悪さが、大妖精の微笑にあった。
 状況から察するに、チルノの力を取り込んだ種が、大妖精にそれを与えているようにみえる。ならば、あのおぞましい種からチルノを開放すれば、少なくとも大妖精は無力化出来る。
 だが、問題はどうやってあの種を退治するかだった。
 チルノの力を使う大妖精の攻撃をよけながら、霊夢は種を守っている力をどう排除するかを考える。
 それは、霊夢にとって非常にもどかしい事であった。今までの異変は小難しい事を考えず、ただ弾幕を撃ち合っているだけで解決出来ていた。
 これがスペルカードルールに則った戦いであるのならば、大妖精の繰り出す攻撃パターンを全て見切れば、戦う者の生死に関わらずそれで決着がつく。
 そういった、ある種の潔さのようなルールが幻想郷あったからこそ、神と妖怪と人間が暮らす世界で、互いを滅ぼそうとする戦いにまで発展しなかった。
 だが、大妖精はそのルールを無視し、狂気に身を委ねて攻撃してくる。決闘ではない。ただの殺し合いだ。
「氷体『スーパーアイスキック』!」
 飛び上がった大妖精が、チルノの冷気をまといながら、霊夢に向かって飛び蹴りを繰り出す。
 単純な攻撃で、一歩横に動くだけで簡単にかわせる。しかし、霊夢は直感的に危険を感じとって、大きく後ろに跳んで避ける。
 大妖精の蹴りが凍った湖面に命中した瞬間、彼女の周囲でツララが下から上へと一瞬で現れた。
 冷気とは別の理由で、霊夢は寒気を感じた。もしも、紙一重で回避しようとしたら、周囲に発生した逆さまのツララで貫かれていただろう。
 一番強いスペルカードなら、種を守っている力を強引に突き抜けて退治出来るかもしれない。しかし、もしも効果がなかったら? そう考える霊夢は切り札を使うのをためらう。
 その時、チルノと大妖精に取り憑いている種から、花びら状のオーラが突如として消滅した。
 何故と霊夢は思うが、今はそのようなことを考える必要はない。重要なのは勝機が現れたという事実のみだ。
 大妖精は花びら状のオーラが無くなっても、うろたえるような素振りは見せない。それどころか、そんな出来事など無かったかのように攻撃を続ける。
「氷塊『グレートクラッシャー』!」
 霊夢が行動するよりも先に、大妖精がスペルカードを発動させる。彼女の頭上に巨大な氷塊が現れた。
「潰れちゃえ!」
 大妖精が作り出した氷塊を霊夢に向かって投げつける。紙一重などと気取って避ける余裕など無い。氷塊の大きさは、全力で回避しなければならないほどのものだった。
 空気が震えるほどの轟音とともに、落下の衝撃で砕けた氷の欠片が飛び散る。
 攻撃を回避した霊夢は、大妖精が次の攻撃を始める前に、チルノを捕らえている種に向かって札を放つ。
 霊夢の力が宿った札は、命中と同時に種を消滅させる。
 戒めから解き放たれたチルノだが、彼女は気を失っており、そのまま氷の上に倒れる。
 同時に、大妖精の頭にある種も枯れ果てる。チルノと同様に、大妖精も妖花から開放された反動で気を失う。
 異変の原因を排除したのか、周囲の空気が変化した。先ほどまでは吐く息が白くなるほどの冷気に包まれていたが、急に暖かくなる。それに合わせて森と湖を侵食している氷が溶け始めた。
 気絶した妖精達をこのまま放置していくわけにもいかず、霊夢は二人を両脇に抱える。
「……さすがにちょっと重いわね」
 やや不安定ながらも霊夢は宙に浮く。強く自覚しているわけではないが、博麗の巫女として、異変解決の専門家として、二人にどうしてこのような自体になったのか、話を聞く必要がある。
 霊夢は博麗神社の方向へと飛び、チルノと大妖精を連れ帰っていった。





「……博麗さんはうまくやったようだな」
 背中から羽を生やした幼子二人を連れて行く霊夢の姿を、ゲイリーは湖の近くの森から見ていた。
 SEEDについて知識のなかった霊夢は知らなかったことだが、チルノを捕らえ、大妖精を狂気に染めたあの種こそがSEEDのコアであった。
 SEEDはあの種のようなコアを無数にばら撒き、そして周囲の環境をSEEDと同化させる。
 湖と周囲の森が氷に侵食されたのは、SEEDに同化される過程の一つであり、あのまま放置しておけば、この辺り一帯はSEEDの巣窟になっている所であった。
「なんとか、SEEDコアのブルーメを消すことが出来たが……」
 SEEDコアを守っていた、花びら状のオーラは、ブルーメと言う強力なバリアであった。
 ブルーメはゾーマと言うエネルギーの供給源を必要としており、それは湖の周辺の森にあった。
 ゲイリーはそれを影で破壊して回っていたのだ。そして、全てのゾーマを破壊した事でブルーメが消滅し、霊夢はチルノと大妖精をSEEDから開放することが出来た。
「くそ……もうここまでか……」
 ゲイリーの体はあちこちが破損し、特に右腕は完全に欠損していた。移動しながら戦っていたので、失われた腕がどこに落ちているのか分からない。
 ゾーマの周囲はSEEDによって凶暴化したグラールの生物で守られていた。ゲイリーは一人でその全てと戦った。
 たった一人で大量の敵と戦い、満身創痍となったゲイリー。無関係を決め込んで霊夢を助けないと言う選択肢もあった。助けようとして見つかってしまえば、SEEDを引き寄せる原因としてまた始末されるかもしれないからだ。
 しかし、ゲイリーはそれをしなかった。おそらく、SEEDがこの場所に現れたのはAフォトンリアクターを持つ自分を狙ってのこと。自分の巻いた種を放置するほど、ゲイリーは無責任では無かった。
 生き残るという事のみを考えれば、ゲイリーの責任感は合理的では無かった。しかし、彼の歩んできた二十年以上の経験は人間味をもたせ、機械の体を罪悪感で動作させる影響力があった。
 ゲイリーの意識が遠のく。キャストは受けたダメージを生身と同じように痛覚として感じる。そして、痛覚を知らせるデータが、脳と同じ機能をはたす制御装置に負荷を与えることで、キャストは気絶してしまうのだ。
 ゲイリーは前のめりに倒れる。
 薄れゆく意識の中で、ゲイリーが最後に考えていた事は、何故SEEDがあの氷の結晶のような羽根をもった少女を取り込もうとしたかという疑問だった。
 SEEDがグラールを襲った時、あのような行動をしたという記録はない。
 幻想郷と言う環境を侵食するために、SEEDは変化しようとしているのか。
 そう考えるゲイリーではあったが、答えが出る前に彼は気を失ってしまった。
 黒い雲が現れ、雨が降り出した。
 誰もいない森の中で、気を失っているゲイリーは一人雨に打たれ続ける。このまま、朽ち果ててしまうかと思われたその時、誰かが彼に近づいてきた。
「やれやれ、ようやく見つかった。君は機械の人形とはいえ、人間でもあるから、ダウジングの精度が鈍くて苦労したよ」
 レインコートを身につけている彼女は、ネズミのような耳と尻尾を持っていた。首からはペンデュラムをネックレス代わりに下げている。
 彼女の名前はナズーリン。人と妖怪の平等を説く、命蓮寺の一員であった。

第6話へ続く


補足
 今回、チルノの力を取り込んだSEEDが、大妖精にチルノの技を使えるようにしたとしました。これは、SEEDは他の生命を侵食するという設定があるので、侵食した対象が持つ能力を使えるのではないかという、私の個人的な世界観に対する解釈です。

 私の筆力不足でわかりにくかったかもしれませんが、大妖精に取り憑いたSEEDはチルノに取り憑いたSEEDの一部であり、それで二つがリンクして大妖精がチルノのスペルカードを使えるようになったと言うわけです。

 ちなみに、チルノのスペルカードを「アイシクルフォール」や「パーフェクトフリーズ」などの有名なものではなく、東方非想天則で登場したスペルカードばかりなのは、単純にそのほうが文章でのアクションの描写がやりやすかったからです。
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by ginseiseki | 2010-06-12 16:51 | 二次創作小説
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