銀星石のブログ

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銀星石のエッセイブログ

PSU&東方クロスオーバー小説 第4話 Act1

 このクロスオーバー小説も早4話。おそらくは10話以内で収まるの思うのですが、どうも最近は文章が長くなる傾向にあります。




出典元
SEGA『ファンタシースターユニバース』
上海アリス幻樂団『東方Project』

東方幻想惑星~キャストが幻想入り~
第4話 青い機人は刃を振るう



 グラール太陽系の惑星ニューデイズは、ニューマンという種族が暮らしている。木材を多用した建築物が目立つ街並みからは、彼ら独自の文化を垣間見ることができた。
 八雲紫と八雲藍はニューデイズのとある街を歩いていた。
 二人はグラールに合わせて人間を装っていた、元々人間と全く変わらない姿の紫はもちろんのこと、藍も九本の尻尾を妖術で完全に隠していた。
 レディーススーツを着ている二人の姿は、キャリアウーマンとその後輩のように見える。グラールの人間が彼女たちを見て、まさか異世界の妖怪という生命体だとは思わないだろう。
「紫様、いったいどこに向かっているのですか」
 主の突拍子もない行動には慣れているが、さすがの藍もいきなり異世界に連れて来られたのでは、不安な声を上げずにはいられない。
「ちょっとした人探しよ」
 異世界に来た時点で、もはや「ちょっとした」という段階を超えていた。
「いたわ。藍、あの青い制服を着ているのが、私の探していた者よ」
 その者は人を守る事を生業としているガーディアンズの制服を着ていたので、街中でもすぐ分かった。
「な! そ、そんな……」
 その者は藍の想像していたことから大きく異なる人物だった。
「ゆ、紫様……これはいったい? なぜ彼女がここに……」。
「あなたが見た通りよ」
「彼女がグラールにいるなんて、ありえません!」
 目の前の事実を否定しても藍が愚かということにならない。なぜならば、”この光景”を見た者は、まず彼女と同じ反応をするだろう。
「現にこうして、彼女は存在しているわよ。それに、藍の言うあり得ない事なんて、『この世そのもの』では平凡な事よ」





 幻想郷の人里には「赤木屋」という酒屋がある。そこの若き女店主である赤木鳩美は、わずかに鬼の血を受け継いでいた。
 鬼の子孫といっても、人との間に子をなしていくうちに、鳩美の世代では鬼の血が薄くなった。
 なので、鳩美には鬼の角は無い。肉体はほぼ人間のもので、男並に力持ちで、妖怪と同じくらい酒に強い程度だ。
 その鳩美は先祖の鬼から、『酒虫』という生物を受け継いでいた。これは鬼がいつでも酒が飲めるようにと生み出した生物で、水を与えると酒を生み出す。
 鳩美は酒虫の品種改良の才能があった。彼女が酒虫で作る酒は、人からも妖怪から好まれ、『美味しい酒を作れる程度の能力』を持っていると言わしめるほどだった。
「うん。これはもう大丈夫そうですね」
 鳩美は酒蔵にあるツボをのぞきこんで、中にある酒の状態を確認した。
 赤い液体の中にサンショウウオのような生物がいる。これが酒虫だ。
 このツボで作っているのは赤ワインだった。水を与えると酒を生み出すのが酒虫だが、鳩美が品種改良したこの酒虫は、ぶどうの果汁を与えるとワインを生み出す。
 ツボのワインは完成していたので、鳩美は中から酒虫を引き上げる。完成と言っても、まだまだ若い新酒なので、味に深みをもたせるためにはじっくりと熟成させなければならないが、宴会で飲む程度には十分だ。
「鳩美はいるか?」
 客が来たようだ。
「はーい! 今参ります」
 鳩美は店先へと向かう。
「よう! 元気にしているか?」
 客は魔法の森に住む霧雨魔理沙だった。彼女とは最近知り合い、大切な顧客の一人だ。
「はい。おかげさまで。それで、ご要件は?」
「ああ。日暮れ辺りに博麗神社の方に酒桶二つ分を持ってきてくれないか?」
「かしこまりました。お酒はいつものでよろしいですか?」
「ああ。頼むぜ」
 用事を済ませた魔理沙は箒にまたがって空へと消えていった。
 博麗神社から大量の酒の注文が来たので、鳩美には神社で宴会が行われることが分かった。
 鳩美は神社に納める酒を出すために、酒蔵へと戻る。
 蔵いっぱいに並んでいる酒桶の中から、鳩美は二つ運び出す。
 中に入っているのは鳩美自身が作り出した銘柄の酒だ。それまでは人里にある酒屋の一つに過ぎなかった赤木屋であったが、この酒のお陰で、名店としての格を手に入れた。
 鳩美は酒桶を外の荷車に載せる。普通ならば女の細腕では持てない重さだが、鬼の血が流れている鳩美は男並の力を持っていた。
 酒桶を乗せ終えた鳩美は、荷車から転げ落ちないようにしっかりと縄で縛る。後は、夕方に博麗神社へ配達すれば良い。





「よう、ゲイリー! いるか?」
 ノックもせずに魔理沙は元気よくゲイリーの家の玄関を開ける。
「霧雨さんか。俺に何か用か?」
「いや、特に用はないぜ。人里に来たついでにお前の顔を見ようかなって思っただけさ……って、何やってんだ?」
 ゲイリーは執務机で新聞を呼んでいた。近くには茶の入った湯のみがある。
「見ての通り、茶を飲みながら射命丸さんの新聞を呼んでいるが?」
「いや、お前って茶を飲めるのか?」
 人と全く同じように考え、行動するゲイリーではあるが、体は機械なのだ。魔理沙は彼が茶を飲むという行為に驚く。
「まあ、幻想郷では不自然かもな。だが、俺にとってはごく自然なことだ。キャストは食品からもエネルギーを得ることができるからな」
「そうなのか?」
「なにかが活動するためには相応のエネルギーが必要だ。マーガトロイドさんの人形も、彼女の魔力というエネルギーが無ければ稼働することは出来ないからな」
「お前も魔力とかそんなもので動いているのじゃないのか? たしか……フォトンだっけ?」
「まあ、確かにフォトンだけで活動はできるが、激しく体を動かす場合はそれだけでは足りないことがあるんだ。それを補うために……」
「飯を食うってか?」
「そうだ。摂取した食品を完全にエネルギー化するから、生身の人間よりもずっと少食で済むがな」
 キャストは食事ができる。その話を聞いた魔理沙はあることを思いついた。
「そうだ、ゲイリー。今晩、暇か?」
「ああ」
「なら、博麗神社にこいよ。今日は宴会をやる予定なんだ。飲み食い出来る体なんだから大丈夫だろう」
「……宗教施設でそんな行為をしても問題ないのか?」
「大丈夫大丈夫。巫女の霊夢が良いって言っているんだから」
「ふむ……分かった。日没に合わせて神社に行こう」
「あいよ。私は他の面子集めてくるぜ。じゃあな!」
 ゲイリーに神社で行われる宴会のことを伝えた魔理沙は、参加者を集めるために幻想郷を文字通り飛び回った。
 しかし、不思議なことに、いつもよりも参加者が少なかった。新顔のゲイリーがいるのだから、一緒に飲もうと言っても、誰もが言葉を濁して断った。
 結局、今回の宴会に参加するのは、霊夢と魔理沙の他に、アリス、射命丸、椛、最後にレミリアとお供の咲夜くらいだった。
 一通り声をかけ終えた魔理沙は神社へと戻る。神社では霊夢が宴会料理を作っており、それを手伝ったり、味見と称してつまみ食いをしたりして、日暮れまでの時間を潰した。
 その間に、アリスや射命丸など、参加者がだんだんと集まってきた。
「おーい、霊夢! そろそろ鳩美が酒を持ってくる頃だから、下で待っているぜ!」
 霊夢の返事を聞かず、魔理沙は神社の石段を駆け下りる。
 魔理沙が石段を降りた時、ゲイリーが機械仕掛けの馬(フローダーというらしい)に乗ってやって来た。
「お! 来たな」
「わざわざ迎えに来たのか?」
「いや、そろそろ注文した酒が届く頃だからな。受け取りに降りてきただけさ」
 その時、魔理沙の後ろから荷車を動かす音が聞こえてきた。振り返ってみると、鳩美が酒桶を運んでいる姿があった。
「いつもお世話になっております赤木屋です。ご注文の品をお届けに上がりました」
 魔理沙は霊夢から預かっている代金を鳩美に渡す。
「そうだ鳩美。お前も宴会に参加しろよ。今日は集まりが悪くてな」
「え? いや、しかし……」
「遠慮することないさ。鳩美だってかなりイケる口だろう? 前々から一緒に酒を飲んでみたかったんだ」
「分かりました。それでは、お言葉に甘えさせていただきます」
 魔理沙はゲイリーに酒桶を神社まで運んでもらおうと思った。しかし、彼の様子がおかしいことに気がつく。
 普段は冷静な表情をするゲイリーだが、今の彼は目を見開いて、ひどく驚いているようだった。
「き、霧雨さん……彼女は?」
「鳩美のことか? 最近知り合った酒屋さ。これがなかなか旨い酒を作るヤツなんだぜ」
「赤木鳩美と申します。スー様のご活躍はお聞きしています」
 鳩美は商売を担う者らしい丁寧なお辞儀をした。
「赤木……鳩美……」
 ゲイリーの視線はなぜか鳩美に釘付けになっていた。
 酒桶を神社まで運び、夜になるとレミリアと咲夜がやって来た。参加者が全員そろったことで、待ちわびた宴会が始まる。
 だが、その最中もゲイリーの様子はおかしいままだった。魔理沙や他の者が話しかけても、心あらずといった雰囲気で、気がつくと鳩美を見つめていた。
 鳩美はというと、彼女はわりと鈍感なほうなので、ゲイリーの様子がおかしいことに気付かず、「今後も赤木屋をよろしくお願いします」と他の者に酒をついでいた。
「霧雨さん……すこし良いか?」
 ほどよく酔いが回って心地よくなってきた頃、ゲイリーが魔理沙に小さな声で話しかけてきた。
「うん? なんだ?」
「彼女……赤木さんの事を何か知っていたら教えて欲しい」
「鳩美の事か? まあ見ての通り、大人しそうなヤツさ」
「彼女とはいつ頃知り合った?」
「そうだなぁ……ちょうど二、三ヶ月くらい前かな? 人里をぶらついていたら赤木屋を見つけて、気まぐれで酒を買ったらこれがとても旨い酒でな。それからずっと赤木屋で酒を買うようになったから知り合うようになったぜ」
「つまり、霧雨さんは出会う前は、赤木さんが幻想郷にいたかは分からないと言う事か?」
「まあ、そうなるな」
 変なことを聞くヤツだと魔理沙は思ったが、酔っていたので深くは考えなかった。
(そうか! なるほど、なるほど)
 魔理沙はある事に気がついた。その発見に彼女はほくそ笑む。
(ゲイリーのヤツ、鳩美に一目惚れしたな)
 鳩美は化粧っけも無く地味な容姿だが、男受けしそうなおとなしい女だ。
「少し風に当たってきますね」
 一つ目の酒桶が空になり、二つ目の酒桶も半分ほどに減った頃、鳩美がそう言って外に出た。
 それを目にしたゲイリーが立ち上がる。
「どうしたんだ、ゲイリー?」
 魔理沙は訪ねる。
「彼女と話がある」
 ゲイリーは鳩美に続いて外に出て行った。
「おい、アリス、アリス」
 魔理沙は隣に座っていたアリスに呼びかける。
「何よ」
「こっそりゲイリーの後をつけようぜ」
「どうしてそんな事をする必要があるの?」
「見た所、ゲイリーは鳩美に一目惚れしているな。話ってのは十中八九、愛の告白だぜ?」
「な、何ですって!?」
「こんな面白そうな事、めったに無いだろうしさ。こっそり覗いてみようぜ」
「もちろんよ。キャストに恋愛感情があるかどうか確かめる貴重なチャンスよ」
 盛り上がる魔理沙とアリスに、射命丸も加わってきた。
「あややや。なにやら特ダネの匂いがしますね」
「おい、霊夢は来るか?」
「別に興味ないわ。私はこのままお酒を飲んでいるから」
 霊夢も誘ってみる魔理沙だが、他人に対しての関心が希薄な彼女らしい返事が帰ってきた。
 他の者達も特に興味が無いので、魔理沙はアリスと射命丸と共に、気付かれないようゲイリーを追いかける。
 ゲイリーと鳩美は賽銭箱の前にいた。
「スー様も夜風に当たりに来たのですか?」
 鳩美の問いに、ゲイリーは無言のままでいた。
 その様子を、魔理沙達三人は物陰から見守る。
「どうやって、幻想郷に来た?」
「はい?」
 ゲイリーの不可解な問いに鳩美は素っ頓狂な声を上げてしまっていた。
「いや……方法などどうでも良いか。重要なのは貴様が俺を追いかけてきたと言うことだ」
「ス、スー様? いったい何を仰っているのですか?」
「とぼけるな!」
 ゲイリーが大声を上げる。
「な、なにやら不穏な空気ですね。魔理沙さん」
「あ、ああ。そうだな、文」
「どうやら、ゲイリーと鳩美の間になにかあるようだけど。よく分からないわね」
 ゲイリーが愛の告白をすると思っていた魔理沙だが、事態はおかしな方向へと進んでいた。
「俺は忘れていないぞ。鳩美、貴様の裏切りを。また俺を封印しに来たのだろう? 前は不覚をとったが今度はそうは行かない。お前はもう相棒などではない! 殺すべき敵だ!!」
 何を考えているのか、ゲイリーがセイバーと言う光る剣を取り出して、その切っ先を鳩美に向けた。
「まずい!」
 魔理沙は飛び出してゲイリーを止めようとした。しかし、彼はすでに剣の刃を鳩美に振り下ろそうとする瞬間だった。
「やめろ! ゲイリー!!」
 魔理沙が叫んだその瞬間、ゲイリーの体が一瞬硬直すると、糸の切れた人形のように倒れた。
「やれやれ、ギリギリだったわね」
 声のする方向を魔理沙が見ると、八雲紫が銃を持っている姿があった。
「ゆ、紫……」
「大丈夫よ。これはグラールから持ってきた、キャストを気絶させるための銃。ゲイリー・スーは死んでいないわ」
 倒れたゲイリーを見れば傷はない。
 騒ぎを聞きつけて、中にいた者達も外に出てくる。
「紫!? ちょっと、私の神社で何やってんのよ」
 場の様子を見た霊夢は紫に詰め寄った。
「ゲイリーが鳩美を殺そうとしたから止めた。それだけよ」
 紫は淡白に答える。
「どうしてゲイリーが鳩美を殺そうとするのよ。魔理沙! 貴方は事の次第を見ていたのでしょう。何があったの?」
「わ、分からないんだ。ゲイリーは前から鳩美を知っているみたいだけど、どうして殺そうとしたのかなんて……」
 突然の出来事に、魔理沙も平静を保っていられない。楽しいはずの宴会が、どうしてこのようになってしまったのか分からない。
「紫。霊夢たちにもゲイリーの宿命について話してあげたらどう? この騒動はそれが関係しているのでしょう」
 唐突にレミリアが声を発したので。全員が彼女に注目する。
「……それもそうね。今が、その時なのかもね」
 紫が宙を指でなぞる。そこから空間に人ひとり入れる程度のスキマが生まれる。
「この中に入れば、ゲイリー・スーの物語を見ることが出来るわ。そうすれば私が彼を幻想郷に連れてきた理由も分かる。そして……」
 紫が鳩美を見る
「なぜ、彼が赤木鳩美を憎んでいるのかも」
 鳩美は倒れているゲイリーを見た。その表情はいまだ青ざめている。
 鳩美の表情に魔理沙は無理もないと思った。見に覚えの無い憎しみをぶつけられ、あやうく殺されかけたのだから当然だった。
 一人づつ、紫の生み出したスキマの中に入っていく。だが、鳩美だけはその場に立ち尽くしていた。
「鳩美……」
 こういう時、魔理沙はどのような言葉をはっすればよいのか分からなかった。
 だが、鳩美は何か決心したような表情を見せた。そして、迷いを見せない足取りで紫のスキマへと入っていった。
 そして、最後に魔理沙がスキマの中に入っていく。

 Act2へ続く
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by ginseiseki | 2010-05-30 17:49 | 二次創作小説
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