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銀星石のブログ

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銀星石のエッセイブログ

PSU&東方クロスオーバー第2話 Act1

 前回からだいぶ間があいてしまいましたが、PSUと東方のクロスオーバー小説の第2話が完成しました。

 ちなみに、この回で語られる「キャストの自我」については私が個人的に解釈したもので、公式設定ではありません。





出典元
SEGA『ファンタシースターユニバース』
上海アリス幻樂団『東方Project』

東方幻想惑星~キャストが幻想入り~
第2話 紅い悪魔は銃把を握る Act1




 ゲイリーの故郷であるグラール太陽系。そこにはヒューマン、ニューマン、ビースト、キャストの四種族が共存している。
 惑星パルムの衛星軌道上に存在する巨大な建造物。それはガーディアンズコロニーと呼ばれ、およそ百万人の人間が中で生活している。
 そこはガーディアンズと呼ばれる民間警備会社の拠点に過ぎなかったのだが、拡張工事を繰り返していくうちに、一つの自治区として認知されるようになった。
「以上が現段階における、ゲイリー・スーの捜索状況です」
 ガーディアンズ総裁、ライア・マルチネスは、桃色の髪の毛が印象的なキャストの少女ルウから、失踪したゲイリーの捜索状況を聞いていた。
 ライアはまだ二十八歳の若輩で、組織の長を担うには経験不足だが、若さゆえの情熱と周囲の協力によって、なんとか自らの仕事を果たすことが出来ていた。
「そうか……」
 ライアは複雑な表情で椅子の背もたれに身を預ける。
「こんなことを言うのは今さらだが……彼女に任せて良いのか?」
「良いのか……とは、どのような意味でしょうか?」
「ゲイリーを倒したのは彼女だ。その彼女にゲイリーを探させ、もう一度封印させる。二度も敵役を押し付けて良いのかと言うことさ」
「ですが、失踪したゲイリーの捜索は彼女自身が申し出たことです。『これは私自身がしなければならないこと』とも言っていました」
 ゲイリー・スーは元々ガーディアンズに所属するキャストだった。しかし、彼の秘密が発覚した時は、封印する以外に手段はなかった。
 ライアとルウが言う『彼女』とは、ゲイリーの同僚であった。彼女はかつての仲間であるゲイリーと戦い、そして封印した。
 二度も仲間に手をかける。総裁である以上、時には非情な心を持たなければならないと理解しているライアだが、それでも心苦しかった。





 一方、その頃の幻想郷。
 アリスは魔法の森の入り口にある、香霖堂という道具屋に向かっていた。そこは森近霖之助という男が、幻想郷の外から迷い込んできた物品を売っていた。
 異世界グラールからやって来たゲイリー・スーは機械仕掛けの人形でありながら、自らは人間であると言った。それは、アリスが目覚める自ら動き、思考する『自律人形』の完成形でもある。
 異世界の物品を扱うならば、ゲイリーを作り出した技術についての文献が見つかるかもしれない。
「相変わらずゴミ捨て場みたいな店ね」
 香霖堂の入り口に降り立ったアリスは一言そうつぶやいた。店主である霖之助は商品であると主張するだろうが、丁寧に陳列されず、ただ乱雑に店先に置かれてしまっては説得力は皆無だった。
「ちょっと邪魔するわよ」
 アリスは香霖堂に入る。店の中はさらに乱雑で、客に親切とは言い難い。
「これはナノトランサーという。このように操作すれば、物品を特殊な空間に格納できる」
 意外にもゲイリーがいた。彼は店にある商品を手にとり、霖之助にその使い方を教えていた。
「何をしているの?」
 アリスは訪ねる。
「ああ、アリスか。なに、グラールと言う別世界からの物品を大量に仕入れてね。使い方がよくわからなくて売り物にならないから、それを知っている彼に教えてもらっているのさ」
 香霖堂には直感的に使い方が分からない珍品があり、それらの多くは誇りを被ったオブジェになっていた。
「ところで、何かお探しかい?」
「ええ、そのグラールにまつわるものをね。キャストについての文献があれば欲しいのだけど」
「う~ん。残念だけれどグラールからやって来た物品の中に書物はないな。もし仕入れたらとっておこうか?」
「そうして頂戴」
 目当ての物が無いのは残念だが、所詮は参考文献に過ぎない。最も重要な研究対象は目の前にいる。
「マーガトロイドさんはキャストに興味があるのか?」
「ええ。私は人形造りをしているのよ。最終的には自分の力でキャストのような存在を作り出してみせるわ。だから、その為にもゲイリーからいろいろ聞きたいことがあるの」
「そうか……ならば俺の家で話そう」
 三日前、緑鬼(ゲイリーによるとヴァンダという名前らしい)が人里を襲った事件の後、ゲイリーは里の長から、雑魚妖怪退治を条件に人里の端にある空家を借り受けていた。
「そうか。なら、帰る前に受け取って欲しい物がある」
 霖之助にはグラールの道具の使い方を教えてもらった報酬を渡すと言ってきた。
 外に用意してあると言うので、ゲイリーは霖之助に案内されて店を出る。アリスも興味本位でついていくことにした。
「これは……」
 それはアリスにとって見たことも無い物だったが、ゲイリーには馴染みのある物だったらしい。馬の鞍のような物があるので、もしかしたら乗り物なのかもしれない。
「良いのか? フローダーはかなり高価なものだぞ」
「買い手が付かないから別に構わないさ。幻想郷でそれを必要としているのは、おそらく君だけだろうからね」
「そうか、ならばありがたく頂こう」
 ゲイリーは『フローダー』と呼んだ物に刺さっていた鍵をひねる。すると、駆動音と共に機体がわずかに宙へと浮いた。
 ゲイリーがフローダーにまたがる。もう一人分ほど乗ることが出来るスペースが有ったので、アリスは彼の後ろに座った。
「マーガトロイドさん?」
「どうしたの? 早く行きましょう」
「いや、貴女は空を飛べるのでは?」
「飛べると言っても疲労はあるのよ。さあ早く」
 ゲイリーは「わかった」と言うと、機体にあるグリップを捻った。すると、まさに馬が走りだすかのようにフローダーは前進した。
 機械が機械を乗り回す。その事にアリスは一種の可笑しさを感じるが、口には出さない。初めてゲイリーと出会った時からそうだが、彼は自分を人間扱いしてもらうことを強く望んでいた。
 ゲイリーに敵意を持たれるような行為は慎まなければならない。彼からはキャストに関する様々な情報を手に入れなければならないからだ。
 魔法の森から人里までは、早馬を急がせた程度の時間で到着した。
 ゲイリーの仮屋が見えてくる。洋風の佇まいで、幻想郷では珍しい造りの家だ。
「あれは……」
「どうしたの?」
 アリスはゲイリーの家の前に誰かが立っているのを見る。
 黒髪の少女だった。白いブラウスに黒いスカートを身につけ。首からは写真機を下げている。
「あややや。なんとも意外な取り合わせですね」
「耳が早いわね。異世界人の取材?」
「ええ、もちろんですとも。新聞記者たる者、情報は素早くキャッチしなければなりませんからね」
「マーガトロイドさん、彼女とは知り合いか?」
「ええ、そうよ。射命丸文。鴉天狗の新聞記者よ」
 アリスはゲイリーに射命丸を紹介する。彼女は『文々。新聞』という新聞を書いている記者だった。
「外界とは別の異世界である、グラール太陽系からやって来た異邦人! これで取材しなかったら記者の名折れですよ」
「そう。悪いけど私は彼からキャストの事を聞きたいの。取材は今度にして頂戴」
 野良猫を追い払うような口調で言うアリスだが、射命丸は引き下がらなかった。
「いえいえ、お構いなく。私もアリスさんと同じことが知りたいですからね。黙って横にいますよ」
 話を勝手に進める射命丸だが、最低限の礼儀として取材相手であるゲイリーに許可を求めた。彼は「いいぞ」と無表情に快諾し、アリス達を家の中へ招き入れる。
 ゲイリーがこの家を借り受けた時、アリスもその場にいた。里長によると、以前は誰かが何かの商売をしていたのだが、今は使われていないと言う。
 ゲイリーが玄関を開ける。前の家主がどのような商売をしていたのか分からないが、執務机と空っぽの本棚しかない内装を見れば、物品を売買する類でないことは明らかだ。
「悪いが幻想郷に来たばかりで、客をもてなす茶を調達していない」
「いえいえ、構いませんとも。私はお話さえいただければそれで十分ですから」
「私も同じよ。茶飲み話をするために来たのではなわ」
「そう言ってもらえると助かる」
 三人は窓際に二つある接客用のソファーに座る。アリスと射命丸が並んで座り、対面にゲイリーが座った。
「さて、まずは何から話そうか」
「キャストが生まれた経緯から話して欲しいわ」
「ふむ……俺達キャストの元となった人型作業機械はかなり昔から存在し、労働力として使用されていた。だが、与えられた命令しか実行できず、その命令の内容も僅かでも曖昧では正常に稼働しないと言う欠点があった」
 その部分に関しては、アリスの操る人形も同様の問題を抱えていた。直接操作せずとも、簡単な命令ならば実行できるが、融通が効かないので単純な作業しか行えなかった。
「そこで、人間の脳と全く同じ働きをする制御装置が開発された。結果、キャストは人間と同じように思考することが可能となり、同時に自我も発生した。その後、キャスト達は人間であると認められ、グラールには『機械の体を持つ人類』が生活するようになったのだ」
 人間の脳と同等の機能を持つ制御装置。それがアリスの魔法で実現可能なのかは別として、研究する価値は十分にあった。
「ならば、その装置さえ作り出せれば、自律人形も可能ね……」
「いや、そう簡単にはいかない」
「なぜ?」
「その制御装置が発明されたことで、従来の作業機械には不可能な複雑な作業を行えるようになったが、その為にはキャストも人間と同じように教育を受ける必要が出てしまったのだ。最低でも一ヶ月は必要な教育を受けなければ、キャストは人間として活動出来ない」
 一瞬、希望が見え始めたアリスだったが、ゲイリーの言葉に若干の落胆を覚える。それでは、子を産み、育てるのと対して違いはないと思った。
 とは言え、困難だからこそあえて実現させる事は一つの意義がある。人形使いとしてのプライドが、アリスに些細な事で挫折させない強い心持ちを与えていた。
 その後のアリスはキャストのことだけでなく、純粋な好奇心からグラールという世界についていくつかゲイリーに質問した。横では必死に射命丸がメモをとる。
 グラールには『フォトン』という魔力や霊力に近いエネルギーが存在するのだと言う。そして、魔法や秘術の類は科学的に解明され、『テクニック』と呼ばれるようになった技術は、最低限のレベルならばゲイリーのような機械の体を持つ者でも、魔法を使うことが出来るのだと言う。
「そろそろ、失礼するわ。なかなか有意義な時間だったわ」
「では、私も失礼します」
 思いつく質問を全て終えたアリスはソファーから立ち上がり、射命丸もそれに続く。
 アリスが玄関の扉を開ける。ひらりと何か白いものが落ちた。
「あら?」
 アリスはそれを拾う。それは封筒だった。誰かが扉の隙間に差し込んだのだろう。しかし、家主は在宅しているのに、無言で置くだけなのは奇妙であった。
「ゲイリー、あなた宛だわ」
 アリスはゲイリーに封筒を渡す。
「俺宛に?」
 ゲイリーが奇妙に思うのも無理はない。彼は幻想郷に来てから三日しかたっていないのだ。
 ゲイリーは封筒を開け、中にある手紙を読む。
「マーガトロイドさん、射命丸さん。この手紙の主が誰なのか知っているか?」
 ゲイリーは読み終えた手紙をアリスに渡した。



 謹啓
 幻想郷での新しい生活、いかがお過ごしでしょうか。
 突然に、一面識もございませんのにお手紙を差し上げる非礼をお許しください。
 私は紅魔館の当主を務めているレミリア・スカーレットと申します。
 つきましては、先の妖怪退治でご活躍されたゲイリー・スー様に、貴方様の故郷であるグラールについてのお話を賜りたくお願い申し上げる次第です。
 日時はご都合の宜しい時でも構いません。私は貴方様のご来訪を心よりお待ちしております。
 敬具



 瀟洒《しょうしゃ》で完璧な字で書かれた、品の良い手紙だった。
 アリスはレミリアと言う人物を知っていた。だが、彼女はこのような手紙を書く性格ではない。大方、従者のメードにでも書かせたのだろう。
「山の麓にある湖の事は知っている?」
「ああ。里の人間から大まかには」
「彼女はそこの湖畔に住んでいるわ。紅魔館は真っ赤な屋敷だから、湖に行けばわかるわ」
「そうか、ありがとう」
 アリスは手紙をゲイリーに返す。彼はもう一度手紙を読み返した。
「紅魔館に行くつもり?」
「そのつもりだ。幻想郷でしばらく暮らす以上、面倒なトラブルを発生させないためにも、住民との交流は必要だ」
 アリスも他人とのトラブルを嫌うが、ゲイリーとは異なり、霊夢や魔理沙などの腐れ縁を除いて、他人との交流を極力避けてきた。なので彼の考えに意外性を感じた。
「そうそう、レミリアさんには気を付けた方がよろしいですよ。なんたって、彼女は吸け……モガモガ」
 アリスはレミリアのことをゲイリーに話そうとする射命丸の口をふさぐ。
「スカーレットという人物は何か問題でもあるのか?」
「彼女、ちょっと気難しいところがあるのよ。それに結構わがまま。子供っぽいとも言えるわね」
「ふーむ」
 ゲイリーは深刻に考えている様子は無かった。だが、それはアリスにとっては好都合だ。レミリアに対しての情報は極力少ない方が良い。
「それじゃ、今度こそ失礼するわ」
「今後も清く正しく射命丸をよろしくお願いいたします」
 アリスは射命丸と共にゲイリーの家を後にする。
「アリスさん、一体どうされたので?」
 帰り道(空を飛んでいるが)で射命丸がアリスに問いかけてきた。
「ゲイリーにレミリアが吸血鬼だと教えなかったこと?」
「ええ」
「ちょっとした実験みたいなものよ。心を持った人形が、初めて吸血鬼を目にする時、一体どのような感想をもつのかね」
「ははぁ、たしかに興味深いですね。彼の話から察するに、グラールには吸血鬼がいないようですから、どんな反応をするか見ものです」
 その後、射命丸は次の取材があると言ってアリスと別れた。
 ふと、アリスは空中で後ろを振り向く。小さくなった人里が見えた。
「吸血鬼と出会った貴方はどう感じるの? 本当に人間らしく恐怖心をいだくのかしら? もしくは、単に感情があるかのように振舞っている?」
 七色の魔法使いがうっすらと浮かべる笑みは、どこ人々が畏れる魔女らさがあった。





 翌日。
 人里では『霧の湖』と呼ばれる湖の畔にある紅魔館。その名の通り赤い建物である。
 紅魔館は窓が少ない。それはこの館の主が吸血鬼だからだ。不死者の王と言えども、日光の下ではその不死性が維持出来ない。
 紅魔館の地下には広大な図書館があった。その蔵書量は、人の一生では読みきれそうにない。
 地下の淀んだ空気の中、一人で本を読む少女がいた。病弱な雰囲気が感じられる。紫色のローブを身につけている彼女は、パチュリー・ノーレッジ。紅魔館当主であるレミリアの友人で、この図書館を任されていた。
 パチュリーは生まれながら生命体としての魔法使いであり、人間の何倍も生きていた。永遠の生涯の中で読書と魔法の研究をしており、この図書館の蔵書の多くは彼女の著作である。
 最近の彼女は外の世界から迷い込んできた本を読んでいた。
「パチュリー様、お茶をお持ちいたしました」
 手品師のように一人のメードが突如姿を現した。銀髪が印象的な彼女は十六夜咲夜。紅魔館の家事を取り仕切る立場にいた。手に持っている盆には華奢なティーカップと、紅茶を入れたポッドが乗っている。
「ありがとう、咲夜」
「今日も外の世界の本をお読みになられているのですか?」
 机の上には大量の本が乱雑に置かれている。咲夜はわずかに残されたスペースに、紅茶のカップとポットを置く。
「厳密に言えば外の世界の本ではないけれどね」
「どういう意味でしょうか?」
「今、私が読んでいる本は、外界でもない全く別の世界からやって来た本よ」
「三日前、人里に現れた機械人形がやって来た、グラールという世界のですか?」
「もちろん、それも含まれているけど、グラール以外の複数の異世界の本も幻想郷に紛れ込んでいるわね」
「異世界が数多く存在すると言うことですか?」
「その通りよ。奇跡の宝石カオスエメラルド、光の軍勢シャイニング・フォース、ヴァルキュリア人伝説、アンブラの魔女とルーメンの賢者、機動兵器バーチャロイド。非常に興味深いわね」
 その後、パチュリーは本の世界へ没頭する。
 咲夜は読書の邪魔にならないよう静かに図書館から出て行く。音を立てないようにゆっくりと入り口の扉を閉めた時、部下のメード妖精がやって来た。
「咲夜様」
「彼が来たのね」
「はい」
「そう、私は『おもてなし』の準備をするから、アナタは持ち場に戻りなさい」
「かしこまりました」


 Act2へ続く
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by ginseiseki | 2010-05-07 16:31 | 二次創作小説
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