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銀星石のブログ

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銀星石のエッセイブログ

PSU&東方クロスオーバー 第1話Act2

 東方Projectのキャラクターは、公式に出版されている東方のマンガや小説、設定資料集などでキャラクターの性格や言動は確認していますが、読者のイメージと異なる場合があります。その場合はこの作品世界は本来の幻想郷とは異なる平行世界であると解釈してください。





出典元
SEGA『ファンタシースターユニバース』
上海アリス幻樂団『東方Project』

東方幻想惑星~キャストが幻想入り~
第1話 異世界人は機械の体 Act2



「悪い、俺も連れていってくれ」
「うわっ! いきなり掴まるなよ」
 人里に向かって飛び立とうとしていた魔理沙の箒を、ゲイリーは飛び上がって掴んだ。 空中でバランスを崩す魔理沙。危うく落ちかけたが、どうにか体勢を保った。
「俺は八雲さんから敵を倒せと言われた。もしかしたら、その雑魚妖怪とやらが、俺の倒すべき敵かもしれない。だから連れていってくれ。生憎、俺は空を飛べない」
「あなた、戦えるの?」
 アリスは念を押して確認した。ゲイリーがどれほどの実力《スペック》を持っているか分からないまま戦いに参加させて、破壊されてしまったら困るからだ。
 アリスはゲイリーを調べたかった。人間から種族としての魔法使いになってから長い年月をかけて、『自ら考え行動する人形』の研究をしてきた。
 ゲイリーは自分の意思を持ち、考えて行動する。まさにアリスが目指している自律人形の到達点の一つと云える。
「ああ、問題ない。これでも元の世界では、ガーディアンズという貴方達が言う所の妖怪退治を生業にしてきた。足手まといにはならない」
 アリスはゲイリーの顔を見る。口からでまかせをいっているような目には見えなかった。
「別に迷うことでもないだろアリス。今は猫の手でも借りたいくらいなんだ。手伝ってくれるって言うんなら、手伝ってもらおうぜ」
「……それもそうね」
 仮に壊れてしまったても、残骸を回収して調べれば良いだろうとアリスは結論づけた。
「話は終わった? なら早く行きましょう」
「悪い悪い霊夢。じゃあ、ゲイリー、飛ばすからしっかり捕まっていろよ」
「ああ、頼む」
 魔理沙と箒に掴まったゲイリーが矢のような速さで、人里に向かって飛んで行った。少し遅れて、アリスと霊夢はそれに続く。
 博麗神社は幻想郷を一望出来る丘にあり、人里はその麓に合った。普段は人間や人間に好意的な妖怪で賑わう人里だが、今はあちこちから火の手と悲鳴が上がっている。
 人里を襲っているのは、最近姿を見せるようになった雑魚妖怪の中で、いつのまにか『緑鬼』と呼ばれる種族だった。下半身は毛におおわれ反対に上半身はすべすべとした緑色の肌が見える。
 緑鬼は見るからに恐ろしそうな爪を両手の甲からそれぞれ二本づつ生やしている。
「馬鹿な! なんでここにヴァンダがいるんだ?!」
 緑鬼を見たゲイリーが驚いた。
「知っているの?」
 アリスは訪ねる。
「アレは俺のいた世界に生息する生物だ。いったいなぜ……」
 その時、下から悲鳴が聞こえてきた。見れば逃げ遅れた幼い娘とその母親が、ゲイリーがヴァンダと呼んだ緑鬼に今にも襲われそうになっている。
「まずい!」
「お、おい。ゲイリー!」
 その光景を見たゲイリーは、まだ飛び降りるには危険な高さから、箒を掴んでいる手をはなす。地面が陥没するほどの勢いで着地したが、ゲイリー自身はまったくの無傷だった。
ゲイリーはヴァンダと対峙する。丸腰で挑むとはなんと無謀なとアリスが思ったその時、彼の両手が一瞬光ったと思うと、そこから剣と盾が現れた。
 不思議なことに、剣も盾も青い光をはなっていた。アリスはその光から魔力や霊力に近いエネルギーを感じ取る。
 ヴァンダは獲物を目前にしてゲイリーに邪魔されたのことに腹を立てたのか、標的を彼に変えた。
 短剣のような爪が青い鎧の人形に振り下ろされるが、ゲイリーは盾で攻撃を受け流すと、すかさず剣を振るった。
 ヴァンダが悲鳴をあげながら倒れる。起き上がる気配はない。ゲイリーは一太刀で致命傷を与えたのだ。
「どうやらアイツはそこそこ出来るようね。なら、アリス、魔理沙。手分けしてあの雑魚妖怪を退治するわよ」
「ああ、分かったぜ!」
「あなたに指図される言われはないけど、その方が得策みたいね」
 紅白の巫女と、白黒の魔法使いと別れたアリスは、まだヴァンダが暴れている場所を見つけて、そこに降り立つ。
 そこは長屋が両脇に立ち並ぶ通りだ。住民はすでに避難しているのか、誰かがいるような雰囲気はない。家主がいなくなったのを良い事に、ヴァンダは好き勝手に破壊活動を行っていた。
 すぐさまヴァンダ達はアリスの存在に気がついた。
 ヴァンダ達の右手に力が集まるのを、アリスは知覚した。ゲイリーの武具から伝わってきたのと同じ感覚のエネルギーだ。どうやら、彼とこの緑色の小鬼が同じ世界から来たのは確かなようだ。
 次の瞬間、無数の岩塊が彼女に向かって襲いかかる。
「知能が低いのに魔法を使う話は本当だったようね」
 最近現れた雑魚妖怪と戦ったのことのある知人から、魔法を使ってくる種族がいるという話はきいたことがある。しかし、実際に目にするまでアリスは信じることが出来なかった。
 魔法使いが使うものと比べて、なんとも程度の低い魔法ではあるが、力の無いものにとっては絶望するほどの恐怖になりうる。
 数え切れない岩塊が面の攻撃となってアリスに襲いかかる。だが彼女は冷静だった。体の軸をずらして、敵の弾幕を華麗にすり抜けた。
 無数の岩つぶてはどれもアリスに命中することはなく、それどころかスカートの裾をかすめることすらも出来なかった。
「狙いがなっていない上に、弾幕自体も薄すぎる。妖怪と言ってもほとんど獣ね……」
 アリスは持ってきていた上海人形を操作して、自分の正面に滞空させ、スカートのポケットから一枚の札を取り出した。
 そして、アリスは札に自らの力を込め、高らかに宣誓する。
「哭符『上海人形』!」
 その瞬間、上海人形が両手を突き出し、巨大な魔力の光線を発射した。長屋の通りを貫く赤い巨大な光の束は、ヴァンダの群れを飲み込み、死体も残さずに蒸発させる。
「まあ、こんなものね」
 赤い光が消えた後、もうアリスの前には敵は一匹もなかった。あるのは一直線に伸びた地面の焦げ跡だけだ。
 スペルカード。それがアリスの使った力の正体だった。幻想郷における決闘に使われる代物で、自分の得意技の力が封じられている。
 無論、スペルカードが無くとも技を使うことはできるが、技名の宣誓をするだけで瞬時に使えるので、それが便利だと感じる場合もある。
 アリスは再び空に浮き、他に敵がいないか探し始める。すると、人里のあちこちで戦いの光が見えた。
 共に妖怪退治にやって来た霊夢や魔理沙はもちろんのこと、たまたま訪れていた人間に友好的な妖怪も退治に参加しているのだろう。
(これならゲイリーの様子を見にいっても大丈夫そうね)
 積極的に雑魚妖怪たちを退治する必要性が無くなったアリスは、ゲイリーの青い鎧姿を探し始める。
「あそこね」
 ゲイリーは人里の人間が避難している場所へ、ヴァンダが向かわないように戦っていた。注意が自分へと向かうように、時たま大声を張り上げて刀身が光っている剣を振るう。
「あら?」
 上空からその様子を見ていたアリスは一つの異常に気がついた。人里のあちこちからヴァンダがゲイリーのいる場所に向かっているのだ。
 その様子はゲイリーが目立つように戦っているからには思えなかった。なぜならば、ゲイリーの存在を認識できないほどの遠い距離からでも、ヴァンダは一心不乱に彼の元へ向かっている。
「どういうことなの?」
 アリスは注意深く観察して原因を探ろうとする。しかし、彼女の思考はすぐに中断された。気がつけば、ゲイリーは無数のヴァンダに取り囲まれていたからだ。
「チッ……すこし欲張りすぎたか……」
 ゲイリーが自分の失態に舌打ちをする。ますます人間らしい挙動だと、アリスは空の上でそう思った。
「ここはセイバーではなくスライサーを使うべきか……」
 ゲイリーの右腕が一瞬の光を放つ。光が収まった時、彼の持っている剣が別のものに変わっていた。
 それは刀身がくの字型に曲がっており、ブーメランを連想させる形だった。もちろん刃には先程の剣と同じ光があった。
 剣に宿っている光が、増幅されたように強くなる。次の瞬間、ゲイリーはブーメラン状の光弾を剣から発射した。それは彼を取り囲んでいるヴァンダを数体なぎ倒す。
 しかし、ゲイリーが倒した数の倍以上のヴァンダがさらに集まってきてしまい、焼け石に水をかけただけの結果に終わってしまう。
「まずいな……」
 ゲイリーはなおも攻撃を続けるが、集まってくるヴァンダの数に対応しきれていない。徐々に追いつめられていく。
「面倒をかける人形ね」
 アリスはスペルカードを取り出し、上海人形による航空支援を行おうとした。
「哭符……」
 スペルカードの宣誓をしようととしたが、次の瞬間にアリスの両脇から何者達かが飛び抜けて行った。
「恋符『マスタースパーク』!」
「霊符『夢想封印』!」
 魔理沙が魔法の火炉から放つ極太の光線と、霊夢が撃ち出した数発の光の榴弾が、ゲイリーを取り囲んでいるヴァンダを飲み込む。
 魔理沙のマスタースパークと霊夢の夢想封印が戦いを決定的なものにした。アリスは空から人里を見渡すが、あの緑の影はどこにも見当たらない。全てのヴァンダがゲイリーの元に集まった事で、今の一撃で殲滅されたようだ。
「へへ、悪いなアリス。お前の見せ場は私がいただいたぜ」
 得意げな顔をする魔理沙に対して、アリスは「そう」と短く答えた。別に活躍しようともそうでなくとも関係ない。さっさとこの騒動を始末できればそれでよかった。
「いやはや助かった。敵を引きつけようとしたらどうも行き過ぎたようだ」
「…………」
 果たしてそうだろうかとアリスは思った。ヴァンダの動きは明らかに異様だった。ゲイリーが雑魚妖怪たちを寄せ付けるような何かを持っているのだろうかと疑いたくなる。
「べつにいいわよ。そのおかげでちまちまと倒す面倒が省けたんだから」
 霊夢はそっけなくゲイリーに言う。彼女を知らない人間がきいたら、気遣っているように聞こえるだろう。しかし、そうではない事をアリスは知っていた。本当にどうでもよいと考えているのが博麗霊夢という人間だ。誰に対してもさほど興味を持たないが故に、色眼鏡で人を見ることはなく、だからこそ妖怪から好意を向けられることがあった。
「そう言ってもらえると助かる」
 ゲイリーは窮地を助けて貰った礼を言おうとするが、急に「ああ……えっと……」と歯切れが悪くなった。
 その様子でアリス、霊夢、魔理沙の三人はようやく自分たちの名前をゲイリーに教えていないことを思い出した。
「そういえばまだ名前を言っていなかったな。私は魔理沙。霧雨魔理沙だ」
「博麗霊夢よ。ご利益が欲しかったら私の神社でお賽銭を入れなさい」
「アリス・マーガトロイド」
 霊夢や魔理沙と比べて、アリスはひどく事務的に自己紹介した。
「ああ、改めて礼を言う。ありがとう、霧雨さん、博麗さん。それにマーガトロイドさん」
 その時、アリスはゲイリーからなにか言葉に出来ないような違和感を感じた。それは普段は苗字で呼ばれていないからではない。
 青い鎧の生きた人形は友好的な表情を見せるが、アリスはその友好さに、一欠片分の欠損があるような気がしたのだ。
「それで、ゲイリーはこれからどうするんだ?」
 魔理沙はゲイリーに今後の身の振り方を聞いた。
「皆目見当もつかないな。できれば元の世界に帰りたいのだが……」
「なら、霊夢に頼めばいいじゃないのか? たまに外の世界から人が迷い込んでくるけど、博麗神社からなら帰れるぜ」
「あ~、魔理沙。どうもゲイリーは外の世界とはまた違う世界から紫に連れてこられたらしいのよ。だから私の力で帰すのは無理ね」
「紫が?」
「ええ。そうよねゲイリー?」
 霊夢に確認されてゲイリーは「ああ」と答えた。
「ふ~ん、紫がねえ。あの緑鬼はゲイリーと同じ世界からやって来たみたいだから、雑魚妖怪退治の助っ人に呼んだのかな?」
「八雲さんからは敵を倒せとしか言われていないが、おそらくそうだろうな」
 果たしてそれだけなのだろうかと、アリスは魔理沙とゲイリーのやりとりを見て思った。確かに筋は通っている。未知の敵に対して、それと戦い慣れた者を助っ人に呼ぶのは理にかなっている。
 だが、そんな小細工をしなくとも、本気を出せばあの程度の妖怪を殲滅出来る力を持った存在は幻想郷にはいくらでもいる。
 残念ながら、幻想郷で力を持つものは協調性に欠けているので、大量に出現するグラール太陽系の生物を効率的に討伐することは出来ていない。
 だが、それも長い時間をかければ終わる話だ。八雲紫の思惑をアリスは考える。
「まあ、そのうち帰れるでしょう。今度紫を見かけたらゲイリーを帰してやるように言ってあげるわ」
「それは助かる。ありがとう博麗さん」
「別にいいわよ。世間話のついでに覚えていたらの話だし」
「それでも俺にとっては十分さ。となると、今の問題はここで暮らすための住処か……マーガトロイドさんは新参のよそ者が住めるような場所に心当たりはないか?」
 考え事をしている最中に、急にゲイリーから訪ねられたアリスは思わず「え?」と声を出してしまう。
「あ、ああ。住む場所ね。博麗の巫女が口添えすれば里の長も適当な空家に住まわせてくれるんじゃないの? 対価として雑魚妖怪退治をするとでもいえば、そう難色をださないだろうし」
 すこし取り繕うようにアリスは言う。
「なら早く行きましょう。里長の屋敷はこっちよゲイリー」
 霊夢に案内されて、ゲイリーは里長の屋敷へと向かう。魔理沙は面白そうだからと二人異ついて行き、アリスも少し考えた後、彼女たちと共に歩き出した。





「つまらない物語だわ」
 少し不満げに、紫は閉じた扇子で掌を叩く。
紫は『境界を操る程度の能力』を使って次元を操作し、全く異なる場所でゲイリーの様子を一部始終見ていた。
「まったく、『ゲイリー・スー』という名前だから、八面六臂の活躍を期待したものの、正直なところ少しがっかりね」
「どういう事ですか紫様」
 九本の狐の尾を持つ若い女が紫に恐る恐る尋ねた。彼女の名前は八雲藍。九尾の狐の妖怪であり、八雲紫が最も信頼する式神だ。主と同じ八雲なのは、それだけ彼女が紫から信頼されている証でもある。
「作劇の世界において、作者の自己愛が露骨に現れた登場人物を、女なら『メアリー・スー』と呼び、男なら『ゲイリー・スー』と呼ばれるの。その登場人物は誰からも愛され、死ぬときには盛大に悲しまれる。一切の苦境に立たされることはなく、いかなる時も順風満帆の人生を送ることが出来る存在よ」
「かの者もそれと同じように活躍すると紫様は期待されていたのですか?」
「ええ。でもいいわ。私が求めている結果は得られたから、別に活躍してもしなくてもさほど問題はないもの」
 紫は自分の頭の中だけで全てを完結させており、従者である籃が戸惑うことは少なくない。
 籃は主からゲイリーの封印を解く用に命じられた。幸いにも、その封印はプログラムという数字を利用した技術だったので、数学に強い籃はそれを解除することが出来た。
 ゲイリーは最近現れた雑魚妖怪と同じ世界から連れてきたと紫は言った。異世界の妖怪を退治するために彼を連れてきたのかと籃は思ったのだが、主の思惑はどうやらそうではないらしい。
「私がゲイリーに求めているのは戦いとは別の理由。彼の体には些細なものだけれど、ちょっとした秘密があるのよ」
「秘密ですか?」
「ええ、そうよ」
 紫はゲイリーを幻想郷に連れてきた理由を話した。それを聞いて、籃はなるほどと納得する。
「さて、籃には一つお願いをするわ」
「なんなりとお申し付けください、紫様」
「籃にはこれから指定する場所に言って、ゲイリーの事を伝えてきて頂戴。もちろん、私が彼を連れてきた理由も一緒に」
「かしこまりました。して、その場所とは?」
「そうね、紅魔館、白玉楼、永遠亭、守矢神社、地霊殿、命蓮寺あたりかしら。とりあえず、ここの主たちに彼のことを知らせれば十分よ」
 紫の指定した場所はどれも幻想郷の実力者達がいる場所だった。
「それでは紫様。行って参ります」
「ええ、よろしくね」
 籃は恭しく一礼すると、すぐさま命令を果たすために出かけていった。
 紫は籃を見送ると、ゲイリーの様子を見ているのに使っていた次元のスキマに再び目を向ける。どうやら、里長から無事に人里に住むことを許されたようだ。
「はてさて、あなたの物語はこれからどうなるのかしらね。所詮ただの脇役なのか。それとも主人公に目覚めて、読者が興ざめするくらいの活躍をするのか」
 紫はくすくすと妖しく笑いながら青い鎧に身を包んだ、生きている人形を見つめていた。

 第2話へ続く
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by ginseiseki | 2010-02-22 22:00 | 二次創作小説
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