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銀星石のブログ

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銀星石のエッセイブログ

PSU&東方Projectクロスオーバー

 去年辺りからニコニコ動画を切っ掛けに東方projectという同人作品の弾幕シューティングゲームをしり、最近ではファンタシースターユニバースシリーズとのクロスオーバーを色々と考えていました。ある程度高層が固まったので思い切ってクロスオーバー小説を書いてみました。




出典元
SEGA『ファンタシースターユニバース』
上海アリス幻樂団『東方Project』


東方幻想惑星~キャストが幻想入り~ 第1話 異世界人は機械の体


Act1

「お前は生まれてきてはならなかった」
 女の声が彼の全てを否定している。
「お前が生きているだけで、この世の全てに害をもたらす」
 完全な無情があるとすれば、それは存在そのものの否定だ。過ちを犯したものは、謝罪や償いで許される。しかし、生きることを否定されてしまったら、それは何をしても決して許されないということだ。
「だから私はお前を封じる。お前さえいなくなればこの世界は平和になる」
 彼女の言葉に、彼は怒りを覚えずにはいられなかった。
 なぜ? どうして? 彼女は生まれてきたことが罪だというが、生きとし生けるものは、自らの意思とは関係なくに生まれてしまうのだ。
「お前はこの世界に憎しみをいだいてはならない。社会はおまえに憎む権利を与えていない」
 勝手に産み落とされて、勝手に否定され、あげく憎むことすらも許されない。そんな暴論を、彼女は誰も彼もが絶賛するような正論として言う。
 彼は彼女の細い首に手をかけて、満身の力を込めて絞め殺したい衝動にかられる。しかし、体が動かない。力がみるみるうちに抜け、意識が霧のように薄れて行く。
「……ら……私だけを……め……私を……なら……がいい」
 彼女が最後の言葉を紡ぐが、彼はそれをはっきりと聞き取ることが出来なかった。
 そして、彼の意識は一度闇に葬られる。
 死んではいない。しかし、いつ目覚めるのか保証されてないまま眠っているのは、生きていると断言することは出来ない。
 生きていない生者。死んでいない死者。生死の定義があいまいなまま、彼の魂は停止状態が続く。
「紫様、彼の封印の解除に成功いたしました」
「ごくろうさま。さすが私の式神ね」
「もったいなきお言葉です」
 どれだけの時間を眠りで消費したかわからない。彼が目覚めると木造の天上が見えた。
「ようやくお目覚めね」
 再び女の声が聴こえるが、あの無情な言葉を放った声ではない。横たわっている彼を金髪の女がのぞき込んでいた。
「私は八雲紫。今は、ただそれだけを覚えていてください」
 八雲紫と名乗った女は不思議な人物だった。まるで少女のように若々しい姿にもかかわらず、狡猾な老婆のような気配が伝わってくる。老若の境界が曖昧な人物だった。
「星の防人である貴方に一つお願いがあります。これから貴方を幻想郷という、グラールではない世界へと送りますので、敵を倒してください」
 物腰こそ丁寧だが、紫は一方的に話を進めて行った。幻想郷がどのような場所なのか、倒す敵がどのような存在なのかを彼には一切告げていない。
「戦う相手は見れば分かります。むしろ、その敵を貴方は深く理解しているはずです」
 そしてなによりも、彼がその依頼を受けるかどうかすらも聞いていない。
「大丈夫、安心なさい。幻想郷は全てを受け入れる世界。それは、たとえあなたのような存在ですらも包み込みます」
 急に紫の顔が遠ざかる。いつの間にか落下しているのだ。同時に彼の意識は再び薄れて行った。
 最後に見たのは扇子で口元を隠しながら怪しく微笑む紫の表情だった。その瞳からは、彼女の人格を象徴するかのような妖しいきらめきがあった。





 神や妖怪といった超常の存在が、日常の存在である人間と同居する世界。人間の想像力が現実のものとなっている世界。そこは幻想郷と呼ばれていた。
「春ですよー!」
 背中から薄い羽をはやした幼い少女が、空を飛びながら今が春であることを宣言している。春を伝える妖精、リリー・ホワイトだ。
 春の妖精は幻想郷で「魔法の森」と呼ばれている場所の上空を飛んでいた。
「すこし前に年が開けたと思ったらもう春なのね」
 深い森のなかで隠れるように建っている小さな洋館の窓から、リリーを見上げている人物がいた。
 金髪で肌の色は薄く、まるで人形のような印象を与える。青いワンピースに白いケープを身につけていた。
 彼女は『七色の人形遣い』とよばれる魔法使い、アリス・マーガトロイドだ。
「新しい春物の服でも作ろうかしら」
 服を作ると言っても、アリスが着るわけではない。彼女の作る人形のものだ。
 アリスが家の中を見渡すと無数の人形たちの姿が見える。全て彼女の作品だ。
「アリスー! いるんでしょう!? ちょっと出てきなさい」
 どんどんと無礼で乱暴に玄関をノックする音が聞こえてきた。居留守を使いたいアリスではあったが、来客の性格を考えると、扉を粉砕してまで入ってくるだろう。
「まったく……」
 アリスはため息を付きながら玄関の扉をあける。赤いノースリーブの巫女服に白い袖を別途つけた奇抜な服装の少女が、目を吊り上げながら仁王立ちしていた。
「いったいなんなの、霊夢?」
 彼女の名前は博麗霊夢。博麗神社の巫女にして、異変解決のプロフェッショナルだ。とはいっても、陽気で呑気な性格なのでプロ意識は砂粒一つ分もない。
「なんなのじゃないわよ。私の神社に、馬鹿みたいに重くて大きな人形を置き去りにしたクセに!」
「重くて大きな?」
「そうよ! 大人の男くらいのサイズで機械みたいな鎧を身につけている人形よ。アリスが作ったのでしょう?!」
「そんな人形を作った覚えはないわ」
 アリスは正直に答える。なによりも無駄な嘘をつくのは面倒だった。
「しらばっくれんじゃないわよ。あんな生身の人間みたいな人形作れるのはアンタしかいないじゃないの」
 霊夢は幻想郷で起こった異変に対して、全て直感で解決してきた。だが、あらゆる事象に対して彼女の勘が絶対的であるわけではない。事実、アリスはこうして作った覚えのない人形の引取りを求められている。
「しらばっくれるもなにも、事実以外は答えられないわ。霊夢だって私がどんな人形を作っているか知っているでしょう? そんなデザインの人形は作らないわ」
「……それもそうね」
 ようやく霊夢は納得してくれたようだ。
「それじゃあね。私は忙しいから」
 アリスは早々に玄関の扉を閉めようとしたが、霊夢はそれを止める。
「……手をどけて欲しいのだけど?」
「アリスは人形遣いでしょう。アンタが作ったにしろ、そうでないにしろ、とにかく引きとってちょうだいよ」
「……まったく……仕方ないね」
 アリスはため息を一つ漏らす。
 このまま玄関先で言い合いをしてもらちが開かない。力づくで追い返そうと一瞬思ったが、霊夢を一戦交えるのと、人形を引き取る労力を天秤にかけたら、アリスは後者のほうが楽そうだと思った。
「上海、いらっしゃい」
 アリスが呼ぶと、家の中から人形がふわふわと飛んできた。エプロンドレスを身につけ、金髪を可愛らしい赤いリボンで結んでいる。
 小さな女の子が独り遊びの友達にするような愛くるしさだが、その見た目とは裏腹に魔力の光線を発射したり、剣や槍も扱うことが出来る戦闘用人形だ。
 アリスは人形を操る魔法使いだ。最近は獣同然に襲ってくる、知性の無い低俗な雑魚妖怪が増えている。空を飛ぶ妖怪もいるらしいので、用心に越したことはない。
「ほら、早くしなさいよ」
 せっかちな霊夢はすでに宙に浮いている。アリスも精神を集中させて、大地から足を離した。神や妖怪、魔法使いが暮らす幻想郷において、飛行能力など誰でも使える程度といっていいほどの力だ。
 目指す博麗神社は幻想郷の東の端にある。
 神の社といっても具体的な神を祀っているわけではない。もしいたとしたら、巫女としては不真面目な霊夢は当の昔にバチを当てられているはずだ。
 とはいえ、博麗神社は幻想郷でもっとも重要な建物だといえる。外の世界から切り離し、箱庭世界である幻想郷を存続させているのは、神社を要とした博麗大結界のおかげなのだ。
 アリスの前を飛行する霊夢は、その博麗大結界を見張っている。ああ見えてこの世界の最重要人物なのだ。
 そうこうしているうちに神社に到着した。徒歩ではかなりの距離でも、空を飛べるアリスと霊夢にとっては「ちょっとそこまで」の距離だ。
「で、問題の人形はそれ?」
 霊夢の言っている人形は賽銭箱に寄りかかっていた。顔をのぞきこんでみると眼を閉じている。
 男の人形だ。髪の色は黒で、青い鎧を身につけている。その鎧は確かに機械的なデザインだった。アリスの作っている人形とは全く趣が異なる。
 人形とは美しく作るか、可愛らしく作るものだが、この人形の顔はどこにでもいるような凡夫の顔だ。だが、まるで生身の人間のように造られている。耳が黒い鋼で出来ていなければ、鎧を着た男が眠っていると勘違いしてしまいそうだ。
 霊夢から面倒事を押し付けられたと憂鬱な気分になっていたアリスだが、この人形を調べれば、自分の作品作りに少なからず刺激を与えてくれるだろうと思った。
「ほら、早く持って帰りなさいよ」
「まったく、せっかちね」
 霊夢に急かされて、アリスは機械鎧の人形を操るために、両手の指にはめた十個の指輪から魔力の糸を送り出す。目に見えない糸が人形の四肢につながる。
「あら?」
「どうかしたの?」
 人形を操作しようとするアリスだが、ピクリとも動かない。
「おかしいわね。この人形を動かせないわ」
「腕が落ちたんじゃないの?」
「ろくに巫女の修行をしようとしないあなたと一緒にしないで。人形繰りの訓練は毎日しているわよ」
 アリスは操作を続けるが、奇妙で異様なほどに人形は微動だにしなかった。
「うう……ああ……」
 その時うめき声が聞こえてきた。
「ちょっと霊夢。気が散るから変な声を出さないで欲しいわ」
「私は何も言っていないわよ!」
 言いがかりだと言わんばかりに、霊夢は憤然としていた。
「うう……あまり大きな声を出さないでくれ」
 今度ははっきりとした声が聞こえてきた。
『え?』
 アリスと霊夢は同じような声をあげる。
 機械鎧の人形が、まるで眠りから覚めたかのように、その瞳を開けたからだ。
「こ、ここは……それにあなた達はいったい……」
「な、なによアリス。やればできるじゃない」
 だが、アリスは霊夢の言葉に首を横に振る。
「違う。私は何もしていないわ」
「え? じゃあなに、この人形は自分の意思で動いているというの?」
 アリスは無言で頷く。
「人を人形呼ばわりとは、失礼な人たちだ」
 かぶりを振りながら人形はゆっくりと立ち上がる。その一挙一動全てが、完全な生身の人間のものだった。
「確かに俺はキャストで機械の体だが、明確な意識を持っている人間だ」
 アリスは人形の瞳を見る。作り物の眼球だが、そこからは人間として扱ってもらえなかった不満の感情が宿っていた。
 アリスは霊夢と顔を見合わせた。彼女は驚いたような表情を見せており、恐らく自分もまた同じような顔なのだろうと思った。
「あなた、何者? 体は作り物なのにまるで生きた人間のような素振りだわ」
 人形と意思の疎通がある会話を、はじめて経験するアリスは、少々奇妙な感覚に囚われていた。
 一瞬、非生命が長い年月を経て妖怪化した付喪神の一種かと考えたが、彼からはそういった気配が伝わってこない。
「俺の名はゲイリー・スー。見ての通りキャストだ」
「キャスト? キャストって一体何なの?」
 横から霊夢をが口を出すが、アリスは自分から質問した手間が省けたので黙っている事とにした。
「キャストを知らないのか? タルカス三惑星同盟にて人権を認められた人型マシナリーのことだぞ」
 『タルカス三惑星同盟』や『マシナリー』など、きいたことの無いような単語がゲイリーの口から出てきた。そのことでアリスは一つの考えに至る。
「……幻想郷にキャストという存在は居ないわ」
「幻想郷だと?」
 彼の表情が変わる。どうやら自らの事情を理解しつつあるようだった。
「ゲイリー、あなたが住んでいた世界の名前を言ってみて」
 一つの質問をアリスはゲイリーに投げかけた。予想が正しいのならば、これで彼の素性がおおかたわかるはずだ。
「……俺が住んでいた世界は『グラール太陽系』という」
 ゲイリーは答えた。
「……やっぱりね。あなたはこことは異なる世界から迷い込んできたようね」
「そのようだな。やはり八雲紫と名乗った彼女の言葉は事実だったか……」
 ゲイリーの言葉から八雲紫の名前が出たときに、アリスは彼が異世界からの来訪者であるという確信をますます強めて行った。
 八雲紫は幻想郷ならほとんどの者が知っているほどの大妖怪だ。彼女は『境界を操る程度の能力』を持っている。万能をこえ、全能の領域に差し掛かっているその力ならば、異世界から誰かをつれてくることなど容易い。
「あのスキマ妖怪……最近は雑魚妖怪の異変で忙しいってのに、面倒事を増やさないで欲しいわ」
 霊夢はぶつくさと不満を漏らす。
「あなた達は八雲さんを知っているのか?」
「ええ、まあね」
 霊夢は不満を漏らすのに夢中だったので、アリスが答えた
「それで、ゲイリーは紫からなんて言われたの?」
「具体的なことは何も、ただ幻想郷で敵を倒せとしか言われていない」
 長い年月を生き、超人的に(妖怪だから当たり前だが)賢い彼女だが、誰かと話をするときに、あまりに賢すぎて常人に肝心な部分が余り伝わらない欠点があった。
「敵ね……」
 だが、紫がゲイリーに言った『敵』にアリスは心当たりがあった。それはもしかしたら、最近幻想郷を騒がしている……
「おーい、霊夢! それにアリス! 大変だ!」
 その時、空から金髪の少女が箒に乗って博麗神社にやって来た。
 とんがり帽子に白と黒のエプロンドレスを身につけた、いかにも魔法使いらしい服装をしている彼女の名前は霧雨魔理沙という。
 魔法の森に住む同じ魔法使いとしてアリスは、魔理沙と多少の交流があった。そして、その交流の中から、彼女がこんな風に現れるときは、ほぼ確実に何かしらのトラブルを持ち込んできているという事を知っていた。
「何よ魔理沙。言っておくけど今はお茶を出すような暇はないわよ」
 ゲイリーを幻想郷に引き込んできた紫への不満で、霊夢は苛立を隠そうともせず、魔理沙を邪険に扱う。彼女の辞書に社交辞令という言葉はない。
「そんなことはどうだっていいんだよ! それよりも大変なんだ」
「落ち着きなさい魔理沙。いったい何が大変だというの?」
 大変大変というだけの魔理沙をアリスはなだめる。
「ああ、アリス。最近あちこちで出てくるあの雑魚妖怪が、いま群れで人里を襲っているんだ!」
「なんですって?」
 アリスは表情を強く出さず、静かに驚いた。
 人間を襲うのが妖怪の存在意義ではあるが、人里を襲わないのは暗黙のルールとなっている。節操なく人間を殺したり食べたりしてしまってはあっという間に絶滅し、それが回りまわって妖怪も困ってしまうからだ。
 しかし、最近幻想郷を騒がせている雑魚妖怪は知能が殆どなく、獣同然の輩だ。むしろ、今まで人里を襲わなかったほうが意外なのだろう。
「とにかく、数が多いから霊夢とアリスにも雑魚妖怪の退治を手伝って欲しいんだ」
「あーもー、次から次へと面倒事がやってくる」
「地団駄を踏む暇があるならばすぐに人里へ向かうべきよ霊夢。いくら面倒だからって、人里の人間を殺されたら、あなたも困るでしょう」
「そんなことアリスに言われなくてもわかっているわよ」
 幻想郷で生活に必要な道具は、その殆どが人里の人間が作っている。妖怪にとって無くてはならないというわけではないが、無くなってしまえば色々と困ってしまう。そんな共存関係が人間と妖怪の間にあった。
「私はこれからちょっと、人里に行ってくるから。ゲイリーはここにいて!」
 霊夢はゲイリーを指さして命じる。
「そういえば、こいつはなんなんだ? なんだか機械みたいな人形だけど」
「俺はゲイリー・スーだ。八雲さんによってグラールという異世界から幻想郷に連れてこられた。あと、いっておくがこんなナリだが、元居た世界じゃ立派な人間だぞ」
 魔理沙に人形呼ばわりされて、先ほどと同じような表情をゲイリーは浮かべた。
「そうか、そいつは悪かったな。まあ、話は雑魚妖怪の退治を終わってからきかせてもらうぜ」
 そういった魔理沙は、箒にまたがって空に浮く。アリスと霊夢もそれに続いた。

 Act2へ
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by ginseiseki | 2010-02-21 15:36 | 二次創作小説
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