銀星石のブログ

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銀星石のエッセイブログ

PSPo2ロールプレイ番外編 青い毛玉

 私の弟もPSPo2をプレイしており、今回はその弟のキャラをネタにしてPSPo2ロールプレイを書いてみました。








「俺はアダム・ヘックス。今日からリトルウィングで働くことになった。よろしくな!」
 握手を求めて鳩美に右手を差し出す彼は奇妙な人物だった。ニューマンにしては体格がしっかりとしており、髪の毛は青く染めたアフロヘアーだった。
「はい、よろしくお願いします」
 鳩美は笑顔でニューマンにしては大きな掌と握手する。
 カムハーンとの戦いから数カ月がたった頃だ。あの戦いでリトルウィングの知名度が上がり、それに憧れて入社したいと言う者たちが後を耐えないようになった。
 とはいえ、半端者を雇うほどクラウチの目は甘くない。リトルウィングの就職希望者達の多くが、彼の提示した過酷な入社試験でふるい落とされていった。
 そんな中、このアフロのニューマンは見事合格した。珍妙な見かけで侮ることが出来ない実力があるのは確かだ。
 アダムが入社したその翌日。鳩美は彼と共に仕事をすることになる。パートナーであるエミリアは亜空間研究のためにシズルの所に出向いているため、新入りでまだ相棒のいないアダムと即席のコンビを組むことになった。
 仕事の内容はニューデイズのとある島の調査だった。周辺の海域では希少資源を載せた貨物船の襲撃事件が頻発しており、その島は海賊行為が行うローグスの根城である可能性があった。島にローグスがいるか確かめ、もしそうならばニューデイズの太陽系警察に報告して、その後を任せる手はずになっている。
 目的の島は巨大な樹木がそびえ立っており、遠くから見ると水平線から木が生えているようにも見える。旧文明時代に発生したといわれるバイオハザードの影響で、ニューデイズは植物が異様に成長するのだ。
 船や航空機を使っては敵に発見される恐れがある。鳩美とアダムは近くの陸地からフローダーバイクを使って上陸することにした。
「まだ可能性の話ですが、ここは敵の懐です。慎重に行きましょう、アダムさん……って、何をしているのですか!?」
 鳩美が振り返ってみると、後ろにいたアダムが、いつの間にか服を脱いでパンツ一丁になっていた。
「ああ、俺は自然の中にいるときは、生き物として自然に近い姿でいることにしているんだ」
 なぜかアダムは誇らしげに胸を張る。
「ふざけないで下さい!」
「ぐはっ!」
 鳩美はウィップをアダム叩きつけた。 そして、その場に正座させる。
「まったく、いきなり服を脱ぎだすなんて。アダムさんは下着一枚になることに対しての羞恥心がないのですか?」
「よく見ろ、これは水着だ。パンツじゃないから恥ずかしくない」
「パンツだろうと水着だろうと、こんなところで、そんな格好をしないでください。早く服を着て下さい!」
「嫌だ」
 鳩美は何とかしてアダムに服を来てもらおうと説得するが、彼は頑として今の姿でいることに固辞した。
 結局、このまま島の調査をすることにした。マッチョな半裸の男が後ろをついてくるというシュールな光景だった。
「原生生物が少ないですね。この環境はオンマゴウグなどの飛行型原生生物が過ごしやすいのに」
 鳩美とアダムは高台で見晴らしの良い場所に立ち、ゴーグルの望遠機能を使って島全体の状況を観察した。
「ローグスが駆除したのかもしれないな。さすがに危なくて、おちおち寝てもいられないだろう」
「…………」
 真面目な会話をしているというのに、アダムの姿のせいで、脱力した気分になってしまう。戦闘の可能性もあるというのにこの精神状態はあまり良くなかった。
「アダムさん、やはり服を着ていただけないでしょうか? どうもその姿を見ると気になって注意力が散漫になってしまうのです」
「鳩美も服を着ているからそう思うんだよ。いっそ脱いじゃえば気にならないかもしれないぜ?」
「ふざけないでください!」
「ぎゃふん!」
 呼吸をするかのようにセクハラ発現を言い放ったアダムに向かって、鳩美は二度目の折檻を行った。
「今度そんなことを言ったら、そのアフロヘアーを全部むしりとってしまいますからね」
 口調こそ穏やかだが、アダムの変態言動に鳩美の本来の姿が見え隠れするようになってきた。
「まったく、困った人です……」
 ため息を付く鳩美だった。しかし、その直後、彼女の表情が変わる。
「アダムさん! あそこ! いまあそこに人影が見えました!」
 鳩美が崖下を指さして言う。
「どこだ? 見えないぞ」
 しかし、鳩美の指差す方向はニューデイズの森しか見えない。
「そんなはずありません。ほら、あそこ、あの辺です! もっと良く見てください」
「お、おい、そんなふうに崖から身を乗り出したら危ない……」
 アダムが言い切る前に、バランスを崩した鳩美が崖から落ちてしまった。とっさに手をつかもうとするが、一瞬遅かった。
「きゃぁぁぁぁぁぁ!」
 鳩美は悲鳴をあげながら崖下の森の中に落ちて行った。
「鳩美! おい、鳩美!」
 崖下に向かってアダムは声を張り上げるが、鳩美からの返事はない。通信機で連絡をとろうとするも、帰ってくるのはノイズ音だけだった。
 アダムは鳩美の元へ行かなければならない。だが崖を降りるには取っ掛かりが少なすぎて危険だった。
 アダムは安全に降りる道を探す。
 薄暗い原生林のなかを進み、迂回路を見つけてようやく先程の崖の真下に辿りついたときには、すでに一時間以上も経過した。
「これは……鳩美の通信機……」
 インカムタイプの通信機が、粉々に砕けて地面に落ちていた。
 アダムは辺りを見回すが鳩美の姿はない。どこかに移動したのだろう。
 這い蹲るようにアダムは地面を調べ始めた。すると、何者かの足跡を見つけた。それはちょうど鳩美が落ちた思しき場所から始まっている。彼女の足跡なのは間違いないだろう。
 アダムは鳩美の痕跡を見逃さないように慎重に森の中を進んだ。
 しばらく進むと、アダムは道路を発見した。舗装されておらず、茶色い地面がむき出しになっているが、人や車が通りやすいように固く平らに均されている。そして、その道路は両脇に生えている木々の枝葉で、上空からは見えないように隠蔽されていた。
「これでこの島にローグスがいることがはっきりしたな」
 その時、島の中央部にある巨木から爆発音が聞こえた。振り向いたアダムが目にしたのは、森の中から立ち上る黒煙だった。
 アダムは迷わずに黒煙が上る場所に向かって走り出す。
 黒煙へと近づくごとに焦げ臭いにおいが漂ってきた。煤や灰も風に乗って漂ってくる。
 アダムは爆発のあった巨木の元にたどり着いた。巨木は根元に巨大な空洞があり、その中に大自然では不釣合な建築物がたたずんでいる。まさに隠れ家といった風情だった。
 火元はそのローグスの隠れ家からだった。
「鳩美!」
「アダムさん!?」
 炎に包まれるローグスの隠れ家の前には、はぐれた鳩美が立っていた。
「よかった、無事だったみたいだな。だけどこの有様はいったい……」
「詳しいことはわかりません。私がこの場所を見つけた直後に爆発が起こりました。どうやらローグスの所有していた爆発物が事故か何かで暴発したのでしょう」
 鳩美の言葉はもっともらしかった。海賊行為を行うためには武器は必須。最近の民間船は自衛のために傭兵やガーディアンズを雇うことが常識となっている。だからこそ、武器の中に爆弾やミサイルといったものがあったとしても何らおかしくはない。
「嘘だな」
「え?」
 アダムは鳩美が嘘をついていると言った。他人に対して誠実で優しさを見せる女性である彼女が、必要のない嘘を事など考えられない。
 しかし、それでもアダムには鳩美の言葉が嘘であるとするだけの根拠があった。
「見たところこのローグスの隠れ家は、”全体的にまんべんなく”火の手が上がっている。爆発音が聞こえてからの時間を考えると、火が回るスピードが早すぎる。隠れ家の要所要所に爆弾を仕掛けなければこうはいかない」
「……」
 鳩美は黙ってアダムの言葉を聞いていた。
「今回の仕事は隠れ家の有無を調べるだけで、リトルウィングがローグスを捕まえるわけじゃない。だがお前の性格を考えれば、目の前に悪党がいるのに、おとなしく引き下がるはずがない。お前はローグスが間抜けな事故を起こしたと見せかけて始末したんだ」
「貴様……何者だ……どうして私の本性をしっている」
 鳩美からお淑やかな空気が一瞬で消えた。
「俺は太陽系警察の『若手幹部勉強会』から派遣されたエージェントだ。『邪悪を殺す邪悪』を自称する赤木鳩美の監視……それが俺の任務だ」
「……私の本性を調べ上げるだけの技量は見事だが、わずかに考えが足りなかったな。こんな”誰もいない無人島”で自らの正体を語るのだから……」
 鳩美の殺気が、ナノトランサーからセイバーと言う形で現れた。フォトンの光を放つ刃の切っ先がアダムに向けられる。
「勘違いするな。俺が監視するのは、あくまでお前が暴走して悪党以外を殺そうとしないようにだ。一般市民に手を出さない限り、俺と俺を派遣した者たちは一切を黙認する」
「……どういうことかよく分からないな」
 鳩美はセイバーをおろす。しかし、それでも殺気だけは消えなかった。
「今のグラールで法の番人はガーディアンズだ。本来は太陽系警察が公式な法執行機関だが、市民はガーディアンズの方を信頼している」
 SEEDが来襲する以前は、あくまでガーディアンズは民間警備会社の最大手に過ぎなかった。無論、犯罪者と戦うことは当時もあったが、あくまで太陽系警察の戦力が不足した時の補欠扱いだ。
 しかし、SEEDが現れ、イルミナスが台頭したとき、ガーディアンズはバラバラだった同盟軍やグラール教団などの各組織をまとめ上げ、一丸となって世界の危機と戦った。
 だが、SEEDとイルミナスに対向する同盟に参加しない組織があった。それが太陽系警察だった。
 その結果、見事SEEDを倒したガーディアンズは市民から全幅の信頼を獲得した。その代わりに、目立った働きをしなかった太陽系警察の信用は失墜した。
「市民からの信用を失っているとはいえ、公的な警察組織だから、甘い汁をすすれるだけの権力はまだ十分に残っている。だから、三年前の戦いでは椅子にふんぞり返るしかしなかった最高幹部は、今でも太陽系警察を牛耳っている」
 人の精神とは形のないものだが、だからといってデジタルデータのように劣化しないわけではない。精神は腐ることがあるのだ。
「だが、若手の幹部たちはそうじゃない。純粋に市民のために悪と戦う本来の警察に組織を戻したいと考えている」
「その者たちの集まりが『若手幹部勉強会』ということか?」
「その通りだ、鳩美。表向きは名前の通り若手幹部たちによるただの勉強会だが、実際は最高幹部が隠している悪事を暴くために動いている」
 アダムは話を続ける。
「太陽系警察の老害問題は深刻だ。最高幹部の多くが自らの強力な権力を悪用して私腹を肥やしている。この島のローグスだってそうだ。リトルウィングに来た依頼はあくまで調査で、逮捕は太陽系警察の仕事になっているが、馬鹿正直に報告したところでもみ消される。この地域を管轄している幹部はローグスから賄賂を貰っているからな。
 そもそも、三年前に同盟に参加しなかったのだって、警察がローグスと協力するわけにはいかないなんてわかりやすい理由を言っていたが、実際はローグスとの癒着が露見するのを恐れたからだ」
「太陽系警察の腐敗ぶりはよく知っているが、それと私を監視することにいったいどんな関係があると言うのだ?」
「権力に守られた悪党を倒すのは困難な上に、出来たとしても長い時間が必要だ。だが、そのあいだに多くの市民が犯罪に苦しむことなる」
 法律は人の社会では必要不可欠だ。しかし、その法律が足かせとなって、今すぐ倒せるはずの悪を倒せず、多くの人間が苦しむこともある。

『悪は必ず倒すべきである。法律がそれを妨害するならば、法律など抹殺するべきである』
『法律は全てにおいて絶対である。法を守ることで何千何万何億の人間が苦しもうとも、それは賞賛されるべきである』

 どちらも意見も、正しいとする人間と間違っているとする人間がいる。それゆえに、二つの考えの決着は未だついていない。
「”今すぐに”人を救うには、法律を破らなければならない場合もある。しかし、警察官が自ら法を無視するわけにはいかない。だから、若手幹部勉強会は鳩美のような邪悪を殺す邪悪を黙認しつつ、それが一般市民に飛び火しないよう監視することにしたんだ」
 アダムは話を終える。鳩美との間に重い沈黙が漂った。
「なるほど、概ね理解した」
 鳩美がセイバーを収めたのを見て、アダムもほっと息をつく。
「それにしても……その珍妙なアフロヘアーも、服を脱ぐ癖も、自らの素性を隠すためだったのだな」
「いや、違うぞ? これは俺のポリシーだ。任務とは関係ない」
「…………」
 偏頭痛を起こしたように鳩美は頭を抑えた。
「……ま、まあいい。監視されるのは少々不愉快だが、私の邪魔をしないと言うのであれば何も問題はない。好きにすれば良い」
「そうか! そりゃありがたい。なら早速この水着を脱ぐぜ。女の前だから遠慮していたが、やっぱり自然の中じゃ一糸まとわぬ姿が……」
「そっちを許したわけではない!」
「みぎゃぁぁぁぁぁぁ!」
 通算で本日三度目となる鳩美の折檻が、森の中にアダムの悲鳴を響かせた。
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by ginseiseki | 2010-02-07 20:49
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