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銀星石のエッセイブログ

PSPo2ロールプレイ 最終章 『save this world』 Act4

注意
 このブログ記事にはファンタシースターポータブル2のネタバレが含まれています。

 また、ファンタシースターユニバースシリーズにおける、私独自の世界観の解釈も含まれています。
 今回のPSPo2ロールプレイは完全にオリジナル展開です。






「ま、まだだ。一度の戦いで敗北した程度だ。我はまだ……完全に負けていはない!」

 オルガ・アンゲルスを破壊されたカムハーンは、マガハラのさらに奥へと逃げ込んだ。彼はシズルという肉体を失ったので、いまは人の形をした光でしかなかった。

 まさか敗北するとは思ってもみなかった。アレだけは使いたくなかったが、躊躇する暇などない。他に反撃の手段は残されていなかった。

 反撃。王であるカムハーンに取ってそれは屈辱だった。自分は常に征服者であらねばならない。反撃など支配されるものの無様な抵抗だ。

「ここが、あなたの玉座ですか。太陽王カムハーン」

 背後に現れた声に反応して、カムハーンは振り向く。そこには一人の女が立っていた。長い黒髪におとなしそうな表情。仲間から赤木鳩美と呼ばれていたヒューマンだ。

「あなたを追い詰めました。これで全ておわりです」

「追い詰める? この我を追い詰めただと?」

 カムハーンは愚かなことを言った女を笑う。脆弱な『消え往く存在』が一度きりの勝利で、不相応な希望に取りつかれていたからだ。

「群れる事でしか力を得ることができないものが、たった一人で何が出来ると言うのだ! 貴様の勝利などミカやエミリアと言う小娘、そして我が依り代に使っていたシズルがいたからではないか!」

「一人なのは貴方も同じでしょう」

「貴様らのような脆弱な存在と同一視するな! 我はこの世で唯一生きた神である太陽王ぞ」

 自分はこの世を統べる太陽王。カムハーンにとってそれがプライドであり、一度や二度の敗北程度では決して折れない精神の源であった。

「神様ですか? ではお尋ねしますが、マガハラにいる旧文明人は、本当に全員があなたを崇めているのですか? もしかしたら、ミカさんのような考えを持った人たちがいるかも知れませんのに」

「愚か者め。自然の摂理に従って死ぬという考えを持った汚れた偽善者たちを、神聖なるマガハラに導くとでも思っていたのか? ミカはマガハラの鍵として必要だったから生かしていたまで。それ以外の我に従わない者たちなど、一万年前に粛清しておるわ!」

「つまり、このマガハラにいる旧文明人は、全て私の敵であると?」

「くどい!」

 鳩美が黙ったのを見て、カムハーンはにやりと笑う。たった一人で戦わなければならない絶望に打ちひしがれている姿は心地良かった。

「そうか……それは良かった。それは”とても良いこと”を聞いた」

 鳩美は絶望していなかった。それどころか笑ってすらもいた。その笑みは先程の清純さの一欠片も無く、邪悪以外の何者でも無かった。

「き、貴様! 本性を隠していたのか!?」

 鳩美は答えなかった。

 その手のひらに光が集まる。それは武器の形をなした。現れた武器は鎌だった。おとぎ話にでてくる死神が持っているような大鎌。

「ば、馬鹿な! なぜそのようなことができる!」

 ナノトランサーを使ったわけではない。鳩美は文字通り、何もない場所から武器を生み出したのだ。

「マガハラも亜空間。亜空間は記憶を具現化する。記憶とは、言いかえるならば過去を想像すること。ならば、望むものを強く念じれば、こうやって武器を作れると考えた。それだけだ」

 鳩美が一歩、カムハーンに近づく。まるで処刑人かのように凛と静かな一歩だ。

 カムハーンは思わず一歩下がる。その事実に強烈な羞恥心が沸き起こり、それをかき消すために怒りをこめて声を張り上げた。

「図に乗るな、『消え往く存在』が! 貴様達は我々の家畜に過ぎないのだ!」

 カムハーンの声にマガハラにいる旧文明人たちも呼応した。

 家畜が。家畜が。家畜が。
 家畜が。家畜が。家畜が。
 家畜が。家畜が。家畜が。
 家畜が。家畜が。家畜が。
 家畜が。家畜が。家畜が。
 家畜が。家畜が。家畜が。

 マガハラから数万の旧文明人達の声が聞こえる。

 鳩美は大鎌の柄で強く床を叩く。その音はマガハラ中に響き渡り、旧文明人達はたった一人の女が生み出す殺気で怖じ気付いた。

「思えば長い道のりだった。貴様と対峙するために、怠惰な娘であったエミリアを導いて、愚かな少年にすぎないユートを鍛え上げた。全てはこの瞬間のためだ。このひと時のために、私は苦労を積み重ねてきたのだ」

 鳩美が大鎌をカムハーンに向ける。その刃の怪しい煌めきは、まさにソウルバニッシュ《魂を消し去る大鎌》だった。

「ぬかせ! 貴様のような女一人、我が戦うまでもない。いでよ! オルガ・ディラン!!」

 太陽王の声に答えて、禍々しい気配を放つ竜が現れた。

「SEEDのドラゴンか。旧文明の敵でもある存在を、よくも平然と使えるな」

「ふん、利用できるものは全て利用するまでよ。強力な戦力があるというのに、それを使わないのは愚者のすることだ」

 オルガ・ディランは最後の切札であった。カムハーンであってもこの禍々しい存在は制御が難しい。マガハラに大きなダメージを残すかもしれない。だが勝利のためならば、いかなる犠牲を払ったところで、王にとっては些細な事に過ぎなかった。

 どれほどの損害を被ろうとも、カムハーンは王がただ一人無事であればなんら問題ないと考えていた。

「さぁら、恐怖しろ! ひれ伏しろ! 己の無力さを絶望して消えろ!」

 オルガ・ディランが鳩美に向かって突進する。たった一人の人間が勝てるわけもない。カムハーンは押しつぶされる彼女の姿を想像して、勝利を確信した。

「死ね」

 鳩美が静かに命じた。その瞬間、オルガ・ディランが一瞬にして消滅してしまった。

 何が起こったのか、カムハーンですら理解できなかった。なぜ、鳩美がただ一言死ねと命じただけで消滅するのか分からなかった。

「な、何故だ……」

「お前と同じようなことをしただけだ」

「な……に?」

「お前は死のイメージを照射して、多くの人間を仮死状態にした。私はより強い死のイメージを、お前の飼い犬に向けたに過ぎない」

「そ、そんなこと……」

「出来る訳もないと? だが私はたった今それをしたぞ。まあ……死を一度体験したからこそできるのだろうがな」

 カムハーンは言葉を失った。

「だが、安心しろこの『即死のイメージ』は貴様には使わない。悪党はこの手で殺すに限る」

 鳩美は笑う。恐ろしいほどに。

 鳩美が死神のように大鎌を構えて向かってくる。カムハーンは攻撃を避けようとしたが、恐怖に震えて体が動かない。なぜ動かないと思った時には、すでに片腕を切り落とされていた。

「あ、あああああ! 腕が! 我の腕がぁぁぁ!」

 今のカムハーンはむき出しの魂とも言える。魂を傷つけられた激痛は想像を絶するものだった。

 カツン

 鳩美の靴音が聞こえる。それは異様にはっきりと聞こえた。

「ま、まて」

 カムハーンは尻餅をつきながらも必死に叫んだ。

「わ、我なら貴様の力を有効に使わせてやれる。我が軍門に下れば望むものを全て与えよう。そ、そうだ! いっそのこと新たな太陽妃に向かい入れてもよいぞ」

 もう、恥も外聞もない。カムハーンは生き残るために必死だった。

 しかし、鳩美はカムハーンの言葉を無視して、大鎌を振り上げた。

「さぁ、カムハーン。心地よい悲鳴を上げてくれ」

 鳩美が鎌を振り下ろす。そして、カムハーンは生まれて初めて、心の底から恐怖し、腹の底から悲鳴を上げた。

「うわあああああああああああああ!!」

 カムハーンの首が切り落とされ、木からから落ちた果実のように転がる。

鳩美は切り落としたカムハーンの頭を踏みつぶす。何の抵抗も無くそれは粉々に砕け散った。同時に、首なしの胴体も同じように消滅する。

「……さて、後始末をするか」

『お、お待ち下さい!』

 その時、マガハラにいる旧文明人の一人が声を上げた。

『ど、どうか私たちを見逃してください。自分たちが生きるためには仕方のないことだったのです』

 つい先程まで鳩美を家畜と罵っていた旧文明人は、カムハーンが殺されると、手のひらを返すように慈悲を請う。

「仕方のない? 仕方がないから、私たちはおとなしく家畜になってしまえと? さすがカムハーンの賛同者だ。戦う力はなくても、その性根はまったく同じだな」

 鳩美が天を睨みつける。それだけで、マガハラ全体が萎縮した。

「貴様達は自分たち以外の人間を『家畜』といった。そのような者たちを、生かしておくことなど出来ない。ましてや手を取り合うことなど不可能だ」

 鳩美は大鎌を掲げて、『即死のイメージ』をありったけ込める。

「貴様達は敵だ。見つけた敵は必ず殺す。それがこの私だ」

『や、やめてください! お願いです! お願いです!』

 マガハラ中から無数の命乞いの悲鳴が聞こえてきた。しかし、鳩美の意思は変わらない。

「この世界はもう私たちのものだ。貴様達は一万年前の昔に死んでいる。亡霊は消えろ! 一欠片も残さず消滅しろ!」

 鳩美は鎌を振るう。たった一振りで、彼女は全ての旧文明人の魂を皆殺しにした。

 光に満ちていたマガハラだったが、旧文明人の魂が全て死滅したことで、黒一色で染められた世界になった。

冷たくもなく暖かくもない。風も吹かず、どんな音も聞こえない。

 苛烈なまでに孤独を想起させるような世界であるのにもかかわらず、鳩美は今までにない大きな満足感を得ていた。

 世界を揺るがすほどの大悪党をこの手で、しかも最上の恐怖を与えながら始末した。まだ二十年ほどしか生きていないが、これが自分の人生において最大の愉悦であることを、鳩美は実感していた。

 とはいえ、たかだかカムハーンを始末しただけで、戦いが終わることはないことも鳩美は理解していた。

 鳩美は鳩美以外の邪悪を認めない。命が尽き果てるか、自分自身がこの世界で唯一無二の邪悪になるまで、戦いを止めるつもりは無かった。

 その時、虚無のような世界になったマガハラに、一点だけ光が現れる。

「さて、そろそろ戻るとするか」

 そこからは、旧文明人の放つ魂の腐敗臭は漂ってこない。慈愛に満ちた優しい花の香りがある。鳩美はそこへ向かって歩き出した。

 Act5へ続く
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by ginseiseki | 2010-01-26 22:17 | PSPo2
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