銀星石のブログ

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銀星石のエッセイブログ

PSPo2ロールプレイ 最終章 『save this world』 Act1

注意
 このブログ記事にはファンタシースターポータブル2のネタバレが含まれています。

 また、ファンタシースターユニバースシリーズにおける、私独自の世界観の解釈も含まれています。







 事態は時間が経つごとに悪化して行った。宇宙空間に、亜空間の中でもとりわけ大きく、禍々しいものが現れた。

 調査に向かった同盟軍の船は音信不通。近づいただけで、乗員が仮死化されたらしい。

 それがマガハラなのだろう。それは徐々に拡張ており、いずれグラール太陽系を飲み込む。

 タイムリミットは13時間。ほぼ半日で世界があっけなく奪われる。止めるにはカムハーンを始末するしかない。だが、おそらく太陽王はマガハラの中に潜んでいるのだろう。

 鳩美は考えた、なにか手はないのかと。マガハラに近づくと仮死化してしまうことを無力化すれば、あの傲慢な王の首をはねることができるのだが。

「あのバリアみたいなのを一時的にでも無力化する手を……いや、無力化じゃなくて、上書きすれば!? そうだ! 上書きだ!」

 エミリアが何かをひらめいたようだ。ミカが奪われたことで意気消沈したと鳩美は思っていたが、どうやら困難に立ち向かおうとする意思は残っていたようだ。

「ナツメさん! 仮死化現象を治療するためのプログラムって、もう準備できてるんだよね!」

 ナツメはエミリアの解析結果と、ユートの生存本能をベースにすでに対仮死化現象のプログラムを完成させていた。

「それって、照射とかもできるよね? シズルがやってるみたいにさ」

「照射……? まさか!」

 マガハラにむけて『生』の意識を照射して、仮死化現象を上書きする。これが、エミリアの考えた突入作戦だった。

 成功率はゼロに近い。あまりに無謀だが、他に手段がなければ仕方ない。出来やしないと諦めるのは賢者ではなく愚者の行いだ。

「一点照射っていうのなら、収束させて撃ったほうがよさそうね」

 ウルスラはプログラムをリトルウィングに送るよう、ナツメに要請した。

「お、お前……まさか……アレを使うつもりか!?」

「ウル! 勝手にはダメヨー! いろいろなヒト、すっごい怒るネ」

 クラウチとチェルシーはウルスラの意図を理解しているようだった。その様子から察するに、気安く使えるような手段ではないことは明らかだった。

「成功率はゼロに等しいというのに、それでもキミたちはやろうというのか? 怖くは、ないのか?」

 一切の絶望を見せずに行動している者たちを見て、ナツメがぽつりとつぶやく。

 エミリアは皆がいるから怖くないと、ナツメに言い切った。それは鳩美も同じだ。常に邪悪にとっての恐怖であり続けた彼女に、恐れるものなど何も無かった。

「わかった、もう止めはしない。グラールの未来をリトルウィングに託そう!」

 エミリアの毅然とした表情に、ナツメも覚悟を決めた様子だった。

 作戦の決行は6時間後になる。ウルスラはやり残したことを済ませておくようにと、全員に通達した。

 しかし、鳩美自身には特にするべきことは無かった。なぜならば、彼女が死ぬ前にするべき事とは、カムハーンの抹殺だけだからだ。

なので、作戦まで体を休めようと、鳩美は自室へと戻った。

「おーそーいー! どこ行ってたのよ、まったく!」

 だが、いつの間にかエミリアが部屋に居座っていた。蹴り出したい衝動を抑えつつ、鳩美は微笑みながら、どうしてここにいるのか尋ねた。

「ちょっと、お話しようかなーって……ほら、あんたとはこれまでいろいろあったしさ」

 確かに、エミリアとであってからは色々とあった。それまでは悪党を見つけては始末をする毎日だったことを考えれば、激変したと言ってもいい。

「仕事もできた、友達もできた。それになにより……家族ができた。思いっきり、笑えたし、力いっぱい泣くこともできた。それもこれも、すべて鳩美に会うところから始まったんだよ? つまり……ぜーんぶ、あんたのおかげ!」

 エミリアは勘違いをしていた。鳩美が彼女に対して行って来た行動は、すべて『他人に対してこう接するべきだ』という暗黙のルールに従ったまでだ。そこに一切の情はなく、そうするべきだから、そうしたに過ぎない。

 鳩美が本性を隠して、お淑やかな仮面を被っているのは、面倒なトラブルを避けるため。ただ、それだけの理由だ。他人に親切にするのも、面倒事で不愉快な思いをしたくないからだ。

「そんなことはないですよ。私はあたりまえのことをしただけです」

それだけで、人生に絆が生まれるのならば、それは宝石のような価値などない。だれもが手にいれられる平凡な小石だ。。

「そんあことないって! こういうときは謙遜せずに、素直にうけとってよね」

 心の底から言った言葉なのだが、エミリアはそれを謙遜だと誤解してしまった。

「……鳩美にだけは、ほんとのこと言うね。あたしは、すっごく怖い。失敗したら、みんな死んじゃうってかんがえると、身体が勝手に震えだして」

 エミリアの声が震える。ナツメに見せた気迫は強がりだったようだ。

 『優しい鳩美さん』ならばこうするであろうと考え、鳩美はエミリアを姉のように抱きしめてあげる。

「不思議だね、話したり、触れたりするだけで、不安が消えていく……」

 ただそれだけのことでエミリアが勇気を取り戻してくれた事に鳩美は安堵した。このまま戦いに怯えて足を引っ張ってもらっては困る。

「……ぜったいに、ミカを助け出すよ。あたしは、自他共に認めるわがままだから、言ったからにはやってみせる。ミカも救うし、シズルも助けるし、グラールだって、ぜんぶまとめて救って見せる」

「ええ、頼りにしてますよ、エミリアさん」

 そう、エミリアはそれでいい。彼女はただひたすらにグラールを救うことだけを考えていればいい。それ以外は鳩美の仕事だ。

 エミリアが世界を救い、自分は古い世界を皆殺しにする。ただそれだけだ。鳩美はエミリアを抱きしめながら、彼女に表情を見られないないよう、ニヤリと笑った。

 その時、チェルシーから連絡が来た。作戦決行の時間が訪れたのだ。

 全員がリトルウィングに集まる。エミリアもユートも、初めて出会った時と比べて、表情が引き締まっている。

「それじゃ、作戦を説明するわね」

 ナツメの作ったプログラムは『アライブ』と名づけられた。作戦は単純。アライブをビーム状に収束させて、その中を通っていく。

 突入メンバーは鳩美、エミリア、ユート、クラウチとなった。ウルスラはアライブ照射の指揮があり、チェルシーも各方面との連絡に忙しい。

 鳩美達はマイシップに乗り込む。クラッド6に残ったウルスラ達も準備を終えたようだ。

 鳩美達はアライブが照射されるのを、じっと待つ。





 一方、パルムにあるスカイクラッド本社では、社長が青ざめた表情をしていた。

「待てウルスラ!! クラッド6の戦闘形態移行はスカイクラッド重役全員の承認が必要だ!! それを無視するとは、いわば社への反逆だぞ!! ウルスラ! ウルスラ!!」

 社長は通信機に向かって怒鳴るが、ウルスラは止められるものなら止めてみなさいと、一方的に言って通信を切ってしまった。

 クラッド6はローグスの襲撃に備えて、居住区をパージし、中枢部を戦闘艦として運用出来る機能を備えていた。しかし、一度戦闘形態になってしまったら、再びリゾート型コロニーに戻すためには莫大な費用がかかる欠点があった。

「くっ! こんなことなら軍人上がりの女など雇わなければよかった」

 スカイクラッドの社長は悪態を付きながら、執務机の引き出しから、クラッド6を休止状態にする遠隔端末を取り出す。

「これさえ、あれば!」

 社長はスイッチを押そうとするが、その直前で窓の外から銃弾が飛び込んできて、端末を破壊してしまった。

「命中を確認。作戦成功であります」

「やったね、黒霧!」

 スカイクラッド本社の向かい側にあるビルの屋上。そこには黒霧、レヴィア、ミストラルの三人がいた。

「おし、もうここには用はねぇ。急いで撤収するぞ」

 黒霧は構えていたブラックバルズをナノトランサーに収納した。

 彼らはウルスラからの命令で、社長が遠隔操作でクラッド6を止めるのを防ぐためにここに訪れていた。

 黒霧は空を見上げる。マガハラはパルムの地表からでもはっきりと見えるほど巨大になっていた。

「特上の悪党はお前に譲るぜ、鳩美。代わりに後で旨いもんをおごってもらうがな」

「お兄ちゃん、早く!」

「お兄ちゃん、早くするであります」

「ちょ、この馬鹿コンビ! 俺をそんなふうに呼ぶなといっているだろ!!」





 一方的に社長の通信を切ったが、クラッド6が社長権限で止められる様子はない。黒霧達は成功したようだった。

「クラッド6……バトルモード、トランスフォーム!!」

 ウルスラの号令に従って、チェルシーがコンソールを操作する。回転することで重力を発生させていたリングと、それにつながっている球状の居住区が分離する。そして、残った軸の部分が変形して、戦闘形態への移行を完了した。

 アライブを照射出来るように急遽改造した主砲にエネルギーが充填される。

「ダメ……ユート一人のジャ、半分にも満たナイ。これじゃ、照射時間が足りないネ!!」

 ウルスラは臨界直前まで反応炉の出力を上げるよう指示する。無茶な注文に、さすがのチェルシーも半ば悲鳴をあげながら、それを実行した。

「幾千の『死』の意識に対して、ユート一人の『生』の意識じゃ限界があるってこと!?」

 しかし、それでも足りない。所詮個人の力などこの程度。軍にいた時から知っていたはずの現実に、ウルスラは思い知らされる。

「ならば、こちらは幾万の『生』だ」

 その時、ナツメが通信を送ってきた。彼は希望を用意してきたのだ。

 クラッド6にグラール中から『生』の意識が宿ったエネルギーが照射される。

 ガーディアンズのライア・マルチネス。同盟軍のフルエン・カーツ。そしてグラール教団からはミレイ・イクナ。グラールを支える、各勢力の代表者達が、SEEDと戦った三年前の時のように、再び心を一つにしようと、グラール中に呼びかけていた。

 三人の演説を鳩美達もマイシップで見ていた。だが、その時ルミアから通信が入り、エミリアもグラールに向けて語りかけるよう頼んできた。

 戸惑うようにエミリアは振り返って後ろに立っていた鳩美を見る。鳩美はニッコリと微笑を作って、背中を後押しした。

 エミリアはグラール中に語りかける。想いを強く持つことを。他人との絆を大切にすることを呼びかけた。

 少女の真摯な呼び掛けは、大衆に取って大きな効果をもたらしたようだ。マガハラに突入できるだけの十分なエネルギーが集まった。

 クラッド6の主砲から強烈なエネルギーが発射される。それはマガハラを貫いて、鳩美達に道を作った。

 Act2へ続く
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by ginseiseki | 2010-01-23 17:26
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