銀星石のブログ

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銀星石のエッセイブログ

PSPo2ロールプレイ 第9章 終わる銀河 Act3

注意
 このブログ記事にはファンタシースターポータブル2のネタバレが含まれています。

 また、ファンタシースターユニバースシリーズにおける、私独自の世界観の解釈も含まれています。







 運転席にはクラウチがいた。彼が列車を止めたのだ。

 全ては作戦。鳩美達が囮になって、その隙ににクラウチが列車の操作を掌握する手はずとなった。

 当然、エミリアはなぜ教えてくれなかったのかと抗議するが、情報漏えいのリスクを軽減するためだ。

 ここからは徒歩で線路上を進むことになる。チェルシーはガーディアンズや同盟軍との連絡のために残り、入れ替わりにクラウチが来る。

 列車での攻撃に失敗した敵は、亜空間で凶暴化させた原生生物を送り出してきた。しかし、大した障害にはならない。阿吽の呼吸で目をみはるような連携を見せるクラウチとウルスラ。鳩美はこれ以上の快進撃を経験したことがない。

「そろそろ研究施設が見えてもいいころじゃない? ちょっとあたし、鳩美と一緒に先に言って様子見てくるから!」

 鳩美はエミリアに手を引っ張られながら、先へと進む。

 その場にはクラウチとウルスラが残された。

「動きはにぶってないようね」

「そっちこそ、重役なんてやってるわりには、なかなか動けているじゃねえか」

 青春時代を思い出すかのように二人の表情は明るい。

「俺たちも、ずいぶん変わっちまった」

 クラウチが感慨深く言う。鳩美やエミリアにはまだ持ちえない感情だ。

「でも、今のあなたは幸せそう」

「守りたいものが、また見つかっちまったからな」

 少し恥ずかしそうにクラウチは笑った。家族を失った彼の悲しみは、エミリアという家族によって癒された。

 誰もが礼讃する現実主義は、幸福に甘えず常に不幸と共に生きることを強要するが、それだけでは生きてはいけないのは、クラウチを見ればわかる。

「そうか……守りたいもの、見つけられたんだ」

 ウルスラは安心したと同時に、どこか寂しげな顔をする。

「ずいぶん他人事じゃねえか。その『守りたいもの』の中に、お前も入ってるんだがな」

 クラウチの言葉に、ウルスラの頬が乙女のように赤らむ。沈黙が二人の間に流れた。実際は数表に過ぎなくとも、当事者にとっては長く感じたことだろう。

「で、エミリアと鳩美。お前たちはいつまで隠れてるつもりだ?」

 鳩美とエミリアが隠れている場所を見て、クラウチが言う。彼は初めから気がついていた。

「洞察力はたいしたものだけど、気配の消し方はまだまだね」

 まだまだ精進が必要なエミリアに気配を消すと言うことはまだ難しい。鳩美にいたっては、面倒だったので気配を隠すつもりなど無かった。

「いいこと教えてやる。研究施設の入口はそっちじゃなくて、ここにある排水溝を潜った先だ」

「うっ……ぐぐぐぐ……ちょっと! 鳩美もフォロー入れてよ」

「申し訳ありません。指導が足りませんでした」

 鳩美は頭を下げる。

「指導もなにも、お前だってノリノリでやってたんじゃねえのか?」

 気まぐれとはいえ、鳩美でも小娘のイタズラに便乗する程度の遊び心はある。

「ま、エミリアのイタズラなんか、誰かさんのヒステリーにくらべりゃ可愛いもんだぜ」

「……誰のことよ」

 ウルスラはクラウチを睨むが、それを無視して彼は意気揚々に先へ進もうと言った。

 鳩美達は排水溝を抜けて施設に潜入した。そこは、入口付近こそ以前訪れたインヘルト社の施設と同じ内装だったが、進むにつれて、エミリアと出会った海底レリクスと似た作りになっていった。

 思えば、あの時が全ての始まりだった。

「私は時々思うのです。私がいるために、あなたたちは常々危険にさらされているのではないか、と」

 エミリアから出てきたミカが申し訳なさそうに言う。

「そんなことはありませんよミカさん。あなたがいてくれなければ、私は海底レリクスで命を落としていたでしょうし、なによりもカムハーンの存在をしらないままでした」

 あのような邪悪を見過ごしたまま過ごす人生など、鳩美は絶対に認めない。

「私もミカがいっしょじゃなければ、こんなにがんばれなかった。ここまでがんばれたのはミカのおかげなの!」

 エミリアもミカを励ます。自分とは一心同体なのだから遠慮は必要ないと言う彼女の言葉に、ミカは穏やかな表情に戻る。

「おい、お前ら! なにをぶつぶつやってんだ! ミカってのと話すのは構わねぇが、もうちょっと声をしぼれっての」

 クラウチが雑談を咎めるように言う。

「え? おっさん、ミカのこと見えるの?」

「見えねえよ。だが、俺には見えてなくても、おまえの横にいるんだろ?」

 いつの間にかクラウチはミカの存在を認めていた。初めはエミリアの妄言と切って捨てたが、彼女の言葉が全て事実であったことで、ミカの存在も認めることにしたのだった。

「このバカ娘の成長には、きっとお前さんも一役買ってるんだろうから、礼を言っとく。ありがとな。エミリアと一緒にいてくれて」

「……! はい……はい!」

 姿は見えなくとも自分の存在を認めてくれる。ある種の信頼ともいえる情にミカは喜んだ。

「おっさん……ミカ、喜んでるよ」

「そうか……よし、話はおわりだ! そら、行くぞ!」

 最深部になると、風景は完全に海底レリクスのものとなっていた。もしかしたら、元からあるレリクスを改築して施設を作ったのかもしれない。

「現れたか、ミカ」

 そこではカムハーンが腹が立つくらい雄大に待ち構えていた。

「カムハーン!」

 ミカはカムハーンを睨むが、闘志や殺意がこもっていない視線で相手を威嚇することなど出来ない。

「そう警戒するな。マガハラへの道は、未だ開かれていない。だが、それもここまでか。動きを見せれば鍵のほうからやってくると踏んでいたが……まさに、その通りになったな!」

「まさかあなたは、すでに鍵の場所を知って……!」

「当然だ、私を誰と心得る! 全てを知り、全てを能う者!」

 カムハーンが高らかに笑う。旧文明では、誇大妄想と虚言癖を兼ね備えなければ、王になることなど出来ないのだろうと鳩美は思った。

「何人たりとて、我が道を遮ることは適わない!」

「あなたの好きにはさせない! エミリア、少しの間だけ体を貸して!」

 ミカが戦いの意思を見せる。エミリアもそれを汲みとって体を明け渡した。

 ミカはラ・フォイエを立て続けに放つ。しかし、カムハーンは巧みに回避した。

「なぜ刃向かう。なぜ、『消え往く存在』などをまもろうとする」

「この世界は、すでに私たちのものではありません! 私たちは、滅ぶべくして滅んだのです!」

 摂理に反して無理に生きようとすれば、魂が腐る。カムハーンの存在がそれを証明している。

「その考え、虫酸が走る!」

 カムハーンが一瞬でミカとの間合いを詰める。鳩美も動くが一歩間に合わなかった。

カムハーンが警棒のような者を取り出すと、それをエミリアの腹に突き刺す。抜き取ると、棒には何か光が宿っていた。

「野郎ッ!! 逃げんな、コラッ!!」

 クラウチが怒りと共にツインハンドガンを撃つ。しかし、またしてもカムハーンは、ハビラオの時と同じように、亜空間を使って姿をくらました。

「エミリアさん! 大丈夫ですか!?」

 不思議なことに突き刺された場所に傷が無かった。しかし、声をかけても気を失ったままで目を覚ます気配はない。

「先へは進めそうにないわ……それに、何かが作動しはじめてる? クラウチ、ここにいるのは危険よ」

「チッ……! 仕方ない、撤退するぞ!!」

 クラウチはエミリアを抱え上げる。鳩美達は鳴動するレリクスから脱出するために、出口へと走った。

 その後、リトルウィングに帰還した鳩美達は、急いでエミリアを医務室へと運んだ。命に別状は無く、仮死化現象の反応もない。それはクラウチに取って幸いだった。

「みんな、いるか!」

 鳩美達が戻ってきたと聞いて、ユートが飛び込むように医務室に入ってきた。ナツメから「テレビを見ろ」と伝言を頼まれたらしい。

 伝言に従いテレビを付けてみる。内容はどこの局も同じようなものだった。グラール各地で禍々しい光を放つ亜空間が現れ、次々と住民たちを仮死化させているという報道だ。

 ウルスラがチェルシーに同盟軍とガーディアンズに連絡をとるように指示する。

 その直後、エミリアが目を覚ました。しかし、様子がおかしい。

「え、あれ……ちょっとミカ、出てきてよ!」

 エミリアに呼ばれれば必ず現れてきたというのに、ミカの姿が見えない。

 恐らくエミリアがカムハーンに攻撃された時だ。あの瞬間、彼女に肉体に突き刺さった警棒のようなもで、ミカの精神が抜き取られてしまったのだろう。

「つながった! クラウチ、来て! まず、ガーディアンズと会談を始めるわ!」

「くそっ、こいつをなぐさめる時間もねえのかよ!」

 ミカの名前を叫ぶエミリアに、慌ただしく動くクラウチとウルスラ。蜂の巣をつついたような騒ぎになったリトルウィングの中で、鳩美は一人静寂を保っていた。

(やってくれたなカムハーン。この屈辱を、全て貴様にとっての苦痛に変えてやる)

 最終章へ続く
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by ginseiseki | 2010-01-21 22:03
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