銀星石のブログ

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銀星石のエッセイブログ

PSPo2ロールプレイ 第9章 終わる銀河 Act1

注意
 このブログ記事にはファンタシースターポータブル2のネタバレが含まれています。

 また、ファンタシースターユニバースシリーズにおける、私独自の世界観の解釈も含まれています。







 ハビラオ禁止区での一件から数日後。鍵を揃えたカムハーンは大きな行動に出た。

今はグラール中で人が突然仮死状態になる現象が発生している。乗っ取りの下準備であることは明白だ。

「こんな大規模に行動してくるなんて……もう、すべての準備は整ったってこと?」

「全ての人が仮死状態になっているわけではありません。まだ大丈夫のはず。物事は成功し終えるまで、失敗する可能性があるものです」

「はい、鳩美の言うとおりです。まだマハガラの気配はありません」

 ミカが敵の侵攻状況をある程度把握してくれているのは助かった。だが、鳩美達に余裕が無いのも事実。早急にカムハーンを始末しなければならなかった。

「おい、無茶すんなって!」

「そうも言ってられません。息子の不始末は私が……」

 表向きではナツメ・シュウは消息不明となっているが、実際はリトルウィングに保護されていた。まだ怪我が完治していないというのに、彼は老体に鞭をうって事務所にやってきた。

彼は大きな糸口となる情報を鳩美達に伝えようとした。

カムハーンの仕掛けた仮死化現象は亜空間発生装置を利用したものであり、小さな亜空間によって『死』のイメージを伝播させることで、人間を仮死状態にしていると言う。

「対抗手段はあるのですか?」

 攻撃の内容は理解できた。次は迎撃手段の確保だ。

 ナツメはこちらも亜空間を発生させて、『生』のイメージで相殺すれば良いと言った。その為に必要なのは三つある。

 一つ目は仮死化現象の詳細を調査するための研究施設。しかし、リトルウィングにそのようなものはなく、インヘルト社も敵に制圧されている。

「いきなり手詰まりじゃない。どうすればいいの? どうしようもないの……?」

 こう言ったことにエミリアの驚異的な知能は発揮されない。

「あら、諦めるなんて、あなたらしくもないわね、エミリア」

 その時、ルミアが事務所を訪れた。その後ろにはマヤの姿もある。

「ナツメ・シュウ代表。その検証実験、ガーディアンズ研究施設で行うことはかのうでしょうか?」

「あ、ああ……噂に名高い研究部の施設が借りられるのなら、それに越したことはない」

 これで一つ目の問題は解消された。次に必要となるものは、『生』のイメージを生み出す人材だった。

その者はすでにいた。ユートだ。強い生存本能を自覚したカーシュ族ならば、これほどの適任者はいない。

「ナツメ代表。ガーディアンズの研究施設に、ユート君の生存本能。三つのうちの二つが揃いました。最後の鍵は一体なんですか?」

 ナツメに尋ねたときにふと気がついた。そういえば敵が必要としていたレッドタブレットも三つだった。ちょうど良い意趣返しなのかもしれないと、内心でほくそ笑む。

「最後の問題は、亜空間発生装置の演算調整を誰が行うのか、なのだが……」

 ナツメはこればかりは不可能だといった。「なぜ」と鳩美は尋ねるが、亜空間を生み出すための計算は、本来なら膨大な月日がかかるのだと言う。

ならば、なぜ今まで亜空間を生み出すことができたのか。その秘密はシズルにあった。彼はエミリアと同じ才能をもっており、その力で、不可能を可能にしていたのだという。

「……一つだけ方法があります。今考えられる、グラール最高の生体コンピュータ『テンマ』を使用するのです」

「……マヤさん。しかしそれでは……」

 マヤは鳩美に「わかっている」という目を向ける。しかし、それでもこれ以外に方法はないとも言った。

「あなたが、テンマ計画に対して……いいえ、我々ガーディアンズをどう思ってるか、十分に分かってるつもりよ……でも、それでもテンマを使わなければシズルに対抗出来ない……」

「やだ……やだよ……あれだけは絶対にやだ……もう二度と、あそこには入りたくない……!」

「……お願い、エミリア。なりふり構っていられないのは、あなたもわかっているでしょう?」

 マヤの言葉は正論だ。世界を救うために、たかが小娘のトラウマ一つくらい、踏みにじったところでどうということはない。誰も彼もが拍手喝采するほどの正論だ。

(さて、ここはどう動くべきかな)

 しかし鳩美は考える。ここでエミリアを裏切ってテンマに組み込むのは簡単だ。しかし、自分はエミリアに信頼されている。むしろ”信頼されてしまった”と言った方がいい。

 もしも、ここでエミリアを裏切れば、彼女は絶望で気力の一切合切を失って、亜空間を生み出す計算などできなくなる。

 しかし、テンマとエミリアが必要なのも確かだ。

 鳩美が考えている間も、「嫌だ」と言うエミリアを、マヤが情を含まない正論で説得しようとしている。

「やめろ!! それ以上、エミリアに近づくんじゃねえ!」

 クラウチがマヤとエミリアの間に立つ。父親なら当然の行動だ。彼は言う、娘を悲しませてまで得たいものなどないと。

 ユートやチェルシー、ウルスラも、エミリアを守るようにマヤの前に立つ。家族を守るとはこういう事なのだろうと鳩美は思った。

(なるほど、ならばこうするべきか……)

 鳩美はこの状況での最善手をとる。

「鳩美……あんたまで……」

「大丈夫ですよ。私たちはあなたを守ります」

 鳩美もエミリアの前にたった。今はこれが正しい一手だ。仮に悪手であったとしても、自らの行動に後悔しない覚悟は、とうの昔に決めている。

「……マヤさん。本人の望んでいない形で強制しても、力は発揮できません。なにより、私も……イヤです」

 ガーディアンズであるルミアも鳩美達に同意した事で、状況は決まった。

「……あーあ、やっぱり私一人悪者じゃない。ま、みんなそういうと思ってた。他の手段にかけてみるしかないようね」

 やはり、マヤ自身もテンマを使うというのはあまり乗り気ではなかったようだ。彼女は他に手段がないか探すと言う。

「……ごめんね、エミリア」

「待って!」

 事務所から立ち去ろうとしたマヤをエミリアが止めた。その目には決意が秘められている。どうやら鳩美が最も期待していなかった可能性が実現したようだ。

「あたし、やる。テンマに……アクセスしてみる」

 当然クラウチは父親として反対するが。エミリアの心は変わらない。今まで守ってくれた家族に報いるために、今度は自分が守ると言い切った。

「あ、でも……あの、あのさ……一人だと、不安だから鳩美がついてきてきてくれないかな?」

「ええ、いいですよ」

 鳩美は姉のような微笑を浮かべた。しょせん作り笑顔にすぎないが、それでもエミリアの安息にはなったようだった。

 鳩美とエミリアは急ぎ、ガーディアンズコロニーへと向かう。ナツメも最後まで責任を果たすと付いて来た。その道中で、マヤからテンマ計画の末路を聞いた。

 SEED封印後にガーディアンズは組織全体を見直したのだが、その過程で、テンマ計画の真実が白日のもとにさらされた。

 エミリアの能力を独占しようとした、研究者達は、彼女を『善意の協力者』として上層部に報告していた。しかし、実際は彼女をたんなる演算装置として扱っていた。

 当然、上層部に隠れて非人道的な実験を行ったとして、計画に過かわった研究者達は全員解雇された。処罰ではなく”処分”されなかったのが、鳩美にとっては残念ではあった。

 そして、目の前にテンマがあった。ふと横を見れば、エミリアの手が震えている。いまさら怖気づいてもらっては困るので、鳩美は手を優しく握ってやる。

「え……あ……あ、ありがとう……」

 鳩美は無言で微笑む。このくらいで十分だろう。

「エミリア、準備はいい?」

「……いつでもどうぞ」

 マヤの言葉に、テンマと接続したエミリアは力強く答える。

テンマが起動し、演算が開始された。

「な……なんという処理速度だ……! 最新型のGRM製演算装置ですらパンクした処理を、いとも簡単に……!?」

 ナツメが見ているモニターを覗き込んでみる。鳩美は知識がないのでよく分からないが、めまぐるしい速度で演算されていることが、ナツメの様子からわかる。

「でも、演算の負荷が大きすぎる……このままじゃエミリアが」

 テンマと接続しているエミリアを見れば、苦しそうな表情で脂汗を流している。あまり良い状況ではない。

「エミリアさん! それは機械です。所詮道具に過ぎないのです。あなたは誰です? 人間でしょう? ならば機械を支配できるはずです。 道具で道具は操れない。 あなたはテンマの部品などではなく、テンマの使役者なのです!」

「は、鳩美……」

 演算をモニターで見守っているマヤとナツメが、演算速度があがったと驚愕している。どうやら、単なる激励に過ぎない鳩美の言葉が、エミリアにとって予想以上の力となったようだ。

「みんなのためにがんばるんだ……リトルウィングも……ガーディアンズも……グラールのみんなも……あたしが……アタシが救ってやるんだ!!」

「そうです! エミリアさん、頑張って」

 エミリアを応援する心は嘘ではない。なぜならば、彼女が世界を救うために全力をだし、そして結果を出すことができれば、鳩美は思う存分カムハーンと戦える。心置きなく、邪悪を抹殺出来る。

 次の瞬間にはエミリアの演算は終わっていた。

「はぁ……はぁ……なんだ、やってみると、案外あっけないもんだね」

「大丈夫ですか」

 余力を残すことなく全力を出し切ったのだろう。エミリアは疲労で動けない様子だった。

「あたしはもう大丈夫だから。あんたは戻って、準備をしておいてよ」

「ええ、分かりました。それでは、マヤさん、ナツメ代表、エミリアさんをよろしくお願いいたします」

 鳩美はエミリアを任せ、準備のためにリトルウィングへと戻ることにした。カムハーンを始末するための準備をするために。

 Act2へ続く
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by ginseiseki | 2010-01-19 22:53
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