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銀星石のエッセイブログ

PSPo2ロールプレイ 第8章 絶望への序曲 Act3

注意
 このブログ記事にはファンタシースターポータブル2のネタバレが含まれています。

 また、ファンタシースターユニバースシリーズにおける、私独自の世界観の解釈も含まれています。







 戦いが終わると同時にエミリアの解析も終わったようだ。しかし彼女の表情を見ると、諸手を上げて喜べるような結果ではないらしい。

「どうかしましたか、エミリアさん」

「……この先に、亜空間が発生している」

 エミリアの話によると、リュクロスとよく似た状況であるらしい。パルムのデネス・レリクスが亜空間で再現されているとのことだ。

 先に進んでみると、確かにそこはレリクスの風景があった。失踪した同盟軍の部隊はここを訪れたことがあるのだろう。だから再現されたのだ。

 クラウチはそんなことがあるのかと懐疑的だが、目の前の現象を目の当たりにすれば信じざるえなかった。

「……いるぞ。気をかんじる……ヒトの気配がするぞ。あと、もうひとつ……これは大地神さまの気だ!」

 同盟軍だけじゃない。どうやらシズルもいるようだ。

 レリクスを進む鳩美達の前にパルムの原生生物やスタティリアが襲いかかる。VRと同じ手応えのなさだが、敗北すれば殺される点だけは異なる。

 形を持った記憶の中を、鳩美達は走り抜ける。記憶の再現ということは、擬似的な過去への移動ともいえる。リュクロスでもそうだが、シズルの思惑が分からない。

そして、レリクスの最深部で見覚えのある黒服を見つけた。

「ついに手にいれたぞ! デネス、カーシュ、リュクロス! 三つのレッドタブレットが我が手に!」

 シズルの手には三枚のレッドタブレットがあった。それが目的であったのか、彼は鳩美が不愉快に思うほど心地よく高笑いしていた。

 鳩美は無言で足を狙ってハンドガンを撃つ。しかし、命中する前にシズルは弾丸を回避した。

「また貴様たちか。つくづく、縁があるようだな」

「そのレッドタブレットがあなたの目的のようですね。マガハラの鍵を手にいれるために、リュクロスやこのレリクスを亜空間で再現した……」

「……ほう、その答えまで辿りついたか。やはり貴様は、他のモノとは違うようだな」

 恐らく「者」ではなく「物」と言ったのだろう。ヒューマンなど所詮は旧文明の家畜に過ぎないという、腐った精神がその瞳から見えた。

「ならば、見せてやろう。本当の亜空間の使役方法をな」

 風景が歪む。レリクスは消え、次に現れたのはSEEDに侵食された同盟軍本部だった。

「ガラクタどもの記憶から、最も忌むべき存在とやらを具現化したものだ。どうだ? 貴様たちの死出の旅路として、ふさわしい悪夢だと思わないか? そうら……広がるぞ、終わらない悪夢が……!」

 振動と共に何かが現れる。鋼の巨腕に上半身だけの体。ここが、三年前の同盟軍本部なら間違いない。かつて、同盟軍の全てを統括したマザーブレイン。SEEDに侵食されたことでパルム全土を恐怖に陥れた存在をシズルは再現したのだ。

「マザーブレインの一件は同盟軍の兵士にとってトラウマのはず。あなたはどうしようも無い悪人ですね。自分の犯した罪を後悔させてあげますよ!」

「ククク……あまり吠えるな。貴様たちのような脆弱な存在、わざわざ私が相手をするまでもない。悪夢に食われ、闇に堕ちろ……!」

 マザーブレインが鳩美達に襲いかかる。巨大な肉体をもっているものの、キャストにはかわりない。にもかかわらず、強力なテクニックの嵐が牙を向く。

 シールドをもつ鳩美が全員の盾になる。

「もらった!」

 ユートが鳩美を飛び越えてスピアを突き刺す。しかし、まだ致命傷にはいたっていなかった。マザーブレインは巨腕とは別の本体が持っている小さい方の腕でユートを払いのけた。

「まだだ!」

 クラウチがナックルで刺さったままのスピアを殴りつけた。衝撃で槍はマザーブレインのボディーを貫通し、内部にある機関部に決定的なダメージを与えた。

 倒されたマザーブレインは、亜空間で生み出された敵と同じで、幻のように消え去った。それと同時に、風景もHIVE化した同盟軍本部から、もとのハビラオ禁止区に戻る。

「具現化が……戻るだと……あの悪夢を打ち破ったと言うのか?」

 シズルは勘違いをしている。終わらない悪夢などない。三年前のマザーブレインは、イーサン・ウェーバーに並ぶ英雄と称される、「ガーディアンズのエース」によって倒された。

 シズルはマザーブレインを再現した。そして、その末路は鳩美達によって再現された。

「なにもかも、アンタの思い通りになるとおもったら大間違いよ」

 かつては大きな戦いを終える度に満身創痍になっていた少女は力強く立っていた。

「貴様、その力はなんだ。私と同じ波動……? どうやら、貴様だけはこの場で葬っておくほうがいいようだな」

「それは、こっちのセリフよ。グラールのためにも、ミカのためにも、ここでアンタを止める!」

「ミカ……だと……? その名前、聞き覚えがあるぞ。 ミカ? ああ、ミカ! オマエか、ミカァッ!」

 突如、シズルは高笑いを始める。悪党の笑い声は、何度聞いても鳩美とっては耐え難いほど不愉快であった。

「気をつけて、エミリア。今、確信しました。この男は……旧文明の王」

「そう、我が名はカムハーン! 旧文明を統べし太陽王よ! 久しいな、反逆者ミカ!」

「カムハーン……よりにもよって、あなたが目覚めているなんて」

 シズル・シュウの身体に宿っていたのは、旧文明の王だった。傲慢であるのも納得だ。

「肉体の乗っ取りに最も反対していた貴様が、こうして肉体をえている皮肉! 非願への余興としては、十分すぎる!」

「余興……ですって?」

「そうだ。すでに鍵は揃った。まもなく『マガハラ』への門は開かれる! 今さら抵抗したところで無駄だ!」

 抵抗したところで無駄。その言葉を鳩美は聞きあきた。そして、その言葉を口にした悪党たちを例外なく葬ってきた。たとえ旧文明の王であろうとも変わらない。

「今一度、貴様に問おう! 旧文明の復活はもはや約束された。されば、我とともに歩む気はないか?」

 カムハーンはミカに取引を持ちかけた。実に悪党らしい取引内容だ。

「たとえ鍵が集まっていようとも……ここであなたを討てば!」

 鳩美はミカの考えと全く同じだ。ここで始末すれば全てが終わる。

「そうだ、やはり貴様はそうでなくてはな! ならば再度、我が手で殺してやろう! 我が生涯の伴侶、太陽妃ミカよ!」

「太陽妃!? カムハーンはミカさんの夫だったのですか?」

「その通りです鳩美。あのヒトは旧文明を統べる太陽王であり、私の夫でした」

「こう言って失礼ですが。あなたは殿方に恵まれない人生だったようですね」

 あんな男が夫だと、自分ならば最初の夜にナイフで腹を掻っ捌いて、腹わたを引きずり出しているだろうと鳩美は思った。

「そうですね……ですからためらう必要はありません! すでに私たちは袂を別った! ここで彼を止めねば、世界が……!」

「私もお手伝いしますよ、ミカさん」

 たかだか傲慢な悪党一人に動かされるほど、この世界は安くはない。

「でも……でも……」

 しかし、ここに来てエミリアがためらった。ミカは肉体の主導権を握れば良いものの、それをしなかった。

「どうした! 宿主が言うことを聞かないのか? 私は何度もいったではないか。共に生きようなど甘いと。万物は奪い取るものだっ!」

 シズルがセイバーを取り出す。見たこともないモデルだ。メーカーの既製品ではない。

「シズル、やめなさい!」

 そんとき、男の声がした。ナツメの声だ。その表情は息子の過ちをただそうとしている親のものだ。

「いったいどうしてしまったというのだ。私と語り合った日々をわすれてしまったのか? 私たちの悲願はグラールの平和。未来を託す子供たちのための……」

 その時、ナツメが咳き込む。何処か負傷しているのだろう。

 シズルの意識はない。今いるのはカムハーンという悪党だ。ナツメの言葉など届くはずがない。

「と……父……さん!」

 その時、カムハーンが胸を押さえて苦しみだした。声からはあの傲慢さが無くなっている。驚いたことに、まだシズルの精神は生きていた。

「……ぐ……この下賎な精神め……! 私を差し置いて出てこようなど……」

「父さん……だめだ……僕を……殺して……! グラールが……うばわれる前に……!」

 カムハーンの精神と闘いながら、シズルは自らを殺すよう父親に懇願した。しかし、それだけが限界だったのか、すぐにカムハーンが肉体の主導権を取り戻してしまった。

「邪魔が入ったが……私はすでに鍵を手にしている。貴様たいごときが、どうあがこうとも、運命は変わらんのだ!」

「ならば、その運命ごとあなたを倒します!」

 鳩美はカムハーンに向かってウィップを降る。しかし、当たる直前にこつ然と消えてしまった。

「亜空間を自在に操れる場で、私を捉えらると思うな!」

 カムハーンは亜空間を操って鳩美達から姿を完全に消していた。そして、高笑いと共に悪党の気配は消滅した。まんまと逃げられてしまったのだ。

 これ以上この場にとどまっても仕方がなかった。ナツメから事情を聞くにしてもまずはケガの治療が必要だった。

「どうしよう……鍵、全部とられちゃったの? これで、終わりなの?」

「まだグラールは乗っとられていません。まだ間に合うはずです」

 絶望しかけるエミリアに鳩美は力強い言葉を投げかける。ここで、戦意を喪失してもらっては困るからだ。

 加えて、ミカも諦めるには早いと言う。

「マガハラとつながるまでは、もう少しだけ時間があります。『最後の鍵』は、まだそろっていないのです」

 再び情報を集めなければならない。カムハーンを追い詰めるために。傲慢を恐怖に塗り替えるために。生まれてきたことを後悔するほどの痛みを与えるために。

 第9章へ続く
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by ginseiseki | 2010-01-16 16:49
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