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銀星石のエッセイブログ

PSPo2ロールプレイ 第8章 絶望への序曲 Act2

注意
 このブログ記事にはファンタシースターポータブル2のネタバレが含まれています。

 また、ファンタシースターユニバースシリーズにおける、私独自の世界観の解釈も含まれています。







 やはり、と言うべきなのだろうか。ハビラオは原生生物が凶暴化していた。

 横では難解な専門用語をつぶやきながら、エミリアが端末を操作している。その姿をクラウチが不思議そうな様子で見ていた。

「……なんとも、お前がそういうむずかしい言葉を使ってるとヘンにむずがゆくなってくるな」

「しっつれいな! こちとら真面目なんだっての!」

 高純度仮想空間構造の演算をしながらは難しいと言われても、専門家でない鳩美達にはさっぱりだ。

「さっきから、よくわからないんだが、エミリア、実はすっごくあたまよかったってことか?」

「元々すっごくバカに見られてたってことね、それ……まあ、いいけど……」

「じゃああたまのいいエミリア。おしえてほしいことがある」

「あー、はいはい。なによ、なに?」

「『死にふれることで強くなれる』あの言葉の意味、おしえてくれ……お兄の言葉の意味を、おしえてくれ!」

 エミリアは賢い学者としての才能は持っているが、強い戦士というわけではない。ユートの求める答えは、彼女の賢さではわからないものだ。

「そういわれても、精神論はあたしの専門外だもんなぁ。おっさんはわかる?」

「いきなり俺に降るんじゃねえよ。ま……その言葉の意味はわからんでもねえがな」

「なんだ? どんなことだ!?」

「ま、今のままだと、お前はつよくなれねえってことだよ」

 ユートは答えを求めたが、クラウチは答えない。強さにつながる死とは、口先では理解できない。

「……戦うことはこわくない。死ぬこともこわくない。なにもこわくなければ、最強だ!」

「ユート君。そんなことを言っているようでは、あなたは強さの意味を正しく理解しているとは言えません。死ぬのが怖くない程度が強いのならば、マシナリーのほうが遥かに強いはずです」

「ますます、わからないぞ……? どういう意味なんだ、鳩美!」

「さあ、どうでしょうか?」

 鳩美は少し意地悪く微笑んで答えをはぐらかした。教えてやっても良かったが、クラウチが釘をさすような視線をこちらに向けているし、なによりもコレは経験しなければならないのだ。

「でも、少しだけヒントをあげましょう。本当に強い人は生きている人ですよ」

 ほとんど答えのようなものだが、コレに気がつくために必要なものを、その心に持っていないユートは頭を抱える。

 話はここで打ち切って調査を進める。幸いにも同盟軍が残した痕跡があり、鳩美達はそれをたどって菌糸の森を進む。

 原生生物達が襲いかかってくるが、どれも雑魚ばかりだ。ユートを叩きのめして『死』がどう言ったものか思い知らすことができるような力はない。

「さて、ずいぶん進んできたが、いまんところ、失踪した同盟軍兵士も、インヘルト社の装置とかも見当たらねえな。エミリア、お前のほうはどうだ?」

「このあたりで亜空間発生装置が使われてるのは間違いないっぽいよ」

 エミリアはこの地区の状況のデータも、端末に打ち込んで分析していた。その結果によると、どこかに亜空間が発生しているらしい。

「……計算とかどうでもいい! ぼくたちははやく先に進んで、敵をたおして、大地神さまをとりもどす! それだけでいいんだろ!」

 乱暴に言ってしまえば確かにユートの言っていることは正しい。もっとも、鳩美には「シズルに宿っている旧文明人に、極限の苦痛を与えて抹殺する」という別の目的があるが。

 だがしかし、ユートにはそれを実行するだけのものが欠如している。

「うぇっ、何これ! この先の予想結果……ひどすぎるんだけど……」

「……予想とかそんなの! 先にすすめばぜんぶわかるはずだ!」

「ユート君! 先走ってはダメです!」

 VRの洞窟エリアで言ったことを完全に忘れてしまったユートに、鳩美は内心腹を立てながら彼を追いかける。

 ユートの前に二人の巨人が立ちはだかる。胴長な体に大きな一つ目。アジンゴウムとギジンゴウムだ。

 ユートが巨人の片方に気をとられている隙に、もう片方の巨人が彼の体を掴んだ。そのまま力をこめて握りつぶそうとする。

 苦痛で悲鳴をあげるユート。鳩美達は彼を助けようとするが、巨人の片割れが立ちふさがる。

「鳩美、まずい、まずいよっ! あのままじゃユートが……ユートが死んじゃうって!」

 エミリアはユートが窮地に陥っていると思っている。だが違う。逆だ。これは彼にとってはチャンスだ。『死に触れれることで強くなれる』という兄の言葉を理解するための最初にして最後のチャンスだ。

「ユート君! あなたはこのまま死ぬつもりですか!? このまま無様に! 無力な負け犬として屍をさらすつもりですか!?」

「死……ぬ? ぼくは……死ぬ……?」

 ユートの脳裏にはリトルウィングに来てからの思い出が、走馬灯としてかけめぐっていた。そして、心の底からある感情が吹き出してくる。

「いやだ……死にたくない……ぼくはまだ、死にたくない!」

「そうです、ユート君! さぁ拳を握りなさい。力をこめなさい。死を打ち負かして生きて帰ってきなさい!」

 鳩美は最後の言葉をユートに送る。これで死ぬようならしょせんそれまでの実力。ならば、この場で死んでくれた方が足手まといが消える。しかし、生きて帰ってこれるならば、彼は強力な戦力だ。

「ぼくは……ぼくは……生きる!」

 その時ユートから光が発せられる。ミラージュブラストの光だ。しかし、それは彼が今まで使ってきたものよりもはるかに力強い輝きだった。

 光が巨人の手のひらを爆散させ、ユートは脱出に成功する。

 鳩美はすでに行動していた。下半身を狙ってウィップを振るう。胴長の体型に不釣合な短足でその攻撃をこらえきることなど出来ない。

鳩美が巨人を仰向けに倒すと、すかさずユートがスピアを敵の腹に突き刺す。

もう一人の巨人は相棒が殺されたことに動揺する。次の瞬間には巨大な一つ目に、クラウチが放ったが銃弾が命中する。弾丸はそのまま眼球を貫通し、敵の脳細胞を破壊した。

「ユート君、大丈夫ですか?」

「……だ、大丈夫。ちょっと身体がギシギシしてるけど、ケガとかは、ない……」

「まったく……ヒヤッとさせやがって、このクソボウズ!」

 叱るような言葉ではあるが、クラウチの顔は心配の色の方が大きかった。

「ご、ごめんなさい! ……でも、ぼく、ようやくわかった。お兄の言ってた言葉の意味が。『死』にちかづいたときに見える、『生きたい』って強い意思……それがお兄のいっていた、強さなんだ……」

 どれほど実力があったととしても、強さは闘争心が不可欠だ。そして、それらは死を恐れぬ狂心ではなく、生存本能から生まれる。

「ようやく、お兄さんに近づいたようですね」

「……うん、ありがとう、鳩美」

 ユートは本当の強さを理解した。強い戦力の誕生によって、より確実に敵を始末できることは、鳩美にとって喜ばしいことだった。

 Act3へ続く
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by ginseiseki | 2010-01-15 10:45
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