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銀星石のエッセイブログ

PSPo2ロールプレイ 第8章 絶望への序曲 Act1

注意
 このブログ記事にはファンタシースターポータブル2のネタバレが含まれています。

 また、ファンタシースターユニバースシリーズにおける、私独自の世界観の解釈も含まれています。






 ガーディアンズと同盟軍。いわばグラールの法を司る者たちから追求を受けたにもかかわらず、インヘルト社は沈黙を保ったままだった。

 鳩美はマヤから同盟軍がインヘルト社の施設に立ち入ったことを聞いた。リトルウィングは不測の事態に備えて待機ということだ。

「ご、ごめんなさい! 遅れましたっ! それで、インヘルト社はどうなったの?」

 エミリアが息を切らしながら事務所に入ってくる。

「あ、あなた……」

 マヤがエミリアを見る目つきは初対面の人間のものではない。思いもよらない知人と再会した驚きによるものだ。

「……もしかして、マヤ、さん?」

 どうやらエミリアもマヤのことを知っているようだ。

「お二人はお知り合いなのですか?」

「え、えっと……たぶんそう、だけど……どこで知りあったんだったかな……」

 エミリアは鳩美を見ようとせず、その目は泳いでいた。記憶が曖昧になってしまっているようだ。

「何言ってるのよ! 忘れたの、リュクロスでのこと? 研究室に戻るのはイヤだって、ガーディアンズを飛び出て以来、連絡もなしで……みんな心配してたのよ?」

「リュクロス……? 調査……? あ! ああ……あああっ!」

 マヤに言われて、エミリアは何かを思い出したようだ。しかし、それは忌まわしいものであるのは、彼女の青ざめた表情を見ればわかる。

「あたしは……あたしは……ガーディアンズに……使われて……リュクロスで……リュクロスで……!!」

 突然エミリアが事務所を飛び出して行く。

「エミリアさん!」

 建前上では鳩美はエミリアのパートナーなので、この状況では彼女を追いかけなければならない。場所は見当が付いていた。彼女が逃げ込む先はクラッド6では限られている。

 エミリアはマイシップの操舵室に隠れていた。鳩美が大丈夫ですかと声を掛けると、落ち着きを取り戻した様子で返事をした。

「ミカ……出てきてくれる?」

「……はい、エミリア」

「あたし、思い出したよ。ミカとどこでであったのかも。なにもかも……」

 エミリアは自らの過去を語りだした。彼女は生まれてすぐに両親をなくし、ガーディアンズの養育施設に引き取られた。

 そこまでは普通だ。不幸ではあるが、全く起こり得ない出来事ではない。しかし、エミリアの人生は普通であることを許されなかった。

 演算、分析、記憶力。エミリアは幼い少女でありながら、どの学者よりも優秀だった。

 一言で言えば天才。その能力は正当に評価されたが、エミリア自身は正当に扱われなかった。ガーディアンズの研究者達は、まるで高性能なコンピュータであるかのように、彼女を奪い合った。

 そして、エミリア自身を演算装置とした生体コンピュータ『テンマ』を開発する計画が動き出した。

 当時のエミリアは科学者達の腐臭ただよう欲望を知らずに、ただ自分の仕事は世のため人の為になると教え込まれて、それを信じた。

 鳩美はこの世のありとあらゆる邪悪に対して嫌悪感を抱くが、その中でも特に不愉快な、それこそ吐き気すらも催す邪悪は、他人を利用する者たちだ。

 テンマ計画が始まってから六年。計画は遅々として進まず、それをエミリアの責任として、辛く当たる研究員もいた。無能な凡人の分際でよくもそのようなことができるものだと、その話を聞いた鳩美は思った。

 そして、三年前の事故が彼女の環境を変えた。彼女はSEED封印の際にガーディアンズの学者としてリュクロスにいた。

 この世に地獄があるとするならば、リュクロスはそのひとつであることは間違いない。エミリアのいた調査隊はSEEDに襲われた。

 エミリアを助けようとするものは誰もいなかった。あろうことか「そいつはただの演算用部品だ」とさえ言い放った。

 鳩美はそのような邪悪な人間を殺せばどれほど快感であろうかと思った。四肢の骨を砕き、人形を壊すように両手両足をゆっくりともいでいく。今まで他人を物のように扱ってきた人間が、今度は自分が物のように壊されていく恐怖。おそらくその表情は、自分にとって至高の愉悦を与えてくれるだろうと鳩美は想像した。

「今思えば、あれはみんなパニックだったからだろうし、あまり責めることは出来ないけど……」

 まるで聖人のような優しさだと鳩美はエミリアを見て思った。人間は追い詰められれば本性を表す。エミリアを「部品」と言い放った言葉は、紛れもなくその人間が生まれ持った性根だ。

「でも、それだけでアタシは理解してしまった。ああ、あたしは必要とされてなくて……エミリアが必要じゃなくて……エミリアの『能力』だけが……必要とされていたんだ……って……」

 エミリアには酷だが、人間は基本的にそういうものだ。友情や愛情といった例外が無い限り、人は他人を能力でしか見ない。鳩美はそういった現実を何度も見てきた。

「次に思い当たる記憶は……身体がどんどん寒くなっていって、周りが暗くなっていく感覚。死というのがどういうものか、知識としては知っていたけど……実際にはただ、怖くて、寂しくて……」

 死は避けられない宿命の上に、生きている者は誰も経験したことが無いものだ。それゆえに、何よりも恐ろしい。

「そのとき、誰かの声が聞こえた気がした」

 その声はミカだった。彼女はリュクロスに精神を保存していたが、死を迎えようとしたエミリアを助けるために、彼女に憑依して肉体を治療した。鳩美を海底レリクスで治療したのも似たような方法なのだろう。

「それは、他の旧文明人と同じやり方だとわかってはいましたが……どうしても、放っておけませんでした。本当に、すみません」

 ミカが深く頭を下げて謝罪する。いつ本性を表すかと、初めて出会った時から彼女を疑っていた鳩美だが、すくなくともエミリアの味方であることは確かなようだ。

「謝る必要なんて無い! ミカのお陰で今あたしはこうしてピンピンしているんだしね」

 エミリアの言葉を聞いてミカは安息をえたような表情をする。

「それより、あたしのほうが、ゴメン。ミカはずっとあたしに声をかけてくれたのに聞こえなくて……」

「気にしないでください、エミリア。それよりも……私たちには、まだするべきことがあるはずです」

「……うん、後悔よりもまずは、今のことだね」

 シズルはあの時リュクロスを復元した。そこには何か目的があるはずだ

「リュクロス再現現象の情報を集めて分析すれば、糸口ぐらいはつかめるはず。そう、あたしならきっと……」

 その時、クラウチから通信が入ってきた。どうやら問題が発生したようで、エミリアと鳩美にすぐ戻るよう言う。

 すぐに戻った鳩美達を待っていたと言うのは、インヘルト社の施設に向かった同盟軍の部隊が消息不明になってしまったと言う知らせだった。

 何をするのかはすでに決まっている。失踪した同盟軍の捜索だ。

 そして、シズルからの攻撃の可能性もある。鳩美、エミリア、ユートに加えて、クラウチも今回の任務に参加することになった。

「あの……マヤさん。失踪しちゃった人たちの詳細データとか都合してもらえないかな。あと、この前のリュクロスの資料とか、亜空間研究の発表論文とか……」

 エミリアは敵の行動を予測するため、マヤに情報を求めた。任務を遂行しながらの分析という離れ業も彼女なら可能だろう。

「エミリアさん、よろしいのですか」

 エミリアが本格的に分析を行えば、隠してきた能力が再び公になる。

「本当は、ヤだよ。また、あたしの力を利用しようとするやつらが出てくるだろうし……でも、大丈夫。リトルウィングにいれば安心できる。それに、何かあったときは必ず鳩美が守ってくれるもんね?」

「ええ、任せてください」

 その通りだ。エミリアが狙う輩が現れたとしても鳩美は喜んで皆殺しにする。そのような人間を何千何万何億殺したところで、知ったことではない。

 準備を整え、鳩美達は出発した。場所はニューデイズのハビラオ禁止区。巨木のようなキノコが支配する森だ。

 Act2へ続く
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by ginseiseki | 2010-01-14 20:49
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