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銀星石のエッセイブログ

PSPo2ロールプレイ 第7章 たいせつなもの Act2

注意
 このブログ記事にはファンタシースターポータブル2のネタバレが含まれています。

 また、ファンタシースターユニバースシリーズにおける、私独自の世界観の解釈も含まれています。






「……おい、チェルシー。まだあいつらに連絡は取れねぇのか?」

 鳩美達がリュクロスに遭遇した頃、リトルウィングではクラウチが焦った様子で通信をつなげようとしていた。

「落ち着きなさい、クラウチ。前にも一度あったことでしょう?」

「失踪者を探してたときか……ウルスラ、ここは任せるぞ」

「ちょっと、クラウチ!? どこに行く気よ!」

 クラウチはウルスラに何も答えずに、リトルウィングを飛び出して行った。



 おそらく、このリュクロスは亜空間で具現化させられたものだろうと鳩美は考えていた。しかし、形を持った虚像であるVRとは比べ物にもならない。まるで悪党の腹の中にいるように不愉快な空気だ。

「……だれか……あたし……を……」

「エミリアさん!?」

 幻聴にしては妙に鮮明なエミリアの声が聞こえてきた。

「鳩美もきこえたのか!? ぼくもエミリアの声、きこえたぞ!」

 急がなくてはならない。こんなSEEDがはびこる場所にエミリアを一人にさせるわけにはいかない。彼女もミカも旧文明人との戦いでまだ利用価値があるのだ。早く助けなくてはと鳩美は自然と走る速度が上がる。

「……あれは!」

 鳩美は雪山で見た光景と、全く同じものを見た。ガーディアンズが何もない場所を睨みつけている。

「認識コード一致。間違いありません、失踪していた隊員たちです」

「幻覚を見ている……? この前のルミアの報告にあった事象と同じことが起きているというの?」

 SEEDが姿を表す。船を連想させるシルエットに鳩美は見覚えがあった。ゾルディランだ。

 ゾルディランは触手のような両腕を振り回し、ガーディアンズをなぎ払い、そのまま鳩美達にも襲いかかる。

 鳩美は得意なウィップをあえて使わずに、ナノトランサからツインセイバーをとりだす。

 ゾルディランの攻撃と同時に、鳩美は両手の剣を一閃させる。次の瞬間には、細切れにされたSEEDの両腕が床に落ちていた。

 鳩美はツインセイバーから、武器をスピアへと変える。自分の身になにが起こったのかSEEDが理解する前に、槍を投げて仕留めた。

 素早く敵を倒した鳩美は周囲を見渡すが、エミリアの姿はない。もう一度彼女の声が聞こえればと、耳をすます。

「……誰か私の声が届くならば……エミリアを助けて……」

 エミリアではないが、代わりにミカの声が聞こえてきた。

 すぐ近くにいる。理屈の無いが間違いない。気絶したガーディアンズ達はルウとマヤに任せ、鳩美は確信に従ってエミリアの元へと向かう。

 思ったとおりの場所にエミリアは倒れていた。

「エミリアさん!」

 鳩美はエミリアに呼びかけて起こそうとする。

「う……うるさい……大声ださないでよ……あれ? あたし……」

 その時、風景がリュクロスから元に戻る。

「……ユート、それに鳩美まで……何しにきたのよ」

「迎えに来たのですよ。人の話を聞かない子を」

「……ふ、ふん、だまされないわよ! 今さらなにいってんだか! いらないっていったのは、そっちじゃない! だから、あたしのほうから出ていってあげたのよ!」

 意固地になった子供ほど面倒な人間はいない。叱りつけるのは簡単だが、それでは余計にエミリアの感情を悪化させる。どの手段が正解か鳩美は考える。

「だから、こっち来ないでよっ! もうあたしに、夢を見させないで!」

 しかし、鳩美が答えを出す前に、エミリアは逃げ出してしまった。隣にいるユートに気づかれないよ舌打ちをしてから追いかける。

 エミリアが逃げた先は、不幸にも凶暴化したヴァーラが待ち構えていた。刃のような爪が彼女に襲いかかるが、その前にどこからか放たれた銃弾で打ち抜かれる。

 撃ったのはクラウチだった。心配になってリトルウィングからやってきたのだろう。彼はナノブラストを使うと、またたく間の間にヴァーラの群れを殲滅した。

「……おっさん」

「……」

「……なによ、なにしに来たのよ? あ、クビって言いにきたの? わざわざ大変なことですね! でも、そんなのもうわかってるから!」

「ここで、なにやってる」

 クラウチは感情を含めずに、エミリアを問いただした。

「ちょ、調査よ! 自主的な調査! 一人になって身軽になったから、インヘルト社についてスミからスミまで調べてたってわけよ!」

 クラウチはじっと見つめているが、それに対してエミリアは彼の目をちゃんとみていない。そこにどんな感情がこもっているか、まだ理解していない。

「……なによ、文句でもあるの? あたしがどうなろうと、おっさんには関係ないでしょ!」

 肉を打つ音が響く。クラウチはエミリアの頬を叩いたのだ。

「どれだけ、みんなが心配したとおもってやがるんだ」

 エミリアを見つけたら叱りつけようと思っていた鳩美だが、そのような面倒なことなど、”父親”に押し付けることにした。

「本当に関係ないって思ってるなら、こうしてここにくることも、お前を本気で殴ることもしない」

「そ、そんなの知らない……あたし、もう関係ないんだから。ひとりぼっちなんだから!」

「フッ……ホントにオマエは手のかかるヤツだな……」

 クラウチはエミリアを優しく抱きしめて、親としての義務を果たす。あの飲んだくれがずいぶん変わったものだと、その光景を見た鳩美は思った。

「おっさん……?」

「オマエを守ろうとしたのが裏目に出た。すまなかったな……『外す』なんて言ってよ」

「……まも、る?」

「オマエはシズルに狙われてる。依頼を受けたときに、襲撃されるかもしれないと思ったんだ。だから、守るつもりだった。俺の手の届く場所で……この手でオマエを、守り通すつもりだった」

 薄情な鳩美も、クラウチのエミリアに対する愛情は理解できた。人間は大切なものほど目の届く場所にないと不安になるものだ。

「無事でよかった。間に合って、よかった。これでまた間に合わなかったら、俺は……俺は……」

「おっさん……」

「なに、そんな申し訳なさそうな顔してやがる。俺たちはもう、家族みたいなもんだろうが。いいんだよ、ちょっとぐらい迷惑かけたってな」

「……かぞ、く?」

「ああ、そうだ……まあ、お前は……『手間のかかるわがまま娘』ってところだな」

 血縁による感情のつながりは意外なほどもろい。子が親を、親が子を殺すことなどよくある話だ。だが、逆に血の繋がらない者たちが家族になるのもまたよくある話である。二人を見て鳩美はそう思った。

 この世の中はこういった者たちだけで生きていればいいのだ。鳩美にとって自分以外の邪悪は皆殺しにするべき存在だ。誰だって、不愉快な人間はいてほしくない。

「……」

「なんだ、不服か?」

「……なによ、わがまま娘って……わがままなのは……そっちじゃん……か……勝手に……きめないでよ……」

 エミリアの瞳に涙がたまる。寂しさや辛さが父親の腕の中で溶けていくからだろう。

「……あたし、ひとりじゃないんだよね? 頼ってもいいだよね? 泣いても……いんだよね?」

「ええ、そうですよエミリアさん。貴方は一人じゃありません」

 鳩美の心に感動という感情は存在していない。しかし、それでもエミリアに微笑みかけてあげるのが正しいことは理解していた。

 目的は達成した。鳩美達は我が家へと帰る。

 無事にエミリアを連れ戻すことができ、さらにはインヘルト社の敷地内から失踪者が発見されたことで、状況は決定的な方向へと動き出した。

 鳩美はリトルウィングで、ウルスラから現在の状況を聞いた。

 ガーディアンズと同盟軍の連名で、インヘルト社に対し一連の現象について説明を求める事になった。亜空間計画については完全に凍結されることになった。

 ついにインヘルト社を追い詰めた。しかし油断は出来ない。ようやく相手を戦場に引きずり出したのにすぎないからだ。傲慢な表情を見せるあの男が、おとなしくしているはずも無い。何かしかけてくる。その確信が鳩美にあった。

 そして、肝心のエミリアの処遇だが、いつもどおりに行動して良いことになった。

「俺たちがサポートしてやるから、やりたいことをやってみろ!」

 もう無責任な無能社長はリトルウィングにいなかった。今のクラウチは、子にとって頼もしい責任感をみにつけた親の姿をしている。

「じゃあ、あたしもまだここでみんなと一緒に戦っていいの?」

「……ただし! パートナーと一緒って条件付きだ。それだけは守れ。一人にはなるな」

「うん!」

 また皆と仕事が出来ることが嬉しい。エミリアの笑顔はそれを物語っていた。

「……任せられるのは、お前しかいねぇ。エミリアのこと、よろしく頼むぜ」

「はい、任せてください、クラウチ社長」

 話し合いは終わり、一同は解散となる。体を休めるために自室へと戻る鳩美だが、話があるとエミリアに呼び止められる。

 人に話を聞かれたくないらしく、エミリアは鳩美の部屋で話したいといった。

「ふー、ここでなら落ち着いて話が出来そう……」

 エミリアはベッドに腰をおろす。鳩美の部屋は必要最低限なものしかなく、インテリアらしいものは、前に彼女からもらったカクワネのぬいぐるみくらいだった。

 エミリアは迷惑をかけたことを謝罪したが、鳩美は笑顔で許した。確かに、多少の迷惑はこうむったが、そのおかげでシズルに一歩近づいた。あの男を始末したという結果のためなら、あの程度のトラブルなどさほど問題ではない。

「でも……不思議なんだよね……助けに来てくれたとき、よくは覚えてないんだけど、あんたの声だけは、はっきり聞こえたんだ。空耳かもしれないけど『心』にひびいたんだ……」

「そうですか……」

 鳩美は自分が他人の心に届くような、誠意がこもった声を出した覚えはなかった。自分は常に自分以外の邪悪を抹殺するために動いている。その行動が他人の心に響くはずも無い。

 あるいは本当に自分はエミリアを心配していたのか。そう思う鳩美だがすぐに否定する。おそらくは偶然だろうと結論した。

「……あれ、おかしいな? なにも悲しくなんかないのに……どうして、涙が……? なんか……おかしいな……あたし、泣き虫になっちゃったみたい……ははは……」

「エミリアさん……」

 鳩美はクラウチの真似をして、エミリアを優しく抱きしめてあげた。情があるからこうするのではない。泣きじゃくる少女にはこのように接するのが正解に過ぎないからだ。

「……これが夢じゃないんなら、もうしばらくギュッとしてて……あたしにそれがわかるまでずーっと……」

 成長したエミリアは鳩美にとって十分な戦力となっている。立ち直るために、偽物の姉を演じてやるのも良いだろうと思い、彼女の望むままにしてやった。

 第8章へ続く
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by ginseiseki | 2010-01-12 20:46
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