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銀星石のエッセイブログ

PSPo2ロールプレイ 第6章 夢の終り Act2

注意
 このブログ記事にはファンタシースターポータブル2のネタバレが含まれています。

 また、ファンタシースターユニバースシリーズにおける、私独自の世界観の解釈も含まれています。







 森エリアをクリアーすると、次のステージは洞窟エリアだった。

「……場所がかわった? でも、ここもさっきと同じだ。気配とか、すべてがうすくて、弱い感じ」

 ドロリとした溶岩の川が、暗闇の世界であるはずの洞窟を赤く照らす。いるだけで肌が焼け付きそうな風景だが、空気がまったく変わらないのは先程の森と同じだ。

「とはいえ、でっかいやつとか、ヤバいやつとか出てきそうな雰囲気だね……だからユート、いい加減、一人でつっぱしるの禁止!」

「……こんな気配のうすい場所じゃ、あれぐらいしないと修行にならない! 感覚がにぶっていくぐらいだよ! ぼくは、もっとつよくならないといけないのに……!」

 エミリアが姉のように諭しても、ユートは不満を見せることをやめようとはしない。こうなった人間は何らかの制裁をうけないと、自分の過ちを自覚しないことを鳩美は知っていた。

「私も同意見ですね。こんな無駄な訓練をしている暇があったら、私たちも調査に回るべきです」

 どうやら、制裁を必要とする人間はユートだけでないようだ。ルミアも本来の仕事から外された不満を隠そうとはしない。鳩美が知る限り、このような態度をする人間ほど、無能になっていくのだ。

「あー、もう! ユートと話してたらルミアに飛び火とか、すっげーめんどくさいんだけど!」

「あら、あなたはガーディアンズが嫌いなんでしょ? どうなってようが、関係ないじゃない」

「ガーディアンズは関係ない! あたしは今、あんたに話してるの!」

 ここはあえて叱りつけようかと、鳩美が拳を握ったとき、エミリアがルミアに詰め寄った。

「確かにあたしはガーディアンズがキライ……でも、あんたのがんばってる姿はキライになれなかった。あたしも、あんなふうに強くなれたらとか思ったりしたのに……何よ、今のアンタの姿は!」

 エミリアの怒りは、嫌悪感ではなく、認めた相手だからこその怒りだった。

「ほら、鳩美も何か言ってやってよ!」

 強く叱りつけるタイミングを逃してしまった。仕方が無いので、鳩美は握っていた拳を開き、微笑みながらルミアを諭すことにした。

「確かにこの試験運用は貴女の望む仕事ではないかもしれません。ですが、先程からの態度は、いささか目にあまるものがあります」

「……すみません」

 母親のように優しげに諭した鳩美だったが、ルミアにとっては十分反省につながったようだ。

「なんでも一人でやらなくちゃ、全部自分でやらなくちゃ……って、焦ってたんだな、私……」

 人間は、他人に全てにおいて完璧であることを望む。恐らく、ルミアは英雄の妹として、周囲から本来の実力以上の結果を期待されてしまったのだろう。

「『あんたに話してる』か……そんなこと言われたのはじめてかもしれない……ありがとう、エミリア」

 ルミアは小さく笑う。英雄の妹ではなく、個人としてエミリアは怒った。それは、むしろ喜ばしいことなのかもしれないという笑みだ。

「……ありがとう、って……わ、わかればいいのよ! わかればね!」

 まさか礼を言われるとは思っても見なかったエミリアは戸惑ってしまう。

「……ぼくには、よくわからない。強くなりたいから前にすすむ、それはなにもまちがっていないのに……!」

 ユートはまだ理解していない。人間は常に前へ進むことを生まれながらに義務付けられているが、だからと言って前のみを見ることは許されない。人は前に進みつつ、全ての方向に視線を向けるべきである。それこそが、多くの人間が信奉している社会の真理だ。

 ユートは走り出す。その背中は彼が焦っていることを物語っていた。

 仮想空間の洞窟エリアで訓練を続けて行くうちに、広々とした場所に出た。どうやらボスステージらしい。

 現れたのはドラゴンだ。巨大な飛膜と長い尻尾に、銃弾すらも受け止めそうな鱗。グラールではよく見かけるタイプの原生生物ではあるが、目の前の竜は見たこともない個体だった。

「ようやくきたな、強そうなヤツ! こいつを倒して、ぼくは強くなるんだ!」

 強敵の出現にユートは喜びの表情を見せる。危険な兆候だ。もしも彼がこのままならば、実戦で致命的な危険を呼び起こしてしまう。

 鳩美はドラゴンの動きを観察する。初めて戦う相手には必ず必要となる行動だ。

 しかし、ユートは雄叫びをあげながら猪突猛進にドラゴンへと挑んでいった。

「ユート君、危ない!」

 ドラゴンが身体を回転させて、ユートに向かって尻尾を鞭のように叩きつけようとした。鳩美はユートに足払いして無理やり回避させる。

「鳩美、じゃましないでくれ!」

「ああしなければユートくんに攻撃が……」

「あんな攻撃くらってもぼくはたおれない!」

 完全に頭に血がのぼったユートはドラゴンに立ち向かう。鳩美は気づかれないよう歯軋りをした。

 ドラゴンが口を開く。喉の奥から小さな炎が見えた。危険な攻撃の兆候をユートは気がついていない。

 そしてドラゴンが火球を口から撃つ。ユートへの直撃コースだが、エミリアがとっさにフォイエをはなって相殺した。

 まずは動きを止めなければならなかった。鳩美はドラゴンの足を狙ってウィップを振るう。鞭は鳥のように細い足に命中し、バランスを崩した巨体は転倒させた。

 ユートは飛び上がり、スピアをドラゴンの脳天に突き刺す。そこを攻撃されて生きていられる生物など存在しない。見たこともない竜は悲鳴も上げずに絶命し、そして幻のように消えた。

「もっと強いやつ、こないのか! ぼくはまだまだ戦えるぞ!」

 鳩美やエミリアの援護なしには勝てなかったのにも関わらず、ユートは己の実力を過信していた。

「……ユート君、ちょっとよろしいですか?」

「なんだ、鳩美。やっと強いやつがでてきたんだ、ぼくはまだ戦いたいぞ」

 もう我慢の限界だ。今まではイラついても言葉だけで理解させようと務めたが。鳩美にも許容量と言うものがある。

 鳩美は拳を強く握り、ユートの頬に叩き込んだ。

「痛っ! な、なんで殴る!?」

 まさか、鳩美に殴られるとは思っても見なかったユートは、怒りよりも驚きが大きい。ルミアとエミリアも唖然とした表情で見ていた。

 本当は、地面にたたきのめして、愚かな脳細胞が詰まっている頭を踏みつけたいのだが、一発殴るだけで我慢した。

「貴方のように独断専行ばかりしていては、私もエミリアさんもフォローしきれません。このままでは、ユート君は本当に死んでしまいます」

「で。でも、タイヘンじゃないと、修行にならないから……」

「それで死んでしまったら、元も子もありません。死体に強さなど宿りません。着実に歩いてこそ力は見につくのです。慢心した勇気など勇気ではありません。それは無謀と言うのです」

「で、でも……」

「でも? でも、なんですか?」

「あの黒服のヤツ、すごく強かった。もっと強くならないと、勝てないから……だからもっと、修行しないと……」

「だからといって、一人で頑張る必要はありません」

「え?」

「あの男との戦いは決闘ではないのです。私もエミリアさんも、それにルミアさんもユート君の仲間です。たった一人の力ではなく、力をあわせて勝てばいいのです」

 私は仲間。心にも無いことを言っているなと、鳩美はユートを説教しながら、心の中で自嘲した。

「……と、とりあえずユート、あんたはもっと仲間を頼るクセをつけること! 今回みたいなことをしたら、もう二度とプリンおごってあげないから!」

 鳩美がユートを殴ってでも叱った衝撃から立ち直ったエミリアが言う。

「え、ええっ! ……それは、いやだ」

 好物のプリンを人質にされたのも効果があったのだろう。ユートは素直に自分の間違いを認めた。

 エミリアはユートの素直さを褒めた。jそして、訓練を終えたらプリンを食べにカフェへ行こうといった。しおれた花のように落ち込んでいたユートだったが、プリンの一言に元気を取り戻す。

 訓練を終え、カフェへ直行しようとしたが、ウルスラに呼ばれた。エミリアとユートを先に向かわせて、鳩美はルミアと共にリトルウィングの社長室に向かう。

「おう、来たか。悪ぃな、訓練の直後に呼び出しちまってよ」

 すでにクラウチは調査から戻っていた。執務机には資料と思しき書類が置かれている。彼は単刀直入に調査結果を話してくれた。

「まず、シズル・シュウはクロだ」

 シズルが姿をくらますタイミングと失踪者事件のタイミングが一致すると言う。

「だが、まぁ、それはどうでもいい……問題は……失踪者を統率してシズルが何をしているのか、だ」

 それこそが最大の問題。封印計画の実現が目的なのは当たり前だが、その為になぜ失踪者を操っているかを知る必要がある。

「辿った道筋や目撃証言を統合すると、ひとつは旧文明遺産の強奪だ」

 シズルはカーシュ族の村からレッドタブレットを奪った。クラウチが調べたところによると、それと同型の情報端子を集めているらしい。

「それでクラウチ社長。もうひとつの目的とは?」

「鳩美、以前ウチが襲撃されていることは覚えているな」

「はい」

「だが、ここには旧文明ゆかりのものなんて、これっぽっちもいいちゃいねえからな。その理由だけが、ぽっかり浮いていた」

 鳩美はあの時襲撃者達がとった行動を思い出して、嫌な予想をしてしまった。

「……不正な手段による、個人情報アクセスなどの記録が決め手になった。間違いねえ。……ヤツの狙いは、エミリアだ」

 嫌な予想ほど当たってしまうものだった。

「それで、どうするつもり? あの子を餌にしてシズルをおびきよせるとでも?」

 ウルスラがクラウチに提案した作戦は、一見実に効果的に見える。しかし、鳩美にとっては悪手だ。エミリアに情があるからではない。作戦の失敗が敵の勝利とイコールになる可能性が高いからだ。

「そんなリスクの高いマネはできねぇよ。だが、今までどおりってワケにはいかねぇ。だから……今後、エミリアは仕事から外す」

 「それが最良だ」と付け加えるようにいったクラウチの表情は苦い。せっかくエミリアが成長してきたというのに、それを振り出しに戻すような事は、できればしたくないという顔だ。

「あたしを『はずす』って……なに? どういうこと?」

 クラウチにとって最悪のタイミングだった。後ろから聞こえてきた声に、鳩美が振り向いてみると、そこにはエミリアがいた。

「あ、ああ、『外す』って、そういうことか。あたし、みんなと一緒に仕事が……はは……仲間とか、なんとか言ってて……あたし、バカみたいだよね……」

 ああ、愚かだ。クラウチの考えていることを理解できないエミリアに対して、鳩美はそう思った。

「あたしは……やっぱり、ひとりぼっちなんだ……」

 夢が終わって、冷たい現実に放り込まれたと思い込んでしまったエミリアは、クラウチの声を聞かずに飛び出して行った。

 そして、彼女はリトルウィングから何処かへと出て行ってしまった。

 第7章へ続く
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by ginseiseki | 2010-01-09 16:32
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