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銀星石のエッセイブログ

PSPo2ロールプレイ 第6章 夢の終り Act1

注意
 このブログ記事にはファンタシースターポータブル2のネタバレが含まれています。

 また、ファンタシースターユニバースシリーズにおける、私独自の世界観の解釈も含まれています。






 今まで足踏みをしていた鳩美達であったが、リトルウィングと言う組織の力を借りることによって、大きな前進をすることができた。

 クラウチが調査を開始してから数日後、インヘルト社は緊急記者会見を開いた。大方、新しいスポンサーの募集だろうと、鳩美は事務所で他の者達とニュースを見る。

 画面にナツメ代表が映し出される。いささかつかれて見えるのは歳のせいではないだろう。そして、そんな彼を支えるかのように、息子が傍らに立っていた。

 ナツメ代表の息子、シズル・シュウの姿を見てエミリアが大声を上げる。

 温和でおとなしそうな表情をしているが、鳩美はその顔を知っていた。シズルはあの黒服のお床だった。

 クラウチは念を入れて確認する。エミリアだけでなく鳩美もユートも同じことを言ったので、彼も確信を持った。

「調査方針の変更ってのも、ちょうどいいちゃちょうどいい。共同捜査に切り替わるタイミングだしな」

「共同捜査ですか」

 どうやらリトルウィングとは別の組織も、今回の騒動の調査をしてくれるようだった。鳩美はクラウチに協力相手がどこなのか訪ねる。

「失踪事件に関する調査を、ガーディアンズとリトルウィング協同で行うことになったのよ」

 答えたのはクラウチではなく、聞き覚えのある少女の声だった。振り返ってみると、ルミアがそこにいた。

 ルミアは橋渡し役としてやってきた。彼女とエミリアと口論は不愉快であるものの、警察権を所有しているガーディアンズの力を利用出来るのならば安い代償だ。

 鳩美はクラッド6を案内するようクラウチに命じられた。ルミアはそんなことよりも、早く捜査を開始しようと言うが、クラウチはまだ一人で十分だと言った。

 自分は不要だと言われたルミアは不満げな表情を浮かべるが、彼女に仕事はほかにもあった。

 それは戦闘用VRプログラムの試験運用だった。

 VR……つまりホログラムなどを利用した仮想空間はクラッド6でもレジャー用のが使われていた。

 鳩美達は早速、ルミアと共にその訓練装置を受けることになった。

「あ、ちょっと待ってもらえる?」

 しかし、事務所から出たところでウルスラに鳩美は呼び止められた。エミリア達は先に向かう。

「はい、なんでしょうか、ウルスラさん?」

「最近、クラウチが真面目に仕事をするようになってきてるのは、あなたのおかげだったりする?」

「いえいえ、とんでもありません」

 そもそも、鳩美が昼行灯を真面目にさせようとしても、その前に”不幸な事故”が起こって、クラウチはこの世から始末される。ウルスラが言うようなことは、本当に何もしていなかった。

「そうかしら? あなたが来てからクラウチもエミリアも、いい方向に変わってきてるのは間違いないわ」

 『真面目で優しい赤木鳩美さん』を演じているので、はたから見ればそうなるのかもしれない。しかし、鳩美は何もしていない。クラウチやエミリアが変わったのは、きっかけとなる出来事が起こったに過ぎない。
 
「クラウチが調査を申し出たりするなんて、まるで昔のアイツを見てるみたい」

 ウルスラは昔を思い出すような目をする。

「あ、ごめんなさい。あなたにはわからない話ね、これは」

 他人の過去など鳩美にはどうでもいい。興味があるのは、自分にとって他人が敵かそうでないかだけだ。

「あなたのお陰で、リトルウィング全体がいい方向に変わってきてるわ。あなたは今のリトルウィングにとって、なくてはならない存在なのかもね」

「いえいえ、私にはそんな大仰な影響力はありません」

 ウルスラは誤解している。何もかも全ては偶然だ。たまたま自分が現れたのと、リトルウィングの変化が同時期であったに過ぎないと鳩美は考えている。

「……話はそれだけ。さ、エミリアを追いかけてあげなさい」

 鳩美は早足でエミリア達の所へと向かう。彼女たちはVR施設の前で待ちくたびれていた。

「すみません、お待たせしました」

 軽く社交辞令を言って、鳩美はさっそくVRプログラムを受ける。

 生み出された仮想世界は何処かの森だった。精密に描写されて本物のように見えるが、ユートは現実とは異なる感覚に戸惑っている様子だった。

 無理もないと思った。鳩美はVRを何度か経験しているが、この違和感は消えなかった。

 風はなく、森の匂いもしない。ハリボテの世界だ。

 敵が現れる。もちろん戦っても手応えは薄い。前に雪山で戦ったSEEDと同じだ。

「鳩美、こんなのおかしいぞ! 敵を倒しても、何も感じないし、痛みも、こわさも、ぜんぶウソだ!」

 訓練をはじめてからしばらく、我慢でくなったユートは不満を上げる。

「まぁまぁ、ユートくん。これはこれで、ちゃんと訓練になるのですよ。だから落ち着いてください」

「もっと傷ついて……もっとつらい戦いをしないと……」

「たしかにユートくんの言うとおりかもしれませんけど、VR訓練でどの敵がどんな戦いをするか事前に知ることができれば、力を付ける前に死ぬと言うことはないですよ」

 実戦を経験しなければ本当の実力が見につかないのは事実ではある。しかし未知の敵と戦うことは、何もで出来ぬまま死ぬ可能性がある。敵の行動を学ぶという点ではVRは十分価値のある訓練だ。ユートの考える修行は博打でしかない。

 しかし、まだ幼い彼は鳩美の言葉を聞き入れなかった。見かねたエミリアもユートをなだめようとする。

「ま、もう少し進めば、また違うかもよ? 巨大な原生生物も再現しているって話だし」

「ほんとか? なら、はやくすすもう! のんびりしていてても強くなれないし、なによりここは、気持ちがわるい」

「あ、ユート君!」

 ユートは一人で先に走り出してしまう。しょせん仮想空間とはいえ、浮き足立った心でまともな訓練などできるはずもない。

「放っておいても問題ありませんよ。死んでも大丈夫なんですし」

「……ルミアさん、偽物の戦いであっても、実戦のつもりで戦わなければ、訓練になりません。そんなことは言わない方がよろしいかと思います」

「……あ、わ、私……」

 しまったと鳩美は後悔した。たとえ僅かであっても、怒りの感情を表に出してしまった。お淑やか仮面の影に隠れなければ、不愉快な敵を確実に始末出来ない。自分もまだ未熟だなと自戒した。

 鳩美達は訓練を続ける。とはいっても、似たような風景が続くだけだ。

「しっかし、この空間って、何を再現したものなの?」

 エミリアがルミアに訪ねる。確かにこの風景は鳩美も見たことがなかった。まるで、”グラールではない全く異なる惑星”にいるような錯覚すら陥る。

「……リュクロスの内部から検出したプログラムを解析、再現したら、こういう仮想空間ができた、って話よ。誰かの『思い出』の再現とも言われてるけど、その詳細はまだ調査中で、安全性についてもこうして実験中」

 リュクロスは最後の封印装置が隠された、最大級の旧文明の遺産だ。もしかしたら、この森は旧文明時代にあったものなのかもしれないが、鳩美はこの風景が全くの別世界であるとしか思えなかった。

「……リュクロス……か」

 リュクロスの話題を聞いて、エミリアの表情に影がさす。何か嫌な思い出もあるように見えるが、リュクロスを訪れたのはガーディアンズや同盟軍などの人間だ。彼女のような少女がリュクロスと関わっているようには思えない。

 その時、またしてもユートが一人で勝手に先行する。彼の行動にイラついた鳩美は、エミリアの過去についての疑問を忘れてしまった。


 Act2へ続く
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by ginseiseki | 2010-01-08 19:57
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