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銀星石のエッセイブログ

PSPo2ロールプレイ 第4章 ハッピー・バースデイ Act1

注意
 このブログ記事にはファンタシースターポータブル2のネタバレが含まれています。

 また、ファンタシースターユニバースシリーズにおける、私独自の世界観の解釈も含まれています。







 クロウドッグで出会ったカーシュ族の少年が目を覚ましたのは、インヘルト社の一件があった日の翌日だった。

 チェルシーからの連絡を受けて、鳩美はエミリアと共に医務室へと向かう。

「……おまえっ!」

 しかし、カーシュ族の少年は顔を見るなり襲いかかってきた。直接戦った相手なのだから無理もない。鳩美は軽く少年の拳を受け止め、いつもの柔和な微笑を浮かべる。

「大丈夫ですよ。警戒しないで。私たちは敵ではありません。もしそうなら助けたりはしませんよ?」

 あの時、私が一人だったのならば、容赦なく見捨てていたが。鳩美はそう心の中で付け加えた。

 鳩美に敵意がないと少年は思ったのか、おとなしく出した拳を下げる。

「私は赤木鳩美。こちらはエミリア・パーシバルさんです」

「ユ、ユート……ユート・ユン・ユンカース」

 あまり聞き慣れない名前だ。カーシュ族独特の文化から来ているのかもしれない。

「ねえユート。起きたばっかりなんでしょ? お腹とかすいていたりしない?」

 エミリアは彼女はユートをカフェへと連れて行く。ユートは初めて食べる味なのか、カフェの名物メニューであるプリンを楽しそうに頬張っていた。成長期の子供らしい食欲で、一抱えはある巨大なプリンを平らげていた。

 初めは態度を硬直させていたユートではあるが、エミリアや鳩美と食事をすることで、心を開いていった。

 食事は人間関係を円滑にする。それは政治家から庶民まで、誰もが実践している処世術だ。

「あ、そうだ。いいこと思いついた。ちょっとごめん、ユートとここで待っていて」

「あ……ちょ……エ、エミリアさん?」

 そう言ってエミリアはカフェを飛び出して行った。そして一時間ほどしてから、大量の買い物袋を抱えて戻ってきた。

 買ってきたものの殆どはエミリアが自分の為に買ってきたものだ。ボーナスがあったとはいえ、金の使い方が荒い。博打で大金を得たら翌日に破産するタイプだなと、鳩美はエミリアのことを思った。

 しかし、中には日頃から世話になっているチェルシーへの贈り物があり、さらに鳩美に対して大きなカクワネのぬいぐるみを渡した。

「よろしいのですか?」

 そう訪ねる鳩美に、エミリアは照れ隠しに日頃からの例だと言って、なかば押し付けるようにぬいぐるみを渡した

「んー? エミリア? ぼくにはないのか?」

 鳩美が抱えているぬいぐるみを、ユートは少し羨ましそうに見る。

「あんたには死ぬほどプリン食べさせてあげたでしょ?」

「じゃあ、そっちのちっさいのは誰にあげるんだ?」

 ユートに指さされた箱をエミリアは思わずポケットに隠す。大きさから察するにアクセサリーが入っているように見えた。

 その時、赤いハザードランプと共に警報が鳴り響いた。館内放送からチェルシーの緊張した声が聞こえてくる。クラッド6のリトルウィング管轄区に武装集団が現れたと言うのだ。

 中央ホールから銃声が聞こえてくる。鳩美はエミリアやユートと共に侵入者の排除に当たろうとする。

 しかし、敵の様子がおかしかった。エミリアの姿を見つけると、まるでそれが目的であるかのように彼女を取り囲んだのだ。

 鳩美は武器を構える。敵の数が多い。エミリアには多少のケガを覚悟してもらわなければならないと思ったその時、ウィップを持ったニューマンの女が加勢に来た。

 同じウィップを使うものとして、そのニューマンの戦いは鳩美が目を見張る程のものだった。

「おう、なんだ喧嘩か?」

 侵入者を鎮圧し、戦闘が終わった頃になってようやく、クラウチが出てきた。また酒を飲んで昼寝でもしていたのだろう。今日も不愉快な昼行灯だった。それはニューマンの女も同様のことを感じたのか、クラウチに拳を叩き込んだ。

 女はどうもクラウチと立場が同等か上位に位置するようで、嫌味を含めた小言を言い始めた。。

「エミリアさん、大丈夫ですか?」

 昼行灯の事は無視し、鳩美は社交辞令としてエミリアを気遣う。ユートの方は本気で彼女の安否を心配した。

 体はなんともないというエミリアだが、服のポケットをまさぐって、そこに入れておいたあの箱がないと慌てる。

「あん、なんだこりゃ? 包装されちゃいるが……ぼろぼろじゃねえか」

 問題の箱は床に落ちていた。クラウチが潰れたそれを拾い上げる。

「なんだぁエミリア、これお前のか?」

「う……えっと、それは……おっさんに……」

 お前のものかと訪ねられたが、エミリアはhはっきりと答えようとしない。その様子から、どうやらあの箱の中身はクラウチへのプレゼントが入っているのだろうと鳩美は察する。

「お前のじゃねえのか? んじゃ……ゴミか」

 鳩美は思わず箱をゴミ箱へすてようとするクラウチの腕をつかんだ。

「あん? なんだよ。これ、お前のものなのか?」

「いえ、そうではありません。ですが……」

「どっちにしてもこんなボロいもの、捨てちまってかまわねぇだろ?」

 そう言ってクラウチは鳩美の手を振りほどき、箱をゴミ箱へと捨ててしまった。

「あ……!」

 その光景を見てしまったエミリアの表情から明るさが一気に失われてしまう。

「バカヤローッ!!」

 プレゼントを送ろうとしたら、受け取るべきはずの人間がそれを捨ててしまう。その仕打ちに、エミリアはクラウチを一言罵って走り去ってしまう。

「ちくしょう、なんだってんだ!」

「……みつけた!」

 ユートがゴミ箱の中からプレゼントの入った箱を見つける。

「見つけたって……そりゃ俺が今さっき捨てたゴミじゃねぇか」

 アルコールで脳細胞を溶かしてしまっているのか、クラウチは未だに自分のしてしまった事を理解していなかった。

「クラウチ社長……その箱はエミリアさんが社長へと贈るはずだったものなのですよ」

 今まで従順な社員を装ってきた鳩美だが、初めて社長に向かってモノを言う。そうして初めてクラウチは自分がしでかした事を知った表情を浮かべる。

「……さ、それはそれとして、仕事の話も始めないとね」

 これ以上はクラウチ自身が解決する問題だ。エミリアを探すのはユートに任せ、鳩美はニューマンの女と共に事務所へと向かう。

 ニューマンの女はウルスラ・ローランと名乗った。彼女はクラッド6の責任者であり、リトルウィングの親会社であるスカイクラッド社から来たと言う。クラウチの昼行灯ぶりが目に余る用になったので、直接監督に来たと言うのだ。

 そのことに鳩美は心の底から安堵する。見たところウルスラは義務を蔑ろにするような人物には見えない。少しは心地よく仕事が出来る環境になりそうだった。

 鳩美がウルスラとの対面を終えると、ユートはエミリアの居場所を見つけていた。

 しかし、その時にチェルシーがユートにリトルウィングの社員証を渡していた。村に帰らなくても良いのかと鳩美は尋ねるが、外の世界を見る良い機会だとカーシュ族の少年は、しばらくここに居座るようだった。

 ともかく、鳩美はユートと共にエミリアの所へと向かう。彼女はマイシップに逃げ込んでいて、かんしゃくを起こしてミカになだめられていた。褒められた直後にあの仕打ちを受けたのだから、その怒りは最もだった。

「……ちょうどお二人も揃っていますし、先程の侵入者について少し、お話があります」

 ミカの顔つきは厳しい。侵入者とは別の視線を感じたと言うのだ。

「あ、それはぼくも感じたぞ! すごくギラギラしたイヤな感じのだ!」

 そこでいきなりユートが話に入ってくる。驚いたことに彼はミカの存在を知覚することが出来ていた。

「おねーさん、大地神《ツチガミ》さまみたいだな」

 カーシュ族が信仰している存在だろうか。ユートが言うには、その存在は『レッドタブレット』というものに宿っており、カーシュ族はミラージュブラストを初めとする、さまざま知識を教えてくれるらしい

「レッドタブレットですって……? その言葉、何処で知ったのですが?」

 レッドタブレットという単語にミカが反応した。それは旧文明人が開発した高純度のプログラム記憶媒体だという。そこに記録されていた人格が大地神の正体だった。

 カーシュ族の信仰を集めているレッドタブレット。鳩美は黒服の男が持っていた、赤いノートのような物を思い出す。

 心の拠り所を奪われた事実に、ユートはがっくりと肩をおろし、自らの無力を嘆いた。

「……でも、でも! さっきエミリアがおそわれたとき、大地神さまをそばに感じたんだ!」

 ユートの言葉が事実ならば、黒服の男はあの時クラッド6にいたといことだ。

「もっと強くならないと……大地神さまをとりかえせるぐらい強くならないと……」

 ユートは拳を強く握り締めた。

 Act2へ続く
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by ginseiseki | 2009-12-28 13:20
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