銀星石のブログ

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銀星石のエッセイブログ

PSPo2ロールプレイ 造られた『希望』 Act2

注意
 このブログ記事にはファンタシースターポータブル2のネタバレが含まれています。

 また、ファンタシースターユニバースシリーズにおける、私独自の世界観の解釈も含まれています。






 亜空間開発を行っている区画は海の中にあった。海の中ならば侵入経路も限定されれるし、窓から覗き見るという事も出来ない。

「亜空間の研究は、このような場所で行われているのですね」

 エミリアの体からミカが姿を表し、あたりを興味深そうに見た。

「それにしても、亜空間開発さえなければ解決なんだし、ここにある機械、全部壊しちゃえば終わりなんじゃない?」

 インヘルト社の亜空間開発を行っている区画にたどり着いたとき、エミリアはとんでもない事を言い出した。

「エ、エミリアさん……亜空間の危険性も理解してもらっていない今、そんなことをしたら私たちは単なるテロリストになってしまいますよ」

「うー……わかってるよう」

 エミリアは本当に理解しているのか鳩美ははなはだ疑問だった。この小娘はどうにも想像力が足りないような気もする。

「うーぐー、問題を目の前にして何も出来ないって、歯がゆいなぁ……」

 亜空間の研究のためと思しき機材を、エミリアはもどかしそうに睨みつける。

「亜空間自体は、無数に存在するものであり、旧文明人の存在する亜空間『マハガラ』に通じる確率は、限りなくゼロです。そう急がなくても、恐らく大丈夫でしょう」

「え、そうなの? じゃあ、ほっといてもいいんじゃ……」

 まだ余裕があるとミカに知らされて、エミリアは脳天気に安堵しているが、鳩美はそう思えなかった。マハガラへの扉が開いてしまう確率は限りなく低い。しかし、だからといって旧文明人たちがなんの対策も立てているわけがなかった。

「しかし、『鍵』が揃うと状況は一変してしまうのです」

「鍵……ですか?」

 ゼロに等しい確率を百に変える切り札。鳩美にとってはマハガラ自体を抹消したいところだが、ミカの言う鍵を処分できれば、旧文明人との戦いを有利に進められるはずだ。

「おい、何ゴチャゴチャ言ってるんだ! 急がないと置いていくぞ!」

「申し訳ありません、トニオさん」

 今は深く考えても仕方ない。トニオに急かされ、鳩美は目の前にある仕事に集中するよう努めた。

 亜空間開発区画は、まさに機械たちの無法地帯となっていた。マシナリーの活用は人件費削減によって安価に戦力を揃えられると言う利点があるが、クラッキングで制御系統を奪われたり、暴走してしまうと味方が全て自分に牙をむくと言う欠点があった。

 だからこそ、マシナリーに対する不信感から、近年の傭兵派遣事業は以前よりも活発化している。

「困りましたね。海水で道がふさがってしまっています」

 順調に仕事を進めていた鳩美達だが、暴走したマシナリーによる破壊活動が原因か、何処からか海水が漏れて、先に進めなくなってしまっていた。

「どうするのよー。一端引き返す?」

「……いえ、なんとかなりそうですよ、エミリアさん」

 鳩美は持っている武器をウィップからセイバーへと持ち帰ると、近くにあったパイプを切断した。

 突然のことにエミリアやトニオ、リィナは驚くが、切断されたパイプから流れ出す液体が海水を凍らせたのを見て、鳩美の意図を理解した。

「なるほど。考えたね鳩美。冷却材で凍らせたのかい」

「その通りですリィナさん。さぁ、道ができたので先へ急ぎましょう」

「それにしても、おとなしそうな顔して、意外と大胆だな」

「ふふふふふ。褒め言葉として受け取っておきますよトニオさん」

 そうして、暴走したマシナリーとまだ残っていた原生生物を討伐しながら、開発区画の奥へと進む鳩美達は、最深部で巨大な空間に出た。

「どうやら、あれがレオル・バディアのようですね」

 最深部で暴れていたのは、ここで戦ったマシナリーの中で最も巨大な者だった。丸く平べったい本体を触手のような足が支えている。

「……来やがったぜ。オマエら、油断するなよ!!」

 レオル・バディアがこちらへと向かってくる。トニオが叫ぶと同時に、鳩美達は散開した。大型兵器相手にかたまっていては危険だった。

「う……うん! 怖いけど……けど、逃げたりはしない!」

 鳩美は横にいるエミリアを見る。足が震えているが、持っているロッドを強く握っていた。恐怖を感じていても、それに立ち向かおうとしている目をしていた。

 全く勝機が無いわけではない。レオル・バディアは巨大な本体を細長い脚だけで支えている。

 小型ミサイルや浮遊機雷などの攻撃をかいくぐり、鳩美達はそこを集中攻撃した。

 ビーストであるトニオとリィナがそのパワーを十分に発揮し、レオル・バディアの足を崩した。

 その時すでに鳩美は行動を起こしていた。レオル・バディアは冷却のためか、本体の真下に、大型のフォトン・リアクターがむき出しになっていた。足を攻撃されて倒れている今、弱点は手の届く場所にある。

 鳩美はウィップを振るい、リアクターを粉々に粉砕した。すると、レオル・バディアは糸が切れたあやつり人形のように動きを止める。

「ふぅ、なんとか倒せましたね」

「いつも思うけどアンタは凄いね」

 疲労と緊張でへばっているエミリアを、鳩美は涼し気な微笑で見ていた。

「がんばったじゃねえか、エミリア。この前とはなんだか気迫が違ったぜ」

「え……そ、そう? あたし、少しは頑張れたかな……?」

 トニオに褒められたエミリアは、鳩美に同意を求めるような眼差しを向ける。

「ええ、よく頑張ったと思いますよ」

 頑張ったものは褒める。鳩美は誰もが知っている教育のセオリーを実践する。

「うん……そう言ってもらえるとうれしい。けど、正直まだまだなのかな」

 鳩美が褒めたのは、単純にそうするのが世の中の常識だからであり、それ以上の感情はない。しかし、エミリアは嬉しそうだった。

「リトルウィングのみなさん。どうもありがとうございました。先ほど、こちらでも全マシナリーの停止を確認しました」

 その時、髭を蓄えた老人が現れた。人間は年を重ねると目が淀んでいくものだが、その男は活力が宿っている。

「……もしかして、インヘルト社代表のナツメ・シュウさん?」

「はい、その通りです。以後、お見知りおきを」
 
 組織のトップ直々が礼を良いに来たことに、リィナだけではなく、鳩美達も驚きの表情を見せる。

 ナツメは改めて鳩美達に礼を言った。人間は座る席が高ければ高いほど、居丈高になるものだが、彼にはそういった傲慢さが感じられなかった。

「亜空間やその研究のことについては、俺はよく知らねぇんだが……実際どんなことしてんだ?」

「はっきり言ってしまうと、亜空間は旧文明ですでに発見されていたテクノロジーなんですよ。亜空間研究とは、つまるところ旧文明テクノロジーの研究でもあります」

 トニオが何気なくした質問に対しても、ナツメは丁寧に答え、人徳の高さがうかがえる。しかし、だからこそ亜空間研究をやめさせることは難しいと鳩美は考えた。

「SEEDの脅威を乗り越えたグラールには、未来を託す子どもたちがたくさんいるのです。その子供達のためにも、今グラールが直面している資源枯渇問題への対処法は、なんとしても見つけなければなりません」

 ナツメからは亜空間研究に対する強い信念を感じる。徳の高い人間が強い信念で動けば、とうぜん賛同者も多い。そんな状況で未来への希望とされている亜空間研究を辞めさせるためには、余程のことがなければ不可能だ。

「それでは仕事が済みましたので、私たちはこれで。みなさん、会社に戻りましょう」

 亜空間研究は今すぐやめさせることは出来ない。しかし、インヘルト社の代表とわずかではあるものの、面識を作ることができたのは、一つの成果であった。

 リトルウィング戻ると、すぐさまクラウチに呼び出された。

 エミリアはまた怒られるのではないかとビクビクしていたが、仕事を見事成功させたとしてクラウチは彼女を大きく褒めた。

「あたし、褒められちゃった! ねえ、聞いてる! 褒められちゃったんだよ!?」

「ええ、聞いていますよ。良かったですねエミリアさん」

 エミリアはうるさい位にはしゃいだ。鳩美は彼女の喜びように少し苛立ったが、あの様子では恐らく初めて褒められたのだろう。ならば、それも仕方が無いのだろうと思った。


 第4章へ続く
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by ginseiseki | 2009-12-23 08:53
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