銀星石のブログ

ginseiseki.exblog.jp

銀星石のエッセイブログ

PSPo2ロールプレイ 第2章 黒衣の破壊者Act2

注意
 このブログ記事にはファンタシースターポータブル2のネタバレが含まれています。

 また、ファンタシースターユニバースシリーズにおける、私独自の世界観の解釈も含まれています。






 リマ夫妻にカーシュ族の少年を預け、しばらく森を進んでいると、豊かな自然には不釣合な焦げ臭いにおいが漂ってきた。

 森の中には確かに人が住んでいたであろう集落があったが、そこは炎に包まれていた。

 鳩美は集落の中心部に何人かの人影を見つける。気づかれないようそっと近づき、様子を伺う。

「悲願への道はこれで開かれた。……貴様達にもう用はない。いずこへなりとも、自由に去るがいい」

 服装や雰囲気からしてカーシュ族でない者たち。そして、その者たちになにか尊大な態度で指示を出している男がいた。

 銀髪で黒い服に見を包み。ノートほどの大きさの赤い板を片手に持っていた。

「鳩美! あそこ、あの黒服の男の隣にるあいつ、ワレリー・ココフじゃん!」

「エミリアさん! 声が大きいです」

 騒ぐエミリアの口を鳩美は塞ぐ。だが、確かに彼女の言うとおり、黒服の男の隣にいるのはワレリーだった。

「む……? カーシュ族……ではないようだな。貴様達、ここで何をしている」

「それは私たちのセリフです。こんなに酷いことを……あなた達が行ったのですか?!」

 自分と全く無関係な人間がどこでどのような目に合おうと、鳩美にとっては知ったことではなかった。だが、目の前に邪悪が現れたら、無条件で不快感を抱く本能を彼女は持っていた。

「だとしたら、どうする? その脆弱な力で私と刃交えるか? 『消え往く存在』よ」

 この時も鳩美の本能は間違っていなかった。男は誰が見ても邪悪としか言いようがない、尊大な笑みを浮かべている。

「『消え往く存在』ってあんた、何言ってんのよ……?」

 鳩美はエミリアと同じように、男の言った「消え往く存在」と言う言葉が気になっていはいたが、今はそれよりも重要なことがあった。

「自己を理解することもできないか。……すべからく愚かしい存在だな……まぁいい……どちらにせよ、貴様達はここで消えるのだ」

 なにより重要なのは、この男が鳩美たちにとって敵であるとうこと。それは膨れ上がった殺気が証明している。

 男が跳ぶ。それはヒューマンではありえない身体能力だった。補助テクニックで強化されているとしても、常識から逸脱している。

 男はエミリアを狙った。一瞬で接近し、黒い気のようなエネルギーを彼女に向かって打ち込もうとする。

 しかし、エミリアの体が輝きだし、男は攻撃を中止して一歩後ろへと下がる。ミカが表に出てきて宿主を守ったのだ。

 ミカは男の使った力についてなにか知っているようだったが、その男は何処へと消えてしまった。

 あとから追いかけてきたトニオとリィナが現れ、カーシュ族の村の惨状に驚く。

 その時、ミカが引っ込んだのか、エミリアが倒れてしまった。

(チッ……いつもいつも手間のかかるやつだ)

 鳩美は心の中で悪態をつき、エミリアを助け起こす。

「エミリアさん、大丈夫ですか?」

 声をかけてみるが返事はない。だが目立った外傷はなく単に気絶しているだけだろう。

「あっ、おい! お前ら、待ちやがれ!」

 トニオが叫んだのを聞いて、鳩美が顔をあげると、黒服の男に引き連れられた者たちが、白昼夢から覚めたような顔で一目散に、燃えるカーシュ族の村から逃げて行った。

「今の人たち、何か変だったよ。まるで洗脳されているみたいだった」

「確かに……リィナさんの言うとおり、どこか様子がおかしかったですね」

 黒服の男は他人を使い捨てるような態度を取っていたのにも関わらず、使われる側であったあの者たちは、何も感じていない様子だった。

 その時、鳩美の通信機から、あの昼行灯の声が聞こえてきた。早くワレリーを追いかけろとわめき散らすクラウチに、鳩美は不快感を強めていく。

 こんなにも感情を抑えこもうと必死になったのは久しぶりだった。鳩美はエミリアがトラブルで気絶したことをクラウチに説明する。

「……あのバカ! わかった、ワレリーはこっちで追うから、てめぇらはとっとと戻ってこい!」

 通信機を切り、ようやく不愉快な男の声を聞かずに済むようになったことに、鳩美はほっとした。

 トニオとリィナはこのまま逃げ出した者立ちを追うことになり、鳩美は村に来る前に戦って気絶させたカーシュ族の少年とエミリアを連れて帰る事になった。

 遠隔操縦で船を呼び、どうにか気を失ったエミリアとカーシュ族の少年を運んだ鳩美は、この状況どどのように報告しようかと頭を悩ませながら、クラッド6へと進路をとる。

 帰還した鳩美はチェルシーに二人を預け、クラウチにカフェへと呼び出される。

「よう、来たか。先にいっぱい始めさせてもらってるぜ」

「クラウチ社長……また仕事中にお酒ですか?」

 固いことを言うなとクラウチは笑う。その酒臭い吐息が、鳩美にとってどうしようもなく不愉快であることを彼は未だ知らない。

 クラウチはワレリーをすでに捉えており、借金の取り立てと同時にいくつか話を聞いていた。

 結論から言うと、ワレリーはクロウドッグ地方に行った記憶がなく、気がついたら燃え盛るカーシュ族の村にいたと言うのだ。

「取り立てから逃げる口上ではないのですか?」

「ヤツとは長い付き合いだ。……嘘は、ついていねえ」

 やはりあの黒服の男に操られていたのだろうか? 気になる謎ではあるが、今はそれを解明する手立てはない。

「まあ、俺としては貸してたもんも回収できたし、それ以上、特に言うことはねぇよ。足手まといをかかえてた割には、なかなかの仕事っぷりだと思うぜ。ま、これからも頑張ってくれよ」

 報告を終え鳩美はカフェを後にする。クラウチはまだ飲んでいると追加注文をしていた。

 今日はもうすることはなく、自分の部屋に帰ろうとした時、目を覚ましたエミリアが個人的な話をしたいのでマイシップに来て欲しいと言った。

 正直なところ、鳩美はシャワーを浴びて、ベッドに身を委ねたいところだったが、エミリアはパートナーだ。仕事上の責任放棄とみなされて給料を下げられてはたまったものではない。

 仕方ないので、鳩美はエミリアとともにマイシップの操舵室へと行く。

 話とはあの黒服の男と戦った時のことだった。前にエミリアからミカが発現したときは、その時のことを覚えていなかったが、今回は覚えていた。

「実際に黒服のヤツはいて、カーシュ族襲撃事件もあったんだから、全部が全部、夢のわけないし……」

「そうです、夢ではありません」

 その時、どこからともなくミカの声が響く。

「ようやく、私の存在に気づいてくれたのですね、エミリア」

 突如現れたミカの姿に、エミリアは戸惑いを隠し切れない。

「な、何っ? 頭の中に何か、流れ込んでくる! これは……!」

「記憶の共有です。私の事は、改めて説明するよりも、こうして伝えた方が早いと思うので……」

 エミリアは旧文明人の存在と、彼らが企てている腸が煮えくり返るような『復活計画』について理解した。

 いちいち説明する手間が省けたが、鳩美はミカに対する不信感をさらに強めていった。

 記憶を共有化できるのならば、精神や魂といったものにまで干渉できるのではないのか? ミカにとって都合が良いように捏造された記憶を、エミリアに書きこむかもしれない。

 エミリアに対して母親のような態度を見せるミカではあるが、それが単なる演技であり、実は邪悪な本性を持っているとしたら、彼女を始末する手段が鳩美は欲しかった。

 しかし、精神のみの存在を殺す手段などそう簡単に見つかるわけも無い。それに、まだミカが本当に善良な者という可能性もある。うかつに始末すれば、貴重な味方を一人失うことになってしまう。

「それじゃあ、あのレリクスでの事も夢なんかじゃなくて、実際のこと? あんたはあたしの代わりに一度死んじゃってる……?」

「……強引な伝達方法ですみません。心の整理がつくまで、私は姿を消します。落ち着いたら、呼んでください」

 段階を踏まず、一気に多くの事実を強制的に理解してしまったエミリアは冷静さを失っていた。

「あんたは、あたしのせいで一度、死んだんだ。あたしがもうちょっと頑張ったり、気を付けたりしてればそんなことはなかったのに……あたし、ほんとわがままなだけの最低なやつじゃん」

「エミリアさん。その気持だけで十分ですよ。それ以上は気にする必要はありません」

「で、でも!」

「私は傭兵です。自らの行動によってもたらされた結果を全て受け入れる覚悟があります。だから後悔はしていません。あなたをかばった事も、そしてそれゆえに一度命を落としたことも全てです」

 普段から己の本心を他人から隠している鳩美だが、これだけは嘘偽りの無い事だった。己の行動の全てに責任をもつことが、彼女にとって一つのプライドであった。

「あのさ……あたし……この仕事は向いてないと思うし、戦いうのも好きじゃない……けど……向いていなくても耐えるから、戦い方とか、そういうの教えてよ」

 不平と不満しか口にしなかったエミリアだが、その瞳は堕落しきった愚図の目ではなく、小さいながらも確かな責任感が宿っていた。

「たぶん、まだいろいろと迷惑かけちゃうけど……」

「大丈夫ですよ。今ははその気持が大事なのです」

 今日は自分の本心を語る事が多い日だと鳩美は思った。

「戦いが苦手なのは、変わらないけど……ただ、心構えだけでも、それだけでも前を向かないと」

 その心構えが何よりも重要なのだ。エミリアが”不幸な事故”でこの世から始末される必要は、もう無いのだろうと鳩美は感じた。


 第3章へ続く
[PR]
by ginseiseki | 2009-12-16 09:01
ブログトップ