銀星石のブログ

ginseiseki.exblog.jp

銀星石のエッセイブログ

PSPo2ロールプレイ 第2章 黒衣の破壊者 Act1

注意
 このブログ記事にはファンタシースターポータブル2のネタバレが含まれています。

 また、ファンタシースターユニバースシリーズにおける、私独自の世界観の解釈も含まれています。







 リトルウィングに入社してから数日。赤木鳩美のストレスは蓄積する一方だった。

 相棒として押し付けられたエミリアは、海底レリクスでみせたように、目をみはるような知能はあるようだが、知性は年相応のモノで、何かにつけて不平不満を漏らす。

 彼女曰く傭兵など自分にあった職業ではなく、ちゃんとした天職がどこかにあるのだという。

 馬鹿な。鳩美がそのことを彼女から聞いたとき、強烈な不快感とともにその言葉が脳裏に浮かんだ。

 自分にとっての天職。とどのつまり、エミリアは本当の自分がどこかにいると言いたいのだろう。

 だが、そんなものなどありはしない。本当の自分とは常に現在という瞬間のみに存在するのだ。それを理解せずに、ただただ日々を無為にすごし、人生においての負債を蓄積していく。

 だが愚か者は死ぬまで気づかない。むしろ目を背け続ける。未来と言う可能性が枯渇しきった老人になり果て、死の淵に立たされても、本当の自分はどこかにいるとわめき続けて死ぬ。

 不本意ながらエミリアは背中をあずけるパートナーとなった。もしもエミリアが天職などというおろかな妄想にとりつかれたままならば、いずれ鳩美を道連れにして取り返しのつかない窮地に陥るかもしれない。

 加えて不愉快な人間はエミリアだけではなかった。クラウチは社長でありながら経費の私物化を行っていた。秘書であるチェルシーが驚くほど有能でなければ、とうの昔にこのリトルウィングは倒産していただろう。

 そして、クラウチは経費だけでなく依頼すらも私物化していた。あろうことか、鳩美とエミリアに自分が金を貸した人間の捜索を命じてきたのだ。

 捜索対象はワレリーというビーストなのだが、鳩美とってそんなことはどうでも良かった。問題は自分の上司がとてつもなく不愉快であると言うことだ。

 もしも、クラウチが好き勝手に振舞う昼行灯であり続け、鳩美のストレスを増やし続けるというのならば、エミリアと同様に、然るべき時に”不幸な事故”が起こって、自分が今までしてきたことを思い知る事になるかもしれない。

「おっさんはへんぴな場所って言ってたけど、そのわりに観光プラント並に船が多いじゃん」

 クラウチからの情報によるとワレリーはモトゥブのクロウドッグ地方にいるらしい。だが、そこに到着してみると奇妙な光景が広がっていた。船舶の見本市かと思いたくなるほど多種多様の船が停泊している。

「こんないっぱいのなかからワレリーってヒト、探し出せるのかなぁ?」

「仕方ありませんよ、エミリアさん。根気よく探していきましょう」

「ていうか、なんであたしたちがおっさんの貸したものの取り立てをしなきゃならないのよ……経費だけじゃなくて、依頼まで私物化しはじめてるよあのおっさん。誰か、ガツンと言ってくれないかなぁ……」

「試しにエミリアさんが言ってみてはいかがでしょうか?」

 鳩美が言っても良いのだが、話し合いで解決する前に”不幸な事故”がクラウチを襲うだろう。

「ムダムダ。おっさん、あたしのいうことなんか何一つ聞いてくれないもん。あーあ、どうしたらあのおっさんはあたしの話を聞いてくれるようになるんだろ……?」

「まずはこの依頼を成功させてはいかがでしょうか?」

「えぇ? そんなことであのおっさんが急に態度変えたりすると思う?」

 エミリアは今ひとつ信じきれないと言った表情を浮かべる。

「今回だけでは無理かもしれませんが、何度も依頼をこなして実績を積むことができれば、同じ言葉でも重みが違いますよ」

「そうかなぁ……? それに、あたしは戦うのとか嫌いだし、調査とかも……キライだしさ」

 その時、鳩美はエミリアからかすかにだが違和感を感じた。「調査がキライ」という言葉に、面倒だからという怠けた感情ではなく、何か別の理由からくる嫌悪感があった。

「それより、ワレリーって人を探さないとまたおっさんがうるさいだろうし……依頼をこなさないと、話すも何も無いよね」

 その時、エミリアと話していると鳩美は後ろから誰かが近づいてくる気配を感じた。

「おい、お前達。こんなところで何しているんだ? 文化保護地区を見に来たって感じじゃなさそうだが……?」

 振り返ってみると、十代の中頃の少年がいた。といっても、彼はビーストだから外見と実年齢が一致するとは限らない。もしかしたら、子供程度の大きさにしか成長しない小ビーストかもしれないからだ。

「いえ、ちょっと人探しをしているのです」

 不用意に敵意を相手に持たれないよう、鳩美はニッコリと柔和な微笑を浮かべる。目障りな人間は一刻も早く始末するのを信条としている彼女だが、笑顔ひとつでトラブルを回避出来るのならばそれに越したことはなかった。

 エミリアがなぜこの場所に船が多い理由を、ビーストの少年から聞くが、かれも来たばかりで調査中とのことだった。

 あたりを見回してみると、船は沢山あるのにも関わらず、人の気配は自分たち以外は全くない。

「だめだよトニオ、こっちには人っ子一人居なかったよ。そっちは……あ、二人見つけたんだ」

 ちょうどビーストの男と同じ年頃に見えるビーストの少女が現れた。その口ぶりからさっするに、この二人も人を探しているようだ。

「あの……失礼ですがこちらの方は?」

 相手が不愉快にならない言葉で鳩美は訪ねる。

「おっと、そういや自己紹介がまだだったな。俺は、『トニオ・リマ』……フリーの傭兵だ」

「あたいは『リィナ・リマ』。夫婦で傭兵やってるんだ」

 夫婦ということで鳩美は二人が小ビーストであることが分かった。彼らの実年齢が見た目と同じだとしたら、どの星の法律でも結婚ができない年齢だ。

「私たちはリトルウィング所属の傭兵です。私は赤木鳩美と申します。彼女はパートナーのエミリア・パーシバルさんです」

 鳩美の横で「先輩のあたしはを差し置いて……」という表情を浮かべているエミリアだったが、社会的な礼儀作法を身につけていない彼女がしゃしゃり出ると、どんなトラブルが起きるか分かったものではなかった。

 リマ夫妻はクロウドックにある文化保護地区の見回りを依頼された傭兵だった。普通ならば、そのようなデリケートなものは最大手のガーディアンズに依頼されるのが普通だが、このビーストの夫婦はそれだけ依頼人から信頼されていると言うことだろう。

「とりあえずカーシュ族の村まで行こう。そこに行けば、何か手がかりがあるかもしれないからね」

 リィナの言うカーシュ族。この森に住む者たちだろうか。そういった者たちならば、この土地の状況を誰よりも把握しているかもしれない。鳩美にとって、地の利を持っている者に聞き込みをするのはベストな選択だった。

 そうしてビーストの傭兵夫婦と即席パーティーを組んだ鳩美とエミリアは、クロウドッグの森の中へと入っていく。

 緑の香りをはらんだ風や、とりのさえずる声。惑星のほとんどが砂と岩ばかりのモトゥブにしてみれば、まさに楽園とも言える場所だ。特殊な岩質なのか、ところどころに柱のような形をした岩が見えた。

「ホラ、見て! あれがカーシュ族の目印だよ!」

 リィナによるとカーシュ族ははぐれた仲間のために自分たちの居場所を示す目印を残していると言う。

 目印は所々にあり、カーシュ族の言語を学んだリィナが解読してくれるおかげで、原生生物が襲い来る危険な森を迷うことなく進むことができた。

「おっ、これも目印だな。リィナ、解読頼む」

「あいよ。うーん、これは」

 夫婦と言うだけあってトニオとリィナの間には、強い信頼が存在していることがわかる。それは、鳩美には決して持ち得ない感情だった。

 もちろん、すべてを疑って生きる事は不可能であると鳩美は知っているが、愛情という信頼だけは、自分が抱くことは無いであろうと思っていた。

「あ、それ……この先の道のりについてだ……ふーん、なるほどなるほど。よかった、わりと近い場所にあるみたい」

「エ、エミリアさん? もしかして、この記号が読めるのですか」

 リィナに確認してみても、エミリアが適当なことを言っているわけでもなく、きちんと解読出来ていた。

 エミリアはなにやら慌てた様子で、だれにでもできると異っているが、今まで知らなかった言語を数回見ただけで、その意味を解読するという事が誰でもできると言うのならば、語学という学問は存在しないと思う鳩美であった。

「ほら、ほら! こっちだよ、早く行こー!」

 エミリアは、ごまかすように急かす。初めてであった時もそうだったが、この少女は幼稚な人生観を持っている反面、異様に高い知能を持っていた。

「……おまえ、とまれ!」

 その時、制止の声が上がる。少年の声だ。そこにははっきりとした敵意が込められていた。
 
 その声に反応した鳩美はナノトランサーからからシールドとウィップを取り出す。リィナとトニオもすでに自分の武器を取り出している。エミリアだけが、何が起こったのか理解しておらず、戸惑っていた。

「これ以上近づかせはしないぞ!! 村は、ぼくが守る!!」

 ニューマンの少年がスピアを構え、こちらを威嚇するような眼差しを向けていた。

 村と言う言葉に、もしかしたら彼はカーシュ族ではないかと鳩美は考える。森の奥でくらす者たちだ。外部の人間に対して攻撃的なまでに排他的感情を持っていてもおかしくはない。

「ひょっとしてあんた、カーシュ族? 村で何かがあったってこと……?」

 そもそもこの森自体が異様な雰囲気に包まれている。リィナの言うとおり、カーシュ族の村に何かが起こり、外部の人間を問答無用に攻撃するまでに拒絶感を示している可能性はある。

「だとしたら何だッ!! 許さない、許さないぞ! 村は、みんなは、ぼくが守るんだ」

 少年の様子から察するに、カーシュ族の村に何者かの外敵が襲いかかってきて、それを鳩美たちと勘違いしているようだ。

「エミリアさん! 下がっていてください!」

 スピアを持って少年が襲いかかってきて、鳩美はエミリアを下がらせる。未熟な彼女では足手まといだった。

 事実、鳩美の判断は正しかった。少年の動きは素早く、エミリアでは絶対に反応できないレベルだ。

 鳩美はウィップで少年の武器を絡めとり、彼が驚いた隙に接近する。少年はとっさに拳を突き出してくるが、その腕をつかんで投げ飛ばし、倒れたと同時に鳩尾へ当て身を叩き込んで気絶させる。

「この子がカーシュ族? あたしたちと同じように見えるけど……?」
 
 気絶した少年をエミリアは恐る恐る見る。

「カーシュ族っていうのは、種族じゃない。あたい達のような文明を持たず、原始的な生活をしていた『部族』なのさ」

 エミリアの疑問にリィナが答えた。

「最近は文明に触れる機会が増えたみたいだし、話は通じるはずなんだけどね」

「そのわりには、あたしたちをおもいっきり何かと勘違いしているみたいだったけど……どうしよっか、この子」

「そうですね。このまま放っておくわけにも行きませんから。助けてあげないと」

 敵として襲ってきた彼ではあるが、何か誤解しているようなので、話を聞いてみないとならない。

「それはそうなんだけど……んー……なんか、そのカーシュ族の村のほうもやけに気になるんだよね」

 確かにエミリアの言うことも一理ある。彼がここまで敵意を剥き出しにすることになった原因がわかるかもしれない。

 話し合いの結果、リィナとトニオがこのニューマンの少年を船に連れ帰って介抱し、鳩美とエミリアが村の方へと向かうことになった。


 Act2へ続く
[PR]
by ginseiseki | 2009-12-15 11:01
ブログトップ