銀星石のブログ

ginseiseki.exblog.jp

銀星石のエッセイブログ

PSPo2ロールプレイ 翼を抱いた少女 Act3

注意
 このブログ記事にはファンタシースターポータブル2のネタバレが含まれています。

 また、ファンタシースターユニバースシリーズにおける、私独自の世界観の解釈も含まれています。







 気がついたら鳩美はレリクスではない別の場所にいた。

目覚めた時、傍にいた、まだ言葉遣いがたどたどしい、チェルシーと名乗った女キャストによると、どうやらここは『リトルウィング』という場所らしかった。

 チェルシーのほかにはビーストの男がいた。たしかエミリアの同伴者であったと鳩美は思い出す。彼は通信で誰かを呼び出している様子だった。話の内容からして、男が呼び出している相手はこちらに来るのを拒んでいるようだが。

「アラアラアラ~。それじゃ、ワタシから軽く説明ネ~」

 ここはクラッド6と呼ばれるリゾートコロニーであり、リトルウィングとはその中に居をかまえる軍事会社とのことだった。話を聞く限りでは、エミリアの同伴者によってここまで連れてこられたようだ。

「よーぉ、気分はどうだ?」
「あの……なぜ私はここに?」

 自分がどこにいるのか鳩美は理解した。次はなぜここにいるのかと言う事だ。

 ビーストの男はクラウチ・ミュラーと名乗った。全くそのようには見えないが、リトルウィングの社長らしい。

レリクスに閉じ込められた後はレリクス調査から取り残された人間の救出へと切り替わり、救助隊に助けられたまでは良かったが、天涯孤独で身元がない鳩美を彼が引き取るという形になったそうだ。

「それはありがとうございました」

 傭兵など粗暴な野蛮人だと思われがちだが、フリーランスである鳩美はとにかく信用第一なので、礼を言わなければならない場面ならば必ず礼を言うことにした。

 そのとき、呼び鈴のおとが部屋の中に響いた。

「おっ、ちょうど言いタイミングだな。さっさと入れ!」
「……あのさ、おっさん。今日ぐらいカンベンしてよ」

 葬式のような表情で入ってきたのは、あのエミリアだった。彼女は鳩美を見ると今度は幽霊を見たかのような表情へと変わった。

「生きてるの知ってたんなら、教えてよ!」

 エミリアはクラウチに食って掛かるが、すぐに鳩美が生きていた事実に安堵の表情を浮かべた。

「やっぱりおまえら知り合いだったんだな。よーしよーし、狙い通り。エミリアも懐いているみたいだし。好都合だ」

 クラウチはなにやら一人で話を進めていく。

「お前さん、フリーなんだろ? 丁度いい、このままうちの会社に入っちまえ」

 急に何を言い出すのかとエミリアは抗議の声を上げるが、クラウチはそんな彼女を一蹴した。

「そうですねぇ」

 既に家族のいない鳩美にとって、物心ついたときから武器を持たねば生きていくことが出来なかった。その結果がフリーランスの傭兵という道なのだが、正直なところフリーでの限界を感じているところだった。

「うちは確かに小さな会社だが、お前みたいな経験者にはボーナスもはずむぜ?」

 明日への食い扶持を心配する必要もない。会社という組織のしがらみを考慮しても鳩美にとっては実に魅力的な話だった。

「分かりました。これからお世話になります」
「よーし、決まりだな! よろしく頼むぜ」

 はじめから鳩美が入社を決めることを予見したらしく、クラウチはすでにクラッド6で生活するためのマイルームを用意してくれていた。

 クラウチはなかば強引にエミリアを鳩美のパートナーとし、彼女に鳩美をマイルームへと案内するよう命じた。

 途中で海底レリクスで出会った傭兵のキャスト(バスクと彼は名乗った)とも再開した鳩美は、当てあがれたマイルームへと向かった。 

 マイルームへと案内された鳩美だったが、エミリアは大きなあくびをして、一応仕事の一つだというのにずいぶんとたるんだ様子だった。一通りマイルームの設備を説明し終えたエミリアはとうとう、マイルームのベッドですやすやと寝息を立ててしまった。

「やれやれ、仕方がない。とりあえず日用品の買出しにでも行くか」

 わざわざ起こすのも面倒な鳩美は、エミリアを残して居住区へと向かおうとした。

「……待って」

 そのとき、鳩美は誰かに呼び止められた。この部屋には鳩美とエミリアしかいないはずだが、その声は全く異なる人間のものだった。

いったい何者の声かと鳩美が辺りを見回していると、驚いたことにエミリアから全く別人の姿が幽体離脱のように浮かび上がってきた。

「私はミカ。訳あって、この子に宿る意識のみの存在です」

 ミカと名乗った女は旧文明の人間で、失われた技術によってエミリアに憑依しているといった。にわかに信じられない鳩美だったが、目の前で起こった現象であるのならば受け入れるしかなかった。

 そしてミカは驚くべき事を語った。

 一万年以上前に栄えた旧文明。その時代にもSEEDは現れ、旧文明はSEEDとその現況であるダーク・ファルスを封印したものの、当時のグラール太陽系は大地だけでなく人間もまたSEEDに汚染されていた。

 そこで、旧文明人は『復活計画』というもの実行した。

 まずは三惑星に強力なSEEDに対する浄化を行い、なんとか生物が生活できる環境を戻した後、旧文明人は新たな「ヒト」の素体を作り上げ、それを大地に放った。

 人工的に作り出されたヒト。それこそが今日ではヒューマンと呼ばれる種族であった。

 そして、旧文明人は肉体を捨てミカのように精神だけの存在となって永い眠りについた。自分達が作り出したヒトが高度な文明を築きあげ、その体を奪い取るそのときまで。

「今、このグラールは……旧文明人の生み出した罠に狙われているのです。……どうか、この忌まわしい計画を阻止するために手を貸していただけないでしょうか?」

 話を聞き終えた鳩美の中にあったのは、これまでの人生で最も強い怒りだった。今の文明はSEEDのエサであったAフォトンに頼らずにSEEDを封印した。それまでに多くの犠牲を払うことになり、しかし自力で傷ついた文明を復興させてきた。

 にもかかわらず、旧文明人は復興を他人任せにして、それどころかヒューマンたちの体をのっとろうとする。自分が神であるかのように尊大で、ヒューマンが家畜であるかのように傲慢なその『復活計画』に、鳩美は果てしない怒りを感じた。精神だけの存在でなかったら、おなじ旧文明人であるミカすらもくびり殺してしまいそうなほどの怒りだった。

「なぜ、計画を阻止しようとしているのですか?」

 鳩美は内心の怒りとともに、自分の本来の性格が表に出ないよう注意しながらミカにたずねた。

「確かに私は旧文明人ですが、現代への回帰を望んではいません」

 そう言うミカだが、鳩美は心の底から信用できなかった。既に彼女はエミリアに取り付いている。エミリアの精神を殺して体をのっとらないという絶対の保証はない。しかし、彼女がエミリアの体に宿っていなければ、この話を聞くことは出来なかった。完全ではないが今の鳩美にはミカを表面上でも信じるしか術はない。

嘘をついていないのならばそれで良し。そうでなければ、他の旧文明人もろとも始末しようと鳩美は決めた。

「私達は、滅ぶべくして滅んだ。世界は次の世代に任せるべきなのです。……それに、あなたにとっては既に私の存在は他人事ではないのです」
「どういうことですか?」
「なぜ、縁のないはずの私と貴女が話すことができるのでしょうか……?」

 ミカと話すには彼女自身すら分からない条件があるようだった。

「……貴女は生きているのでしょうか?」
「何を言っているのですか? 私は今こうして生きていま……」

 海底レリクスでエミリアをかばったあの時、さすがに死んだかと思ったが、無傷でリトルウィングに運ばれていたことから、致命傷を受けたと思ったのは単なる夢かと鳩美は思っていた。

「まさか、あれは夢じゃないと……?」
「……はい。貴女の肉体は、一度は完全なる死を迎えました。そのとき、エミリアの強い願いによって発言した私のプログラムが、貴女の体を再構築しているのです」

 思わず鳩美は胸元に手を当てる。とても致命傷を受けたような様子はなかった。

「こうして話している今も……」
「……ふぁ……」
「そろそろこの子が目を覚まします。詳しくはまたいずれ……」

 ミカはあわてるようにエミリアの体の中へと消えてゆき、それと同時にエミリアが目を覚ました。

「んーちょっと寝ちゃった、かな? ……ん? あのさ、なんでこっち見つめているの?」
「いえいえ、エミリアさんの寝顔があまりにも愛くるしいので、つい見つめてしまっていました」

 とりあえずミカとのやり取りがあったことを悟られないよう、鳩美はその場を取り繕った。

 旧文明人がヒューマンの肉体をのっとる復活計画。傭兵として日々を生きる収入さえあればよかった鳩美の人生だったが、エミリアという少女との出会いを切っ掛けに、思いもよらない方角へと進んでいった。


第2章へ続く
[PR]
by ginseiseki | 2009-11-04 18:11
ブログトップ