銀星石のブログ

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銀星石のエッセイブログ

PSo2ロールプレイ 翼を抱いた少女 Act2

注意
 このブログ記事にはファンタシースターポータブル2のネタバレが含まれています。

 また、ファンタシースターユニバースシリーズにおける、私独自の世界観の解釈も含まれています。







「あぁー、やっぱり原生生物がわんさかいる。見逃してくれたり、しないよねぇ……」

 うんざりした様子で、エミリアは目の前にいる原生生物、エビルシャークを見ていった。

「しかたないですよ、相手は原生生物なのですから」

 犯罪者を逮捕するというような状況ならともかく、ここは命のやり取りをする戦場なのだ。見逃すという言葉は存在しない。後顧の憂いは皆殺しにするのが鳩美が経験から学んだ戦場論だった。 

「……あの、えっと、えっとね。直前でこんなこと言うのはなんだけど……」

 愛の告白する初心な娘のようにもじもじしながら、エミリアはなにやら言いにくそうな様子だった。

「あたし、武器はもってても、実は戦闘経験なんてほとんどないの」
「え……」

 鳩美に頭痛が襲う。傭兵にしてはあまりにも情けないと思っていたが、まさか丸っきりの素人だったとは思わなかった。ふざけるなと怒鳴りつけたい衝動に駆られるが、いまさらそうしたところで状況が改善されるわけもなく、鳩美はため息をつくことで堪えた。

「……だから、がんばって! あたしは応援してあげるから!」

 その態度が、鳩美の神経を逆なでしていたことをエミリアは知らなかった。

「応援するのは良いですが、最低限自分の身は自分で守ってくださいね。私は正義のヒーローではないのですから」

 仕方がないので、鳩美は道中でエミリアにいくつかの助言をしながら、レリクスを進むことにした。

「……すごい。さすが傭兵って感じ」

 セイバーを振るう自分の姿に感嘆するエミリアを見て、お前も傭兵なのだがなと鳩美は心の中でつぶやいた。

「……なんか、ちょっとホッとしたよ。あんたがいれば、安全っぽいしさ」

 護衛対象ならともかく、自分と同じ傭兵であるはずの彼女が飽きれるほどのん気な態度をするエミリアを見て、鳩美の彼女に対する不快感がますます強まっていった。

「あたしは軍事会社に登録されているだけで、戦う気とか、これっぽっちもなかったのに……だっていうのに、あのおっさん。あたしが働かないからって、ムリヤリ連れ出してこんなレリクスにほっぽって……」

 おそらくはあのビーストの保護者に対してであろう不平不満をエミリアは漏らした。

「あー、なんかだんだんハラが立ってきた! こんなかよわい女の子を、一人にするなんてひどいと思わない?」

 エミリアの言うことは言葉だけなら正しいのだが、謙虚さのひとかけらもない態度でそう言われると、鳩美は彼女の自業自得としか思わなかった。

「たしかにひどいですね」
「でしょ? やっぱりそうだよね! たしかにあたしも、仕事をえり好みしてなんにもやってなかったけど……いきなりこれはひどいもんね!」

 内心はお前がそんな態度だから働かされるのだと思っていた鳩美だった。

「……ん、どうしたの? そんな微妙そうな顔して?」
「いえ、なんでもありませんよ」

 鳩美は急いではがれかけた仮面をかぶりなおして、淑やかな笑顔をエミリアに見せた。

「とにかく、あんたがいれば無事に帰れるような気もするし、おっさんにはあとで文句いいまくってやる」

 いきまくエミリアを見た鳩美は、こんな娘は一度トラウマになるほど酷い思いをしたほうが良い経験になるだろうなと思った。

「SEEDはもう存在しないから、レリクスは安全だ、とかいいはってあたしの言うこと信じてくれないしさ……」

 三年前にグラールを襲った未知の生命体SEED。それは一万年以上前のレリクス文明時代にも襲来しており、レリクスは当時の人間がSEEDと戦うために建造した遺跡だった。それゆえに、内部にはレリクス文明製の戦闘マシナリーであるスタティリアが侵入者を排除していたのだった。

「そりゃ、今まで発見されていたレリクスはSEED襲来があったときばかりに機能を覚醒させていたよ? でも、全部が全部そうだったかっていうとそういうわけじゃなかったんだよね。一説によると、SEEDの散布する素粒子に反応して起動しているみたい。だけど、同時に磁場の乱れも観測されるから、どうもそれだけじゃないと思うのよね。」

 エミリアは突然意外な側面を見せ始めた。素人のわがまま娘かと思いきや、物事を考える最低限の思考力は持っていた。

「そもそもSEEDは3年前に一掃されたはずなのに、こうしてレリクスは起動しているわけでしょ。レリクス自体が何らかのトリガーとなるものも、それに準じた……」

 確かに一理あると鳩美は口には出さないものの、エミリアに内心同意した。まだ十分に旧文明の技術を解析しきれていない現代では、レリクスの起動も停止も不可能であった。対SEEDの前線基地として建造されたというのが最も有力な説ではあるが、役目を終えたはずなのに、エミリアの言うとおり今だ稼動しているレリクスはあった。

「ずいぶんとお詳しいですね」
「……あ、え……ええっとー……あ、いや……こ、このくらい常識でしょ?」

 傭兵稼業にはレリクス調査も含まれているので、ある程度の座学は独学で修めているつもりの鳩美だったが、エミリアのそれはどこかできちんと学んだようなレベルだった。

「いい、今の説明は忘れて。どうせあたしが何言ったって、誰も信じてくれないんだし!」

 エミリアはおもわず何か恥ずかしいまねをしでかしたかの様子で、先ほどのことを鳩美に忘れるよう頼んだ。しかし、鳩美のほうはというとまだ不快感は完全に払拭されてはいないものの、エミリアに対して僅かながらの興味を抱き始めた。

 もっと話して欲しいとためしに言ってみた鳩美だったが、結局彼女は先に進もうと言ってそれ以上を話そうとしなかった。

 そのあとは、トラップの解除は全て鳩美まかせであったり、エミリアは戦力としてなんとも頼りなかったが、しばらくレリクスを進むと、なにやら儀式でもするかのような場所に出てきた。

「ずいぶん奥まったところまで来たけど、まだ出口見つかんないの?」

 みれば、スタティリアとよばれるレリクスの防衛兵器がこちらを見張るかのように鎮座していた。たしか最近発見されたスヴァルティアという大型機動兵器だと鳩美は記憶している。
その姿におびえるエミリアだが、彼女の恐怖を感知したかのように、スタティリアが突如動き出した。完全に鳩美とエミリアを敵と認識している。

「仕方がありません。戦いましょう。相手が相手ですからエミリアさんもがんばってくださいね」
「や、やっぱそうだよね?」

 未練がましくうなるエミリアだったが、さすがの彼女もここまでくれば覚悟を決めざる得なかった。

 幸にも敵は一体。油断さえしなければ鳩美でも何とか倒せる相手だった。

刃を二枚重ねた槍をスヴァルティアは振り下ろしてくるが、鳩美は左手に装備したシールドを使って受け流す。

エミリアも槍の間合いの外からゾンデを撃って援護した。

レリクスの兵器は強力であるのは事実だが、機械的な攻撃を見切れる程度の技量があれば、決して勝てない相手ではない。

程なくして敵を機能停止させることができた。

「はあ……はぁ……生き……てる……? あたし、生きてる……?」

 生まれて初めて生死をかけた戦いを経験したエミリアは、息も絶え絶えでそのまま倒れてしまいそうな様子だった。

傭兵としてはなんとも無様だったが、どんなに無様でも生き残れるかどうかが、一人前になる第一歩であることを、鳩美は知っていた。

「……やった、やったよ! あんなでっかいのを倒しちゃった!」

 後ろからテクニックで援護していただけのエミリアだったが、それでも勝利は勝利であった。自分も初陣を勝利で飾ることが出来て喜んだ事を鳩美は思い出す。

 しかし、倒したはずのスタティリアが息を吹き返したかのように立ち上がった。勝利に浮かれていたエミリアは一瞬反応が遅れる。

「えっ?」
「ちっ! 伏せろ!」

 思わず地の言葉遣いが出てしまった鳩美は、スタティリアの振り下ろす爪からとっさに彼女をかばった。

 胸に深手を負った鳩美の視界が赤くなる。足手まといをかばうなど愚かなことをしてしまったと鳩美は後悔するが、いまさら本能的に行動してしまったことを悔やんでも仕方がなかった。

 意識が薄くなり、自分になきすがるエミリアの声も良く聞こえない。彼女の背後ではとどめを誘うと腕を振り上げるレリクスの兵器の姿が……もうこれまでかと鳩美が思ったそのとき。エミリアの体から強いが温かい光が発せられるようになった。

「あなたを・・・・・・死なせはしません」

 少女の口から声が発せられる、しかしそれはエミリアのもとは全くの別人の声だった。

Act3へ続く
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by ginseiseki | 2009-11-04 18:07
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