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銀星石のエッセイブログ

PSPo2ロールプレイ 翼を抱いた少女 Act1

注意
 このブログ記事にはファンタシースターポータブル2のネタバレが含まれています。

 また、ファンタシースターユニバースシリーズにおける、私独自の世界観の解釈も含まれています。






 その日の仕事は、赤木鳩美にとってごく普通の一日であるはずだった。武器を持たぬ一般人と比べれば、それは海底レリクスの調査というのはただそれだけで特異な一日であろうが、傭兵である彼女にとっては平凡な一日に過ぎないはずであった。

「……これだけの人数が集まってるってことは、大手のスポンサーがついているようだな。久々にもうけられそうだ」

 話しかけてきた傭兵を見て、鳩美は彼がそれなりに年を重ねたキャストであることが分かった。収入のおおい割の良い仕事に就けることの幸運を喜ぶ感情が伝わってきたからだ。無感情・無表情がキャストのステレオタイプだが、それはパルムに永住するものだけで、キャスト以外の種族と触れ合う機会を持つキャストは感情に芽生えやすい。

「所属なしってことは、フリーか? そりゃ大したものだ。ま、場所が場所って事もあって腕利きを集めているのかもな」

 どこぞの馬の骨とも分からぬような輩に危険な仕事を任せる愚か者などいるはずもない。普通ならば余程の腕利きでない限り、こういった仕事は最大手のガーディアンズに任せるのが普通だ。

 幸運にも生まれ持った才覚があったのか、鳩美はフリーランスで傭兵を営むことが出来ていた。

「この海底レリクスは、つい最近発見されたものだ。調査はまだ、ほとんどされていない。このあたりは安全なようだが……奥は、まさに『未開の地』ってわけよ」

 レリクス。一万年以上前に姿を消した文明が残した遺跡。その中は番人であるレリクス文明製の戦闘マシナリー、スタティリアに守られていた。それゆえに生半可な人間では生きて帰ってくることは出来ない。

 見渡してみれば、いかにも実力に覚えがありそうな傭兵たちが何人もいる。ガーディアンズほどではないが、そこそこ有名な傭兵の顔もあった。

「帰ろう、帰ろうって!」

 ふと、あまりにも場違いな声が聞こえてきた。

「……なんだ、あの子供は? 腕ききの傭兵のようにはとても見えないが……」

 キャストの言葉通り、まだ年端の行かないヒューマンの少女が、保護者らしきビーストの男ともめていた。

 年のころは15、6歳ほどだろうか。帰りたい帰りたいと駄々をこねるその姿をみて、鳩美は若干の不快感を覚えた。確かに鳩美もまだまだ小娘といわれても仕方のない年齢でもあるが、あそこまで幼稚ではない。少なくとも、現場に来たというのに仕事を放棄するような態度を見せることは決してなかった。

 ビーストの保護者は「お前にも出来る仕事をもらってきてやる」とどこかへ行ってしまった。ヒューマンの少女はとうとう涙目になりながらその場にうずくまってしまう。

 そのとき、レリクスの内部で振動が起こり、なにやら良くない気配がただよってきた。見れば唯一の出口である扉が、ゆっくりとしまりかけているではないか。鳩美も逃げ出す傭兵達と一緒に脱出しようとしたが、彼女は不運にも扉から最も離れた場所にいたために、レリクスの内部に取り残されてしまった。

「出して、出してよー! このっ、このやろっ! 開きなさいよー」

 うずくまっていたヒューマンの少女もまた、鳩美と同じようにレリクスに取り残されていた。周りを見渡してもほかにいるのは自分と彼女のみ。やれやれといわんばかりに鳩美はため息を漏らした。

「あの……ちょっとよろしいでしょうか」
「……誰?」

 自分の性根とはまるっきり正反対の、まるで良家の淑女のような言葉遣いで鳩美は少女に話しかけた。お淑やかな女を鳩美が演じるのは、余程勘の鋭い人間でなければ、彼女に対して油断してくるからだった。油断している者ほど扱いやすい人種はいない。

「何が起きたかって、分かる?」
「残念ながら……」
「……分からないよね。あたしも、いきなりでそれどころじゃなかったし」
「では行きますか」
「……って、まさか奥に進む気? 無理無理! やだやだ! 危ないって! ここ、未開のレリクスなんだよ? すっごい危ないんだよ?」

 未開だからこそ、調査には腕利きで、使い捨てたところで誰も心を痛めない傭兵達が集められたのだが、そんなことも露とも知らず、少女はまたしても駄々をこね始めた。

「そうですか……残念です。では私は別の出口を探します。それではごきげんよう」
「あっ……ちょっ、ちょっと待って! 一人で行っちゃうの!?」

 出口が閉じてしまった以上、どれほど危険だとしてもここから脱出するためには奥へと進み別の出口を探さなくてはならない。母親のように優しく少女を優しく諭すくらいなら、一人で先に進んだほうが鳩美にとっては良い状況だった。

「行くから! あたしもいっしょに行く!」

 ようやく観念したのか、迷いなく先へ進もうとする鳩美の後を少女はついてきた。

「あ、そういえば名前、聞いてないんだけど……」
「赤木鳩美です」
「あ、あたしはエミリア。エミリア・パーシバル。えっと、その……これからしばらくは一緒だから……よ、よろしくね。」
「ええ、よろしくおねがいします」

 真摯な態度で鳩美はエミリアに接していたが、どうせ今日限りなのだからと、本心では彼女に対してさほど興味を持っていなかった。

Act2へ続く
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by ginseiseki | 2009-11-04 18:01
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